北見 三浦綾子読書会

「北見 三浦綾子読書会」の案内や様子をレポートします。

(ちょっとだけ深読み『泥流地帯』「雪間 二」より)

 雪が残る畠に、拓一と耕作、そして権太の三人が、堆肥を小分けしているという、少し匂いのするような「雪間 二」の始まりです。耕作の人格形成において、権太の存在は欠かすことができません。主役級の劇的な何かをしているわけではありませんが、とてもいい味を醸し出しているのです。匂いのする始まりなのに、とても清々しいのです。

 曾山の家では国男が徴兵され、曾山も病身なので、耕作たち三人が畠仕事の前段階として堆肥の小分けをしています。決して楽な仕事ではありません。サツが「ほんとうにすまんねえ」と気の弱そうな表情で言うと、「何の、何の、わしが兵隊に取られた時は、国ちゃんに手伝ってもらうつもりじゃから。心配はいらん」と権太は大声で答えるのでした。

 「力を込めて」誰かのために何かを手助けすることも、もちろん良いことです。またそれとなく、「さり気なく」相手のためになることができれば、それは素敵なことです。さらに言えば、権太は何の計算もなく、「何気なく」相手のために何かができる、そこに耕作は大いに感心しているのです。


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 思い返せば、お年玉の三十五銭を落とした時に、権太は「耕ちゃん、諦めれ。俺たち五銭ずつ貸してやっか」と申し出ました。罰で掃除当番をすることになった時、誰が見ていなくても「することだけはする」とにこっと笑ったこと、権太は父から「叱られるからするとか、叱られないからしないというにはダメだ」といつも言われていたこと。そして権太の父は、耕作がかわいがっていた馬のアオの調子が悪くなった時に、「人ごとではない顔をして」駆けつけてくれたことがありました。

 権太の天性のあたたかさは、父から受け継いでいるのでしょう。そして権太のそのあたたかさを耕作は感心しながら、良い影響を受けています。だからこそこの「雪間 二」は、「耕作は川岸に戻って、病人のために猫柳を手折った」という場面で終わっています。

 悪の連鎖反応、悪い影響などを人は受けやすいものですが、真実なやさしさもまた、いつの間にか伝わっていくものだと信じています。

PS.
 三浦綾子さんが対談されたことのある星野富弘さんは、「ネコヤナギ」について二つの詩画作品があります。その一つは「語るわけではない/動くわけではない/まして火のように/燃えるわけでもない/しかし 私の心を/暖かくほぐす/そのひと枝」(『速さのちがう時計』より)と詠われています。耕作の手折った猫柳にも、同じような思いが込められたのかもしれません。

安心の笑顔(ちょっとだけ深読み『泥流地帯』「雪間 一」より)

 餅つきの場面で始まる「雪間 一」は、笑顔のシーンが印象的です。家庭の年中行事というのは、家族の成長や移り変わり、そして歴史を垣間見ることができるのでしょう。『泥流地帯』の一番最初、父の死後、ねっとりとした闇を恐れていた小六の拓一。「拓一の意気地なしが!」と市三郎の濁りのない金つぼまなこが笑っていました。その拓一が、父の死んだ冬山造材で働くほどに、立派に成長しているのです。

 「ほめる市三郎の歯の欠けた口もとがやさしい」という、思わず読者も口もとがゆるんでしまう市三郎のやさしい笑顔。市三郎の笑顔の理由は、「拓一も耕作も、いい若い衆になった」と親代わりとして一生懸命に育ててきた孫たちの成長が嬉しさでしょう。

 祖母のキワは「富も、やっと笑うようになったしね」と、お茶をがぶりと飲みながらしみじみと思う中に、富の優しさが滲み出ています。ここではキワが笑ったとは記されていませんが、富が笑うようになったことを喜ぶキワの姿があります。嫁ぎ先のことで心配していたからこそ、どんなにひと安心したかと思うのです。

