あいち妖怪保存会 公式ブログ

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こんにちは 【あいち妖怪保存会】です
愛知にゆかりのある 「あやしい」モノゴトを 掘り起こし カタチを与え
ふるさとの妖怪として 皆さんへとつなぐ さまざまな取り組みをしています

私たちの周りに 妖怪たちはたくさんいます
ぜひ いっしょに愛知妖怪を楽しみましょう

2/20「ミステリとホラーの交錯」サタデープログラム

平成28年2月20日(土曜日)
東海高校・中学 サタデープログラムにて
島田共同代表が講師を務めます

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 第28回サタデープログラム 講座番号38 
ミステリとホラーの交錯~怪人二十面相のふるさと

日時平成28年2月20日(土) 第3部 14:00~15:30
会場東海高等学校・中学校
   愛知県名古屋市東区筒井1-2-35(アクセス
受講無料。定員なし
申込予約しなくても受講できますが、人数把握のため事前申し込みにご協力ください。
     http://www.satprogram.net/research/about.html
講師小松史生子 (金城学院大学文学部教授)
   島田尚幸 (東海中学校教員)

概要日本が生んだ大怪盗、怪盗二十面相。彼の足跡がこの地には残っています。
   大乱歩を育んだ都市「名古屋」をミステリーとホラーという視座から眺めてみたいと思います。

問合せ東海高等学校・中学校 
     〒461-0003 名古屋市東区筒井1-2-35
     TEL 080-9734-5111(サタプロ直通) FAX 052-936-5195
     公式サイト http://www.satprogram.net/index.html

12/16 国際wagaku大学で講座を担当します

終了しました。ありがとうございました。
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平成27年12月16日(水)
国際wagaku大学での講座 ご参加受付中です
どなたでも受講できます 
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第25回講座 「国際化のなか、『妖怪』は ~”妖し” の世界へご招待 ~」
日時平成27年12月16(水)18時30分~20時10分(予定)
場所名古屋都市センター第4会議室 (金山総合駅南口 ボストン美術館上階)
定員30名 
講師島田 尚幸 
料金会員500円 非会員700円
概要
「妖怪ブーム」と言われて久しいです。
 しかし、そもそも「妖怪」とは何なのでしょう。
「妖怪ウォッチ」や「ゲゲゲの鬼太郎」のような漫画やアニメ、ゲームに現れてくるキャラクタ?
浮世絵や絵巻に描かれてきた異形のモノ?
それとも “目に見えない何か” でしょうか?
本講座では「妖怪」を入口に、「日本文化とは何か」を一緒に考える機会にしたいと思います。
    
タイムスケジュール
  18:30~18:40 講座開講のあいさつ 講師紹介 
  18:40~19:30 講座
  19:30~20:00  グループトーク
  20:00~20:10 講座閉講のあいさつ お知らせ

詳細・申込国際wagaku大学 近日開催の講座 ご案内

トークイベント レポート「語りつなぐ大府と遠野」(5)

