(つづき)
2日目は、大正紡績株式会社、ダイワタオル協同組合、木下織物工場の3社を訪問しました。
1日目は、毛布やタオルといった製品に注目しましたが、2日目は原材料や製造工程という視点から地域産業の現状や企業経営の課題について学ぶ機会となりました。
午前中に訪れたのは、大正紡績さん。
“持続可能なファッションの実現”をコンセプトに、オーガニック素材にこだわり、環境にも人にも配慮したエシカル(倫理的)なものづくりを行っている企業です。
案内してくれたのは多胡部長。工場の入り口には、糸の原料となる綿花(アメリカ、オーストラリア、インド、エジプトなどから厳選したものを輸入)やカシミアや羊などの獣毛が大きな袋に詰められて積み上げられていました。
こうした原料を、ときにはブレンドもして、引き揃えて束にしてスライバーというものを作ります。このスライバーをさらに引き伸ばし撚りをかけて粗糸にしていきます。
精紡機という機械で粗糸を引き伸ばし撚りをかけ、こうして細くて丈夫な糸が出来上がっていきます。
工場見学の後、多胡部長と松下氏(大阪産業経済リサーチセンター)を囲んで、質疑応答。
タオル工場でも目にした「風綿」の処理方法について・・・エンドユーザーまで視野に入れた、アパレルやデザイナーも交えた糸作りについて・・・かつてと比べて発注数量が激減した現在、いかに工夫して工場を稼働させているか・・・地域とともにある企業を標榜し、地域で栽培された綿の製品化に取り組んでいること、などなど。
作って売りっぱなしではなく、素材メーカーでありながらもエンドユーザーの安全性や快適性までをも考えたものづくりをしている大正紡績さん。その独自の経営方針は、これからの中小企業のあるべき姿として注目が集まりつつあります。
ちょうどこの日、NHKの取材が来ていたそうです。ぜひ、9月22日(日)の「ルソンの壺」をご覧下さい。
* * * * * *
次の訪問先までは距離があるので急がねばらならず、ゆっくりと食事をしている余裕がありません。1日目と2日目は、コンビニでパンやおにぎりを買い込み、バス車中で昼食を済ますという強行軍でした。(その代わり、3日目と4日目のお昼はお楽しみ)
* * * * * *
午後に訪れた1社目は、ダイワタオルさん。
泉州タオルの産地においても数少なくなった染色加工の代表的な企業です。
前日、大阪タオル工業組合で、川上から川下までの工程分業によって成り立っているタオル業界が産地として生き残るためには一定数量の仕事を確保することと、各工程を担う企業が互いの存続を支えあっていくことが大切だと教わりました。
ダイワタオルさんは、「泉州タオル」にとって欠かすことのできない染色加工の役割を担っている企業です。
前日、大阪タオル工業組合を訪問した後、家次庄平タオルさんで製織を見せていただきました。ダイワタオルさんにはそうした織り上げられた生成(きなり)のタオルが運ばれてきて、漂白や染色、特殊加工が施されます。
染色の前にタオル生地ついている糊(のり)を除去しますが、薬品の使用を避け、時間はかかるが酵素を使って糊を分解除去する環境への配慮もされています。
ダイワタオルが誇る「真空精錬漂白機」。
なんと、開発のヒントは、“マロングラッセ”にあったのだとか。
色鮮やかに染色されたタオル。水洗いを繰り返した後、乾燥させます。
検品を終えて、次の工場への搬出を待っているタオルたち。この時点では、まだ数十枚分がつながっています。この後、別の会社の工場で裁断されミシンでヘム縫いが行われ、検査後に出荷されます。
工場見学の後、北川工場長を囲んで質疑応答。
少量(小ロット)の発注への対応の苦労・・・泉州タオルの「安全安心・吸水性」に「機能性」をプラスしてきたこと・・・単純に見える仕事も奥が深く、一つ一つが大切な仕事で決して単純ではないこと、などなど。
機能性タオルの「防炎タオル」や「くもり止めタオル」の実演もしていただきました。(「防災タオル」はネット検索すると映像が見られますよ)
北川工場長からはこんなお話もありました。「安さだけを求めるのであれば、いずれ日本製のタオルはなくなってしまう。緩い排水規制の下で環境に負荷をかけて作られるタオルを良しとするか、厳しい排水規制の下で環境に配慮して作られるタオルを評価するか。日々使うタオルにもこだわって欲しい」
漂白、染色、洗浄には大量の水が必要です。泉佐野に立地するダイワタオルさんでは、工業用水と比べて安価な井戸水を利用できるメリットがあります。しかし同時に、染色や洗浄に使用した汚水の処理が必要で、それには大規模な設備と絶え間ない水質管理が求められます。工場敷地内に汚水処理設備を持っていることは、ダイワタオルさんが有する強みだといえます。
* * * * * *
午後の2社目は、木下織物さん。
