徳倫理学を築いたとされるイギリスの哲学者フィリッパ・フットの有名な思考実験に「トロッコ問題」というものがある。

①暴走するトロッコの軌道上に5人の作業員がいて、そのまま放っておけば5人は轢死する。
②線路の分岐点にあなたがいる。
③分岐先には、1人の作業員がいる。


 このような”ある人を助けるために他の人を犠牲にすることは許されるか”という道徳のジレンマは、1950年代ごろからずっと人々の心を掴んで離さない魅力的な心理問題であり、また一方で、「俺は全員が助かる方法を探すね」という正義感とスマートさを全面的に出せる答えが用意されているところもまた楽しいものであった。
 
 しかし残念ながら、その道徳のジレンマはすでに過去の話である。
 
     そもそも  ・・・・、5人が助かることと1人が助かることを天秤にかけ、1人が助かることが論理的に正しいなどということがあるのだろうか!?そんなこと、あり得るわけがないであろうッ!

 ましてそれが50・・億人であったなら・・・・・・・・考えるまでもないッ!!!!!1人が犠牲になるのは当たり前のことであろう!!??

 だから私たちは間違ってないッ!!!いや、むしろアレ・・は50億人を救ったんだッ!!!英雄になれたんだからこっちに感謝をしてほしいくらいだよッ!!!

 だから、だから私たちは.......







 「間違ってるッ!!!!」

 男は酒瓶を机に叩きつけ、目の前で英雄の悪口をベラベラ喋っていた女に向かって吠えた。だが女は特に驚いた様子もないようで、男に一瞥することもなく話を続けた。

 「それでね、英雄アレが今日この町に来るらしいのよ!!なんて穢らわしいことなのかしらッ!!!」

 女はオーバーに両手を上げたかと思ったら、額に手を落とし「なんてこと...」と表現してみせた。

 「だいたい、あんな不衛生なモノ、どんな病気を持っているか分かったもんじゃないわ!今日は子供達を外に出さないよう注意しなくちゃいけないわね」

 その後も女どもは英雄の悪口を楽しげに話し続けた。

 「チッ」

 これ以上突っかかってもしょうがない。それではただのタチの悪い酔っ払いだ。いや、酒瓶を叩きつけている時点でタチの悪い酔っ払いには違いないのだけれど。言っていることはタチ悪いわけではないわけで?つまり俺はタチの良い酔っ払いなのでは?

 そんなくだらないことを考えながら、フラフラと元いた席へと踵を返す。

 「どこ行ってたんだ?」

 「ちょっとあの辺をうろうろと」

 説明するのも面倒臭いので適当に返事をする。さっきの女どもの話を思い出すだけでも精神衛生上宜しくないしね。忘れよ忘れよ。

 「あそ。」

 それを察してか、宮川シュークリーム(本名)は素っ気のない返事で酒の続きを促すように瓶先を向けた。頭の悪そうな見た目からは想像のつかないほど気を遣える男である。

 「なんだそのナレーションみたいな発言は!?頭の悪そうな見た目ってなんだ!?あとそれ本名じゃないだろ!!僕には宮川みやがわあきらっていうれっきとした名前があるんだ!!」

 しまった、声に出てたか。というかテンション高いなこいつ。シュークリーム投げつけるぞ。

 さて、せっかく名前も出たことだし説明すると、この宮川晃という男は、狭き門と呼ばれるある職業・・・・を志す、うら若き学生である。
 ・・・まぁこんなやつの話題であまり引っ張ってもしょうがないのでさっさと白状するが、その職業とは『剃毛師』。つまり英雄を英雄たらしめる儀式の執行者であり、その存在も英雄と同様に世界で唯一である。
 ちなみに興味もないと思うが、こいつのシュークリームというあだ名は、いつも酒の肴がシュークリームであることに由来する。目の前に積み重なった山盛りシュークリームを見せつけられながら酒を飲まなくてはならないこちらの気持ちにもなってほしいものだ。