おおぶ文化交流の杜図書館「秋の図書館まつり」
『語りつなぐ大府と遠野 ~狐狸妖怪のいきるまち』
イベントレポート(5)第2部編

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終わりに―語りつなぐ大府と遠野
島田:といったところで時間も過ぎてしまいました。最後にひとこと戴ければ。
土方:最近、大手の出版社が図書館に新刊の貸出猶予を要求するというニュースがありましたが、
   僕らみたいな小部数を発行する小さな出版社にとって図書館はお得意さんなんですよ。
   図書館は地域の知を集積する場所ですから、100年後の人たちに残すに貴重な存在だと思います。
   前川さんより先に紹介しちゃいますが(笑)、遠野文化研究センターが発行して、
   私たち荒蝦夷が編集・制作を担当した『遠野学』創刊号は、
   ちょうど東日本大震災のときに遠野文化研究センターがどのように動いたのか、
   という「震災と文化」の記録になっています。
   前川さんにも寄稿していただいています。この表紙に写っているの前川さんですから(笑)。
   今日の寄付先「NPO法人 遠野まごころネット」が、どのような取り組みをしてきたかという記録
   『新・遠野物語』も荒蝦夷から出させていただいています。
   他にも怪談の本などいろいろ出していますので、見ていただければと思います。
   いろいろな考え方があるとは思いますけれども、読むことが支援となったりします。
   被災3県にいる私たちが何を考え、どう思っているのかを伝える容れ物のひとつが「本」です。
   (会場で物販担当の)ちくさ正文館書店さんは、ウチの本を切らさずにずっと揃えていてくれて、
   東北のことを知ってもらおうと応援してくださっています。
   ぜひ手に取って読んでいただければと思います。ありがとうございました。
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前川:最後に皆さんにお願いしたいことがあります。
   震災、災害など非常事態が起こったときに「声をあげて」もらいたいんです。
   というのは、今回の文化財の資料回収の発端になったのは、
   陸前高田市立図書館で古文書を読んでいた市民サークルの人たちの声でした。
   自分たちが読んでいた古文書は被災によって海水で汚れてしまっていまだ図書館の中にある。
   あれをなんとか救ってほしい、と声をあげたことで専門家が動いたんです。
   地域の暮らしの記憶を残すのは、私たち専門家ではなくて、
   市民の人たちの声だということを目の当たりにしました。
   それから、図書館にはこういった文字による記憶が残っているんだけれども、
   それといっしょに「これは大事なものなんだよ」という血が通った「語り」を
   同時に伝えなければならないんです。
   温かい感情のこもった語りこそが記憶を長く伝えることができる。
   実際、災害のときに多くの命を救ったのは、おじいさん・おばあさんたちから聞いた、
   「地震が起きたときにはすぐに高いところに逃げなければいけない」、
   「自分の家の井戸が枯れたら津波が来るから真っ先に逃げなさい」という教えだった。
   皆さんにはそういった温かい、血の通った記憶を語りつないでいっていただきたいなと思います。
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峯岸:図書館は去年の7月にオープンしたばかり。
   春頃までみんなで段ボールの本を運んでいるといった状態で、
   「本当に図書館できるのかな?」と思っていたんですが(笑)。
   1年経ってみれば、最初小さな輪だったものがどんどん拡がっていって、
   東北の宮城県、岩手県とつながりました。
   また、多くの方々にご協力いただいて本当に良いイベントになりました。
   自分としても、図書館の可能性というものに改めて驚いています。
   これからも図書館は地域の皆さんと歩んでいきます。
   ぜひ、かわいがっていただければと思います。今日はありがとうございました。
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島田:皆さまの机の上には、募金先・NPO法人遠野まごころネットの案内を置かせていただきました。
   まだ、震災は終わっていません。
   こちらのボランティアグループがあったからこそ、
   例えば遠野文化研究センターの人たちが仕事に戻ることができたということもあります。
   
   今回の「秋の図書館まつり」、
   おおぶ文化交流の杜図書館で「文化」というものを改めて考えて、
   怪や信仰、あるいは人の生と死、未来と過去、
   そうしたものを考える機会となったのではと思います。
   まだまだ震災に対してやることはありますし、我々がしなければならない課題もたくさんあります。
   でも、そのなかで楽しんで、紙芝居として、自分の語りとして伝えている人たちがいる。
   今回のトークイベントが、娯楽として楽しみつつも、
   さまざまなところで郷土を、文化を振り返るきっかけとなってくれればと思っております。
   本日は、どうもありがとうございました。
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写真提供:アドメディアP&D

 (「語りつなぐ大府と遠野」了)

トークイベント レポート「語りつなぐ大府と遠野」(4)