泉州木綿の伝統を受け継ぎ、小巾織物生地を作っている織屋さんです。
約40台の織機が工場内ところ狭しと並んでいます。
機械が動き始めると、リズミカルな「カシャン カシャン」あるいは「シャンカ シャンカ」(良い表現が他に見つからない)という音が工場内に響き渡ります。
これはロールタオル(洗面台の脇にセットする手拭き用)で、某社からの発注による仕事。某社のホームページを見ると、使用後のタオルは回収し、洗浄・殺菌し、清潔なタオルとしてお客さんへ届けられるシステムになっているようです。
かつては泉南地域・岸和田の山手では、副業として製織をしていた農家が多かったそうです。木下織物さんでも地域の農家の女性を雇っていたそうですが、従業員の高齢化とリーマンショック後の不景気を受けて、現在は木下さんお一人で工場を切り盛りされています。
手にしているのは長年大切に使ってきた杼(ひ)(シャトル)。現在では全国で数社、泉州では泉佐野にある1社しか製造していないのだそうです。
請負の仕事だけではなく、直接販売につなげられるよう独自の企画・デザインも手がけ、オーガニック素材を使った人と環境に配慮したも製品づくりをされています。
「包近の桃」で染めた浴衣(次代の岸和田ブランドになるといいですね)。
織り方、糸の本数などに新しいアイデアを付加した生地。マフラーなどに向いた独特の肌触り、風合いを生み出す工夫がされています。
* * * * * *
2日目に訪れた3社はいずれも、泉州の繊維産業の伝統を継承しつつ、新たな製品開発、付加価値づくりに挑戦している会社でした。
安価な輸入品が大量に普及するなか、地域に踏みとどまり、地域の産業とともにあろうとする各社に共通しているのは、エンドユーザーに安心して使ってもらえる製品づくり、環境に配慮したものづくりです。
次に問われてくる課題は、エンドユーザー、最終消費者である私たち自身の製品やものづくりのあり方を見る目のようです。
* * * * * *
3日目は、工場から離れて、地域の歴史を振り返ります。かつての繊維産業の隆盛について学び、産業化遺産の活用を考えることがテーマです。レポート・ブログ記事を梅田さんにバトンタッチします。(松本)
2日目は、大正紡績株式会社、ダイワタオル協同組合、木下織物工場の3社を訪問しました。
1日目は、毛布やタオルといった製品に注目しましたが、2日目は原材料や製造工程という視点から地域産業の現状や企業経営の課題について学ぶ機会となりました。
午前中に訪れたのは、大正紡績さん。
“持続可能なファッションの実現”をコンセプトに、オーガニック素材にこだわり、環境にも人にも配慮したエシカル(倫理的)なものづくりを行っている企業です。
案内してくれたのは多胡部長。工場の入り口には、糸の原料となる綿花(アメリカ、オーストラリア、インド、エジプトなどから厳選したものを輸入)やカシミアや羊などの獣毛が大きな袋に詰められて積み上げられていました。
こうした原料を、ときにはブレンドもして、引き揃えて束にしてスライバーというものを作ります。このスライバーをさらに引き伸ばし撚りをかけて粗糸にしていきます。
精紡機という機械で粗糸を引き伸ばし撚りをかけ、こうして細くて丈夫な糸が出来上がっていきます。
工場見学の後、多胡部長と松下氏(大阪産業経済リサーチセンター)を囲んで、質疑応答。
タオル工場でも目にした「風綿」の処理方法について・・・エンドユーザーまで視野に入れた、アパレルやデザイナーも交えた糸作りについて・・・かつてと比べて発注数量が激減した現在、いかに工夫して工場を稼働させているか・・・地域とともにある企業を標榜し、地域で栽培された綿の製品化に取り組んでいること、などなど。
作って売りっぱなしではなく、素材メーカーでありながらもエンドユーザーの安全性や快適性までをも考えたものづくりをしている大正紡績さん。その独自の経営方針は、これからの中小企業のあるべき姿として注目が集まりつつあります。
ちょうどこの日、NHKの取材が来ていたそうです。ぜひ、9月22日(日)の「ルソンの壺」をご覧下さい。
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次の訪問先までは距離があるので急がねばらならず、ゆっくりと食事をしている余裕がありません。1日目と2日目は、コンビニでパンやおにぎりを買い込み、バス車中で昼食を済ますという強行軍でした。(その代わり、3日目と4日目のお昼はお楽しみ)
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午後に訪れた1社目は、ダイワタオルさん。
泉州タオルの産地においても数少なくなった染色加工の代表的な企業です。
