個別株主通知の判例です。
結局、この判例によれば、個別株主通知と申立の順序は逆になってもよいが、個別株主通知は、株主総会から20日以内に、しなければならないようです。
ただ、言っていることに若干矛盾があるように思います。
要するに、法の趣旨は、

株主名簿によって株主が誰かを把握できるわけではない
 ↓従って
少数株主権の行使は、株主名簿の記載又は記録にかかわらず、振替口座簿の記録又は記載に基づき行使することにした

というものですよね。
すると、この趣旨に照らせば、「個別株主通知が後になされることによって、株主であることが判明した場合には、少数株主権の行使を否定する根拠はない」ことにならないでしょうか?


東京地裁平成21年11月13日、裁判官小濱浩康
「振替制度の下では、会社が、株主として権利行使すべきものを確定する目的で一定の日を定めた場合、振替機関は、会社に対して振替口座に記載されたその日の株主の氏名等を速やかに通知(総株主通知)し、総株主通知を受けた会社は、通知された事項を株主名簿に記載又は記録し、その株主に権利行使をさせることになるため(振替法151,152)、株主名簿の名義書換が随時なされるわけではなく、会社においては、株主名簿によって株主が誰かを把握できるわけではない。そこで、振替法は株主が会社に対し、会社法124条1項に規定する権利を除いた株主の権利(振替法147条4項所定の少数株主権等)を行使しようとするときは、株主名簿の会社その他の第三者に対する対抗力を定めた130条1項を適用しないと定め、(振替法154条1項)、株主が口座管理機関を経由して振替機関に対し、自己が所有する振替株主の種類、数、その増加又は減少の記録又は記載がなされたときは、増加又は減少の別、その株及び当該記載又は記録がされた日、その他主務省令(社債株式等の振替に関する命令25条、20条)で定める事項を会社に通知するよう申し出なければならず(振替法154条3項4項)、株主は、振替機関から会社に対してその通知(個別株主通知)がされた後4週間が経過する日までの間に権利を行使しなければならないと定めた(振替法154条2項、施行令40条)。このように、振り替法が個別株主通知の制度を新たに創設し、少数株主権の行使は、株主名簿の記載又は記録にかかわらず、振替口座簿の記録又は記載に基づき行使することにした趣旨に照らせば、株主名簿に記載されている株主であっても、個別株主通知の制度において必要とされる手続きを経なければ、会社が少数株主権の行使を認めた場合を除き、少数株主権等を行使することができないと解するのが相当である。」
ところで、会社法172条1項に基づく全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立は、少数株主権の行使に該当するから、申立人は、個別株主通知がされた後4週間が経過する日までにしなければならない。もっとも、上記で説示したところによれば、個別株主通知は、少数株主権等の行使の際に自己が株主であることを発行会社に対して対抗するための対抗要件であると解すべきであるから、有効な個別株主通知を欠く状態で全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立がなされた場合であっても、直ちに当該申立が不適法となるものではなく、発行会社が申立人の対抗要件の欠缺を争わない場合や、申立期間中に追完された場合には、対抗要件が具備されたものとして、当該申立は適法となるものというべきである。」