おおぶ文化交流の杜図書館「秋の図書館まつり」
『語りつなぐ大府と遠野 ~狐狸妖怪のいきるまち』
イベントレポート(4)第2部編

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東北の精神風土―ふしぎなことが怖くないんです
土方:東北ってふしぎなことが怖くないんですよね。
前川:怖くないですね(笑)。
   いま、三陸海岸に幽霊がでると噂がたつと、みんな見に行く。
   それはなぜかというと、自分の行方不明になっている家族かも、会えるんじゃないか、と。
土方:そう、ウチの旦那の幽霊じゃないか? と行く。
   息子さんを亡くした方が、不思議な経験をしたからと、僕らが開いた怪談会に来てくれたんです。
   旦那さんに話すと、病院に行って来いって言われ、病院に行くと大丈夫ですよ、と言われる。
   お寺に行くと供養しなさい、と言われる。
   私はただ死んだ息子に会いたい、だけどそれを言うと病気扱いされるのが耐えられない、
   不思議な経験をしたことを認めてくれる人たちのところだから、と来てくれた。
   怪談作家の黒木あるじさんが、被災地の怪談を集めているんですが、ほんと怖くないんです。
   怖い、って言っているのは、他所から復興作業に来ている人たちです。
   現場で不思議な目に遭うと、怖いから夕方以降は近寄らない、となるんだ。
   地元の人は100パーセントといっていいくらい怖がってませんね。
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前川:東北の人は、暮らしのなかで、死んだ人に会う機会が多いんですよ。
   例えば、イタコという死者の霊を招んでくれる人たちがいまだに青森県にいますし、
   あの世から帰ってくる家族をもてなし送り出すお盆をすごく大切にしています。
   郷土芸能にも死者をお迎えするための踊りがたくさん残っていたりする。
   あの世の人たちが身近なものとして捉えられているんですね。
島田:得体が知れないから怖いし不安になるというのが人間の本能にはあるんですが、
   東北で語られている事物は得体が知れているんですね。
   特徴的だなと思ったのは、
死者を分かち合い、語らう場として、
   科学でもなく宗教でもなく、怪談会が機能している点。
   語り、聞き、物語になっていく過程で心の安定が取り戻されていくと考えると、
   『遠野物語』が編まれた原体験と重なるのでは、と改めて感じました。
   峯岸館長はご出身が東北ということですよね?
峯岸:実は、宮城県の出身でして。高校を卒業後各地を転々とし、いま愛知にいるんです。
   今回、こうした場にいることに、不思議なご縁を感じますね。
   実家は仙台市の隣、利府町の地盤のしっかりした高台にあるので被害はありませんでした。

「文化」を守り継いでいくこと
島田:文化というものは災害で簡単に損なわれてしまうものです。
   人命や土地が影響を被るというのは分かりやすいんですが、
   人の語りや食や祭といったものも、ものすごい打撃をうけてしまうんですよね。
   そういった「文化を守る」ために何ができるのか考えていきたいと思います。

土方:仙台で出版社をやって15年になります。
   遠野文化研究センターの所長をされている赤坂憲雄(あかさか のりお)さんが
   「東北学」というものを立ち上げたときに、僕は東京から仙台へと拠点を移したんです。
   地元の出版社ですから、とにかく東北6県についての本、歴史とか民俗とか文学とかの本を
   ずっと出し続け、地域づくりのためのひとつの資料になればいいとやってきたんですね。
   ところが震災が起こって、いま現在、特に東北の被災3県に暮らしている人たちが、
   先ほどの怪談の効用のように読んでくれたりしていることに気がつかされました。
   震災関係の本をいっぱい出しましたから、なんといいますか――
   趣味の読書ではなく、生きていくために必要としている人たちのために、提供しなければならない、
   という風に考えが変わりました。
   
