2024年11月16日 19:00
「死蝋の匣」を読みました。
タイトルだけ見ると某和装系作家のサイコロ本みたいに思いますがw
毎度おなじみ大好きな櫛木理宇さんの長編小説であります。
形式としては「虜囚の犬」の続編という形ですが、主要な登場人物以外は一切前作との関りはありませんので、この作品から読み始めても問題ないと思われます。
「死蝋」というのは、Wikipediaによれば
死蝋(しろう、屍蝋・屍?とも)は、永久死体の一形態。死体が何らかの理由で腐敗菌が繁殖しない条件下にあって、外気と長期間遮断された果てに腐敗を免れ、その内部の脂肪が変性して死体全体が蝋状もしくはチーズ状になったものである。鹸化したものもみられる[1]。ミイラとは異なり、乾燥した環境ではなく湿潤かつ低温の環境において生成される。
wiki参照
というものだそうです。
ごくふつうに生活をしていたら絶対に出会うことのないものであることは間違いありません。
そんな、死蝋が最初のキーワードとなる物語です。
話は前作同様白石と和井田のバディに様々な人物が絡みながら進んで行くのですが、今回はより濃密に白石の前職である「家裁調査官」という経歴と絡んだ事件が扱われます。
今回のキーワードとなるのが「ジュニアアイドル」字面だけだと、子ども世代のアイドル、いわゆるマインちゃんとか芦田愛菜ちゃんのような存在を思い浮かべますが、実はとんでもない間違いです。
作中では詳細な描写は控えられていますが、「布面積の少ない衣装」「電マ」もっと直接的な「児童ポルノ」という言葉も使われていました。
どんなものかとネット検索をかけてみたのですが、さすがに「これはダメだ」と思わざるを得ないような画像が頻発してきます。
そんな環境の中に幼児期を過ごした少女が、果たして一般的な社会生活を送れるのか、という問いかけがこの作品の随所で見受けられました。
受容と供給の問題も重視されています。
そういったモノを好む受容層が存在するからこそ、それに応える供給層が生存出来ている。
もし現在も存在するのであれば深刻な社会問題であります。
物語の内容なのですが、そういう最悪な環境で育った少女が一般的な常識に対して、いかに歪んだ人生を歩んだか、と言う面と、凶悪な家庭環境で育った一家の負の連鎖、そしてそういうことを「オトナ」はどう受け止めたらいいのかということを突きつけられるような、考えさせられるような、とても根深い問題を扱っています。
僕たちもこういうことがどうしたらなくなるのか、考えなくちゃいけないんですよね。
そういう深い問題提起のある作品でした。
作中に散りばめられた様々なパーツ・雑多な情報が最終的に組み合わさって結論に至る過程は、相変わらず櫛木さんらしいダイナミックな展開で大満足であります。
警察もの特有の、あちこちでの聞き込みや協力者からの情報など、雑多な情報の中から真実を導き出す過程はとてもおもしろくて、後半というか、ほぼクライマックスにいたるまでミスリードを誘う手法は天晴であります。
犯人、警察、白石など、視点を変えながら進んで行く話もいつも通りの調べれば調べるほどドツボにハマってゆく、暗鬱で何かありそうな感じがよかったです。
作品としては素晴らしいとおもうのですが、やっぱり読後感はスッキリしない。
こう、なにかひっかかるような感じがぬぐえない、心の中にある深いところのアレをえぐるような、それが櫛木さんの小説の魅力なのかもしれませんね。
要するに、扱っている問題が重いのです。
これは辛いよな、という社会問題にガッツリ絡みつくような、櫛木さんの気合がたまらなく伝わってくるのですよ。
だからと言って、つまらないとは一言も言えません。
むしろ、きょーれつに面白かった。
全ての結末を踏まえたうえで、最初から読み返してみると、最後の局面に向けてすべてのベクトルが向かっていることがわかるのも面白い。
かなり計算された作品だと思われます。
いやあ、いいよな。
