2023年04月09日 17:00

用意周到なシン・仮面ライダーに完全にやられました

シン・仮面ライダーが公開されてから、はや1か月。
そろそろいいかな、という感じで、ちょっと感想を上げてみようかと思います。

ただ、当然ではありますが、多少のネタバレを含みますので、気にされる方はスルーしてください。

別にかまわんよ、という方は以下の続きをどうぞ。

あひるオーグ

どうやらシン・仮面ライダーはネット上で物議をかもしているようです。

少なくとも、自分で書くまでは他人の意見に左右されたくないので、つまらない否定も盲目的な絶賛も、基本的にレビューは目に入れないようにしています。

そんなわけで、誰がどうとかじゃなくて、以下書いた内容は単純にぼくが観て感じたことです。

「シン・」のつく作品では、エヴァ、ゴジラ、ウルトラマンに続いてこれが4作目であります。

エヴァはアニメ作品なので別枠であるとして、今作も前作同様世界観のつながりもほのめかされていて、前2作同様政府の男として竹野内豊と情報機関の男としてウルトラマンになった男でもある斉藤工が出ている。

とくに竹野内さんは連続して重要な役を演じているので、世界観のつながりを強く印象付けるのに十分なものがありました。



物語は、東映のタイトルが出た直後からすさまじいスピード感ではじまります。



ルリ子とのタンデムでトラックとの壮絶なチェイスを繰り広げた末、風を受ける本郷と崖下に落とされるルリ子。
ここでルリ子がほぼ無傷であることに違和感を覚えましたが、これは、後にルリ子がただの人間ではないといことを知って納得しました。

続いて登場する仮面ライダー。

旧1号をディティールアップして、今の時代風に洗練されたスーツは最高にカッチョよく、ある意味神々しくもあります。

様式を踏襲して崖の上から登場するあたりも好感が持てました。

黒いコートを羽織った姿も斬新で、凄いものが見られそうだという期待がバリバリ。

そして訪れた最初のバトルシーン。

衝撃的でした。

ライダーの一撃で戦闘員の皮膚が避け肉体が破壊され、鮮血が飛び散ります。

その自らの力に恐怖し慄く本郷のモノローグがありましたが、過去作において、ドアノブをもぎとる、コップを握りつぶすといった、日常での力のセーブができていないことに悩む描写よりも鮮烈で直接的な表現で、力の行使に対する恐れをかんじました。

この一連の場面が、比較的本郷の一人称視点から描かれていたのも印象的です。

後のバトルは徐々に天の視点から描かれるようになるので、本郷の葛藤が少しずつ薄れてゆく=悩むよりショッカーを叩く的な考え方に移ってゆく、と同時に、力のセーブを覚えて行く過程を映像的に見せてくれたように感じました。



作品中でのショッカーの攻めてが、オリジナルシリーズのような極地戦ではなく、かなり大規模な殺戮および洗脳を展開して地域を制圧していたのも面白いところです。

コウモリオーグが劇場を埋め尽くす人間を一気に殺して見せたり、ハチオーグが街ごとコントロール下に収めたり、個対群の作戦が展開されていました。

そして、その作戦阻止のためにピンポイントでオーグのアジトに乗りこんで行くのも爽快です。

オリジナルシリーズのOPナレーションにある「ショッカーは世界征服をたくらむ秘密結社である」という視点で物語をはこぶと、どうしても街中で作戦を遂行しようとする怪人を退治しに現れるライダーという構造になってしまう。

毎週25分のシリーズとして捉えるなら問題ありませんが、2時間の単発映画となると、それは避けたいシチュエーションです。

ならばどうするか、ショッカーとライダーを直線で結べばいい。

そのために裏切者である緑川の最高傑作バッタオーグを狙うショッカーと、ショッカーを潰したいライダー&ルリ子という構図を描く。

そこに立花と滝が情報を提供することで、ライダーはピンポイントでショッカー基地を狙えるようになる。
その結果、大多数の第三者を巻き込まず、最低限の犠牲者人数に抑えながら
戦える環境が整う。