この(『遠野物語』)幽霊の話なんかもさんざ読んではいたんですが、
   震災後に読んで愕然としましたね。
   柳田國男・佐々木喜善のメッセージが読みとれていなかったんだとひしひしと感じました。
   過去の人たちの語りを記録として残すことは、
   未来に暮らす人へメッセージを残すことでもあったんだな、とも気付いて。
   らがつくっている東日本大震災の本が、百年後の東北の人たちに何を伝えられるか、
   と五十年、百年のスパンで考えるようにとなりました。

前川:文化ってなんだろう? と思うようになりました。
   突き詰めるとその土地の人たちの暮らし方、暮らしぶりだったんですね。
   じゃあ、その暮らしぶりを長い時間にわたって記憶していたり、
   集めている場所はどこかというと、図書館と博物館だったんです。
   私は、陸前高田という、あの一本松がある、多くの町が流されたところで、
   図書館・博物館の資料を回収する仕事に携わっていました。
   すると市民の方たちが訪ねてくるんですよ。
   自分たちの家にはもう何も残っていないけれども、かつて図書館・博物館に寄贈した思い出の品、
   それらが残っているか確かめに来たとおっしゃるわけです。
   そして、使っていた机や写真などが残っているのを見て、
   これまで暮らしてきた人生を全部失ったわけではないんだと、すごく喜んで帰っていかれたんです。
   私たちが資料を回収しているとき、周りの家々の人たちも泣きながら、土を這いずりながら、
   位牌や道具などをかき集めている姿を見ました。
   文化財というのは、家の記憶、土地の記憶を遺していくものであったんだと、
   改めて現場で実感し、
地域の人が図書館、博物館に期待している役割がはっきり分かりました。
   だからこそ、被害に遭った図書館・博物館の手伝いをしようと取り組んできたわけです。
   
   その「三陸文化復興プロジェクト」のPRに大府を訪れたときに、遠野と似ていると感じました。
   地理的に比較的安全な地域なので、いざ大きな災害が起きた日には、遠野のように
   周辺の町を助けたり、失った物を復元して戻したりする役割を担う土地柄なのでは、と。
   先ほど大府の民話の上演がありましたね。
   口で語り継いで残していこうとしている人たちが、大府にはいる。
   この活動が周りに伝わって、「うちの町にもこんな民話があった」と気付かせてあげるように
   なるんじゃないかなと思います。期待したい。
    
峯岸:実際にここの図書館では遠野市や大滝村といった友好都市・提携都市コーナーを設けて
   関連する資料を集めています。
   大府市の関連図書コーナーには、『大府市誌』から、地元のレスリング選手・吉田沙保里さん
   が書かれた本なども所蔵しています。
   本だけではなく映像資料といった地域の映像や音の記憶も収集していますし、
   さらに踏み込んで、「allobu映像アーカイブス」も投入しています。
   これはNHKが保存している大府市に関連する映像を収録したもので、
   フロアに設置して、いつでも誰でも利用できるようになっています。
  (会場に)皆さんのお宅に大府の珍しい映像が残っているなら、ぜひ図書館にお貸しください。
   複製して収蔵させていただきます。
   こういった取り組みは図書館だけでやっていけるものではないので、
   市民の皆さんにお力を借り、いっしょに歩んでゆきたいと思っています。
   それから、郷土資料のデジタル化にも取り組んでいます。図書館のHPからも見られます。
   情報の発信方法って形のあるものだけじゃないですから、
   このようなトークイベントや、「ふるさと講座」といった講座・講演会も定期開催しています。
   この場を借りて自分の思いを述べさせていただくと、
   図書館って市民の皆さまに何かを教えたり指導する場所じゃないんです。
   図書館とは人をつなぐ場所。本と人だったり、場所と人だったり、人と人だったり。
   今日、そうした面が本当によく表れたイベントになったかと思います。
   市民の自立を助ける場所、一人ひとりが自分の頭で考え、行動できるように支援する場所が
   図書館だと、僕は思います。
   重要なのは地域の先人たちの暮らし、知恵を残し、提供していくことだと思っています。
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島田:最近、図書館の在りかたや図書資料の扱いについていろいろ議論が起こりました。
   郷土資料ってその土地その土地の図書館の宝だと思うんですね。
   でも、その土地だけで完結するのではないと思います。
   今回「開けてみよう! 異界への扉」と題して、妖怪の関連本などを展示する機会を戴きました。
   この図書館は遠野と友好都市提携を結んでいるだけあって、
   遠野関係の資料がたくさんあるんですね。荒蝦夷の資料もコーナーがつくられています。
   震災が起きて資料が流されてしまったり、燃えてしまったりということもありえます。
   おおぶ図書館のように、遠野の資料がある、というのは大きいと思うんですよ。
   減災において、
デジタルにするというのもひとつの方法ですが、
   本を複数の場所でいろいろな形で残していくという方法も大事です。
 
