2007年09月26日

鍋たち

鍋ここしばらくパソコンが壊れてしまって、不自由した。こんなに、パソコンに頼っていたのかと改めて驚く。まめにプリントアウトして紙としてファイルしておく必要を感じる。paperlessなんていうけれど、私の場合はpapermoreだ。でも、仕事のプレゼンテーションなど、たくさんのカタログを切り抜いてコラージュする必要がなくなったから、余分なメーカーカタログは姿を消した。その分ではpaperlessにはなった。済んだ仕事の記録をディスクに保存できるなど、便利ではある。
パソコンが使えなかった間も仕事は進む。手書きで、文書など作ろうとするが、手紙のような私文書ならまだしも、いつの間にか、パソコンに打ち出される文字をどこかで客観的に見ながら思考をまとめるような、脳みその癖のようなものができてしまっている。そんなことで余計なストレスがたまってしまうことに愕然とする。典型的なアナログ構造のはずが、デジタル頼りのアナログの新種に変化しているのかもしれないと思う。
そんな最中、ある広島のメーカーから連絡が入った。先日のビックサイトでのギフトショーに出品していたメーカーで、50年以上も同じ無水鍋を作り続けている会社である。そのブースの前を通りがかったとき、思わず、声をかけてしまったのである。それは、私が姉から譲り受けてから30年以上も使っていて、それでなければいけない定番料理ができあがっている代物である。姉が買ってからもうきっと40年は少なくともたっている。特に、この鍋(写真右の一番奥)で作るタンシチューは我が家の名物料理である。その鍋だからおいしくできるのかは不明。でも、大きな牛タンの固まりを2本巴のマークのように入れてすっぽりと収まる鍋で、赤ワインを1本注ぎ入れた時の水分と具とのバランスがちょうど程よく、じっくり煮込むと失敗なしの最高のシチューができあがる。これは我が家の秋から冬にかけてのホームパーティの定番で、食べて下さった人たちから必ずリクエストが出る一品である。ほめていただくとすぐ舞い上がってしまうので、そういう意味でも私にとって無くてはならない一品なのだ。
本題からそれたけど、そのメーカー曰く、鍋のコマーシャル(TVショッピングらしい)に取材をさせてほしいとのこと。へっ!と驚いたが、好きな鍋のことなのでOKした。(いつも思慮が足りない、こんな時私は)料理もということなので是非このシチューを作ろうと思っている。で、気がついた、この料理は無水ではないぞ。ワインだけど1本まるまる使う。というわけで、今、無水で何か作った方がいいか、日々悩んでいるのである。(写真は我が家の鍋たち、もっとも頻繁に使うものばかり。一番手前が新入りのご飯釜、普通のお米でも飛びっきりにおいしく炊ける)

2007年09月10日

風とジャズと

jazz3
ジャズが聞こえる、確かに聞こえる・・・
徳持さんの作品を見たときそう感じた。鉄筋を使った立体作品を彼は得意とする。鉄をあたかもしなやかな鉛筆の線のように描いてみせる彼はただならぬヤツだ、と私は一目置いている。鉄の線で出来たアートは透明人間のようでいて、汗ばんだ熱い体温まで感じる。セクシーでさえある。
徳持耕一郎さんと出会ったのは3,4年前、知人の神戸のギャラリー春志音の社長須藤氏の紹介による。鉄筋アートの作家と言うことで、マッチョな人をイメージしていたが、実際の徳持さんは繊細な細身の方だった。少年のようなナイーブさを持った人である。彼の作品の凄みはどこから来るのか。一瞬のスイングしているジャズマンの動きを何故こんなに切り取って立体に出来るのか。
デッサン力だと気が付くのに時間はかからなかった。それはデッサンする力もさることながら、彼が人を瞬時にとらえる感性と人としての温かさがあるからだと私は思っている。
私の手元に一冊の本がある。’ニューヨークがくれた宿題’というタイトルの、徳持さん手作りの本である。その本によるとこのジャズと言うテーマへ導かれたのは1989年ニューヨークでの初めての個展のあとのジャズクラブでの出来事だった。カウンターにあるナプキンを思わず手に取りペンでデッサンすることから始まったのである。多くのジャズメンとの出会い、その一瞬一瞬を残したいという気持ちから作品は出来ていく。
私は徳持さんのその混じりけのない出発点が好きである。今彼は鳥取に住み、作品を作っている。砂丘の透明な風が作品を吹き抜ける。でも、閉ざされた空間の中で光と影を足し算した演出も私は実は好きなのである。
徳持耕一郎http://www.hal.ne.jp/saurs/

