2011年10月03日
『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』
実は少し前ですが想田和弘著・講談社現代新書『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』を読みました。
「観察映画」と自ら呼ぶ方法論でドキュメンタリーを作っている監督の制作ノート的な本です。
事前に台本を作らないことで(逆に普段フィクションのシナリオを書いている人にはドキュメンタリーって台本書くんだ! と思われるかもしれませんが)既成概念や枠にとらわれない作り方ができるというのは、逆にシナリオでも参考になるような気がします。
一つは「台本を作らない」というより「安易な台本を作らない」、つまり、みんなに分かりやすいパターン思考に陥らないようにすること。
もう一つは、よく「このシーンはいらない」とか「このシーンは必要ない」とか言うのですが、「いらない」「必要ない」ではなく「面白い」か「面白くない」かで判断した方がいいのではないかということ。
「必要」だと思っても「面白くない」シーンは思いきって削るか、でなければ「面白い」シーンにすることでしょうし、ストーリーやテーマから少しぐらい外れても「面白い」シーンは生かすべきでしょう。(まあ、何を持って「面白い」とするかの問題はありますが、とりあえず自分が)
よく、ありませんか? ゼミとかで「こういうシーンがほしかったなあ」と言われて「ああ、そのシーンも書いたんですけど入らなくて削っちゃったんです」みたいなこと。
削ったシーンの方が、よっぽど面白いじゃないの! ってこと。
また題材を見つける時の身の周りの見方についても参考になると思います。
「観察映画」と自ら呼ぶ方法論でドキュメンタリーを作っている監督の制作ノート的な本です。
事前に台本を作らないことで(逆に普段フィクションのシナリオを書いている人にはドキュメンタリーって台本書くんだ! と思われるかもしれませんが)既成概念や枠にとらわれない作り方ができるというのは、逆にシナリオでも参考になるような気がします。
一つは「台本を作らない」というより「安易な台本を作らない」、つまり、みんなに分かりやすいパターン思考に陥らないようにすること。
もう一つは、よく「このシーンはいらない」とか「このシーンは必要ない」とか言うのですが、「いらない」「必要ない」ではなく「面白い」か「面白くない」かで判断した方がいいのではないかということ。
「必要」だと思っても「面白くない」シーンは思いきって削るか、でなければ「面白い」シーンにすることでしょうし、ストーリーやテーマから少しぐらい外れても「面白い」シーンは生かすべきでしょう。(まあ、何を持って「面白い」とするかの問題はありますが、とりあえず自分が)
よく、ありませんか? ゼミとかで「こういうシーンがほしかったなあ」と言われて「ああ、そのシーンも書いたんですけど入らなくて削っちゃったんです」みたいなこと。
削ったシーンの方が、よっぽど面白いじゃないの! ってこと。
また題材を見つける時の身の周りの見方についても参考になると思います。
2011年09月08日
『炎のランナー』
例によって「月刊シナリオ教室」の原稿のために見直しました。
ユダヤ人のランナーと安息日を守ろうとするランナーがオリンピックに出場し金メダルを獲得するまでを、ほとんど並行して描いています。
原稿で取り上げるのとは別に、ちょっと複雑な構造をしていて、1978年から始まり回想になるのですが、オリンピックの合宿でユダヤ人ランナーの友人が手紙を書いているところになり、さらに回想でケンブリッジ大学に入学した時に遡っています。
あとは時系列で描かれ、最後に1978年に戻ると、最後の最後で、合宿の海辺で走るシーンになります。
かつて観た時は、単純に二人のランナーの対照を描き、どちらかというと敬虔なランナーの側に立って描かれているような記憶があったのですが、今見ると、どうも違うような気がします。
ユダヤ人のランナーと安息日を守ろうとするランナーがオリンピックに出場し金メダルを獲得するまでを、ほとんど並行して描いています。
