2022年12月05日 17:00

すごい作品でした。

続編の「残酷依存症」から読み始めてしまったので、ある程度の予想はついていたのですが、それを超えてくる強烈さがありました。

正直なはなし、ゾッとしましたよ。



続編でも登場していた高比良刑事が、こんどは先輩刑事の浦杉刑事とバディを組みます。
続編では頼もしい感じがした高比良刑事ですが、今回はバディとして若くみずみずしい感じの人物に描かれており、主役を張るのは、続編でもちょこっと登場する浦杉刑事です。
指輪



実子を6年前に誘拐犯の手によって失っている浦杉の前に、若年層を狙った殺人事件が勃発、さらには幼児の行方不明、そして連続殺人へと発展してゆきます。

実際にトラウマにとらわれる浦杉とそのトラウマを気遣う周囲の対応が切ない。

しかし、そんなトラウマどこ吹く風でブッこんで行く浦杉の身に、とうとう犯人の魔の手が及ぶわけですが、犯人が狙うのは浦杉の心を折ることであり、自身の最強の敵をくじくことにあります。

かつて邂逅した時点で天敵と認めた犯人が定めた生贄。

ところが、浦杉本人にはその自覚がまったくありません。

その無自覚さから、自身の身内に迫る危険に鈍感であるところが、読者にとってかなりドキドキハラハラのサスペンスポイントでもあります。

現に6年前にはその無自覚を突かれてまだ幼い愛息を失い、今回は高校生になった愛娘にまで魔の手がのびようとしていることに気が付きません。



途中から先の展開が読めるようなネタ振りがあからさまになってきますが、それもきっと作者が意図的にやっていることなのでしょう。

ミステリーの仕掛けではなくサスペンスの作劇で読ませる、というメッセージと受け取りました。

実際に最後の最後までハラハラドキドキしっぱなしで想像以上に楽しめます。
続編から読み始めたぼくが言うのですから間違いありません。

残酷依存症も面白かったので、今後シリーズ化してもらえるとうれしいかな。

とか行っているうちに、Twitterで櫛木さん自ら発信されていました。
依存症











もうね、期待しかないよw


残酷依存症

殺人依存症



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2022年11月29日 17:00

大好きな櫛木理宇さんの作品です。

一応ミステリーに分類される作品なのでしょうけど、読んだ印象としてはサスペンス的な面白さと「必殺シリーズ」的なテイストを感じました。

てっきりノンシリーズの作品だと思って読み始めたところ、どうやら「殺人依存症」という作品の続編のようです。

読み始めてすぐに気づいたには気づいたのですが、「まあしかたない、2作目から読み始めるのも一興だろう」って感じで一気に読みました。



大学のサークル(ヤリサー)に所属する3人の小僧が突然拉致られるところから物語は始まります。

ソレゾレ別室に監禁され、極限状態に追い込んでから、拉致犯の要求が始まるわけですが、それがまたエグイ。

次々に突きつけられる命令に心身とも削られて行く様子がとてもリアルに伝わってきます。
その分、読んでいて気分が悪くなる人もいるかもしれません。

ミステリーですから、当然犯罪が進行している以上は対面で捜査も始まるわけです。
ただ、ここで面白いのが、彼らの拉致が捜査されるわけではなく、別の女性の殺人事件に対する捜査上で彼らの存在が浮かんでくるという念の入った仕掛け。