だから、最近のシリーズみたいな大規模破壊もないし、ルリ子や本郷の作戦立案とライダーの個の力での突破が可能になるわけです。

それにしても、ライダーマスクの修理だのサソリオーグの毒を使った特殊弾とか、ある意味ショッカーと同等の科学力を持っていそうな政府ってすごいですよね。

石森先生の漫画版でも日本政府はショッカーに関わっているので、こういった構図はオールドファンであれば違和感がないのかも知れません。




それと、やっぱり庵野監督の強烈なこだわりも随所に見られて感動しました。

オリジナルの映像アングルを忠実に再現していたり、ライダーが崖の上に登場したり、本郷がルリ子をお姫様抱っこして歩いていたり、数え上げたらきりがありません。

作中に登場したライダー以外のキャラクターも、当時、仮面ライダー放映とほぼ同時期に制作された作品からの引用が多くありました。
・イチロー兄さん=キカイダー
・チョウオーグ=イナズマン
・K=ロボット刑事
他にも、滝が「手を上げるだけでいい」というアレ、前作でウルトラマンになった男が別の役とはいえそういうことを言ったら、どうしたって「帰りマン」を連想してしまいます。

一文字の「お見せしよう」にもゾクッときました。

カマキリカメレオンなんて、もはやショッカーじゃなくてゲルショッカーの概念の中に存在するべき怪人ですし。



とはいえ、弱点もあるのは確かで、ウルトラマン、ゴジラでは会議やディスカッションのなかで消化されていた世界観の説明が、今作ではルリ子を中心とした個人の口から、いわゆる説明台詞として語られることが多かったように思います。

クライマックスでもイチローの語りが重く、ある意味会話劇のようなスタイルになっていました。
そこに対する本郷と一文字の肉体的な動きがイチローの語りと等価に働いていたかは少々疑問です。

それでも、説明台詞の空虚さが醸し出すクールさが、オリジナルよりも存在感のあるルリ子を描き出し、さらに浜辺美波というキャストを得たことで、無機質な美しさが表出していたように思います。
キャストでいえば、ハチオーグの西野七瀬も素晴らしかった。
あの華やかな狂気は誰にでも出せるものではないでしょう。
サソリオーグの長澤さんもそうですが、今回は「目力」の強い女優さんがが起用されていた気がします。

あとは、登場場面は少なかったものの、松尾スズキさんが演じたショッカーの創設者は飛びぬけた存在感にビビりました。
あれはゾッとしましたよ。

それに対して、本郷の池松さんも一文字の柄本さんも、それほどの力感はなく、むしろ虚ろな感じすらしました。
おそらく庵野監督の描きたかったライダーは、熱い思いをたぎらせたヒーローとは別の、ごく普通の若者がヒーローにならざるを得なかった姿なんだろうなと感じた次第であります。



そんなわけで

長々と書いてしまいましたが、個人的にはだいぶ熱くなった映画です。

スパイダーマンが青春ヒーローのように扱われている現代においては異色の作品ではあるのかも知れません。

恋愛要素も極端な大破壊もないけど、ストイックに突き詰めてゆく感じの映像がたまらなくツボに入りました。

そんな感じ。




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コメント一覧

1. Posted by ケビン   2023年04月09日 18:10
あひるさんの文章すごかった!
マルセ太郎もありやという鬼気迫る迫力です。ありがとうございます。感謝します
2. Posted by ドクター   2023年04月10日 23:33
5  個人的に一番好きだったシーンは、コウモリオーグにライダーキックでトドメを刺した後、貨物列車が揺れたところでした。
 15日(土)にはNHKでメイキングの特番を放送するそうです。全シーン、没になったショッカーライダーのバトルシーンも見られるとか。
3. Posted by あひる仮面   2023年04月12日 17:18
>>1
それが誰だかわかりませんがおほめにあずかりこうえいです。
4. Posted by あひる仮面   2023年04月12日 17:20
>>2
ドクター様、ごきげんよう。
たしかにあそこは震えましたね。
衝撃の大きさが見事に表現されていました。
特番は他からも聞いてはいるのですが、ただテレビがなあ〜〜って感じw

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