原稿で取り上げるのとは別に、ちょっと複雑な構造をしていて、1978年から始まり回想になるのですが、オリンピックの合宿でユダヤ人ランナーの友人が手紙を書いているところになり、さらに回想でケンブリッジ大学に入学した時に遡っています。
あとは時系列で描かれ、最後に1978年に戻ると、最後の最後で、合宿の海辺で走るシーンになります。
かつて観た時は、単純に二人のランナーの対照を描き、どちらかというと敬虔なランナーの側に立って描かれているような記憶があったのですが、今見ると、どうも違うような気がします。
2011年04月28日
『白夜行』最終話を見直しました
例によって月刊シナリオ教室の連載「シナリオ錬金術」の原稿のためですが『白夜行』の最終話を(ついでに第10話も)見直しました。
ほとんどの連続ドラマはハッピーエンドか、犯罪を犯した者は捕まるか何らかの罰を受けるか改心するパターンです。
が、『白夜行』の連続ドラマはテレビドラマでは珍しく犯罪者が捕まらずに終わります。
とはいえテレビなので生き続けることは罰を受けることだというようなことが言われ、ラストシーンは、ちょっと救いを持たせています。
でも、上っ面な正義感や善意を拒否したような、かなり思い切った終わり方です。
ほかにもフェリーニの『道』や(これは原稿では使いませんでしたが)、ヴィットリオ・デ・シーカ『ひまわり』を何年ぶりかで見直しました。
名作といわれている映画ってハッピーエンドじゃないもの多いですね。
ほとんどの連続ドラマはハッピーエンドか、犯罪を犯した者は捕まるか何らかの罰を受けるか改心するパターンです。
が、『白夜行』の連続ドラマはテレビドラマでは珍しく犯罪者が捕まらずに終わります。
とはいえテレビなので生き続けることは罰を受けることだというようなことが言われ、ラストシーンは、ちょっと救いを持たせています。
でも、上っ面な正義感や善意を拒否したような、かなり思い切った終わり方です。
ほかにもフェリーニの『道』や(これは原稿では使いませんでしたが)、ヴィットリオ・デ・シーカ『ひまわり』を何年ぶりかで見直しました。
名作といわれている映画ってハッピーエンドじゃないもの多いですね。
2011年01月31日
S1授賞式で公開講座やりました
先週の土曜日はシナリオセンターで、S1シナリオ・グランプリというコンクールの授賞式がありました。
毎回、授賞式の後、1時間ぐらい、コンクールのための公開講座をやっていて、今回もS1受賞作を例にコンクール突破のためのコツを、お話しました。
コンクールで最も求められているものは今までにない新鮮さ。
特にシーンの新鮮に描くにはキャラクターがポイントという話をしました。
最後に、ちょこっとだけ、今までにない新鮮な題材を見つけるには自分の身の回りにこだわることも。
授賞式の後、受賞者と食事会がありました。
今回は土曜の昼に授賞式で、食事会が中途半端な時間だったので、お店がなかったらしく、ちょっと、お手軽な感じでしたが、でも受賞者同士は今までになく盛り上がっていました。
今期の連ドラは『冬のサクラ』を観ていますが、昨日は何故か録画予約したのにされておらず、途中からしか観られませんでした。
高島さん、いいですよね! 怖い!
弟役の佐藤健さんって、すごく上手いなあ! と思います。
毎回、授賞式の後、1時間ぐらい、コンクールのための公開講座をやっていて、今回もS1受賞作を例にコンクール突破のためのコツを、お話しました。
コンクールで最も求められているものは今までにない新鮮さ。
特にシーンの新鮮に描くにはキャラクターがポイントという話をしました。
最後に、ちょこっとだけ、今までにない新鮮な題材を見つけるには自分の身の回りにこだわることも。
授賞式の後、受賞者と食事会がありました。
今回は土曜の昼に授賞式で、食事会が中途半端な時間だったので、お店がなかったらしく、ちょっと、お手軽な感じでしたが、でも受賞者同士は今までになく盛り上がっていました。
今期の連ドラは『冬のサクラ』を観ていますが、昨日は何故か録画予約したのにされておらず、途中からしか観られませんでした。
高島さん、いいですよね! 怖い!