残虐としか言いようのない殺人、しかも性的な痕跡が皆無で暴力のみが加えられた事件の異常性に、前作でも活躍したであろう刑事が奔走します。



ミステリーの読ませどころというか、本来白眉となるべき解決編で、この作品はとんでもない手法を取っています。

その結果、ぼくが受けた印象として「必殺シリーズ」的なものを感じたわけです。

良い悪いの話でいうとどうなのかはちょっと判断しかねますが、ある意味爽快な結末であったのも事実であります。

櫛木さんがよく扱っている悪意に満ちた事件は、犯人が捕まったところで溜飲が下がるものではありませんから、必殺的なぶっ殺しもアリなのかもしれませんね。

クライマックスの爽快感は、ちょっと不思議な感覚がありました。

前作を読んでいないのでなんとも言えませんが、この作品だけでいうと、黒幕は完全にダークヒーロー的な立ち位置だと思います。

いやあ、面白かったわあ。

そんなわけで、引き続き「殺人依存症」も読んでみたいと思います。

1








残酷依存症

殺人依存症



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2022年11月17日 12:30

221117ホーンテッド20













「ホーンテッドキャンパス 20」を読みました。

サブタイトルは「オシラサマの里」です。

「オシラサマ」という名称を聞いたのは久しぶりのような気がします。

半村良さんの産霊山秘録に登場していたのが印象的でしたが、その後、意識し始めたからでしょう、いろんなところでいろんな意味合いを持って出会うことが増えました。

日本神話的な意味合いでのそれも含めて、「千と千尋の〜」に出てきた大根の神様もそうですし、蚕そのものをそう呼ぶ地方もあるようです。

そんな「オシラサマ」ですが、この作品内では、きちんと「神様」として描かれています。

西洋の神話によくある人間臭い神様ではなく、土着の荒々しいながらも日本的な神の一柱として登場するのが爽快です。

実際にその場面を読んだ人からすると、あれを爽快とかいうのは頭どうかしてるんじゃないか、と思われるかもしれませんが、個人的には、日本の神様って畏怖の対象でありこの世に在らざる者だと思っているので、この描き方にはとても納得できました。



物語は、部長の実家絡みの神事を中心に、そこにまつわる様々な問題が同時多発的に勃発していくなか、絶妙に森司とこよみのぐだぐだがスパイスとなる展開です。

基本的にいつもの中編連作スタイルではなく、「この子の七つのお祝いに」などと同様、一冊を通して一つのエピソードを語る長編仕様となっていますので、読みごたえも抜群。

黒沼部長、和泉ちゃんの本家分家コンビとその他のオカ研メンバーの方向に分かれて話が展開して行きます。

一見別々の事件を追いかけているように思える事案が、いつの間にか結びついて一つの大きな流れになっていくところは圧巻です。

かなりヤバい状況でもその場を楽しんじゃっている部長も面白いのですが、「視える」力と「過去視」が発現していた森司はもちろん、今回は軽い能力と思われていた鈴木くんにもドカンとそれ系の世界に引っ張られるなど、オカ研メンバーの「力」が徐々に強化されてきました。



ファン待望の森司とこよみちゃんのもじもじうだうだも満載w

今回はあるきっかけからトランス状態になった森司と平常モードのこよみちゃんを上手く使ったあれこれが楽しかったなあ。
ある意味安易ではあるのですが、それでも楽しくて背中がムズムズするような青臭い描写はさすがでありますw



そんなかんじで

そろそろ物語に関わるオカルト事案が深刻になってきましたし、森司とこよみちゃんのアレもグイグイになってきました。

近い将来幸せな結末がありそうな気もしますけど、その前にヒドイ試練もありそうですねw

グインサーガもペリー・ローダンも途中で挫折してしまいましたので、せめてこのシリーズだけは最後までお付き合いしたいものだと思います。



ホーンテッドキャンパス オシラサマの里







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2022年11月10日 17:30

221110うまくいく












著者は言わずと知れたトップYouTuberのヒカルさんです。

いわゆる「自己啓発本」的な本だと思うのですが、よくありがちな「がんばれよ」「やれば変わるよ」的な「なんとなくいい気分になる言葉が並んでいる」ような論調だけではなくて、ヒカルさん本人が実際に成果を実感したノウハウが記されています。

基本的には自身の経歴を語りながら、いかに壁を乗り越え、自分を高めてきたのか、自分が成功できた理由、それを精神論ではなく、自身が実践した方法を具体的なメソッドに落とし込んでいるところが凄いですよ。

こういう本を10代、20代くらいで読みたかったとおもうのですよ、マジで。



本のつくりは全6章、それぞれに章の内容を的確に表したタイトルと、その理解をさらに深めるためのブースト的なサブタイトルが付けられています。

サブタイトルはどれもヒカルさんが好きな漫画のなかに出てくるセリフからとられているそうですが、これがまたピタリとはまっていてお見事。

ふつうは編集さんの仕事なんですが、どうやらそれ以前に作りこまれていたらしいというのが、ヒカルさんの動画で公開されています。
もしよかったら、出版社とのミーティング(ある意味恫喝)の模様を見てから、この本を読むのも楽しいかもしれません。
(下にリンクを張っておきますのでご興味のある方はどうぞ)

