220613農業アイドル自〇事件判決文
https://youtu.be/rLiE2lpPd64

平成30年ワ37265 17部
原告 父・母、姉、弟、代理人 佐藤大和、向原栄大朗、安井飛鳥、河西邦剛、望月宣武

被告 Hプロジェクト、社長、О、T、、代理人 渥美陽子、松永成高、宮西啓介、宮本祥平、

萌景 ほのか

※ 同僚らの陳述書はこちらです
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/66186229.html


原告 被告 判決
過酷な労働 あり なし なし
違約金1億円発言 あり なし なし
進学資金の貸付 撤回 留保 留保
被告の行為との因果関係 あり なし なし


主文 
請求棄却


当裁判所の判断
1 認定事実
(1)〜(4)略
(5) 萌景が自死する経過について
ア 母は、平成30年3月20日頃までに、被告Tに対し、萌景の生活態度がよくないことや、萌景が契約は更新せず、城南高校の学費に充てる被告会社からの借入金は、アルバイトをして返せばいいと述べていること、母から萌に対し、お金を借りて契約更新しないのは人としてどうなのかという趣旨の話をしていること等を伝えた。これに対し、被告Tは、萌景に対して説教をしても良いかを尋ねたところ、母はこれを了承した。
イ 萌及び母は、平成30年3月20日午後4時頃、高校進学費用の残りの12万円を借りるために、被告会社の事務所を訪問した
 被告Tは、同事務所の応接室において、母の同席の下、萌景に対し、門限の10時を守っておらず、帰宅時間が遅いことなどの生活態度の問題点を指摘して注意した。萌景は、被告会社との契約期間が終わったら、本件グループを辞めるがそれまでに研修生を自分のレベルまで上げること、借りたお金はアルバイトをして返すこと等を話したとから、被告Tは、今辞めることを考えるべきではなく、他に考えることがあることを指摘し、中途半端な考えの人にはお金を貸せないと強い口調で述べて、萌景に対して12万円を交付しなかった。萌景は、落ち込んだ様子で、被告事務所から退出した。
 萌景及び母は、弟が待つゲームセンターまで車で行きその後、萌景はゲームセンターから一人で帰宅した。

ウ 萌景は同日午後5時22分ころから午後6時15分頃までの間、自らのスマートフォンで、「簡単に死ぬ方法」などの自死に関するウエブサイト及び「中卒で取得できる資格一覧」に関するウエブサイトを閲覧した。
 
エ Tは、同日六時頃、自宅にいた被告社長に電話を掛けて、萌景に注意をして12万円をその場では交付しなかったことを報告した上で、後に萌景から社長に連絡があるはずであること、社長の自宅に12万円持参するから、本日中に萌景に渡すように伝えた。その後、Tは、社長の自宅に12万円を持参した。
オ 母、同日午後八時頃に帰宅したが、その際、萌景は、玄関先で彼氏と一緒にいた。その後、萌景、彼氏及び母は、萌景の部屋に行き、萌景の今後について約二時間に渡って話し合いをした。この話し合いの中で、母は、萌景に対して、高校への進学をあきらめるように勧め、萌景は、城南高校への進学をあきらめることになり、本件グループも辞めるとの話題も出た。その後、萌景は、彼氏の自宅に止まりに行った。
カ Tは、午後9時32分に社長に電話したところ、萌景からの連絡はないとのことだったので、同日午後9時34分、母に電話し、萌景自ら社長に連絡するように伝えるとともに、貸付予定の現金12万円は用意しているが、萌景には話さないように言った。
キ 萌景は、同日午後9時45分から50分頃にかけて、友人に対し愛の葉でいろいろなことがあり、城南高校への進学を辞退する旨のメッセージを送信した。
ク Tは、同日午後9時59分ごろ、母に対し、「どういう話になったか、できれば10時半までにご連絡ください」とメッセージを送信し、母は、萌景から社長に連絡させると返信した。母は、同日午後10時23分ごろ、Tに電話し、その際、Tは萌景から社長に電話をするように再度伝えた。
 同日午後10時半頃、母と社長は電話で話した。その際、社長は、萌景に貸す予定だった12万円は自分が持っているので、萌景に社長に電話するように母に依頼した。その後母は、同日午後10時48分から同時58分までの間、萌景に対し、社長に急ぎ電話をするようにメッセージを送信し、萌景は「はい」と返事した。
ケ 萌景と社長は同日午後11時8分頃から、3回に分けて合計20分に分けて電話で話をした。また、萌景と母は、同日11時25分ごろ、2分に渡り電話では話をした。その後、萌景とTは、午後11時30分頃、約8分に亘り電話で会話をした。