雪間一














 最後は「安心したように、拓一はにこっと笑った」という拓一の笑顔です。「拓一はきっと、国男が入隊して、自分がくじのがれになったことを、うしろめたく思っているのではないか。拓一は、自分だけの幸せを喜べない人間なのだ」という後ろめたさがありました。しかし軍隊でも正月は餅を食べられること、みかんも、酒も、するめも、焼魚も出たと新聞に載っていたことを市三郎から聞き、拓一は安心して笑ったのです。

 何に笑い、何を喜び、何に自分の口もとがやさしくなっているかなあと、自らを省みます。貧しいけれども、隣りにいる人、周囲に居る誰かのことを慮り、本気で心配していたからこそ、しみじみとした笑顔が出てくることは、何と幸いで豊かな笑顔なのでしょうか。

忖度している(『泥流地帯』第15回読書会)

 2020年最初のオリーブ会は、8名で『泥流地帯』の「雪間」(一)(二)をゆっくりとじっくりと読み、分かち合いました。(上富良野町から飛び入りゲストがあったことは、前回の記事で紹介しました)

雪間 一
 お正月、石村家で4臼の餅をついている様子から始まります。「くじのがれ」で入隊を免れた拓一がきねを持ち、耕作が合い取りをする様子を微笑ましく見つめる祖父の市三郎。市三郎は30年前に福島から夢を持って北海道に渡り、自分の土地を持てずに小作を続け、つつましいながらも30年ぶりに迎えるよい正月を過ごしています。読書会では、下記のような感想がありました。

・嫁に来てお餅をついたこと、ピンクの餅を食べたことを思い出しました。

・懐かしいお正月の姿です。耕作が「拓一の気持を忖度している」という言葉がありました。「忖度」と言うと現代では良くない意味合いで使っていますが、お兄さんの気持ちを慮っているという良い意味で使われていることが印象的です。

・好きな場面です。読み込むに連れて、味わっています。市三郎とキワさんが幸せな情景はここだけかもしれません。「なりたい人になることが幸せ」とういう意味では、市三郎さんは幸せだったのかもしれません。

『泥流地帯』雪間 二

雪間 二
 雪間の見える4月の日曜日、拓一と耕作、そして権太の三人が、曾山の畠に堆肥を小分けしています。父親の病気が思わしくなく、福子が戻ってきていました。また節子が東京から戻ってくることを福子から聞き、対照的な二人の境遇を思い、そして二人に対する揺れ動く思いを持つ耕作。読書会では、下記のような感想がありました。

・売られても逃げ出せない福子と嫁ぎ先が嫌で逃げ出す節子、本当に対照的だなあと思います。

・綾子さんは、農をよく取材していますね。私の祖父が最初に入植したのは、下富良野でした。

・いろんな要素が詰まっています。権太の優しさが際立っています。そして、権太は耕作の成長の一翼を担っていますね。

『泥流地帯』雪間 二
 













◎次回のオリーブ会
 2月7日(金)午後6時〜8時(北見中央図書館1階多目的視聴覚室)
  「轟音」から読み始めます。貸し出し用の書籍もあります。事前に読んで来られても、当日ゆっくり読んでもOKです!クリスチャンでは無い方も集われています。途中参加、初めての方も大歓迎です。
 (近日中に、この第15回の内容について、「ちょっとだけ深読み」した解説記事をUPします)

 

浦島さん来会!(『泥流地帯』第15回読書会)

 新年、明けましておめでとうございます。
 長い間、blogの更新を滞っていて、失礼致しました。名前の由来の1つになった、会場にあった「オリーブ」は枯れてしまっているようですが、読書会の活動は停滞も後進もすることなく、毎月1回のオリーブ会(三浦綾子読書会)を継続してきました。

 2020年1月9日、今年最初のオリーブ会には、はるばる竜宮城からではなく、上富良野町から浦島さんが飛び入り参加してくださり、『泥流地帯』映画化の案内&PRをしてくださいました。

 浦島さんのことを皆さんに紹介した際、Tさんが「資料に載っていた方ですよね」と言われて驚きました。昨年11月のオリーブ会で三浦綾子召天20周年記念会での様子を参考資料として配布し、その中に浦島さんの写真も載せていたのをTさんは覚えておられたのです。Tさん曰く「イケメンは忘れません」とのこと! 