徳持jazz2

2007年08月21日

黒柿のテーブルランナー

黒柿ランナー
松原義美さんというちょっと風変わりなもの作りにであったのは、ちょうど一年前のことだ。黒柿を織った帯を目の前にしてさわってみてくれと言った。くしゃくしゃとちょっと乱暴にさわってみても、それはしなやかな布だった。
木を繊維にして織った布は古来からある。日本に木綿が登場するまで民衆は身近な木や草を糸にして織り身にまとっていたのだから。けれどもそれらは繊維にした上で糸にして織ったものであり、木そのものを織ったわけではない。木を薄い板にした上で糸のように細く切り、それを横糸にして織り上げた布は、木という性格上致し方のないことだがしなやかな布というわけにはいかない。扱いようによっては木が折れてしまうし横に曲げるのが難しい。けれども、松原さんの布はジャガード織りになっていて、使うほどに柔らかな風合いを増していく。何か、特殊な加工を施しているらしい。
そうやって布になった木は、木目が一種独特の紋様を作り出す。松原さんの得意とするのは黒柿や屋久杉、神代杉など稀少な木目の木。帯として素晴らしいがもっと身近なものとしてテーブルランナーを作ってもらった。中央の砧の紋様は黒柿、両サイドの丸い紋は神代杉。ブルーの縞は箔糸。逆方向から見るとブルーの縞は消え黒っぽい地の中に、木目で表現した紋様が浮かび上がる。悠久の時間が作り出した自然のたまものを布にしてみたかったと言う彼は、屋久島の村おこしのプロジェクトにも長年関わっている。素朴な心根を持った作り手でありプロデューサーでもある。(撮影:久野充敬)
商品について
六本木ミッドタウン3Fのメイドインジャパンのショップ’The cover日本’http://www.thecovernippon.jp/でご覧頂けます。是非お出かけ下さい。

The cover日本は3月にメイドインジャパンプロジェクトの第一号店としてオープンしました。オープンに際し、雑貨MDと布関係の商品開発、コーディネーションなどで参画しました。
ADA INSTITUTE Michiyo Tanaka 
http://www.kozocom.com/kozos/tanaka/
http://www.kozocom.com/lifestyle/interior/index.html

2007年08月05日

鳥獣戯画のカーテン

鳥獣戯画唐獅子 これらの布は古い着物の柄から起こしたカーテン地である。京都に650年続く老舗の紫織庵さんの持ち柄。明治から昭和初期に図案化された男性の長襦袢や羽裏に使われたと聞く。鳥獣戯画は今更解説の必要もないくらいになじみ深い高大寺の鳥獣人物戯画による。12〜13世紀に描かれたものだが、日本最古の風刺画ではないのだろうか。後世様々な人の手により紋様化されているが紫織庵の紋様は特に伸びやかで好きだ。これらの着物地を見たとき、その意匠の今日性に驚いたものである。そして考え込んでしまった。デザインとは何だろうと。
これらのデザインは美術やデザインを専門に学んだ人ではなく、市井の図案職人の手による。遙かに時を経て尚、人を引きつける。今これを空間に持ち込んでみたいと思った。紫織庵の川崎社長にお願いして、広幅のカーテン地にさせてもらった次第。美濃和紙を糸に使った平織りの布にとりあえず、インクジェットでプリントしてみた。美濃和紙の布自体開発途上の素材であるため、まだ工夫の余地があり、プリントの手法も検討中であるが、完成像だけは把握できる。
和紙を使った布、古典からリデザインした紋様、日本の私達の生きている土壌の中にまだまだ多くの可能性とヒントがある。それらをどれだけ世に送り出すことが出来るだろうかと思っている。(撮影:久野充敬)

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どくろ

2007年07月28日

銀色の器

tokunari銀丸皿
この銀の丸いお皿、漆器である。欅の木を薄く挽き繊細な軽さに仕上がっている。外側は溜塗、内側は錫箔を貼って仕上げている。銀箔は酸化して黒ずみ器としては取り扱いが難しいが、錫箔ならば酸化して黒くなることもなく清潔感がいつまでも保たれる。錫独特の少し暖かみのある銀色が私は好きである。
これをデザインし世に送り出したのは京都の藤林徳也さん。彼自身は格式の高い友禅作家の次男坊。もちろん呉服の世界の仕事も格別の感性で優れた仕事をする人だが、彼の個性は呉服の世界だけにはとどまらない。器、インテリアと今やどんどん広がりを見せている。そしてそれらが独特のいい意味でのあくの強さをにじませながらも品を失わない事に驚かされる。そして何れも彼自身のライフスタイルから生まれてくることにも。一見彼のプロデュースする品には関連がないように感じるが、全てが藤林さんの生活に欲しいものという視点から産み出されている気がする。
このお皿は、ざんぐりと普段遣い、というものではなく、少し楽しい緊張感とともに使ってみたい。今の季節だったら、天然の鮎をじっくりと炭の遠火で焼き、笹の葉など敷いて盛りつけたらどうか。季節の王者とも言うべき食材を気合いを込めて料理し盛りつける。そんな器も、私は生活の中で時々欲しいと思うのである。(撮影:久野充敬)
商品について
六本木ミッドタウン3Fのメイドインジャパンのショップ’The cover日本’http://www.thecovernippon.jp/でご覧頂けます。是非お出かけ下さい。