 「で、さっきさぁ」

 「結局話すのか!さっきの気を遣えるどうののくだりはなんだったんだ!」

 「いや、剃毛師を目指しているような優秀極まりないシュークリームなら共感してくれるんじゃないかって」

 「そ、そうか。僕が君の考えに共感するなんて考えにくいが、まぁ話してみると良い。僕は優秀だから人の気持ちを汲み取ることくらい容易だからね。」

 「・・・・」

 「・・・?どうした?」

 「ん、いやなんでもない」

 こいつの扱いやすさは相変わらずだな。”あなたほどの人じゃないと生きたまま墓に入れませんよ”と言えば本当に墓に潜り込みそうな気がする。今度言ってみるかね。

 そんなことを考えながら、宮川のシュークリームをヒョイと1つ摘まみ上げる。

 「で、本題に入るんだけど....あっちの席でさぁ〜」

 「僕のシュークリームに話すなよ!優秀極まりないシュークリームは僕であって僕のシュークリームじゃないだろ!?」

 「ちっ、うるせぇなぁ」

 「君が始めたんだろ!?真面目に話す気がないなら帰るぞ!」

 「はいはい話しますよ」

 「なんで僕が面倒臭がられているんだ...」

 これ以上からかうといい加減話を聞いてくれなそうなので、先ほどの女たちとのやり取りを掻い摘んで説明した。
 ・・正直、こいつに話すつもりは無かったんだけどね。そもそも剃毛師と言えば、英雄への儀式を執行する者。つまり当然英雄の側に立つ人間であるから、話を聞くや否やここを飛び出して女どもに報復を浴びせる可能性がある。
 だが、話してしまった以上、仕方あるまい。いざという時にシュークリームを投げつけて止められるよう手に持って準備しておこう。

 「.....ということなんだけど、どう思う?」

 「どう思うも何も、僕には君が普通じゃないということしか分からなかったのだが....いたッ!!なんで僕にシュークリームを投げつけるんだッ!!」

 「すまん、手が止まらなかった」

 「どういうことなんだ...」

 どういうことなんだはこっちのセリフだ。こいつ、本気でそう言っているのか?剃毛師というのはある意味、最も英雄を崇める人間であるはずだ。それを目指そうという人間が理解できないとはどういうことなんだ。

 「じゃあお前も英雄を穢らわしいと思うのか」
 
 「当然だろう。」

 「お前は剃毛師になるんだろ?それなら英雄を崇高なものとして見ているんじゃないのか?」

 「なんだそんなことか。」

 くだらないことを聞くものだと宮川は半ば呆れながら言葉を続けた。

 「なら逆に聞くが、世界で剃毛が禁止されている理由は分かるな?それは”名前を言ってはいけないアソコ”が不衛生環境に敏感であり、絶対的に保護されるべき対象であるからだ。」

 「あぁ、知っている。常識だ。」

 「つまり剃毛状態、すなわちパイパンは非常に危険な状態といえるが、ここ200年は誰一人としてパイパンに生まれ落ちることなく安定した状態を維持できている。そう、一人の犠牲パイパンのおかげで。」

 「・・・」

 「彼女は他人の不幸を自らが体現することで浄化する能力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・を持っていた。200年前、彼女の祖先に当たる女性に剃毛を執り行い、パイパンとすることで世界のパイパンが消滅した。以後、彼女の家系が代々パイパンを請け負い、今もなおそれが続いている。その彼女らの犠牲・・・・・・によって安心して子を成せるということを忘れないよう、俺たちは彼女らのことをこう呼ぶ。」

 「『白の処女パイパンメイデン』...と」








白
※登場人物は全て18才以上です。




 そこまで話すと宮川はシュークリームを1つ頬張り、ビールで流し込んだ後、再び顔を向き直し、結論を述べた。

 「つまり彼女、白の処女パイパンメイデンは穢れている。客観的に明らかな事実だし、主観的に言っても好んで近づきたいとはおふぉえふぁいねおもえないね。」

 最後はシュークリームを口に投げ込みながら話を終えた宮川は、もうこの話には関心がないようで、さらに次のシュークリームへと手を伸ばしている。・・どんだけ食べるの?