 (「語りつなぐ大府と遠野」(5)に続きます)

トークイベント レポート「語りつなぐ大府と遠野」(3)

おおぶ文化交流の杜図書館「秋の図書館まつり」
『語りつなぐ大府と遠野 ~狐狸妖怪のいきるまち』
イベントレポート(3)第2部編

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東日本大震災から4年―東北のいま
島田:災害――東日本大震災に戻りますが、土方さんとの出会いについてお話したいと思います。
   『遠野物語』刊行から100年の2010年に、文芸評論家の東雅夫(ひがし まさお)さんと、
   土方さんが代表を務める出版社・荒蝦夷が中心となって、
   東北の怪しい話・ふしぎな話を推し進める文芸運動「みちのく怪談プロジェクト」を
   スタートさせました。
   しかしその翌年、荒蝦夷は被災し大変な状況に陥ってしまう。
   何とかできないかと立ち上げられたのが「ふるさと怪談トークライブ」です。
   これは、それぞれの地元に伝わる怪しい話・ふしぎな話をもとに、地域と文化を振り返りながら
   トークライブを開催し、入場料など収入を支援金に充てようというもの。
   1年目の支援先が荒蝦夷、2年目が遠野文化研究センターでした。
   実は、2年目に「ふるさと怪談トークライブin名古屋」を行った場所が、
   この会場で書籍販売を担当している ちくさ正文館書店だったというつながりがあるんです。
   そのトークライブでは、土方さんにお越しいただいて、(会場を指して)そちらにいらっしゃる
   ちくさ正文館書店 古田店長、田原市図書館の豊田館長、東雅夫さんというメンバーで、
   出版社――書店――図書館という本をテーマにしたトークライブを催した。
   今回、このイベントを共催するにあたって、東北を改めて考えるのであれば、
   ぜひとも土方さんに来ていただいて、今の東北の状況や
   『遠野物語』にかんする文芸をお聞きしたいと思ったんです。
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土方:今の東北の状況。……瓦礫はなくなりました。
   もともとの地面をかさ上げして、再建しようという工事の真っ最中です。
   高い防潮堤もつくっています。高台に町を再建しています。
   これら3つの工事が急ピッチで続いているところです。
   どの工事にしても「さあ、それでいいの?」という声が当然ありまして。
   これだという対応策がないなか、迷いながら、それでも何とかしなきゃ、
   という感じて進んでいるといったところでしょうか。
   岩手・宮城・福島で仮設住宅、もしくは他の地域に避難されている方が20万人います。
   来年の3月11日に5年目を迎えます。
   (阪神淡路大震災の)神戸では5年目の1月17日に、仮設住宅解消宣言を出しています。
   これまでは神戸の復興経験を参考にしてきたんですが、来年の3月11日以降は、
   いわば日本がこれまでなかった領域に踏み込んでいくことになりますね。
島田:被災地から離れれば離れるほど、現状が見えなくなってしまうけれども、
   大府にも支援活動をしていらっしゃる方々がいます。

