220111非弁?対弁護士法人判決
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 令和元年ワ22093 42部 令和元年8月16日提訴 42部
原告 S 
被告 弁護士法人サラブレッド法律事務所(令和3年6月23日清算人選任、みとしろ法律事務所、中西哲夫)
 反訴 令和3年ワ10692
10月6日13時10分判決 


10月6日判決
1 原告の本件請求を棄却する。
2 被告の反訴請求を棄却する。
3 本訴事件の訴訟費用は原告の負担とする。
4 反訴事件の訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求の趣旨
1 本訴
被告は、原告に対し、1億0960万円及びこれに対する令和元年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
2 反訴 
  原告は、被告に対し、2億円及びこれに対する平成24年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 本件事件は、原告が、被告が負担すべき広告費等の支払に宛てるため、1億0960万円を被告名義の預金口座に入金したことが事務管理にあたると主張して費用償還請求権として、1億0960万円及び訴状送達日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事件である。
 反訴事件は、被告が、原告が平成23年1月から同年12月にかけて被告名義の預金口座から手数料の名目で、2億1070万0516円を不当に取得したと主張して、不当利得返還請求権として、その一部である2億円及びこれに対する最終不当利得日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め他事案である。



第3 当裁判所の判断
1 認定事実

2 争点1(本件送金について、原告の事務管理に基づく費用償還の可否)について
(1) 前記認定事実によれば、原告は、Kとともに、出張相談会や広告を用いた被告の債務整理事業を実質的に運営し、同事業の総売り上げから消費税相当の5%を控除した額の50%に及ぶ手数料を取得していたこと、平成23年から平成25年までの3年間に原告が取得した手数料は、総額4億7000万円に上り、原告は、同事業により莫大な利益を得ていたことが認められる。特に、高額な出張相談会用の広告費(原告が平成24年8月から平成25年9月までの間の約1年間に補填した額だけでも1億円に上る(認定事実(2)イ))を被告が負担することとなった平成23年8月以降は、原告が得る利益は、被告が得る利益(総売り上げから広告費や原告の手数料等の経費を控除したもの)よりも相当多かったものと推認される。
 また、原告とKが平成23年12月までに行った本件不正出金の額(7070万円)は、本件入金のうち平成24年8月1日から平成25年6月3日までの入金額(7010)万円に相当し、本件入金額の約7割を占める。そうすると、平成24年8月以降、渋谷支店口及び恵比寿支店口口座の残高が減少し、広告費の資金が不足するようになった主な原因は、原告とKの本件出金にあると認められる。
 これらに加え、原告は、出張相談会用の広告費の資金が不足しているとか、これを補填するために原告が一旦建替えるといった報告を加藤にすることなく1億0960万円もの本件入金を行ったこと(要件事実(2)イ)、原告は、平成26年4月頃に被告を退所したが(前提事実ウ)、平成29年に被告から7070万円の不正出金について損害賠償請求訴訟を提起されるまで、長期間被告に本件入金の返還を求めなかったこと(弁論の全趣旨)などからすれば、原告は、本件不正出勤により不足することとなった広告費等の資金を補填し、債務整理事業を係属させることで、本件不正出金が加藤に発覚するのを回避するとともに、自らが多額の手数料を取得し続けることを目的として、本件入金を行ったものと認める野が相当である。そうすると、原告は、自分のために自分にとって必要なことをしたにすぎないと言わざるを得ず、本件入金が、「義務なく他人のために」(民法697条1項)行われたと評価することはできない。