Chapter1では基本的な姿勢、考え方、そして鼓舞
Chapter2ではインプット・アウトプットを踏まえた基礎能力の鍛え方
Chapter3では自分の能力をどこで活かすのか的な考え方
Chapter4では勝負を仕掛ける時合と勢いに関して
Chapter5では勝負に躓いたときのかわし方、乗り越え方、火消しの極意
Chapter6では仕掛ける勝負の【弾】をどうするのか
って感じのことが記されています。

内容でいうと、ぼくにとって一番面白かったのが、Chapter2でした。

詳細は割愛しますけど、外から得た情報をどうやって自分の中に定着させて、それを武器として使うのか、プラス、増幅装置の仕掛け方が相当詳細に述べられています。

この修行をしていた時期のヒカルさんは20代前半と思われますが、正直な話同年代の若者が同等の努力をするとなると、やり遂げられる人はかなり少ないのではないでしょうか。

これは、一般の若者を見くびっているのではなく、むしろ、当時のヒカルさんが飛びぬけて強烈だったのだと思います。
だいたい、若くない=おとなの連中だってそこまでやれる人は何人いるかわかりません(ほぼゼロに違いない)w

ただ、ここに記された方法が効果があることは間違いのない話でしょう。

一つの現実からいくつもの情報をくみ取って、自分に合った必要なものを選別、取り込み、定着させ、さらに熟成させたうえで武器として叩きつける。
そのために必要な、とても重要なプロセスです。

ただ、繰り返しにはなりますけど、たいていの人はここまで出来ないと思うのですよ。
誰もがこのレベルのことをやっているのであれば、現在のわが国の低迷は無かったにちがいありません。

こういう人がたくさんいたら、政治がどうの、制度がどうのという前に、どのジャンルであっても確実に実力で突破して行くでしょうし、もっと早い段階で失われた30年は解消されていたことでしょう。



令和のいまは、情報へのアクセスが素早く手軽にできるようになってきました。
ぼくが若いころとは大違いですw

その分情報過多気味になっている人が多いようにも思いますが、かしこく立ち回れば、自分に必要な情報を得ることへの対価はかなり安くて済みます。

時代はweb3.0に向かって様々な事業が胎動しているところですが、大切なことっていうのは、意外とシンプルなところにあるのかもしれません。
要するに、努力を厭わない、むしろそれを楽しめる感性と、強靭なメンタルなのではないでしょうか。

基本となるフォーマットを理解して、その土俵で勝負するための準備をきっちり怠らない。
で、それを確実に実行・運用出来る人が最終的には勝つようなイメージがあります。

そう、まさに著者のヒカルさんみたいな人なんでしょう。

いまのところ、それだけの結果は残していますし、その影響力はそこらへんのテレビタレントなんかよりも強大に育ってきています。
きっと近い将来彼が思い描いたポジションには手が届くに違いありません。

それくらいに、若干31歳の彼が持っている言葉の力はトンデモない威力があります。


と、ここまで絶賛してきたわけですが、確かにヒカルさんにはアンチも多く、否定的な見方をする人も少なくはありません。

この本に並んでいる言葉は力強く、実績に裏打ちされたものがありますが、そのすべてに真逆の印象を抱く人たちも存在するのも現実です。。

影響力を持つということは、その反作用も同時に受ける覚悟が必要になるのでしょう。

いろいろ行っていますけど、大変なんだと思いますよ。

「そんなもん、少し考えたら分かるやろ!」
というヒカルさんの声が聞こえてきそうですねw

これだけ当たり前のことを当たり前に実行すれば成功できる。
しかし当たり前のことを実行するのがに凄まじい精神力を必要とするということを、真摯に訴えた本は少ないのではないでしょうか。

