2019年04月17日15:30不耕起栽培のラタン・ラル博士
受賞記念講演会に参加しました。記念撮影をしていただきました。
2019年（第35回）Japan Prize受賞者 「生物生産、生態・環境」分野 食糧安全保障強化と気候変動緩和のための持続的土壌管理手法の確立
-----「Japan Prize」（日本国際賞）とは、「国際社会への恩返しの意味で日本にノーベル賞並みの世界的な賞を作ってはどうか」との政府の構想に、松下幸之助氏が寄付をもって応え、1985年に実現した国際賞です。この賞は、全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に与えられるものです。------
この冬「Japan Prize」（日本国際賞）の受賞者のニュースが流れたときに、どこかで聞いた名前だと思ってこの本を読み返しててみたら、ラタン・ラル博士の研究が紹介されているではありませんか。
「土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話」
ラタン・ラル博士の事を知ったのはこの本でした。
何度か、このブログでも取り上げたとがあります。
畑を耕すことで表土の微生物層が破壊されて貧しい土地になってしまうという事を研究した研究者の活動を紹介した書籍です。
現在の農業界にとって、不耕起栽培は、とってもマイナーな農法です。
日本で、この農法を取り入れている農家は人間の指の数くらいしかいないのではないかと思うほどです。なので、こんなに日本になじみの無い農法を提唱している博士がこんなに大きな賞を受賞されるのは、とっても意外な事でした。(ちなみに、副賞の賞金は５千万円だそうです。)
この賞の授賞式の様子は広くテレビで放映されました。譲位まじかの天皇・皇后両陛下が受賞式典にご臨席あそばされたためでありました。
テレビで授賞式の様子をご覧になった方もいる事でしょう。
ラタン・ラル博士の研究はアフリカや、北米大陸を中心に行われています。
日本の土壌はクロボクといって、世界の中でも最高に豊かな土壌なのですが、
世界には、砂漠や、荒野のような土地が沢山あります。
これらが、優良な畑に再生出来たら、増え続ける人類の食糧難の解決にもつながります。
これまで、畑は耕すことで豊かになると信じられてきましたが、耕しすぎて不毛の地になってしまう事も明らかになってきました。
博士の受賞を機に、地表面に生息して畑を豊かにしてくれる土壌微生物の果たす、大きな役割に目が向けられることを祈っています。博士の益々のご活躍を期待しております。。
サインもいただいてしまいました。
「土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話」の書籍について、博士はご存知なかったようですが、著者の名前で分かったようです。
イラスト入りの短い解説
授賞理由ラタン・ラル博士は、2050 年までに98 億人に達すると予測される地球の人口をいかにして養うか、またその一方で、不適切な生物生産による土壌劣化を防ぐとともに、気候変動を軽減しつつ環境の質を向上させるための土壌管理とは何かという課題を学術的に深化させ、多様な生態系に適合した技術オプションを確立することに成功した。
博士はまず、サブサハラアフリカ農地生態系において、安定した生物生産を保障し土壌侵食を防止するための不耕起栽培システムを1970年に提案し、この考えを広く世界各国で実践した。また博士は、大気中の二酸化炭素を土壌有機物として隔離し貯留するための、持続的土壌管理手法の確立に向けた原理を解明し、それに基づく現場適用可能な具体的技術の開発において、世界の研究をリードしてきた最も優れた土壌科学研究者である。
ラル博士の提唱する、作物を用いて大気中の二酸化炭素を土壌へ隔離する技術は、食糧安全保障の強化、水質汚染の軽減、生物多様性の保全など、数多くの副次的効果を安価で提供することができ、実現可能な対策オプションとして大きな優位性をもつと考えられる。その理念は国連の提唱するSDGsのうち、目標1および2「貧困や飢餓の撲滅」、目標13「気候変動抑制」、目標15「陸上生態系の保全」などに密接に関わり、また2015年パリで開催された国連気候変動枠組み条約締結国会議において立ち上げられた4パーミルイニシアティブ（土壌炭素を年間4‰増加させる取り組み）や2016年マラケシュで開催されたCOP22におけるAAAイニシアティブ（アフリカ農業の気候変動への適応の取り組み）にも反映されている。
このようにラタン・ラル博士は、自然科学的な原理の究明とその応用技術の社会実装にとどまらず、生物生産を支え地球環境に影響を及ぼす土壌の重要性を社会に訴え、一般市民への啓発を推進すると同時に、IPCC、FAOはじめ政策決定者とともに土壌保全を推進するための国際的な取り組みの開始を実現した。その業績は、「生物生産、生態・環境」分野における功績を称える2019年日本国際賞にふさわしいと考える。
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