2007年09月10日 02:10
風とジャズと

ジャズが聞こえる、確かに聞こえる・・・
徳持さんの作品を見たときそう感じた。鉄筋を使った立体作品を彼は得意とする。鉄をあたかもしなやかな鉛筆の線のように描いてみせる彼はただならぬヤツだ、と私は一目置いている。鉄の線で出来たアートは透明人間のようでいて、汗ばんだ熱い体温まで感じる。セクシーでさえある。
徳持耕一郎さんと出会ったのは3,4年前、知人の神戸のギャラリー春志音の社長須藤氏の紹介による。鉄筋アートの作家と言うことで、マッチョな人をイメージしていたが、実際の徳持さんは繊細な細身の方だった。少年のようなナイーブさを持った人である。彼の作品の凄みはどこから来るのか。一瞬のスイングしているジャズマンの動きを何故こんなに切り取って立体に出来るのか。
デッサン力だと気が付くのに時間はかからなかった。それはデッサンする力もさることながら、彼が人を瞬時にとらえる感性と人としての温かさがあるからだと私は思っている。
私の手元に一冊の本がある。’ニューヨークがくれた宿題’というタイトルの、徳持さん手作りの本である。その本によるとこのジャズと言うテーマへ導かれたのは1989年ニューヨークでの初めての個展のあとのジャズクラブでの出来事だった。カウンターにあるナプキンを思わず手に取りペンでデッサンすることから始まったのである。多くのジャズメンとの出会い、その一瞬一瞬を残したいという気持ちから作品は出来ていく。
私は徳持さんのその混じりけのない出発点が好きである。今彼は鳥取に住み、作品を作っている。砂丘の透明な風が作品を吹き抜ける。でも、閉ざされた空間の中で光と影を足し算した演出も私は実は好きなのである。
徳持耕一郎http://www.hal.ne.jp/saurs/
