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2011年04月

労働時間のルール(3)1箇月単位の変形労働時間制その2

1箇月単位の変形労働時間制の変形期間においては、各日、各週の労働時間を具体的に定めておく必要があります。各日の労働時間については、単に労働時間の長さを定めるだけでなく、始業および終業の時刻も具体的に定め、労働者に周知しておくことが必要となります。
また、変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えないこととされていることは前回お話しした通りです。

今回は実際の1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合の問題点をもう少し具体的に考えてみます。

まず、完全週休2日制を採るのが難しい会社で、土曜日の出勤を確保するために1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合です。

具体的な規定として、変形期間を歴月、所定労働時間を1日7時間30分、所定休日を日曜日、祝祭日と土曜日とし、ただし月のうち1回は土曜日を出勤日とするとした場合で検討してみましょう。

1箇月単位の変形労働時間制では1日の所定労働時間7時間30分とすると、31日の月の労働日は177.1時間÷7.5時間=23.61日、小数点以下を切り捨てて23日となりますから、休日数は31日−23日で8日が必要です。同様に計算すると、30日の月も8日、29日の月、28日の月は7日の休日が必要なことが分かります。

今年の実際のカレンダーに当てはめてみると、規定例として考えた月1回週休1日制は概ね法律上の要件を満たしているように思えます。また祝祭日が多い月では必ずしも土曜日を休みにしなくても法定の労働時間の条件を満たすことができますから、この場合には「週内の平日が祝祭日となる場合は当該週の土曜日は出勤日とする」と規定することも考えられます。

しかし祝祭日がない6月を見てみると、先に示した規定例では月7日の休日しか確保できないことがわかります。つまりこの規定そのままでは希にではありますが違法な状態が発生することになります。
このような場合に備えて休日の規定の中に「その他会社が定めた日」を加えておき、実際のカレンダーを検討して具体的な労働日と休日の配置を考えることが必要です。

次にシフト勤務体制を採るために1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合です。

この場合は、年中無休の小売店舗のように、そもそも土日を休日とするような概念がないことが多いですから、休日の配置の問題は大きな問題とはならないでしょう。

ただ1日の所定労働時間を何時間にするのか、また変形期間を1か月以内の何日とするのか、実に様々なパターンが考えられますから、その中で変形期間の週平均労働時間が法定労働時間を上回ることのないように、やはり具体的な検討が必要となります。

またどのような変形労働時間制を採用するにしても、労働時間が法定労働時間を超えた場合には、その超えた時間について割増賃金を支払うことが必要です。

1箇月単位の変形労働時間制では、次の時間については時間外労働となり割増賃金を支払う必要があります。
A.1日の法定時間外労働として
労使協定または就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えて労働した時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間について、法定時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。

B.1週の法定時間外労働として
労使協定または就業規則等で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間を超えて労働した時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間について、法定時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。(ただし、Aで時間外労働となる時間を除きます)

C.対象期間の法定時間外労働として
対象期間の法定労働時間の総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7)を超えて労働した時間について、法定時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。(ただし、AまたはBで時間外労働となる時間を除きます)

1箇月単位の変形労働時間制は、採用の要件として労使協定または就業規則で定めることとなっているように、導入自体のハードルは低いと言えます。
しかし法定の労働時間に違反しない休日の確保や時間外労働の算定方法など、適正な運用にあたっては注意点がいくつかあることがご理解いただけたかと思います。
また当然のことですが、労働日各日の所定労働時間が事前に確定していることが運用の前提となりますから、この点も注意が必要です。

労働時間のルール(2)1箇月単位の変形労働時間制その1

「1箇月単位の変形労働時間制」は、労働基準法第32条の2で以下のように定められています。

1 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
2 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

第1項で「(労使)協定により、または就業規則その他これに準ずるものにより」となっているとおり、「1箇月単位の変形労働時間制」は労使協定を必須の要件としていません。
会社が定める就業規則だけで採用が可能なため、変形労働時間制の中でも会社として最も利用しやすい制度であると言えますが、その手軽さのため、運用を誤っている例も多く見受けられます。

今回は「1箇月単位の変形労働時間制」とはどのようなものか改めて整理した上で、陥りやすい誤りについて重点的に解説していきたいと思います。

まず「1箇月単位の変形労働時間制」は、1か月以内の変形期間を定め、その変形期間の1週間あたりの労働時間が法定労働時間(40時間※)を超えないことが要件となります。

※ 商業、映画・演劇業(映画の制作の事業を除く)、保健衛生業及び接客娯楽業のうち、常時10人未満の労働者を使用する事業場については特例措置対象事業場として、週44時間の特例が設けられています。この特例は変形労働時間制では今回の1箇月単位、またはフレックスタイム制に限り認められ、1年単位や1週間単位の変形労働時間制については原則通り40時間が法定労働時間となります。

変形期間の所定労働時間の合計は、次の計算で求められる時間が限度となります。
法定労働時間×変形期間の歴日数÷7(日)
法定労働時間40時間、変形期間を歴月1か月で考えた場合の労働時間の限度は次のようになります。
1か月の歴日数        労働時間の限度(小数点2位以下切り捨て)
 31日                        177.1時間
 30日                        171.4時間
 29日                        165.7時間
 28日                        160.0時間

「1箇月単位の変形労働時間制」は、その名前からも、また賃金計算期間と合わせるためにも、歴月1か月を単位として運用する方法が一般的な方法です。
しかし変形期間の単位は1か月以内であれば、たとえば8日間や10日間とすることも可能です。変形期間が8日であれば限度時間は45.7時間、10日であれば57.1時間、14日であれば80時間となります。

この変形労働時間制の利用が考えられるのは、まず完全週休2日制が困難である場合です。

週休1日(週6日労働)制として土曜日を全日出勤日とするためには、変形労働時間制を採用しない場合には1日の労働時間を6時間40分以下にし、1週の労働時間の合計を40時間以下にすることが必要です。

しかし1箇月単位の変形労働時間制を採用すれば、たとえば1日の労働時間7時間15分(7.25時間)とした場合で隔週の土曜日を出勤日とすることが可能です。
※変形期間2週間の場合、限度時間は40時間×14÷7で80時間
※7.25時間×11日(2週間の労働日)=79.75時間で法定の限度時間を下回ります

1箇月単位の変形労働時間制の採用が考えられるもう一つのケースは、シフト勤務で事業場の24時間稼働などを考える場合です。

1箇月単位の変形労働時間制の場合には、1日の労働時間には制限がありません。
変形期間を通じて1週間あたりの労働時間が40時間を超えなければ良いので、例えば変形期間を8日として4日勤務、4日休み(うち1日は夜勤明け休み)の4勤4休シフトで2交替制の24時間稼働体制を組むことができます。
※4勤4休(変形期間8日)の場合の限度時間は40時間×8÷7で45.7時間
※労働日となる4日の労働時間は45.7時間÷4で平均11.42時間
※つまり1日平均11.42時間の労働時間の設定が可能です

次回はこのようなシフト勤務体制を採用する場合のポイントなど、1箇月単位の変形労働時間制の細かな注意点についてお話しします。

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