前日、大阪タオル工業組合で、川上から川下までの工程分業によって成り立っているタオル業界が産地として生き残るためには一定数量の仕事を確保することと、各工程を担う企業が互いの存続を支えあっていくことが大切だと教わりました。
ダイワタオルさんは、「泉州タオル」にとって欠かすことのできない染色加工の役割を担っている企業です。
前日、大阪タオル工業組合を訪問した後、家次庄平タオルさんで製織を見せていただきました。ダイワタオルさんにはそうした織り上げられた生成(きなり)のタオルが運ばれてきて、漂白や染色、特殊加工が施されます。
染色の前にタオル生地ついている糊(のり)を除去しますが、薬品の使用を避け、時間はかかるが酵素を使って糊を分解除去する環境への配慮もされています。
ダイワタオルが誇る「真空精錬漂白機」。
なんと、開発のヒントは、“マロングラッセ”にあったのだとか。
色鮮やかに染色されたタオル。水洗いを繰り返した後、乾燥させます。
検品を終えて、次の工場への搬出を待っているタオルたち。この時点では、まだ数十枚分がつながっています。この後、別の会社の工場で裁断されミシンでヘム縫いが行われ、検査後に出荷されます。
工場見学の後、北川工場長を囲んで質疑応答。
少量(小ロット)の発注への対応の苦労・・・泉州タオルの「安全安心・吸水性」に「機能性」をプラスしてきたこと・・・単純に見える仕事も奥が深く、一つ一つが大切な仕事で決して単純ではないこと、などなど。
機能性タオルの「防炎タオル」や「くもり止めタオル」の実演もしていただきました。(「防災タオル」はネット検索すると映像が見られますよ)
北川工場長からはこんなお話もありました。「安さだけを求めるのであれば、いずれ日本製のタオルはなくなってしまう。緩い排水規制の下で環境に負荷をかけて作られるタオルを良しとするか、厳しい排水規制の下で環境に配慮して作られるタオルを評価するか。日々使うタオルにもこだわって欲しい」
漂白、染色、洗浄には大量の水が必要です。泉佐野に立地するダイワタオルさんでは、工業用水と比べて安価な井戸水を利用できるメリットがあります。しかし同時に、染色や洗浄に使用した汚水の処理が必要で、それには大規模な設備と絶え間ない水質管理が求められます。工場敷地内に汚水処理設備を持っていることは、ダイワタオルさんが有する強みだといえます。
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午後の2社目は、木下織物さん。
泉州木綿の伝統を受け継ぎ、小巾織物生地を作っている織屋さんです。
約40台の織機が工場内ところ狭しと並んでいます。
機械が動き始めると、リズミカルな「カシャン カシャン」あるいは「シャンカ シャンカ」(良い表現が他に見つからない)という音が工場内に響き渡ります。
これはロールタオル(洗面台の脇にセットする手拭き用)で、某社からの発注による仕事。某社のホームページを見ると、使用後のタオルは回収し、洗浄・殺菌し、清潔なタオルとしてお客さんへ届けられるシステムになっているようです。
かつては泉南地域・岸和田の山手では、副業として製織をしていた農家が多かったそうです。木下織物さんでも地域の農家の女性を雇っていたそうですが、従業員の高齢化とリーマンショック後の不景気を受けて、現在は木下さんお一人で工場を切り盛りされています。
手にしているのは長年大切に使ってきた杼(ひ)(シャトル)。現在では全国で数社、泉州では泉佐野にある1社しか製造していないのだそうです。
請負の仕事だけではなく、直接販売につなげられるよう独自の企画・デザインも手がけ、オーガニック素材を使った人と環境に配慮したも製品づくりをされています。
「包近の桃」で染めた浴衣(次代の岸和田ブランドになるといいですね)。
織り方、糸の本数などに新しいアイデアを付加した生地。マフラーなどに向いた独特の肌触り、風合いを生み出す工夫がされています。
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2日目に訪れた3社はいずれも、泉州の繊維産業の伝統を継承しつつ、新たな製品開発、付加価値づくりに挑戦している会社でした。
安価な輸入品が大量に普及するなか、地域に踏みとどまり、地域の産業とともにあろうとする各社に共通しているのは、エンドユーザーに安心して使ってもらえる製品づくり、環境に配慮したものづくりです。
次に問われてくる課題は、エンドユーザー、最終消費者である私たち自身の製品やものづくりのあり方を見る目のようです。
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3日目は、工場から離れて、地域の歴史を振り返ります。かつての繊維産業の隆盛について学び、産業化遺産の活用を考えることがテーマです。レポート・ブログ記事を梅田さんにバトンタッチします。(松本)