できれば、若いころにこういう本に出会いたかったものだと思います。

そして、若い人にはこういう本を読んで拳を握りしめてもらいたいものです。

そんな感じ。

ヒカルさんがクソ編集者を丸め込む動画

心配すんな。全部上手くいく。



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2022年10月12日 18:00

221012僧正












僧正殺人事件」はいわずと知れたミステリーの古典名作です。

正式ではありませんが、ほぼ元祖と言ってもいいマザーグース殺人事件、いわゆる見なし殺人をテーマにしたミステリーでもあります。

若い人にはピンと来ないと思うのですが、アレですよ。
「だぁれが殺したクックロビン」
ってやつw

魔夜峰央の漫画でおなじみですよね、アニメにもなしましたし、さいきんでは舞台のお芝居にもなったのでご存じ方も多いかと思います。

そうですよ、あのパタリロのアレですよw
と言っても、この作品はBL要素もギャグ場面もないミステリーの古典ですので、その点期待されると困ってしまうのですがねえw


というところで、古の名作をご紹介させていただこうと思ったのですが、残念なことにぼくの読んだ版は古すぎて、すでに絶版になったようです。

井上勇さんの、いかにもってかんじの古典的な重厚感と気品にあふれる訳だったのですが、現在の出版事情と比べてみますと、さすがに文章が重いのは間違いありません。

若い層向けに新訳という判断もけして間違ってはいないのでしょう。
基本的には内容が違うこともないでしょうし、表現が現代的になっているのと、おそらくは文字の級数が上がって読みやすくなっているのにちがいありません。
級数が上がってくれれば年寄にも優しい(老眼対策)ですしねw

そんなわけで、旧訳の本ですので現行の本とは少なからず印象は違うと思いますけれど、筋が違っているということはあり得ませんので、とりあえず、そのまま行こうかと思います。



読者がミステリーに何を求めるか、というのは人それぞれで、不可能トリックだったり、犯人の動機だったり、人間関係のドロドロだったり、キャラクターの面白さだったり、設定の奇抜さだったり、いろいろありますよね。

ミステリーならではのトリックだって、クローズドサークルだの、一人二役だの、顔のない死体だの、叙述だの時刻表だの、それはもう、あげて行けばきりがありません。

そんななかでも、このマザーグース殺人事件に代表される「見なし殺人」というのは面白いですよね

「見なし殺人」を扱ったミステリーではじめて読んだのは、横溝正史さんの「獄門島でした。
其角と芭蕉の俳句を使った見立て殺人だったのですが、その美しさはずば抜けていたと思います。

さて、そこで僧正殺人事件ですよ。

マザーグースの子守歌を題材にした見立て殺人を連続して起こすという仕掛けになっています。

まずロビンという青年が胸を矢で貫かれた死体が発見されます。

いわずと知れた「だあれが殺したコックロビン」です。

そして、事件の直後郵便受け投函された

ジョゼフ・コクレーン・ロビンが死んだ
誰がコック・ロビンを殺したか。
スパーリングとは雀の意味だ。


この書付から、単なる殺人事件がマザーグースの子守歌とリンクして、犯人と探偵の思考対決が始まるわけです。



日本人にとって「マザーグース」というのはあまり馴染みのないものだと思います。
世代的なものかもしれませんけど、ぼくの就学期には、子守歌や動揺・唱歌などずいぶん習いましたが、両親祖父母に向こう三軒両隣を含めても、マザーグースを口ずさんでいる人と遭遇した経験は一度もありませんでした。

なのに、この作品&マザーグース殺人事件のスタイルは受け入れられ、しかも、マザーグースの本は日本でも多数出版され、70年代の人気漫画家の中にはマザーグースを作品中で取り上げてる人も少なくない、ある意味プチブームのような状況があったりもしました。

実をいうと、ぼくも谷川俊太郎訳のヤツを少々読んでみたりしたのですが、そっちの方はまるで興味を持てなかったなあw

ファンタジーも児童文学も好きなのですが、マザーグースの詩集はどうも合わなかったようです。

そして、また話が逸れてしまいましたけど、僧正殺人事件です。


この作品の面白さは、次々に発生するマザーグースの童謡の歌詞に見立てた殺人の緻密な仕掛けと、不思議なくらいに犯人の動機が見えてこない奇妙な連続殺人のなか、がっちり推理を紡いでゆくファイロ・ヴァンスの魅力に集約されるのではないでしょうか。

知力にあふれ、する同洞察力を有しているのはもちろん、シャーロックやエラリーのような病的な気質も、気障ったらしい上から目線も所帯じみた生活感なく、多趣味で洒落っ気のある実に魅力的な人物として描かれています。

たった一冊読んだだけで、彼のことが好きになってしまいました。

と、ここまで物知り顔で語ってきて申し訳ないのですが、実はぼく、ヴァン・ダイン初めてなんです。

手に入れたのはものすごく前なんですけど、いわゆる積読状態だったんですよね。

こんなに面白いならもっと早く読んでおけばよかったと後悔しきりですよ。
それというのも、若いころならもっと早く読めたし、横丁の書店にもヴァン・ダインの本たくさん並んでましたから。

