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精神障害者福祉手帳を持つ人々の拘り、福祉から無視され続ける社会的弱者としての売春少女たち

昨今、自殺、ホームレス、ネットカフェ難民、失業による貧困化といった問題を、いかに社会的に解決していくのか、ということがようやくテーマに挙げられるようになっています。それ自体は前進であるものの、こうした問題は、その多くを「男性」が占めるものであり、社会問題化のジェンダーギャップがあるのもまた事実です。では、女性の場合、同種の問題がどこに表れているか。そのひとつに、昨今ではなかなか語られることのない、(風俗系ではない)「売春」の問題があります。典型的なケースでいえば、貧困、厳しい家庭環境、教育からの排除などを背景に、仕事も得られず、加えて精神疾患などを併発している女性が一定のボリュームで存在している。そうした女性が、政策的なケアを受けられず、社会的包摂から外れていった挙げ句、風俗産業の外にある売春行為に陥っていくというルートが存在しています。僕は今、出会い系・テレクラ・出会い喫茶などを主なチャンネルとして、現代日本の売春についての量的調査や聞き取り調査を進めていますが、今回は、『出会い系のシングルマザーたち』などの著作でいち早くこの現実に注目されてきた、ルポライターの鈴木大介さんをお招きしました。対象にがっつり密着し、より不可視化された層へディープに切り込んでいく鈴木さんの取材アプローチは僕とは全く異なり、とてもまねできるものではありませんが、それでも見ている風景、伝えようとしている事実はかなり一致しています。この数十年、売春という問題は、抽象的な自由や権利を絡めた象徴闘争の場ではあっても、それ自体を分析し、実態を明らかにしなくてはならないという対象からは外されていました。そこで、最前線で取材を続ける鈴木さんとの情報交換も兼ね、現状への理解を共有できればと思っています。鈴木 最近では、「別冊宝島」に向けて、知的障害を持っていて路上生活をしながら売春をしている子を3人取材しました。ひとりは、「彼氏」と一緒にカラオケボックスで生活してる子。なぜその子を取材しようと思ったかというと、サイトで「車の中でフェラチオして2000円」という募集をしてたんですね。毎日何回かそれを書いていて、明らかに価格設定もおかしいのでアクセスしみたら、案の定、障害を持っていた。何度かアタックしてみたところ、その子の彼氏と称する男からサイトを通して直接電話がかかってきた。会ってみて驚きましたね。最初は、ヒモ男のように売春させてるのかと思ったんですが、本当にカップルなんですよ。カラオケで話をしたら、女の子のほうはかなり重度の知的障害で、ほぼ日本語が通じないというか語る気力もなさそうな感じで、そのうち彼氏の膝枕で寝始めちゃって(笑)。それでほとんど彼氏のほうに話してもらう取材になりました。僕、彼氏のほうも、障害を抱えていたんですか?鈴木 はい。10代のうちはヤクザ、20代はホストをやっていたという30代の男なんですが、精神障害者保健福祉手帳の取得者で、見た目からはわかりませんが、明らかに疾患を抱えている。衝撃だったのは、彼女が稼げないときは彼氏が稼いでいて、完全な信頼関係にあるんですね。財布も2人でひとつしか持っていない。セシルマクビーのリボンのついたデカい財布を2人で使っていて、「こんな共棲があるんだ」と思いました。とにかく、自分の認識の甘さを思い知らされましたね。知的障害にもいろいろな程度がありますが、グラデーションの濃い人は福祉が救っているはずだから路上には出てないだろうと、勝手に思ってましたから。障害を抱えた路上売春婦と彼女たちのゆるいつながり僕の調査の質問リストの中でも「精神疾患率」を追っています。まだサンプル数が足りないので統計が出せるレベルではありませんが、少なくともこれまでの調査では、3割前後の人の通院歴が確認できています。これは、こちらも統計的データとしては弱いのですが、『ルポ 若者ホームレス』(飯島裕子/ちくま新書)にて提示されていた、若い男性路上生活者の抱えている疾患率の規模と近い数字です。知的障害に関しても精神障害に関しても、家庭が機能していないところで育ち、教育機会も少なかった場合、自覚症状もなくて福祉に引っかからない人たちがいるわけですよね。鈴木さんの著書にもあるように、一度そうして「福祉からこぼれ落ちた」人が、「被害者」ではなく「加害者」の側に回ることで、ますます誰も手を差し伸べたがらない、アンタッチャブルな存在へとなっていく。鈴木 あとの2人は都心の某繁華街の立ちんぼ、というか「座りんぼ」で、2人組で取材しました。片方は療育手帳を持っていて、もう片方も認定は受けていないけど明らかに何かしらの障害を持っている子です。実は今回取材した3人とも、別々のルートでスカウトされて都内の最底辺のデリヘルに勤め、クビになっています。彼女たちがどうして売春を成立させられるのか不思議でしょうが、知的障害マニアのような男たちがいて、繁華街の路上に座ってると、頻繁に声をかけられるんですよ。「どこに住んでるの?」という訊き方で、要するに彼女たちが路上に住んで売春をしてることを前提に声をかけてくる。それを見越して、いろいろなマニアックな顧客のいる仕事のスカウトも狙ってきたりする。僕はいわゆる「立ちんぼ」はフォローしていません。ですから伺いたいのですが、都内の出会い喫茶で待機している人たちの横のつながりといえば、もともとの友人同士で参加する場合や、裏デリなどの場合を除けば、会ったら挨拶を交わすくらいで、連絡先を交換するまでにはなかなか至らない。多くの女性にとっては「早く抜け出したい場所」でしかないため、サークル的なものはほとんど形成されない状況でした。「立ちんぼ」のコミュニティは、どの程度のつながりなのでしょうか?鈴木 一緒にライブ通いやホスト通いをするような緩いサークル化はしているようですが、連絡先を交換するのは珍しい。逆に、自分は出会い喫茶がノーチェックなんですが、彼女たちにとっては連絡先は知らなくとも、そこに行けば知り合いに会えるという場になっているようですね。「食えなくなってきたから援デリで働こう、じゃあ●●にいる○○ちゃんに相談しよう」といったノリで。僕、確かにそれはありますね。それで十分事足りる、という。鈴木 ただ、彼女たちのつながり方について3名取材して思ったのは、別々に取材すると比較的おとなしいんですけど、一緒になるとキャラが全然違って、すごく粗暴になるんですよね。特に2人組のほうは、それが彼女たちの会話のペースなのかもしれないけど、ほとんど喧嘩腰みたいな大声でやり合っている。取材中にホームレスに怒鳴りかかったり、いきなり壁を叩きだしたり、すごく怖いんですよ。おそらく売春の中で男に痛い目に遭わされてきて、そういう経験から来る防衛で「粗暴な自分」を演出したり、なおかつ女の子同士のコミュニティの中でも「強い自分」を虚飾せざるを得ない部分もあると思うんです。そういう姿というのは、おそらくみんなが救いたいと考える「ありがとうございます」とおとなしく福祉を受けるような障害者像からはかけ離れている。今回彼女たちに接してみて、これほど理解されづらい「弱者」もいないだろうと思いました。