震災後に『遠野物語』を読み返して
島田:東日本大震災の報道の際、「三陸津波」の話がしばしば取り上げられました。
   『遠野物語』にも、その話が顔を覗かせています。
前川:海のない遠野の『遠野物語』にたったひとつだけ津波の話が入っています。
   遠野から三陸海岸へ婿入りした男がいました。
   子宝にも恵まれ、幸せに暮らしていたところ、明治の三陸津波によって妻と子を喪ってしまう。
   その1年後、妻の幻と出遭うんです。
   妻は、男と結婚する前に付き合っていた男性と歩いていた。
   思わず「子供がかわいくないのか」と語りかけるのだけれど、
   妻は悲しげな顔をしただけで消えていってしまう――という話です。
   東日本大震災が起きるまでは、ちょっと変わった幽霊の話だと捉えていました。
   けれど震災後、この話は遠野の話でもあったんだな、気付いたんです。
   海も見たことがなかった男性が、津波によって家族を喪い、心に深い傷を負う。
   生きるために妻子のことを忘れなければならない、でも忘れることはできない、
   そういう葛藤をくりかえしていたときの話だったんだと。
   実際、東日本大震災でも、怪談、亡霊の話、幽霊の話が多くでてきたのは1年後だったんですね。
   『遠野物語』の男性はその後、病気になったと書かれています。
   災害によるPTSD、心的な外傷で、それが彼に幻を見せたんじゃないかと思うようになりました。
   この話を、現地の海岸ではなく、内陸の遠野の人たちが記憶していたということろに
   改めて『遠野物語』のすごさを思い知らされました。

土方:(手にとりながら)この遠野文化研究センター発行、荒蝦夷出版の『大海嘯被害録』は、
   「風俗画報」という雑誌が明治三陸津波を特集したものを復刻しました。
   明治三陸津波ときと同じところが、今回も被害を受けている。
   記憶さえしていれば、今回の津波対策につなげられたのに、と思いましたね。
    
   いま、とにかく被災地でたくさんの幽霊の話が出てきています。
   仮設住宅に取材に行き、そこのお婆ちゃんと話をしたんです。
   「いやぁ、出るんだよね」。なに、どうしたの? って訊いたら、
   「近所だった友だちのお婆ちゃんが来るんだ」と。
   来て、お茶を飲みながら世間話をする、またね、と送り出したら座布団が濡れている。
   「ああ、あの人津波で死んだんだっけよ」。
   他の知り合いの仮設住宅にも現われるそうなんです。
   「まあ、急に波にさらわれたんで自分が死んだってわかってねんだ」と(笑)。
   「おめえもう死んだんだから来んな、というのも気の毒だから、そのうち自分で気がつくべ」
   ってみんなが受け入れているんです。
   それ聞いて鳥肌がたって――いや、怖くてじゃなくて、
   ああ、『遠野物語』ってこうやって生まれたんだ、という驚きで。
   他にもオチがあって笑ってしまうものや、その場にいる人が泣いてしまうものもあって、
   民話、昔話の豊富な東北の精神性が、こういう災害が起きたときに、ばあっと動き出すんだなと
   痛感しているところです。

   PTSDの話が出ました。苦しんでいる人がたくさんいます。
   こういった死者の話は……なんというのか、治療しようという意図なくして、
   地域の人たちが生活のなかで、笑い飛ばしたり、一緒に泣いたりするなかで、
   立ち直らせるような機能をしているんだろうなと思います。
   前川さん、いかがですか?
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前川:なぜ海の話が遠野に残ったのかを考えました。
   被災地の人たちは同じ苦しみを抱えているんです。家族を亡くし家を失くし。
   同じ思いだから、言えない。でも、少し離れた内陸の遠野の人になら、ぽろっと言えるんです。

   記憶って、実は起きた場所ではなく、周辺に残るのではないのかと思います。
   中心になったところは、複雑な事情があって話せなかったり、
   新しい情報がどんどん入って上書きされ忘れられてしまう。
   だから、古い記憶というのは、あんがい周辺に残るものなんだと最近思うようになりました。

