サザビーリーグ申し立てました。平成23年ヒ85号です。

 ところで、サザビーは、清算価値を下回る疑いのあるMBOですね。
 清算価値を下回ることは、そもそも理論的に可能なのでしょうか?
 解散決議によって容易に得られる価値について、客観的価値+期待権がこれを下回るというのは、これはおかしいのではないのでしょうか?
 是に対して、企業はゴーイングコンサーンなのだから、そのような期待はそもそもできないのだ、というような反論もあるようです。しかし、MBOの場面というのは、株式を強制取得される場面であって、未来永劫に権利を失うのですから、株主にとっては、解散と何も変わりません。このような場面でゴーイングコンサーンだから、というのは、詭弁ではないでしょうか?
 また、清算価値を下回る場合には、そもそもMBOにより株式を強制取得することが正当化されるのか、ということですね。経営改革をしても解散価値を上回れないのであれば解散すべきですね。そもそも強制取得そのものを認めるべきでないです。
 また、何とかの一つ覚えのように、市場でつけた価格だから正しいのだ、という意見もあります。こういう場合の市場価格というのは、決まって1ヵ月とかの短期間のものです。挙句の果てに、市場価格より2割も高く買ってやるのだから、株主にこれ以上の利益を与える必要はないなどと妄言を吐いたりします。しかし、例えば、レックスは、所有期間2年を超える株主にだけ、ワインを贈呈していました。株主平等に反する危険を冒してまでこのようなことをするのは、企業側が、2年あるいはそれ以上の長期にわたって株式を保有して欲しいと考えているからではないでしょうか?にもかかわらず、株式を強制取得する場面についてだけ、株主全員がデイとレーダーであるかのようなロジックを使うのは、矛盾しているような思います。
 また、市場価格は、客観的価値を現すものであっても、これに期待権を加算した公正な価格と直接結びつくものではないですね。市場価格がいくらだから、公正な価格も幾らなのだというのは、論理に飛躍があると言わざるを得ません。
 あと、キッャシュリッチ企業がMBOする場合に限って清算価値を算出せずにMBOしていますが、これは、価格の決定だけではなく、取締役の責任が生じる可能性が高いと思います。

 次に、清算価値は上回るが、簿価を下回る場合です。
 この場合、簿価を下回る企業は沢山あるだの、清算すればそんな値段にはならないだのと言われます。これは確かにそういう面もあります。しかし、簿価は基本的に過去の投資額を現すわけですが、100万円投資して商売をやって、一年後に100万円にしかならないのであれば、商売をやる必要はありません。株式会社は営利を目的とする企業であり、過去の百万円が現在も百万円であるなら、そもそも開業すべきでないということです。
 このようなことを考えると、時価が簿価を下回る場合、役員は怠慢であると言わざるを得ません。時価が簿価を下回るのであれば、まずは時価が簿価を上回るように努力すべきなのであって、時価が簿価より低いことを奇貨として、株主の株を安く買い集めるべきではないですね。
 このことは同時に、パラドックスも生じることになります。
 役員としての義務を果たして、時価を簿価より上げた役員はMBOをしても大して儲からないのに対して、役員としての義務を果たさず、時価を簿価より下げた役員はMBOによって大もうけをすることができることになります。
 現在の裁判所の基準では、放漫経営を奨励することになります。