いまやリアル書店でヴァン・ダインやディクスン・カーを探すのはちょっと大変。
なかなか見つからないんですよね。

むかしは、推理小説といえば海外の翻訳ものが中心で、それこそどこの書店だってクイーン、クリスティをはじめ、そこそこの古典的な名作はそろっていたものですが、現在ではだいぶ事情が変わってきてしまいました。

国内作家の人気が上がってきたこともあるのでしょうけれど、そもそも、それほど規模の大きくない書店では、翻訳もののSFやミステリー、とくに創元・ハヤカワは置いてあるスペース自体狭いことが多いような・・・。

できれば、こういう、古くても面白い作品をみんなが定価で買って読むようになれば、出版界もゆたかになるんだろうなあ、と余計なことまで考えてしまった次第であります。


ちなみに、余談ではありますけどw
今回アイコン用に撮った写真は、作中でも登場した赤い(実際にはちょっと赤茶ですが)ルーズリーフのノートブックをあしらってみました。
ええ、手持ちの、だいぶ使い込んだやつです。
本当は、実家にあったタイプライターを使うつもりだったのですが、収納用ケースのジッパーがぶっ壊れていて開かないというアクシデントで断念。
次善策としての一枚であります。

そんなわけで
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
できれば、また期間を開けずに更新して行きたいと思います。


僧正殺人事件



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2022年10月03日 17:00

毎度おなじみのシリーズものの19巻目であります。
今回のサブタイトルは「だんだんおうちが遠くなる」
意味ありげっつうか、思わせぶりっつうか、ホラーっぽいですよねw



物語は前作「待ちにし主は来ませり」の直後、その年の年末から翌年の年明けにかけての出来事です。

前回の大立ち回りの末に重要な局面で失った、こよみからプレゼントされたネクタイの代替品を選ぶという口実でデートを繰り返すこよみと森司のもとに、またまた相談が持ち掛けられます。

今回の案件は3つ。
1.水晶の飾り窓
2.だいすきな祖父母
3.四谷怪談異考
3エピソードともに霊現象がらみなのが好印象w

1.は、かつてアイドル的な人気をほこった元カリスマ占い師が持ち込んだ、帰宅するといつも自宅で自分が死んでいるという怪現象。

2.は自室の戸の隙間から除く祖母の霊が訴える今の危機と過去の犯罪。

3.はリアルの殺人と複数の心霊現象が複雑にリンクして、結局怖いのは・・・

という感じです。

今回の霊現象は全体的に「恨み」とか「呪い」とかいったドロドロ系の霊よりも、警告をはじめ、どちらかというと守護的な動きとか、助けを求めるメッセージ、純粋な愛など、人に害をなすようなものはほぼありませんでした。

むしろ、今回の19巻目で炸裂しているのは、人間の悪意で、かなり凶悪なヤツが渦巻いています。

たとえば、1.では凶暴なまでの性的な欲求が引き起こした事件の数々。
2.では自己保身と責任転嫁を正当化するための犠牲を求めた結果、取り返しのつかない犯罪が発生し、その事件が現代にまで尾を引いているというやつ。
3.では、いろいろと入り組んだ話が展開しますが、それ以前に、何もしないことの凶悪な意味が壮絶。

櫛木理宇さんのノンシリーズ作品を読んでいるとわかるのですが、ミステリにしろホラーにしろ、その根本の部分に眼をそむけたくなるようなおぞましい悪意を仕込むとが得意な作家さんです。

ホーンテッドキャンパスのシリーズでも、その手腕はたびたび発揮されているのは読者ならばご存じのことと思いますが、どうもシリーズが進むごとにエスカレートしているような気がするのはぼくだけでしょうかw

霊現象での恨み、呪いといった定番のおっかなさの源泉というか、なぜそんなにドロドロした感情が残るのかという、その辺を現象としてではなく、人間が引き起こす凶悪な行為の結果であるのをガッツリ深堀りしているのがたまらんのです。

この19巻目でいえば、2話目の「だいすきな祖父母」がそうで、実はかなり好きなエピソードでもあります。



いつもの森司とこよみのもどかしい関係も、すでに定番ネタと化してしまいましたけど、
今回はP269−270の展開の「あと一歩!」っていうもどかしさが、まるで70年代少女漫画のようで凄まじく大変ですw

お互いの関係が特別なものであることは意識しながら、どっちもあと一歩を踏み込めない、踏み出せない状態。
この感じがいつまで続くのでしょう、あと半歩でもいいから進んでほしいような、今のままがいいような、複雑なファン心理であります。

