①DisabilitiesをDifferenceに読みかえる動き

最近、SNSで目にした、
Learning Differenceという言葉。


学習障害(LD)の従来の訳であるLearning Disabilities を、
学び方の違いや多様性、という言葉に読み替えようという動き
が、支持を集めているようです。

ディスレクシア(読み書き障害)の支援に先駆的に取り組まれてきた認定NPO法人EDGE
さんのHPでは、以前から以下のように記載されていました。

ーディスレクシアって?

LD(learning disabilities-学習障害)というよりは学習の違い(learning difference)とエッジでは捉えています


「障害」ではなく、学び方や発達の違い・多様性と表現することで、
①子どもがその子なりの方法で学び・発達する存在であること
②学び方の違いや多様性を知るべき、変わるべきは、子どもを取り巻く環境や人であること

の2つのメッセージを込められるって素晴らしいですよね。

developmental diffrence, developmental diversity ・・・・
学習障害だけでなく、発達障害全般やその疑いがあるすべてのお子さんの支援に必要な
読み替えとして、広がっていってほしいと思います。

また、学習という言葉を広義でとらえれば、可能な限り早い段階で、
個々の「学び方の違い」を見極めていく
支援が必要とされていると思います。

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(こてつんさんによる写真ACからの写真


②早期療育を通じて「学び方の違い」を明らかにする

私は普段、1歳代から就学前までの子ども達の早期療育を提供する機関の運営を通じ、
以下の3点を重視した支援を行っています。

①科学的エビデンスと、客観的な記録に基づいた支援をすること
②ひとりひとりの個性や特性に合わせたオーダーメイドの個別療育を提供すること
③親御さんにも療育のプロセスに積極的に参加していただくこと、

支援を通じて、子ども達が一人一人のやり方で、様々な発達をみせてくれること。
その点だけでも、早期療育は重要だと感じていますが、実は非常に大きな長期的なメリットは、

個別の「教える」やりとりの中で、お子さんの特性や得意な学び方を詳細に知ること

そしてそれを
親御さんや地域の支援者の方と共有できること
その結果、
親御さんとお子さんや、お子さんや他の支援者との相互作用がポジティブで
豊かなものになっていくこと


だと考えています。

③Learning difference に合わせた教え方

療育に関わる支援者には、その専門性をしっかり求めていく必要がありますが、
現状では、一人一人の「Learning difference」を見極める方法論やエビデンスが、
足りておらず、臨床的な専門知・職人技になりがちな状態です。
今後しっかり研究を進めていくべき領域だと思います。

当法人でも、テクノロジーを活用して早期からLearning difference を明らかにでき、 その後の様々なライフステージで活用できるようなシステムづくりの研究に、挑戦を始めています。
他にもいろいろな動き・研究が進んでいくと思いますので、引き続き注目していきたいところです!
オープンサイエンスに基づく発達障害支援の臨床の知の体系化を通じた科学技術イノベーション政策のための提言

現状はまず、療育の中での客観的な記録を基にしたPDCA(Plan-do-check-action)を
しっかり繰り返していくことが重要です。

例えば、
多くの人間のデフォルトのコミュニケーションは音声言語に偏りますが、

🎵動機づけ
❔意味づけ
📅見通し
👀視覚的な刺激
👂聴覚的な刺激
✋触覚や身体感覚を含む刺激

など、実際のコミュニケーションには、様々な刺激が含まれており、
お子さんに合わせて条件を微調整してあげることが重要です。

👀音声の指示は理解ができないが、視覚的に「文字」で示すと一発で理解できるお子さん
❔ひらがなだけの習得は出来ないけれど、イラストで「意味づけ」をしてあげると
すぐに覚えられるお子さん
✋「コップ」と言われても選べないけれど、「コップごくごく」というオノマトペを
加えると途端に理解できるお子さん
💛スプーンでのスポンジ運びには指一本触れなかったけれど、スプーンでおやつを食べる
練習に変えたとたん1日でできるようになったお子さん
📅スケジュールやポイントカードなどで見通しを示すと途端に落ち着いて学べるお子さん、
その逆で、様々な刺激がランダムに出てくるほうが落ち着けるお子さん

などなど、、、
一人一人に合わせて少しずつ刺激の条件を変え、それによりお子さんの
反応がどうだったか、を客観的に観察すること。こういった支援の繰り返しにより、
学習が進んでいく子どもたちをたくさん見てきました。


このような学び方の違いを早期から知っておけば、

「そろそろ行事だけど動画を見せて少し予習してから参加したほうがいいかな」
「登園後の準備の練習に、文字のスケジュールを使ってもらえるよう提案してみよう」
「漢字の学習が始まるから、好きな新幹線の駅名と絡めて教えるのはどうかな」

など、その後の子育てにも、支援においても、役立てることができますよね。

一人一人のLearning differenceを見極めて、その後の人生に役立つ知見
として活用していくこと、が早期療育に求められる大きな役割だと思います。


④実践に基づくエビデンスでつながる早期支援エコシステム

2019/12/1(日)に、私たちが現在取り組んでいる早期療育の全国実装プロジェクトの集大成
となるシンポジウムが開催されます。

http://www.adds.or.jp/912

昨年も300名が参加して下さったボリューム満点の会で、お茶の水大学神尾陽子先生、慶應義塾大学山本淳一先生による招待講演では、世界最先端のエビデンスに基づいた療育支援のお話が伺えます。

療育のPDCAの繰り返しの中でみえてくる、個々のLearning differenceにあわせた支援を
どうエビデンスとして蓄積し活用していくか、などなど、大変重要なテーマでの
パネルディスカッションも。

午後には、現場の支援者の方々が、
Learning differenceに合わせてどういった支援を行い、その結果どうなったかについての事例研究の公開発表。文字の教え方、見通し理解の支援、要求の教え方など、興味深いテーマばかりです。

千葉、横須賀、徳島など、多様な地域での実践報告や、最先端の療育支援アプリAI-PACやロボットによる人材研修体験ブースなどもあります。

そして、これらの個々の
Learning differenceを重視した療育を、地域政策としてどのように広げていけばいいのか、もパネルディスカッションします。

1日で、たくさんの学びを得て頂けますので、今回の記事に興味を持って下さった方はぜひ。

お申し込みフォームはこちら!〆切は11/28です。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfZ2iG6drWz2VvMFA7YfXIm2AA6KIQhv9k2mukU6rciuKquSA/viewform

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