(2) これに対し、原告は、平成23年8月以降は、出張相談会用の広告費を被告が負担する旨の合意があり、原告において広告費を負担する義務はなかったから事務管理が成立する旨主帳する。
 しかし、前記(1)で説示したとおり、原告は、Kとともに7070万円もの本件不正出金をしたことで出張相談会用の広告費の資金不足を招いたのであるから、条理上、原告において広告費を負担すべき義務がなかったと評価することはできない(この義務は、原告が本件不正出金をしたこと自体により発生する損害賠償義務とはその根拠や性質を異にするものであり、原告が不正出金について別途損害賠償義務を負うからと言って、原告が広告費を負担すべき義務がなかったということはできない。)。
 また、渋谷支店口座及び恵比寿支店口座の残高が減少し、出張相談会用の広告費の資金が不足するようになったのには、本件不正出金のほか、出張相談会の集客数が減り、被告の売り上げが減少していたことも影響していたと認められるが(認定事実(2)イ)、そもそも被告が平成23年以降上記広告費を負担するようになったのは、出張相談会により集客数が増え、被告の売上が伸びていたからであり、もともとは原告が出張相談会用の広告費を負担することを前提に出張相談会が始まり、同年7月頃までは原告が当該広告費を負担していたこと(認定事実(2)イ)からすれば、出張相談会による集客数が減って被告の売上が減少し、かつ、原告に建替えてもらわなければ、被告が広告費を支払えないような場合にまで、被告において、自己の出捐により広告会社に出張相談会の広告を委託する意思があったとは考え難い。原告が、加藤に対し、出張相談会用の広告費の資金が不足していることやその原因を説明すれは、その時点で、被告は出張相談会用の広告を打ち切るか、あるいは原告が
広告費を負担することを条件に当該広告を継続することとし、その後の被告の広告費の支払が不要になる可能性も充分に考えられたのに、原告は、加藤に何ラ相談することもなく、前記(1)で説示したとおり、自らが多額の手数料を取得し続けること等を目的として、本件入金を行ったのであり、これを「義務なく他人のため」に行ったものと評価することはできない。
3 争点2(本件手数料取得について、被告の不当利得返還請求の可否)について
(1) 戦記前提事実によれば、原告は、同人が関与した債務整理事業の売上から消費税相当額である5%を控除した金額の50%を手数料として支払を受ける旨の被告との合意(本件手数料合意)に基づいて、Kが別表1のとおり渋谷支店口座及び恵比寿支店口座から出金した金員を、手数料として受領していたものと認められ、本件手数料取得が、原告の不当利得にあたるとは認められない。
(2) これに対し、被告は本件手数料合意の存在を否定するが、原告は、平成20年9月から平成26年4月末までの間、被告の事務所内に自己の作業場所を与えられ(認定事実(1)イ)、出張相談会や広告を用いた被告の債務整理事業を実質的に運営し、多額の売上を上げていたものと認められるのであり、原告が、被告から何らの対価も約束されずに、上記のような業務を行っていたとは考えられない。しかも、本件合意に基づいて原告が受け取る手数料の額を計算するために作成された精算書は、原告が退所した後も、被告の事務所内に保管されていたこと(認定事実(1)エ)や、Kが、原告の手数料を支払うために恵比寿支店口座から別表1のような多額の出金をする際には、加藤から届出印(加藤の実印)を借りていたと推認されること(認定事実(1)ウ)に照らすと、原告に手数料が支払われていたことを加藤が全く知らなかったとも考え難い。 
 しがって、本件手数料合意がなかったという被告の主張は採用できない。

(3) また、被告は、原告が手数料を得るために債務整理事業を行うことは非弁行為であり、本件手数料合意は無効であるから、本件手数料取得は不当利得になると主張する。
 しかし、原告は、広告会社への対応、コールセンターを使った電話による顧客の勧誘、相談者への電話や書面の送付、債権者との打合せ、依頼者への報告や過払い金の送金など、債務整理事業に係る事務の全般を担当していたが(認定事実(1)イ)、依頼者から受任する際の面談や債権者との和解交渉、裁判対応は、加藤や被告の所属弁護士が行っていた(認定事実(1)ア)。そうすると、原告が弁護士法72条所定の法律事務を直接取扱っていたとまでは認められない。
 ま、仮に原告の業務が非弁行為に該当するとすれば、被告は、原告に非弁行為を委託する対価として本件手数料合意をしたことになるのであり、本件手数料合意に基づく原告の本件手数料取得は不法原因給付(民法708条)に当たり、被告は返還を請求することができないというべきである。
第4 結論
 以上によれば、原告の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却することして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事42部 
       裁判官 関隆太郎