コ 萌景は、平成30年3月21日午前7時31分、彼氏母に対し、城南高校への進学を辞退する旨をLINEで伝えた。
サ 萌景は、同日午前8時2分ごろ、母に対し、LINEで、「どうやっていく・・・?」とメッセージを送信し、これに対し母は、「どこに」、「定時か通信にしたんやろ?」と返信した。萌景は「そや」と返信し、さらに、当日、本件グループのイベントが行われる場所を送信したことから、母は、自転車でいけばいい旨回答した。
 さらに、母は、同日午前8時48分頃、萌景に対して、「制服キャンセルでいいんやろ」?とメッセージを送信し、これに対し萌景は、「うん」と返信した。その後、原告母は、同日午前9時58分ごろ、萌景に対し、「高校には必ず電話」、「まためんどうになるよ!やることやらな」とメッセージを送信したが、萌景がこれを見ることはなかった。
シ 萌景と彼氏は、彼氏母の運転する車で彼氏の自宅から車で萌景の自宅に向い、萌景は帰宅した。その後、彼氏は、城南高校の合格者説明会に参加した。萌景が帰宅した後、萌景は、リビングで、母や弟と過ごしていたが、同日午前9時40分頃、母、父、弟がゲームセンターに出かけたため、その後、萌景は自宅で一人となった。
ス この間、被告Оは、同日午前9時23分頃、萌景に対し、LINEで、城南高校の合格者説明会が終わったら電話するようにメッセージを送信した。これに対し萌景は同日9時32分ごろ、「学校に行かないことになりました。」と返信した。その後、Оは、午前9時34分ごろ、萌景に対し、電話を掛けて1分間ほど電話をした。
セ 萌景は、同日午前9時40分ごろ、自身のスマートフォンで、自死の方法に関するウエブサイトを閲覧した。
ソ 萌景は、午前9時48分頃ね彼氏や友人に対し、「いつもありがとう」なとどメッセージを送信した。
タ 萌景は、その後、自宅で首をつって自死した。

