(KID D の独り言)

ベックの全作品の中で、最も美しいアルバムといっていい素晴らしい作品だと思います。

いま最も注目集めているアーティストの1人、デンジャー・マウスをプロデューサーに迎えて作られた
2年ぶりのアルバムです。60年代のサイケ、フォーキーな歌、そしてモダンなビートが詰まった1枚です。その中でもサイケ色の強さが、このアルバムの大きな特徴となっています。

そして、もう1つの大きな特徴は・・・

とにかく曲がいいし、歌がいいです!!
メロディー・メイカーとしてのベックの凄さ、シンガーとしてのベックの凄さを改めて再認識しました。・・・改めてと言うか、今までになく認識したといって方がいいかもしれません。
60年代のサイケというと、ある種楽天的なムードを持ったものも多いのですが、ここで聴けるベックの歌とメロディーは、シニカルでありながらオープンでもあるという・・・ベックの魅力が最高の形で現れているものだと思います。

とにかくシンプルで美しい作品になっています。

どうしてここにきて、これだけシンプルで美しい作品が作り上げられたかというと「グエロ」の存在があると思います。
前々作にあたる「グエロ」でベックは、いままで封印していた「オディレイ」サウンドを解禁しました。ベック自身が当時のインタビューで語っていたとおり、それまでのベックは、ベックの代名詞ともいえる代表作「オディレイ」的なサウンドを避けて作品を作り続けていました。そこには、同じことをやりたくないという意志、1つのイメージで見られたくは無いという願望があったのだと思います。
しかし、「グエロ」によって、ベックの代名詞といえる「オディレイ」サウンドは解き放たれ、ベック自身が科していた音楽的なタブーが無くなったといえるのだと思います。

「グエロ」の次作「ザ・インフォメーションズ」は、実質上「グエロ」と同時期に作られたものなので、この2作がリリースされてから、最初の作品がこの「モダン・ギルト」なのです。
それは「オディレイ」の呪縛から解き放たれた最初の作品といえるかもしれません。

つまり、まっさらな状態で作り上げた、自由な状態で音楽に向かい合った作品が「モダン・ギルト」なのではないかと思うのです。

ベックという人は、基本的に駄作というものが無い人ですし、どの作品に深いテーマと優れた音楽性が詰まっていると思うのですが、どこか「これがベックだ!!」と思わせるものが無かったような気もします。それこそ「オディレイ」以降のベックは。
「これがベックだ!!」というよりは、「これもベックだ!!」という印象を受けていました。

しかし、今回の作品は「これが今のベックなんだ!!」という力強い表現が詰まっている気がします。

こういった事が、この作品にシンプルな印象を与え、美しさをもたらしているのではないかと思います。


試聴→ MySpace

01.ORPHANS
いままでのベックらしさを感じさせつつ、どの作品よりもサイケ色が強く美しいアルバムになっていることも予感させるナンバーです。それと同時に、どこか憂鬱な表情のベックのヴォーカルも印象に残ります。キャット・パワーのヴォーカルもいい味つけになっています。

03.CHEMTRAILS
思いっきりサイケしていますね。淡いメロディーが美しく印象的なナンバーです。
この曲って、ちょっとシューゲイザーっぽいですよね。細かなアレンジを抜いて、轟音ギターをかぶせたらシューゲイザーになりますね(笑)。
儚いメロと歌い方がそういった印象をもたらしているのだと思います。

04.MODERN GUILT
ここまで60年代サイケなメロディーを歌うベックというのも珍しいですね。
67〜69年頃のロックの作風なのですが、それをしっかり現代風にしているのはさすがベック!
中盤は、特にいい曲が詰まっていますね。

05.YOUTHLESS
3,4曲目と比較すると、幾分かベックっぽさが前面に出たメロディー&ビートの楽曲です。
こういう今までのベックっぽさを残したメロディーの曲を聴くと、いかにシンガーとしての表現力が成長していっているかを感じますね。もうベテランの域に入ったと言ってもいいベックが、こうやって成長を続けているということに勇気をもらいますし、感嘆します。

06.WALLS
この曲も60’Sサイケ・ロック色の強いナンバーですね。
サウンドはしっかりモダンなものになっていますが、楽曲の骨格の部分は60’Sサイケデす。
それにしても、メロディー・メイカーとしてのベックの才能を思い知らされますね!素晴らしく美しいナンバーの1つです。

07.REPLICA
この曲はユニークなビートが印象的ですね。
それと同時に甘美で儚い美しさを持ったサウンドも印象に残ります。

08.SOUL OF A MAN
サイケ&エレクトロな感覚も持ったブルース・ロック・ナンバーです。
こういうモダンな部分とヒップな部分の融合は見事ですね。ベックならではのセンスと才能を感じさせてくれます。

09.PROFANITY PRAYERS
比較的アッパーな曲ですね。このアルバムの中では。
この曲に限らずですが、それなりの情報量を詰め込んでいると思うのですが、凄くシンプルですっきりとした印象があります。

10.VOLCANO
ラストのこの曲も素晴らしいです!!
どこか疲れたようなベックのヴォーカルも凄みを感じさせますし、メロディーやサウンドの美しさも最高です。エレクトロニカなビートもサウンドの美しさをひき立てています。

なんだか、ビートルズを解散した後のジョン・レノンの、どこか疲労感を感じさせる歌と、シンプルで力強く美しい・・・そんな作品と重なるような気がします。


Modern Guilt
Modern Guilt [Analog]