 「でもお前は剃毛師になりたいんだろ?好んで近づきたくないやつがやりたがるものとは思えないけど」

 そう、これこそがこいつへの一番の疑問だ。剃毛師になったら英雄に近づかざるを得ない。いや、この世で最も接近すると言って良いだろう。その立場へ進んで手を挙げる必要があるだろうか。俺にはその理由が到底思い至らなかった。

 しかし宮川は「当たり前のことを聞くな」と言わんばかりに肩をすくめ、そしてまさに宮川を象徴したような答えが返ってきた。

 「そんなの僕の名誉のために決まっているだろう」

と。

 「あ....そう。」

 そういえばこいつはこういうやつだったな。聞いた俺が悪かったね、うん。しかしどこまでもキャラがブレないのは見ていて清々しいが、まさか将来までそこに固執しているとは...いや将来だからこそ、か。まぁ、どうでもいいや。

 「そこで当面の目的としては」

 「あ、話続くの?」

 「お前が始めたんだろう?なら最後まで付き合うのが筋ってものだろ?」

 「ん、まぁいいけど。」

 そんな話を始めた覚えはないが、そう言ったところでどうせ聞く耳を持たないので、酒のツマミ程度に聞いている振りくらいしてやろう。

 「・・僕が冷静なうちにイヤホンを外せ」

 「はいはい。」

 これ以上やると耳を抉られそうなので、仕方なしにイヤホンを外し、聞く耳を持つことにした。

 「で、僕の当面の目的は当然『剃毛師に選ばれること』だ」

 「選ばれる?剃毛師って”なるもの”じゃなくて”選ばれるもの”なの?」

 「君はそんなことも知らないのか。いいか?剃毛師は世界で1人だけだ。となれば選ばれるというシステムが最も合理的であることは少し考えれば分かるだろう。」

 「さいですか。」

 「そしてその選定式は2年に1度行われるのだが、明日がその日なんだ。」

 「・・・明日?」

 無理じゃん。こいつは確かに学業面で優秀ではあるが、そうは言っても世界規模で飛び抜けているわけでもない。ということは最短である再来年に向けて準備するということかな。

 「そこで君に、僕が明日選ばれるよう手伝ってもらいたい。」

 「・・・・・・・・・は?」

 「いや、君の言いたいことは分かる。確かに君のような人間にとって、この役は荷が勝ち過ぎている。でも僕としてもライバルになりうるような人間の手を借りるわけにはいかない。というわけで、あまり優秀ではない君に手を借りるというわけだ。」

 「・・・」

 俺のことがどうこうは取り敢えず置いといて、こいつは明日の選定式で選ばれるつもりらしい。いやいやいや無理でしょ。この状況を打開するには超強力なコネクションが無いとどうあっても無理。そして協力者に俺を選んでいる時点でそれが無いことはほぼ確定している。つまり、

 「詰んでいる...とでも言いたげだね。」

 「そりゃどう考えてもそうだろ。現状、お前は認識すらしてもらっていない状況だろ?それで明日選ばれるなんて、どうやってもあり得ない」

 「それでもやるしかないんだよねこれが。」

 「なぜ?」

 「その理由を話す前に、簡単に白の処女パイパンメイデンの現状を整理しよう。」

 そう宮川は言うと、紙とペンを取り出し、サラサラと書きながら説明を始めた。

 「白の処女パイパンメイデンはこの世に1人だけで、それが代々継承されていく。その時期は決まっていて、娘が1○才になった時と定められている。そして今回の選定式では、同時に継承式が行われる・・・・・・・・・・・。つまり白の処女パイパンメイデンが交代となるのが明日だ。」

 「へー、珍しいタイミングだね。」

 俺は意外にも興味の唆られる話題に思わず合いの手を入れる。

 「そして重要なのがここからだから、よく聞いて欲しい。剃毛師は2年に一度選定式があるとは言っているが、実際には同じ人間が再選され続けているのが実情となっている。」

 確かに言われてみればそうか。最も接近する人間をそうコロコロ変えるわけもない。特に剃毛という安全に関わる作業となればなおさらその傾向は強くなりうる。つまり、

 「今回の選定を逃せば、次は20年後ということも十分ありうる...てことか。」

 「よく分かってるじゃないか。」

 「そこまで説明されれば誰でも..ね。」

 つまりこの男は、なんとしてでも明日のタイミングで選ばれるための策を講じなくてはならない。それも選定式が明日の朝のはずだから、今日中になんとかする必要がある...ということか。

