2025年02月04日13:32ナルナル的菌活書評 20号 土と生命の４６億年史 土と進化の謎に迫る
気になる個所に付箋を貼っています。結構な枚数になってます。線やラインマーカーは、後日スキャンする事態が起きたときに邪魔になるので使いたくないのです。
著者の藤井一至氏だが、フジイイッシと勝手に思い込んでいたが、カバーの裏に著者の紹介があり、フジイカズミチと読むのだと知った。
私の名前が石井一行、イシイカズユキなので、どことなく似ていてなんとなく親近感がわいた。
本書は、土が人生の友と呼んでいいほど土にのめりこんだ土愛研究者の本だ。
この世にオタクは数多くいるが土オタクは珍しい。が、土マニアは居そうである。例えば、土の味を楽しむといった土食偏人がどこかにいても不思議ではない。
本書では、土の味については一切言及がないのが残念ではある。東大の小金井農場では、毎年新入生に土を食べさせると聞いたことがあるが、50年くらい前のベテラン農家は土を嘗めて土の健康状態や足りない肥料分を感じ取ったという。いい土は甘い味がするそうだ。
本書は7章で構成されている
【本書の内容】
第１章 すべては粘土から始まる
第２章 生命誕生と粘土
第３章 土を耕した植物の進化
第４章 土の進化と動物たちの上陸
第５章 土が人類を進化させた
第６章 文明の栄枯盛衰を決める土
第７章 土を作ることはできるのか
地球46億年の歴史を272ページの中に納めなければならないのだから大変である。
前半が鉱物や物理学・化学としての土の変遷。
中盤に生物が生まれて、いかに土が大切な役割を果たして来たかを明らめる。
後半に人類が登場し、人類の進化と土の関わりに光を当てる。
前回の書評、「人類はどこで間違えたのか 土とヒトの生命誌 著者 : 中村桂子」とは、同じ地球史の進化を扱うのだけれど、細胞から始まる生命科学の視点と、鉱物から始まる本書の視点は、同じ事象を扱っていると思うけど、診る角度が違うと全く違うもののようにも感じるから不思議である。
本書では、関心のあるとこから読んでいいよといった読み方の指示がない。ということは、最初から読めという暗示を感じたので、著者に敬意を払って最初から読むことにした。
土の科学は難易度が高い。化学の授業の様だが、この部分が筆者が人生をかけて研究してきた成果であることを理解できたし、土を知る上の基礎学力なのだ。
プロ農家でも初耳の知識が満載である。１枚の畑(約300坪)の中では、毎年、この場所だけは出来が悪いといった場所がある。何をやってもダメな不毛な場所である。そんな場所の解決にこの知識は役に立つかもしれない。
家庭菜園でも、プロでも初めての畑にチャレンジするときは、その土地の履歴を徹底的に調べることが、その後の成功への近道となる。もともとどういう場所だったのか、何が植えてあったのか、盛った土はどんな土なのか。知らずに畑は出来ない。著者の探求心を大いに学んでほしい(おそらく今日も40億年の履歴を調査中だ)。
生物の中心にはカビやミミズなどの小さな生き物がいる。それらを育くんだのも大地だ。ただ、紙数の関係からか、菌糸や菌根菌の記述はそれほど多くはないけれど、最新のトピックや大切な個所はしっかりと押さえている。
ヒトとのかかわりから、これからのヒトの行方はどうなるのかと本書は問う。
第７章 土を作ることはできるのか
に突入して、ようやく本書の目的が見えて来る。今後、人は土とどう付き合うのかという事である。
増え続ける人口、畑は足りるのか、懸念材料は山のようにある。しかし、土の可能性は無限。それを生かすも殺すも人間次第だ。
全体にユニークな体験もちりばめてあって、土に親しむ人が増えてほしいとの願いがある。
あまりにも身近な土、だけれども誰にも注目されなかった土、そんな土の偉大さに気づかせてくれるのが本書であろう。
著者はプランターで野菜の栽培を行っているようだが、なかなか上手くいかないらしい。地植えは菌糸のネットワークが生育を助けてくれるけど、プランターは単独の栽培。難易度は格段にアップする。
オクラが上手く育つ最も簡単な方法は、土壌微生物の連合艦隊と呼ばれるナルナル菌群を散布し、菌根菌を付着させるのが最も手っ取り早いという事は知ってほしい。ナルナル菌群は、著者の知らない未知の世界だ。
鉱物と菌とをミックスして、土の再生資材として開発研究中とのことだが、私に是非相談して欲しい。ある鉱物とナルナルで相乗効果を生む取り組みが始まっている。鉱物の粉もたっぷり使えるぞ。
読者の皆様もお楽しみにどうぞ。
低 い ⇔ 高 い
難易度 ★ ★ ★ ☆ ☆
活菌度 ★ ★ ★ ☆ ☆
面白さ ★ ★ ★ ★ ★
新規性 ★ ★ ★ ★ ★
土と生命の４６億年史 土と進化の謎に迫る ブルーバックス
ツチトセイメイノ４６オクネンシ ツチトシンカノナゾニセマル
著 者：藤井 一至
出版社：講談社
定 価：1,320円（本体1,200円）
新 書： 2024/12/26
ページ数 272ページ
著者：藤井 一至（フジイ カズミチ）
土の研究者。国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員。1981年富山県生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。博士（農学）。カナダ極北の永久凍土からインドネシアの熱帯雨林までスコップ片手に世界、日本の各地を飛び回る。『土 地球最後のナゾ』（光文社新書）で第7回河合隼雄学芸賞を受賞。そのほか、第１回日本生態学会奨励賞、第33回日本土壌肥料学会奨励賞、第15回日本農学進歩賞、第39回とやま賞、第27回日本生態学会宮地賞、第9回World OMOSIROI Awardなど受賞多数。著書は他に『大地の五億年』（ヤマケイ文庫）など。『１億人の大質問！？ 笑ってコラえて！』（日本テレビ系）、『クレイジージャーニー』（TBS系）などメディア出演多数。
講談社BOOK倶楽部のページ
試し読みあります
アマゾンのページ
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◇土耕菌ナルナルの詳細はホームページへ
http://www.narunaru.info/index.html
土壌菌についての解説しています。
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