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 『泥流地帯』の映画プロジェクトの始まりのこと、そして「苦難」も通られていること、思わぬ助けもあること、まさに映画制作自体に『泥流地帯』のスピリットが流れているようでした。人口1万人余りの上富良野町が、その町の歴史、アイデンティティを見つめ、流されても流されないものを次の世代につなげていくという息吹を感じました。良い映画ができるように、私たちも応援していきます!

 またこの日の読書会では、三重団体のこと、また以前に名前が上がっていた佐川団体のことなども、「さすが上富良野町のお方!」という説明でよく分かりました。町の「営業」で来られたというよりも、その朗読、的を射た内容の分かち合い、読みの深さ、そして地元愛、泥流地帯愛が、しみじみと伝わってきました。
 
 「今日は寒いから、行こうかなあ、どうしようかなあと思ったけれど、来てよかった」という声もありました。最後に浦島さんから玉手箱、ではなく、クリアファイルや油とり紙などのグッズもいただき、クリアファイルを片手に皆さんで記念写真を撮りました♫
 
 読書会の内容については、近日中にUPします!

読書会の案内

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「北見 三浦綾子読書会」へようこそ♪
2014年12月から始まった読書会です。
月に1度、集まった皆さんと「ゆっくり」と三浦綾子さんの本を読み、
コーヒーや紅茶を飲みながら、楽しく語り合います。

読書会 スゴロク」(みなみななみ さん作)を読まれると、
読書会の流れ、様子がよく分かります。

2016年5月から、北見市内の2箇所で開かれます。
どちらの会にも参加することができます。

     「虹の会」   会場:北見神愛キリスト教会
     「オリーブ会」 会場:北見市立中央図書館(1階 多目的視聴覚室)
 

「虹の会」
2時から始まる虹の会です♫
『道ありき』を読み終え、現在は『銃口』を読み続けています。
当日、本をお貸しすることも出来ます。
初回からではなくても、途中からの参加も歓迎します。

基本的には、毎月第2日曜日の午後2時から4時まで。
その月によって日程が変更することもあります。
会場は、北見神愛キリスト教会です。(下記参照)




「オリーブ会」
2016年5月から始まりました。
「オリーブ会」では、『塩狩峠』執筆50年を記念して、
1年かけて『塩狩峠』を共に読み続けて味わいました。

2017年5月からは『母』を読み続け、
2018年9月から『泥流地帯』を読み始めます。

北見市立中央図書館の1階、多目的視聴室で、
基本的に毎月第1金曜日(夜6時半〜8時)に開く予定です。
(2018年は、9月7日、10月5日、11月2日、12月7日)
初回からではなくても、途中からの参加も歓迎します。

図書館の利用・予約状況などで変更する可能性もありますが、
3ヶ月前には下記にて予約を確認することができます。




〈参加費〉
「オリーブ会」(図書館を会場)は、無料です。

「虹の会」(教会を会場)は、袋を回しての自由献金としています。
会の運営や森下辰衛先生(三浦綾子記念文学館特別研究員)が
来会される時の費用(交通費、謝礼、広告費)に用いられます。

〈会場〉
北見神愛キリスト教会
〒090-0834 北見市とん田西町297-2
電話 0157-26-0101
20141115181531212

アクセス(地図)

 北見市立中央図書館
 1階 多目的視聴覚室
〒090-0811 北見市泉町1丁目2番21号

〈主催〉
北見 三浦綾子読書会
問い合わせ:北見神愛キリスト教会
電話 0157-26-0101

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