彼が座っていた空中には、かすかな光を放つ粒子のようなものが、いくつか円を描いて旋回しているようにみえたが、それもすぐ消えた。
ベンチの周囲には、たくさんの1万円札が散乱していた。
そして、周辺をくまなく探し回ったけれど、キタロウはどこにも見つからなかった。
その夜は、様々なことを考えたり思い出したりしていて、結局眠りについたのは午前6時過ぎだった。
昼過ぎに目が覚めて、流しで顔を洗い、ひげを剃った。
そして、歯を磨こうとして、コップに水を汲んでいる時に、昨夜のキタロウの言葉を思い出した。
やつらが水道の水に薬を入れている、確か彼はそういう意味の事を言ったのではなかっただろうか…
僕はコップの水を流しに捨てて、歯磨きをやめた。
1日くらい歯磨きしなくても、死にはしないだろう。
冷蔵庫には牛乳とスポーツドリンクしか入っていなかった。
食料品を買い出しに
行かねばならないが、真夏の陽射しの中を駅前の商店街まで歩く気にはとてもならない。
とりあえずの空腹を満たすためなら、いつものようにコンビニですませられるのだが…
しばらくためらった後で、やはりそうする事にした。
次回へと続く。
どーもぼくでした。