もはや誰がどこからどう見たって鉄板のカップルなのに、本人同士の自覚が弱すぎw
その辺がお好きな方は、エピローグの描写にも、思わずにやけてしまうに違いありません。
ぜひ読んでみてください。
220930nabesiyou












1〜19のセットがありました

ホーンテッド・キャンパス だんだんおうちが遠くなる






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2022年09月20日 12:00

著者は劉慈欣さん。
カバーには「Riu Cixin」と横文字表記のフリガナが振ってあるのですが、学のないぼくにはまるで読めずw 奥付のひらがな表記でやっと「りゅう じきん」さんなんだとわかった次第であります。

米国のSF大会参加者の投票で決定されるヒューゴー賞を受賞した「三体」を書いた作家として有名な方で、この受賞は翻訳作品として、アジア圏初の快挙なのだそうです。


220920火守













物語は、主人公のサシャは「もう治らない」といわれた恋人ヒオリの病気を治せるただ一人の人、「火守」がいる東の孤島に降り立ちます。

しかし、火守はどうにも色よい返事をくれません。
そこでサシャは交換条件として、ヒオリの病が治せるなら自分はこの島に残って火守の弟子となり、後を継ぐという提案をしました。

火守とサシャの生活が始まります。

火守はサシャに仕事を教え、サシャは火守の背中を見ながら日々の仕事を覚えてゆく。

そして、ヒオリの病を治すための「ロケット」作りが始まりました。

この物語の世界観のなかに生きる人たちは、誰もが空の上に自分の星を持っている。
その星が光を失ったり、正式な位置を外れていたりすると、その星を持った人は病に倒れることになってしまうのです。

そんな症状を治すために、星のくすみを拭いたり、正式な位置にもどしたりという作業を担えるただ一人の人物が、火守なのであります。

その後、ロケットを組み立て、星の世界に旅立つ二人なのですが、このジャーニーがものすごくシュール。

科学で説明できないような特殊な技法で宇宙へ上り、科学では説明できない状況での活動をした末に、当初の目的を果たします。


主人公はおとなですが、作品としては童話なのだと思います。

あふれるようなイマジネーションを文字に記しているような、そしてそのイマジネーションは、それを読んでいるぼくにも十分に伝わってきました。

思えば、中国人の現代作家の作品を読むのは初めてかもしれません。

魯迅は現代とは言い難いし、テッドチャンは国籍が違うので別物とするのが正当でしょう。

まったく違う文化で育った人の作品は面白いですね。

まあ、日本語訳あっての話ではありますけどw

訳といえば、この作品の翻訳は「池澤春菜」さんでした。

生い立ちを思えばごく普通のことなのかもしれませんが、声優としてマリみての由乃さんやケロロの桃華殿をやられていた印象が強く、実に多才な方なのですね。

この作品も、柔らかいことばが全体を覆っていて、わりとシビアな面もありながら、優しさに包まれているような印象を受けました。

もうひとつ、全編を彩る西村ツチカさんのイラストも素敵ですよ。

SFとかファンタジーとかいうカテゴライズよりも、この作品はおとなの童話、なのかもしれません。

この作品に流れるセンスオブワンダアを感じ取っていただければ幸いです。

そんな感じ


火守






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2022年09月09日 18:00

リバイスが終わって令和ライダー3作目の「仮面ライダーギーツ」が始まりました。
リバイスよりもシャープな作品になりそうですね。
かたやウルトラマンデッカーはまさかの展開。
そしてドンブラはタロウとソノイの決闘が愉快に描かれます。



220909きつね1














続きを読む

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2022年09月04日 18:00

著者は尾藤正英さん。 1923―2013
1949年に東京大学文学部国史学科卒業後、名古屋大学文学部の講師・助教授を経て、1962年に東京大学文学部助教授、1970年に同文学部教授などを歴任された方です。
専門は日本近世史、中でも江戸時代の儒学者の思想では名を馳せ、著作多数。



最初に行ってしまいますが、実は期待していたものとはちょっと違いましたw

例によって亡父の蔵書から拝借してきた本でして、「文化=芸術」的な思い込みで読み始めたわけです。

ところが、いくら読み進んでも「政治」「宗教」ばかり。

これはどういうことなんだろう?
というわけで、普段何気なく使っている文化という言葉の意味をググってみました。

webの広辞苑無料検索によると

1.文徳で民を教化すること。
2.世の中が開けて生活が便利になること。文明開化。
3.(culture)人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ科学・技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む。文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、技術的発展のニュアンスが強い文明と区別する。