弟役の佐藤健さんって、すごく上手いなあ! と思います。
2011年01月22日
コンクール講座やりました
今日、シナリオ・センターでコンクール講座をやりました。
これまでコンクール講座は連続6回(うちゲスト2回)みたいな感じでやってましたが今回は1回きり。
ポイントをしぼって構成の話とトップシーンの話をしました。
ちょっとだけバラすと、構成ではコンクールの1時間ものは20枚シナリオ5つのイメージで、その20枚一つ一つが面白くなるように意識して書くといいですよ、みたいな感じです。
トップシーンは、音の描写を入れることを話しました。
今回のフジテレビ・ヤングシナリオ大賞の大賞受賞作や佳作のシナリオもそうなのですが、トップシーンで音を感じさせています。
1回2時間にしては、やや盛り込みすぎた感じではありましたが…。
来週の土曜日はシナリオS1グランプリの授賞式で、また1時間ほどコンクールの話をします。
これまでコンクール講座は連続6回(うちゲスト2回)みたいな感じでやってましたが今回は1回きり。
ポイントをしぼって構成の話とトップシーンの話をしました。
ちょっとだけバラすと、構成ではコンクールの1時間ものは20枚シナリオ5つのイメージで、その20枚一つ一つが面白くなるように意識して書くといいですよ、みたいな感じです。
トップシーンは、音の描写を入れることを話しました。
今回のフジテレビ・ヤングシナリオ大賞の大賞受賞作や佳作のシナリオもそうなのですが、トップシーンで音を感じさせています。
1回2時間にしては、やや盛り込みすぎた感じではありましたが…。
来週の土曜日はシナリオS1グランプリの授賞式で、また1時間ほどコンクールの話をします。
2011年01月16日
『ロッキー』観ました
久しぶりに『ロッキー』を観ました。
シナリオ・センターの会員誌『月刊シナリオ教室』に連載している「シナリオ錬金術」の原稿で取り上げるために見直したのですが、泣けました。
クライマックスからラストは圧倒的です。
クライマックスの弱さがコンクール応募作の共通の弱点なので参考になると思います。
シナリオ・センターの会員誌『月刊シナリオ教室』に連載している「シナリオ錬金術」の原稿で取り上げるために見直したのですが、泣けました。
クライマックスからラストは圧倒的です。
クライマックスの弱さがコンクール応募作の共通の弱点なので参考になると思います。
2011年01月01日
あけまして、おめでとうございます
何カ月ぶりかのブログ更新です。
ひっそりと、といっても今やほとんどアクセスが一ケタになっているので自然にひっそりなんですが、再開したいと思います。
で、今まではシナリオを書いているみなさんに役立ちブログになっていましたが、これからは、まあ、私が感じたことや考えていることを地味に書いていこうかな、と。
で、今日は元旦ですので私の今年の抱負を。
具体的な目標の一つとして、シナリオ・センターの情報誌「シナリオ教室」で連載している「シナリオ錬金術」を終了し、新連載を開始するというのがあります。
一昨年あたりから考えていたのですが、新連載って準備が必要なんですね。
その時間がなかなか取れず…。
今年は、ぜひ新連載を始めたいと思います。
新連載の中身は…それは、お楽しみで。
ひっそりと、といっても今やほとんどアクセスが一ケタになっているので自然にひっそりなんですが、再開したいと思います。
で、今まではシナリオを書いているみなさんに役立ちブログになっていましたが、これからは、まあ、私が感じたことや考えていることを地味に書いていこうかな、と。
で、今日は元旦ですので私の今年の抱負を。
具体的な目標の一つとして、シナリオ・センターの情報誌「シナリオ教室」で連載している「シナリオ錬金術」を終了し、新連載を開始するというのがあります。
一昨年あたりから考えていたのですが、新連載って準備が必要なんですね。
その時間がなかなか取れず…。
今年は、ぜひ新連載を始めたいと思います。
新連載の中身は…それは、お楽しみで。
2010年08月02日
『ぐるりのこと。』観ました
DVDをレンタルして『ぐるりのこと。』を観ました。
『ハッシュ』の橋口亮輔監督。
子どもの死をきっかけに、うつになる主人公と、その夫の関係を、むしろ淡々と静かに、1990年代に実際に起こった事件と対照的に描いています。
本当に静かな映画なのですが、キャラクターは、強く、はっきりと描かれています。
特に主人公。夫婦のHは週三回、月、水、土と決めていて、どんなことがあっても決まりを守ります。
ゼミとか、さまざまな講座などで、ことあるごとに言っているのですが、みなさんが描くキャラクターに比べて、実際の映画やテレビドラマの(つまりプロのライターが描く)キャラクターは、はるかに個性的に、はっきり描かれています。
それは『銭ゲバ』みたいなドラマやコメディはもちろんなんですが、リアルで静かな映画も、実はキャラクターを思っている以上にはっきりと個性的に描いています。