The cover日本は3月にメイドインジャパンプロジェクトの第一号店としてオープンしました。オープンに際し、雑貨MDと布関係の商品開発、コーディネーションなどで参画しました。
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2007年07月23日

花の器

村松加奈子さんという若い清楚なお嬢さんと出会ったのは3月だった。京都で知人に紹介された。透明な、まっすぐな目をした方で、きっといい仕事をする人だと直感した。彼女は京焼きに絵付けをする人。あえて作家とは呼びたくない。まだまだ健やかな変遷をする人だと思うから。
その時見せて下さった作品は京焼き特有の柔らかな半磁器の酒器。繊細な花がびっしりと描かれた美しい器である。きっと息を詰めるように筆を走らせて描かれたものに違いないのに息苦しさを感じないのは彼女自身の人柄を反映したものだと思う。
この人に、どんな宿題を出そうかと。話し合っているうちにふと思いついた。小さなまん丸い蓋ものを作って、朱肉入れにしたらどうかな、と。彼女も目を輝かせて作ってみたいと言った。じゃあ、楽しみに待ってるね、とお別れして数週間後、幾つかのの蓋ものが届いた。
まあ、と息を呑むほどの愛らしさである。手にした途端、朱肉を入れるのがあまりに無惨な気がしてきた。使っているうちに朱で汚れてしまうのが必定。どうしようか、この大きさでは香合には少し小さい。そうだ、指輪入れにしようと思った。小さな丸い縮緬のお座布団を入れて縮緬の布で包んで箱に入れたら自分への贈り物にいいだろうと思った。
実用的なものもいいけれど、こんな無駄とも言える楽しい工芸も捨てがたい。
若い作り手が確かに育っている。そんな人ともっと会ってみたい。絶え間ない人との交流の中から生まれていくもの作りが理想だと思っている。(撮影:久野充敬)村松蓋もの菊尽くし蝶蓋もの
商品について
六本木ミッドタウン3Fのメイドインジャパンのショップ’The cover日本’http://www.thecovernippon.jp/でご覧頂けます。是非お出かけ下さい。

The cover日本は3月にメイドインジャパンプロジェクトの第一号店としてオープンしました。オープンに際し、雑貨MDと布関係の商品開発、コーディネーションなどで参画しました。
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2007年07月17日

伝統から生まれたアヴァンギャルド

絞りの布
ブログ事始め。アナログの頭を振り絞って第一号を作っている。だからというわけではないが初回は絞りの布を取り上げてみた。
私のテーマは日本の良いものを自分なりの切り口で紹介すること。何も今まで日本になかったものを作るつもりはなく、ごく当たり前にあったものやことを素直に見いだしたいと思っている。そしてそれらが’たしなみ’’しつらい’といった言葉でつながっていくような気がしている。
ここ数年来ごく自然に工芸の世界が近づいてきた。特に京都のもの作りの世界が身近になってきている。深く入ってみると、京都という風土に染みこんだ何かが、作り出すものを一種独特の品格(今はやりの言葉だけど)をそなえさせることに驚く。でもそれは作る人の力に他ならず、いにしえより目の肥えた注文主が連綿とその人々を磨き上げてきたことに気付く。
今回紹介している絞りの布とクッション、ポリエステルを絞りなにやら不思議な生き物のような面白さがある。これぞアヴァンギャルド。片山文三郎商店の製作による。絞りのクッション
古来の技法も素材や発想を変えればほらこの通り。残念ながらこれは私自身の企画ではないけど、いいものはいい。絞りの糸くくりの工程だけは中国で。デザイン、企画仕上げは日本。日本のアイデンティティはちゃんと守られている。これを見付けたとき感動した。これこそ不易流行を地でいっていると。
京都だけでなく、日本中探せばそれぞれの風土の中にいい人、いいものがあるだろう。そんな人やものとの出会いの中から仕事を産み出していこうと思う。(写真撮影:久野充敬)

商品について
六本木ミッドタウン3Fのメイドインジャパンのショップ’The cover日本’http://www.thecovernippon.jp/にシルクの絞りのベッドカバーとともに展示していただきました。是非お出かけ下さい。

The cover日本は3月にメイドインジャパンプロジェクトの第一号店としてオープンしました。オープンに際し、雑貨MDと布関係の商品開発、コーディネーションなどで参画しました。
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