それと、なんというか、どうでもいいのですが、白石の料理はやりすぎ感アリアリでしょw。
毎度おなじみ大好きな櫛木理宇さんの長編小説であります。
形式としては「虜囚の犬」の続編という形ですが、主要な登場人物以外は一切前作との関りはありませんので、この作品から読み始めても問題ないと思われます。
「死蝋」というのは、Wikipediaによれば
死蝋(しろう、屍蝋・屍?とも)は、永久死体の一形態。死体が何らかの理由で腐敗菌が繁殖しない条件下にあって、外気と長期間遮断された果てに腐敗を免れ、その内部の脂肪が変性して死体全体が蝋状もしくはチーズ状になったものである。鹸化したものもみられる[1]。ミイラとは異なり、乾燥した環境ではなく湿潤かつ低温の環境において生成される。
wiki参照
というものだそうです。
ごくふつうに生活をしていたら絶対に出会うことのないものであることは間違いありません。
そんな、死蝋が最初のキーワードとなる物語です。
話は前作同様白石と和井田のバディに様々な人物が絡みながら進んで行くのですが、今回はより濃密に白石の前職である「家裁調査官」という経歴と絡んだ事件が扱われます。
今回のキーワードとなるのが「ジュニアアイドル」字面だけだと、子ども世代のアイドル、いわゆるマインちゃんとか芦田愛菜ちゃんのような存在を思い浮かべますが、実はとんでもない間違いです。
作中では詳細な描写は控えられていますが、「布面積の少ない衣装」「電マ」もっと直接的な「児童ポルノ」という言葉も使われていました。
どんなものかとネット検索をかけてみたのですが、さすがに「これはダメだ」と思わざるを得ないような画像が頻発してきます。
そんな環境の中に幼児期を過ごした少女が、果たして一般的な社会生活を送れるのか、という問いかけがこの作品の随所で見受けられました。
受容と供給の問題も重視されています。
そういったモノを好む受容層が存在するからこそ、それに応える供給層が生存出来ている。
もし現在も存在するのであれば深刻な社会問題であります。
物語の内容なのですが、そういう最悪な環境で育った少女が一般的な常識に対して、いかに歪んだ人生を歩んだか、と言う面と、凶悪な家庭環境で育った一家の負の連鎖、そしてそういうことを「オトナ」はどう受け止めたらいいのかということを突きつけられるような、考えさせられるような、とても根深い問題を扱っています。
僕たちもこういうことがどうしたらなくなるのか、考えなくちゃいけないんですよね。
そういう深い問題提起のある作品でした。
作中に散りばめられた様々なパーツ・雑多な情報が最終的に組み合わさって結論に至る過程は、相変わらず櫛木さんらしいダイナミックな展開で大満足であります。
警察もの特有の、あちこちでの聞き込みや協力者からの情報など、雑多な情報の中から真実を導き出す過程はとてもおもしろくて、後半というか、ほぼクライマックスにいたるまでミスリードを誘う手法は天晴であります。
犯人、警察、白石など、視点を変えながら進んで行く話もいつも通りの調べれば調べるほどドツボにハマってゆく、暗鬱で何かありそうな感じがよかったです。
作品としては素晴らしいとおもうのですが、やっぱり読後感はスッキリしない。
こう、なにかひっかかるような感じがぬぐえない、心の中にある深いところのアレをえぐるような、それが櫛木さんの小説の魅力なのかもしれませんね。
要するに、扱っている問題が重いのです。
これは辛いよな、という社会問題にガッツリ絡みつくような、櫛木さんの気合がたまらなく伝わってくるのですよ。
だからと言って、つまらないとは一言も言えません。
むしろ、きょーれつに面白かった。
全ての結末を踏まえたうえで、最初から読み返してみると、最後の局面に向けてすべてのベクトルが向かっていることがわかるのも面白い。
かなり計算された作品だと思われます。
いやあ、いいよな。
それと、なんというか、どうでもいいのですが、白石の料理はやりすぎ感アリアリでしょw。