2 争点1(本件一連の行為が違法行為又は安全配慮義務違反に当たるか)について
(1) 原告らは、本件一連の行為、すなわち、被告らが、➀本件グループで過重な活動等をさせて、萌景を正常な認識等が著しく阻害さされる精神状態にさせ、Tが萌景に対する高校進学費用12万円の貸付を撤回し、社長が本件グループを辞めるなら1億円払えという趣旨の発言をしたという一連の行為が違法又は善管注意義務に違反し、これにより萌景が自死を選択せざるを得ないほど強い精神的負荷を受け、自死に至ったと主張する。
(2) そこで、まず、萌景の本件グループでの活動について検討する。
ア 前記1(2)の認定事実によれば、本件グループの平成29年4月から平成30年3月までの活動の状況は、大要、別紙エンゼルタッチ記載一覧のとおりであるところ、時期によって繁忙度が異なるものの、概ね、1週間のうち、平日3日間の夕方から午後9時ないし10時頃までにレッスン等を行い、土曜日、日曜日及び祝日にイベント等を行っているが、土日祝日においてもイベントのない日もあり、また、これらの活動時間には休憩時間が一定程度含まれていることが認められる。
 萌景は、平成30年当時は本件グループのリーダーであり、上記活動時間以外にも、被告会社の関係者やメンバーと連絡を取り合うなどの付随的な活動を行っていたことは認められるが、その連絡の内容を見ても、萌景が精神的な負担を感じていたことを窺わせるものではなく、本件グループにおける活動時間及びその内容が萌景にとって精神的負荷を受けるほどに過重であたとまでは認められない。
イ また、萌景は、母屋社長に対し、本件グループを辞めたい旨述べることはあったことが認められるが、このような意向が恒常的に示されていたわけではなく、苦楽を伴う本件グループの活動中に感じた消極的な感情をその都度表現していたという域を出ないというべきである。
ウ 原告らが指摘する被告О等の萌景に対するメッセージについては、確かに「マジでブン殴る」、「お前の感想いらん」といった強い文調で粗野な表現が含まれているものの、他方で、そのような表現の後に絵文字が含まれていたり、具体的な指導内容が述べられているものもあり、メッセージ全体を通してみると、本件グループの活動に関して、萌景を叱咤して奮起を促す趣旨と解される。そして、これらのメッセージは、遅いものでも萌景が自死した平成30年3月21日から2か月以上前に送信されており、被告Оなどのメッセージにより、平成30年3月20日頃、萌景が精神的に追い詰められていたとはいえない。
  その他、原告らが指摘する守秘義務も、前記1(1)の認定事実によれば、被告会社や取引先に関する営業活動上の機密事項を対象としているものといえ、萌景が家族等に対して本件グループにおける活動について相談することを制限するものとはいえず、ペナルティに関する規定もその適用が実現化したとはいえないことからすると、萌景と被告会社との間で締結されたタレント契約等の契約条項によって萌景に具体的な不利益ないし精神的不負担が生じたとも認められない。
エ そして、自死の前日以降の事実経過において、萌景が本件グループの活動に精神的負担を感じていた事を示すLINE等のやり取りが見当たらないことも併せ考えると、萌景が本件グルーブでの活動により、正常な認識などが阻害される程度の強い精神的負荷がかかっていたとは認められない。
(3) 次に高校進学費用12万円の貸付に関するやり取りについて検討する。
ア 前記認定事実によれば、萌景は、平成30年2月頃、既に松山東高校を退学し、交際相手の彼氏と同じ城南高校に進学することを楽しみにしており、進学費用については、母や父から協力を得られず、消費者金融からの借入等も模索する中で最終的に被告会社から借入れを受ける予定であったところ、同月20日午後4時頃、被告Tから同月21日が納入期限であった城南高校の進学費用の12万円を貸すことができないと伝えられて、落ち込んだ様子であり、その直後である同日午後5時22分頃からインターネットで自死の方法を調べていたことが認められる。このような事実経過からすると、萌景は、被告Tの発言を相当程度重く受け止めていたことは否定できない。
イ しかしながら、被告Tは、母から萌景の生活態度等について相談を受け、母の了承を得たうえで、萌景に対し、母から聞いていた萌景の生活態度や考え方の問題点を指摘して、そのような考えでは12万円を貸し付けることはできない旨を伝えたものであることからすると、考え方を改めれば、再度、貸し付て貰える余地があることは、Tの発言からも十分に認識できたといえる。そして、被告Tは、現に、萌景及び母と話した直後に、準備していた12万円を被告社長に渡しており、その後も社長から母に対し、複数回にわたり萌景から被告社長に連絡するように伝えていることからも、被告Tは、母からの相談を踏まえ、萌景に反省させた上で社長から萌景に貸付金を交付させる意図を有していたことは明らかである。
 そうすると、本件における被告Tの対応は、原告母かの相談内容を踏まえて、原告母の了承を得た上で、萌景に対して生活態度や考え方を改める用指導する趣旨で行たものということができ、その後の被告Tの言動も踏まえると、12万円の貸付についても一時的に留保する趣旨で、これを交付しなかったものということができる。そして、被告Tによる12万円の貸付が留保される以前に、萌景が自死する可能性があったことを伺わせる具体的な兆候も何ら現れていないことからすると、Tによる貸付の留保は、萌景がこれを重く受け止めた面はあるものの、その客観的な態様に照らせば、母の了解を踏まえた指導の範疇を超えるものであるとは認められない。