となっています。

1と2の意味はともかくとして、3には参りました。
政治も宗教も文化のうちなんですね、ぼくの認識が完全に甘かったようです。

そんなわけで、気を取り直して中身の話をすすめたいと思います。

220904日本文化の歴史



基本的には、原始日本から明治のあたりまでの歴史を文化史的な視点でを俯瞰した内容です。

主に「政治」「宗教」「道徳」、時代が下がってくると「学問」「芸術」の話が混じり、人間が少数の集団から村、町、国と単位が大きくなってゆく過程で変化して行く生活様式や支配の形なんかでしょうか。

特に文字数を取っているのは「宗教」で、なかでも仏教は中心的な宗教だった期間も長いため、伝来から日本独自のものに特化して行く流れ、支配層と結びつき、また対立するなど、しつこいくらいにガッツリ書かれています。

儒教も著者の得意分野だけあって、儒者(というのでしょうか)ごとの思想の違いなどにも言及されていました。

それに対して文学・芸術や国民の生活習慣、大衆娯楽なんかはあっさりとしたもの。

著者は「歴史の中で変化して行く文化」のようなものを捉えるため、常に歴史全体を俯瞰しているように感じます。
そのため、ぼくが期待していたような部分は、「源氏物語」的な黙っていても浮き上がってくるもの以外、意図的に俯瞰の視点を変えていく必要があったのかもしれません。

とはいえ、各時代の仏教美術、元禄文化(俳諧、芝居、浮世草子等)など、考察を加えている箇所もあり、ぼくの期待したものが皆無というわけではありませんでした。

面白く読めたのはやっぱり宗教絡みなんですがw
P125からの「第八章 国民的宗教の成立」です。

産まれたときは神社、死んだときは寺という、いわゆる複数の宗教が併存している現代日本にもつながる話で、こういったものをひっくるめて国民的宗教という考え方。

これはとても腑に落ちる論でした。
こういうところは面白いなあ。


ちかごろ、新書は歴史関係が続きましたが、学校の授業と違って面白いものですね。
学校で歴史といったら、ぼくの頃はほとんど年表と人物名の暗記ばかり、こういった視野は広く視点は絞って俯瞰した歴史は、先日読んだ「英国流立身出世と教育」同様、この手の本はこれからも楽しんでいけそうです。

そんなわけで


.
日本文化の歴史




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2022年09月01日 18:00

角川ホラー文庫収録の書き下ろし作品です。

著者は「芦花公園」という変わったペンネームを使用している作家なのですが、どうやらこれといった由来は無いのだとかw

220901異端の祝祭













内容は、いわゆる宗教系ホラーとでもいうのでしょうか、大雑把にいうと、不気味なカルト教団の暗躍と探偵の対決がえがかれていました。

面接に向かう電車内で主人公が「見て」しまうあたりから、中盤の「儀式」前後までは濃厚にホラー気分を味わえるのですが、後半、クライマックスに近づくにつれて、能力者バトルの様相を呈してきます。

もちろん、地道な証拠集めや脳みそ前回の推理もあるにはあります。
でも、やっぱり目立つのは能力者バトルかなw

ですので、グイグイにホラーな感じを求めていると肩透かしを食らいますが、ファンタジー要素の強い伝奇小説という捉え方をすれば面白い作品だと思います。

ただ、登場キャラクターの闇の深さは思いっきりホラーでした。
主人公の笑美が抱える闇も深いですし、その兄の陽太の闇も深いのですが、実は探偵役のるみが過去に背負った闇はとんでもないレベルです。

全体的に、心霊的なものは少な目、カルト教団の不気味さ、人間の心が抱える闇・業みたいな感じのものにホラー要素が強いように思います。

なかでも「ヤバい」と思ったのが前半のジワジワ手を伸ばしてくる教団の描写と、「第五章 P317」からの部分です。
詳しく書くと思いっきりネタバレになりますので控えますが、ゾッとしました。


人間はおそろしいですね。


異端の祝祭



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プロフィール

ahi

好きな食べ物はお蕎麦とお寿司。
趣味は野遊びに読み書き落画き街歩き
なお、加齢な事情から食べ歩きは中断中(泣)

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