 (「語りつなぐ大府と遠野」(4)に続きます)

トークイベント レポート「語りつなぐ大府と遠野」(2)

おおぶ文化交流の杜図書館「秋の図書館まつり」
『語りつなぐ大府と遠野 ~狐狸妖怪のいきるまち』
イベントレポート(2)第2部編

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休憩をはさみ、第2部はトークセッションです。
主催のおおぶ文化交流の杜図書館 峯岸館長より、
今回のトークイベントのタイトルにも冠されている「大府と遠野」のあいだで、
災害時相互応援協定(2008年)、友好都市提携(2010年)が結ばれた経緯、
その後の交流の様子が説明されたのち、トークに移りました。
出演は、遠野文化研究センター 調査研究課 前川さおり氏、
出版社「荒蝦夷」代表 土方正志氏、おおぶ文化交流の杜図書館 館長 峯岸進氏。
司会進行はあいち妖怪保存会 島田尚幸共同代表が務めました。
(以下敬称略)
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大府に残る話、遠野に残る話
島田:前川さんは以前にも大府にいらっしゃったと伺ってます。
前川:今回が6回目です。特に2012年には、「震災からよみがえった東北の文化財展」を、
   大府の皆さんのお力を得て、横根公民館で1ヶ月近く開催させていただきました。
   これは東日本大震災で被災した図書館や博物館の支援を訴える展覧会です。
島田:災害時相互応援協定というのは、東日本大震災の前に締結されていたんですよね?
前川:当初の想定としては、大府市が東海大地震にみまわれたときに遠野市が支援しようというもの
   だったと思われます。
   しかし、今回の震災を受け、逆に大府市の皆さんに支援していただくという、
   思いがけない絆が深まることとなりました。
島田:「震災」は今回のトークのキーワードのひとつですね。
   行政面でのつながりなども考えさせられることも多いのですが、
   今回はこういった固い話だけではなく、「怪」と「地域」も取り上げていこうと思います。
   (会場に)『遠野物語』を読まれたことのある方いらっしゃいます?(何人か挙手)
   柳田國男による名著、いろいろな狐狸妖怪や、狐狸妖怪ともつかないようなよく分からないお話
   がつまった著作です。
   大府にも怪しい話、ふしぎな話が伝わっているということで、この近くにもあるそうですね?
峯岸:はい、ここ柊山町で狐に化かされたというお話があります。
   『おおぶの民話』にも載っていまして、ざっとご説明すると――
   長草天神社「どぶろく祭り」帰りの八兵衛さんが、柊山にさしかかり、
   お土産の稲荷寿司を食べようとした。
   すると、あやしい火がものすごい勢いで迫ってきた。「きつね火だ!」
   気がつくと重箱は空になっていた……というものです。
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前川:遠野の狐は魚を盗ることが多いんです。遠野は三陸海岸から40キロほど。
   魚を載せ、夜出発すると翌朝に遠野に入るという流通経路がありました。それを狐が狙う。
   葬列をよそおい幽霊に化けて魚を奪ったり、狐火をともし結婚式の行列をつくり、
   見とれさせているうちに盗む、とか。
   遠野の狐は肉食系(笑)。しかも残酷で意地悪なところがあるんです。
   そこが大府の狐と違いますね。
島田:「稲荷寿司を食べる狐」はキャラクタになったイメージからきていますね。
   それに対して、遠野の狐は実物のイメージに近いです。
   遠野は人と狐との距離が近いんでしょうね。
   「異類婚姻譚」で、子供をなしたという話もありますし。
前川:有名なのは馬と結婚する――オシラサマという神様の謂い伝えもあります。
   変わったところだと、鮭。これが意外とハッピーエンドなんですよ(笑)。
   そこの子孫は鮭を食べてはならないというタブーがあったりします。
 
「語りつなぐ大府と遠野」(3)に続きます)
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