 「で、どうするの?何か面白い策は考えているわけ?」

 「当然だ。聞いたからには協力しろよ?」

 「当然だ。」

 「今日、彼女が街に来ることは知っているな?」

 「もちろん」

 知らな.......いや待てよ。そういえば、胸糞悪い女どもがそんなことを言っていたような言っていなかったような。

 「で、お前には彼女をさらってもらう。」

 「・・・・は?」

 「そして僕が君から彼女を助けて口説くどく。」

 「・・・・・・・・は?」

 「以上だ。行け。」

 「・・・・・・・・・・・・・・は?」








いい






 時刻は18:30。俺は公園のベンチで寝そべりながら待機していた。

 「めんどくさ」

 やり方は全て任せるとかなんとか言われたが、あいつは俺をなんだと思っているのか。当然だがこんなご時世に人攫ひとさらいなどしたことがある訳もないし、そういう類のことが得意なわけでもない。

 「さて..と」

 彼女はこの街に来ると言っても、宮川の情報では通り過ぎるだけ・・・・・・・らしい。つまり攫うには移動車を襲う必要がある。それに気づいた瞬間、考えることを辞めた。襲うことは出来なくはないが、それは俺の将来が全て水の泡になることを指す。あいつにそこまでしてやる義理はない。

 宮川に聞いていた通過時刻は18:20。本来であれば、すでに彼女はこの町をあとにしているであろう時間である。

 「そろそろか」


 さて、突然だがここまでの話を整理するとしよう。


 まず1つ目。これはまだ空想の域を出ていないのだけど、英雄の公知されている能力すなわち『他人の不幸を自らが体現することで浄化する能力』はおそらく半分である。俺の予想が正しければ、本来の能力はこれから見ることになるだろう。

 次に2つ目。宮川という男は学力こそ高いものの、思考能力は至って平凡な人間である。その人間が『今日、このタイミングで攫うしかない』と考え作戦を実行した(実際には俺が実行してないから未遂なのだけど)。つまり、大多数の人間が『今日しかない』と考えるであろうことは想像に難くない。


 「てことは、やっぱりこうなるよねぇ。」


 移動車と人攫いの衝突推定位置。最適逃走ルートと護衛人数の減少および待ち構えによるルート変更。

 それらを考慮して、最も攫うのに楽でかつ可能性が高い位置で待機していたけど、公園に入ってきたのは少女を追いかける人間が8人に加え、護衛する人間が残り2人。

 「これならなんとかなりそうだ」

 正面から少女がやってきているので、こちらから手を出すことは実に容易い。あとはそのあと少女をどう連れ去るか、問題はその1点のみである。真正面からあのムキムキマッチョな護衛と当たったら多分骨ごと砕け散る。というか握力18kgの俺がそもそも肉弾戦をやろうというのが間違っている。
 
 「さて、始めますか。」

 そう呟き、気付け薬の表面をナノオーダーで薄膜金属処理した遅効性気付け薬・・・・・・・を懐から取り出し、グイと飲み込む。

 「た、助け...グムッ」

 そしてたまたま公園にいたような俺に助けを求める少女の口に普通の気付け薬・・・・・・・を押し込んだ。







うう





 「こっちだッ!!早くしろッ!!」

 「はぁ、はぁ、ちょ...待って..」

 継承式への移動中のことでした。綺麗な西洋風の街並みで、”ふふ、夜でこんなに美しいならさぞ昼間は素晴らしいのでしょうね”などと考えていたら、目の前の牽引車が突然横転・・・・したのです。

 そこからは事前逃走経路(らしい)に沿って避難。護衛さんが言うには、「最も待ち伏せされにくく、我々が優位に動ける最良のルートなので安心です」ということらしいけど、実際はどこからともなく人が出てきて右往左往。