(4) 最後に、被告社長による違約金に関する発言の有無について検討する。
ア 原告らは、社長が平成30年3月20日午後11時頃、萌景に対して本件グループを辞めるなら違約金1億円を支払えという趣旨の発言をした旨を主張する。
イ 確かに、前記認定事実によれば、彼氏も同席した同日の萌景と母との話し合いの結果、萌景が城南高校への進学をあきらめるとともに、本件グループを辞めるることが話題になっており、また、彼氏母が萌景を自宅に送る車内で、萌景が被告社長から本件グループを辞めるなら1億円を支払えとと言われたと述べていた旨の彼氏及び彼氏母の供述等はある。
 しかしながら、被告社長は、萌景が死亡した直後から一貫して、違約金として1億円を支払えとの発言をしたことについては、明確に否定する供述をしているところ上記の彼氏及び彼氏母の供述等の他に社長から上記発言がされたことを的確に示す証拠はない。また、彼氏及び彼氏母の供述等によっても、被告社長がいかなる経緯ないし文脈で上記の発言をしたかは具体的に明らかではない。
 むしろ、前記1(5)の経緯に照らすと、当時の萌景と関係者とのやり取りは、城南高校への進学の可否が中心になっており、萌景が同日午後9時45分頃に友人に送ったメッセージにおいても、城南高校への進学を辞退することが伝えられているものの、萌景が本件具ルーフを辞めることは伝えられておらず、萌景自身も、平成30年3月21日朝の母とのLINEでのやり取りの中で、何らの前置きもなく、同日開催される本件グルーブのイベントに出席することを前提とするやり取りをしていることからすると、当月20日の萌景と社長の電話において、本件グループからの脱退やそれに伴う違約金が1億円であるとのやり取りがされたというのは、不自然な面があることは否定できない。また、萌景は、同月21日、彼氏母の運転する自動車で帰宅した後、リビングで母と一緒にいたのであり、母が出かけるまでの間に、母に被告社長から発言された内容について話す機会があったのにもかかわらず、母に対して、社長から違約金1億円を払うように言われた旨の話は何らしていない。
 そうすると、平成30年3月20日の彼氏も同席した萌景と母との話しあいにおいて、本件グループを脱退するとが話題になっていたとしても、その後の社長との話において、萌景が本件グループを辞める話が出ていたかどうかについては、疑問の余地があるといわざるを得ない。萌景としては、上記20日の彼氏も同席した母との話し合いの席で、萌景が本件グループを辞めるという話題が出ており、社内には彼氏もいたことから、前日の話し合いの内容と辻褄を合わせつつ、城南高校への思いを整理するために、被告社長から本件グループを辞めるなら違約金として1億円を支払えと言われたとの強い表現をした可能性も否定できず、上記彼氏及び彼氏母の供述等をもって、被告社長が萌景に対し、本件グループを辞めるなら違約金を1億円を支払うよう発言したと認定することはできない。
ウ 以上によれば、被告社長が、萌景に対し、本件グループをやめるなら違約金1億円を支払えという趣旨の発言をしたとは認められない。
(5) まとめ

 以上によれば、本件一連の行為のうち、被告社長が萌景に足して本件グループを辞めるなら違約金1億円を支払えという趣旨の発言をしたとの事実は認められない。また、萌景が本件グループでの活動により、正常な認識等が著しく阻害される精神状態に追い込まれるほど強い精神的負荷がかかったとは認められず、さらに、被告Tによる高校進学費用12万円の留保についても、母の相談内容を踏まえ、同人の了承の下で行ったものであり、指導の範疇を超えるものとまでいうことはできない。そして、本件一連の行為(社長の違約金発言を除く)の全体を通じてみても、本件グループでの活動が前記(2)の程度にとどまり、萌景に強い精神的負荷がかかっていたとはいえないことからすると、その後の被告Tの発言をも一体のものとして考慮しても、これらの行為が萌景を自死に至らしめる違法行為又は全配慮義務違反に該当するものとは認められない。
 なお、戦記認定事実によれば、被告Tの貸付の留保直後に萌景が行ったインターネット検索では、自死の方法のみならず、中卒のみで取得できる資格を調べており、その時点では、萌景の心情が相当揺れ動いていたものと推認される。そして、萌景が母との話し合いで城南高校への進学をあきらめて自死に至るまでの間には、具体的な内容を証拠上確定することは困難であるが、母との相当程度に及ぶ話し合いの他、被告社長との複数の者との会話があり、翌朝には、母から萌景に対して、再度、城南高校への進学辞退を確認するメッセージの送信もされているところである。
 前記認定事実によれば、萌景は、当時付き合っていた男性が進学する予定であった城南高校への進学を楽しみにしていたものであり、被告Tから進学資金の交付を受けられなかった直後に自死の方法をインターネットで検索しており、その後、萌景と母の話し合いの結果、城南高校への進学をあきらめ、その翌日自死していることからすると、通信制高校を退学し、その後、入学準備をしていた城南高校への進学ができないと考えたことが、萌景の自死に少なからぬ影響を与えていたものということできるが、上記のとおり、萌景が城南高校進学を諦めた萌景と母の会話の内容やその後の萌景と社長らとの会話の内容は証拠上明確に認定できない上、萌景の自死に関して、遺書等の自死の理由か明確に表れたものは見当たらないことからすると、結局、萌景が自死を決断した直接的な契機を明らかにすることは困難であるといわざるを得ず、本件一連の行為(社長の違約金に関する発言を除く)により、萌景が自死に至ったということはできない。
第4 結論
以上によれば、その余の点を検討するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することしてて、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事17部
 裁判長裁判官 島邦彦
 裁判官 片山健
 裁判官 白井宏和 転補 島代理署名