みなさんも自分の好きな映画やドラマを思い出してみて下さい。キャラクターが個性的で、それだけで面白く描かれていると思います。
そして、ぜひ、自分が描くシナリオのキャラクターも、より個性的に、よりはっきり描くようにしてみてください。
『ハッシュ』の橋口亮輔監督。
子どもの死をきっかけに、うつになる主人公と、その夫の関係を、むしろ淡々と静かに、1990年代に実際に起こった事件と対照的に描いています。
本当に静かな映画なのですが、キャラクターは、強く、はっきりと描かれています。
特に主人公。夫婦のHは週三回、月、水、土と決めていて、どんなことがあっても決まりを守ります。
ゼミとか、さまざまな講座などで、ことあるごとに言っているのですが、みなさんが描くキャラクターに比べて、実際の映画やテレビドラマの(つまりプロのライターが描く)キャラクターは、はるかに個性的に、はっきり描かれています。
それは『銭ゲバ』みたいなドラマやコメディはもちろんなんですが、リアルで静かな映画も、実はキャラクターを思っている以上にはっきりと個性的に描いています。
みなさんも自分の好きな映画やドラマを思い出してみて下さい。キャラクターが個性的で、それだけで面白く描かれていると思います。
そして、ぜひ、自分が描くシナリオのキャラクターも、より個性的に、よりはっきり描くようにしてみてください。
2010年07月20日
シナリオ・センターのサマーセミナー
土曜日にシナリオ・センターのサマーセミナー初日に参加しました。
このブログでも書いた、初日朝からのオプション講座を担当、直しをどうやるかを話しました。
初日はゲストの日。
最初は若手というかデビューして数年以内の出身ライターの、お話をうかがいました。
中でも女性のAさんが、スポーツと同じだから体を動かしていく、とりあえずダラダラでもいいのでシナリオを書いてみる、という話をしていたのが印象的でした。
体調が悪くなってきたせいもあり(たぶん、ずっとエアコンの部屋の中にいたせいではないかと思うのですが…)、夕食前に帰宅しました。
このブログでも書いた、初日朝からのオプション講座を担当、直しをどうやるかを話しました。
初日はゲストの日。
最初は若手というかデビューして数年以内の出身ライターの、お話をうかがいました。
中でも女性のAさんが、スポーツと同じだから体を動かしていく、とりあえずダラダラでもいいのでシナリオを書いてみる、という話をしていたのが印象的でした。
体調が悪くなってきたせいもあり(たぶん、ずっとエアコンの部屋の中にいたせいではないかと思うのですが…)、夕食前に帰宅しました。
2010年07月14日
「直し」は、直しじゃない(?)
今日は一日、今週末に行われるシナリオ・センターのサマーセミナーの講座の準備をしてました。
講座の内容は「直し」。
サマーセミナー2日目にゼミをやり、課題のシナリオを発表してもらって感想を聞き、それをもとに「直し」をするのです。
で、みなさんが「直し」をするポイントやコツを初日の午前中(セミナーが始まる前のオプション講座です)に、お話するというもの。
「直し」なんて言うから、よくないところダメなところを「直す」イメージなんですが、本当の「直し」は、より面白くすること。
よくないところダメなところを直したって、面白いシナリオにはなりません。欠点のより少ないシナリオにはなりますが。
欠点が少ないことが面白いにはなりませんから。
だから「直し」は直しじゃないんですね。
いいところを生かす、広げる、面白いところをプラスする、といった感じでしょうか。
この「直し」なんていう言葉も、エラそうなセンセイが、あそこがダメ、ここがよくないとエラそうに言っていたことの名残なのかもしれません。
もちろん現場では直しはあります。予算とか、いろいろ現実があるので修正する必要があるのです。そういう「直し」と、いわゆる、より面白くしようという「直し」は区別した方がいいと思います。
講座の内容は「直し」。
サマーセミナー2日目にゼミをやり、課題のシナリオを発表してもらって感想を聞き、それをもとに「直し」をするのです。
で、みなさんが「直し」をするポイントやコツを初日の午前中(セミナーが始まる前のオプション講座です)に、お話するというもの。
「直し」なんて言うから、よくないところダメなところを「直す」イメージなんですが、本当の「直し」は、より面白くすること。
よくないところダメなところを直したって、面白いシナリオにはなりません。欠点のより少ないシナリオにはなりますが。
欠点が少ないことが面白いにはなりませんから。
だから「直し」は直しじゃないんですね。
いいところを生かす、広げる、面白いところをプラスする、といった感じでしょうか。
この「直し」なんていう言葉も、エラそうなセンセイが、あそこがダメ、ここがよくないとエラそうに言っていたことの名残なのかもしれません。
もちろん現場では直しはあります。予算とか、いろいろ現実があるので修正する必要があるのです。そういう「直し」と、いわゆる、より面白くしようという「直し」は区別した方がいいと思います。