 この時、ずっと思ってたの。罰が当たったんだって。

 幼い時から聞かせられてきたけど、やっぱり私は白の処女パイパンメイデンとなることに納得がいっていなかったの。

 だってそんなのおかしいじゃない。

 私だって外で遊びたかったし、学校に通いたかった。

 それでみんなと夢を語り合って、それを目指して切磋琢磨して。

 そんな日常がどうしても欲しかった。

 だから私、願ってしまったの。

 「あぁ、この車から誰か連れ去って」って。

 でも実際、追い回されて、本当に怖くて、逃げて逃げて逃げて。

 どうしてこんなこと願ってしまったんだろう。

 外がこんなに怖いものなんて思いもしなかったの。

 怖い。怖いよ。誰か...誰か助けて。










うえ




 「ど、どうして...?」

 俺が目を覚ますと、先ほどまで呆然と立ち尽くしていたらしい少女が今度は驚愕した表情でこちらを見ていた。

 「どうしてって?」

 「だ、だって、他のみんなは気絶したままなのにあなただけ...」

 「うーん、まぁ細かいことは後にしよう。とりあえず今から君を攫うからよろしく。」

 「え、え?ちょ、どういう...」
 
 気絶している方々に起きられると大変困るので、混乱する彼女を無視してサクサクと用意していた車へ投げ込み、一目散にアジトへ向かった。

 「はは、やっぱり凄いな。街ごと気絶してら。」

 そこら中に見受けられる事故車の数々と倒れた人々。この町だけでもこれだけの被害となっているのだから、世界規模となったらそりゃもう未曾有の天災・・・・・・ともいうべき被害となっているだろう。つまり彼女ら白の処女パイパンメイデンは犠牲などという甘っちょろい存在ではない。こりゃ居場所もすぐ特定されるだろうな。

 仕方ない。宮川には悪いが会うのは諦めてもらうか。

 「さて、俺としては、君を攫うことを諦めたわけだが」

 「え、え!?今絶賛攫われ中なのに攫うことを諦められてる!?あなた最初から最後まで意味が分からないですわ!そもそもどうやってあの時、一人だけ起きれたの?まさかなにか能力的な」

 「あぁ、その辺も説明したいところなんだが時間が無いんだわ。悪いけど諦めてくれ。」

 「えぇ..、攫われ損ですわ。」

 「攫われた時点で得があるわけないだろ。」

 「そう、ですわね」

 「・・・」

 「ふふっおかしなことを言ってしまいましたわ」という彼女は、言葉こそ楽しげてあるものの、表情はどこか寂しそうだった。さっきから表情がコロコロ変わるのは見ててそこそこ愉快ではあったけど、気まずい空気は勘弁願いたいね。さっさと現場に戻ってこのお嬢さんを投げ捨ててくるか。

 「あ、それじゃあ連れて行って欲しいところがございますの!」

 お、いいこと言うね。移動で時間も潰せてさらに満足もしていただける大変素晴らしい提案じゃないか。 

 「おー、近いところならどこでもいいぞ。さっきの公園とかならなおいいぞ。」

 「そうではございません。え...っと、あなたのお家に連れて行ってくださらない?」

 「・・・・・・・・・・・」

 あれ?おかしいな。お城に引きこもりのお嬢様のはずだから、海とか屋上とかそういうのを予想していたんだけど、なんか非常に違和感のある場所が聞こえてきたような。まぁ勘違いだろ。海だろ海。こういうときの定番は海だ。

 「オッケー任せとけ!海だな!よし、いくぞッ!!」

 「え、ちょっとあなた聞いていまして!?あーなーたーのーいーえー!!!あなたの家ですわ!!!」

 「・・いや、普通に嫌なんだけど」

 「ちょ、そんな直球で断らないでくれます!?」

 うわ、マジで俺の家って言ってたのか。勘弁してくれよ。部屋散らかっているどころかゴミ箱に俺の分身ちゃんが大量に暮らしているし、そんな場所にいたいけな少女を連れ込んだらそりゃお前犯罪だろ。

 「犯罪って、あなたすでに人攫いしているじゃありませんの?」

 「ここ一番読んじゃ駄目なログだからッ!!今回メタ要素ないと思ってたのになんでここ一番でぶち込んできたの!?!?そこそこシリアスな時に雰囲気壊すなよお前!!」

 最悪だ。いやでも分身ちゃん・・・・・って濁してあるし、さすがにお嬢様には伝わってないだろ....ないよな?

 「そもそも、わたくしも別にあなたの精液にまみれた部屋に入りたいとは申し上げておりませんわ」

 伝わってんのかよッ!!!!!なんで涼しい顔して精液とか言っちゃってるのッ!!なにこの子怖い!!今時の子ってこんなんなの!?それともお嬢様って案外こんな感じなの!?というか

 「入らないなら来る必要ないじゃん!!!」

 「部屋自体に興味はないのですけれど、私をあの場から華麗に攫った人間がどんな場所で暮らしているのか、単純に興味がありますの。」

 「あぁ...そういう....。」

 微妙に納得できない、というか全く納得できない理由をこの少女は堂々と言ってきたが、まぁ部屋に入られるよりは全然いいし、通り過ぎるだけなら時間も掛からないからいいか。

 「本当にそれでいいんだな?海は行かなくていいんだな?」

 「あなた本当に海が好きですわね。全く構いませんわ。そもそも城から海は見えますもの。」

 「あぁ、そう。」

 海にも行きたいと言えば無理してでも連れて行ってやろうかと思っていたが、そこまで言うならもういい。こいつを公園に捨てた後、一人で見ることにしよう。

 そうして俺の家をチラ見した後、こいつを元の公園へ捨て置き、俺も気絶したふりをした後、全員が起き出したタイミングで俺も起き、そして宮川へ適当に謝罪をしてその日が終わったのだった。









yy









 ドンドンドンドンドンッ!!

 翌日、俺はけたたましいノックとともに朝を迎えた。

 「んだよ、こんな朝っぱらから...」

  「朝じゃねえよもう昼だよッ!!というかそんなことよりお前これどういうことだよッ!!??」

 「あぁ?」

 宮川が見せてきたのは録画したものと思われる携帯の映像。「まずい...昨日の集団失神の原因が俺だとバレたか!?」と肝を冷やしたが、どうやら単なる選別式の映像のようだ。

 「あぁ、そのことか。宮川に会わせられなかったのは悪かったと何度も言ってるじゃねぇか。俺も必死で探したけど、そのお嬢様はどこにも見当たらないし突然気絶するしで仕方なかったんだよ。」

 「ほぉ、まだそんな寝言を言うか。その寝言がこの続きを見た後でも言えるか楽しみだなぁおい!?」

 「・・・んだよ。」

 よく分からないがキレまくる宮川から携帯を受け取り、映像の音声に耳を傾ける。



 「さて、剃毛師の選定ですが、せっかく継承したのですし、今回から少し趣向を変えようと思いますの!」

 ふーん。さすが気まぐれお嬢様らしくはた迷惑なことをしようとしてるじゃん。

 「今回から、わたくしが地図に対しダーツをしますわ!!そしてその当たった住所の人が2年間私の剃毛師ですわ!!」

 ・・・なんか昔の番組で見たようなやり方だな。そんなんで決めちゃっていいのかよおい。

 「では発表しますわ!!私の剃毛師となるのは、住所ーーーーーーーーーーーー」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「ではこれから迎えに上がりますから!楽しみにしているといいですわ!!!」

  ブチッ

 「・・・・・・・・・・・・・」



 「で、何かコメントは?剃毛師さん・・・・・

 「最悪だ。」




Opening Song〜♪





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白


制限時間:12時間 (実際: AM11:00〜PM10:10)。
全体字数:9000字。

[所感]
話の後半で、パイパンを絡めた感動のラブシーンが発生するはずだったのですが、個別ルートに辿り着けず残念です。「だって私、パイパンですのよ!?(号泣)」から生まれるシーンが書きたかった(こなみ)。推敲する時間は全くなかったので、誤字脱字etcは許せ。