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社会保険労務士法人 人事AID 清水です 人事・労務に関する話題を書いています ニューストップへ戻る

2011年05月

労働時間のルール(5)フレックスタイム制 その2

今回は前回ご紹介したフレックスタイム制について、具体的な就業規則や労使協定の定め方、実際の運用のポイントなどを整理していきます。

フレックスタイム制を採用する場合、会社全体に適用することももちろん可能ですが、会社の業態などによっては一部の部門だけで行うとか職位・職階によって適用の可否を定めることも考えられます。
就業規則には絶対的必要記載事項として、始業及び終業の時刻、休憩時間などを明記する必要がありますが、この法律の定めはフレックスタイム制を採用する場合でも例外ではありません。

全社的適用の場合も一部のみへの適用の場合も、就業規則本則では絶対的必要記載事項をもれなく定め、フレックスタイム制については本則では別条で「フレックスタイム制については別に定める」とだけして、「フレックスタイム制規程」を別に作成することをお奨めします。
別規程としておくことで例外的な適用除外については本則へ戻れば良いことになり規程の構成もわかりやすくなります。また法律上締結が要件となっている労使協定も、基本的に本規程に有効期限を追加すれば良いものとなりますから作成が容易となります。

就業規則の中のフレックスタイム制規程として定める項目は具体的には以下のようなものとなります。

・目的
規程の総則となる部分です。就業規則本則で「別に定める」と振った部分を受けることになりますので「この規程は、就業規則第○○条に基づき、従業員のフレックスタイム制に関する事項を定める。」等の簡単な規定となります。

・適用対象者
フレックスタイム制を適用する従業員の範囲を定めます。適用範囲については専門業務型裁量労働制のように法律の制限はありません。ただ個々の従業員が、自分が適用を受けているのかが明確に分かることは必要ですので最低限「労働契約で適用を明示した従業員」等の表記は必要でしょう。

・清算期間
労働時間の過不足を計算する期間で、法律上1か月を超えることはできません。通常は賃金の清算期間と合わせます。

・標準労働時間
標準となる1日の労働時間です。適用対象者が年次有給休暇やその他有給とする休暇を取得した日にはこの時間働いたこととして計算することになります。

・清算期間における総労働時間
清算期間における標準となる総労働時間を定めます。この総労働時間と実際の労働時間との比較で過不足を計算することになります。通常は標準労働時間にその清算期間の所定労働日数を乗じた時間とします。

・コアタイム
原則として勤務していなければならない時間帯で、定めるか定めないかは会社の自由です。長さにも法律上の制限はありませんが、1日の労働時間の設定を労働者の裁量に任せようとするフレックスタイム制の趣旨からすると、標準労働時間のほとんどがコアタイムとなるような設定は避けるべきでしょう。

・フレキシブルタイム
フレックスタイム制の適用を1日の中でどこまで認めるかで、これも定めるか定めないかは会社の自由です。ただフレックスタイム制でも深夜時間帯(午後10時から翌朝午前5時まで)に労働すれば、深夜労働割増賃金の対象となりますから、会社としては深夜時間帯のフレックスタイム制の適用は制限すべきでしょう。
フレックスタイム制で深夜時間の労働を避ける一般的な定め方としては、始業時刻を「午前5時から午前○○時までの任意の時刻」、終業時刻を「午後○時から午後10時までの任意の時刻」とすることが考えられます。

・適用対象外の時間
前に述べた深夜時間とあわせて、会社の所定休日にフレックスタイム制を適用するかの検討が必要です。
休日についてもフレックスタイム制を適用することは可能ですが、その休日が法定休日だった場合には休日労働として割増賃金の対象となります。
休日労働であれば別に会社の命令や許可が必要な労働となるはずですし、フレックスタイム制の総労働時間からは除外した計算が必要です。これらを含めて労働者の裁量に任せることは避けるべきでしょうし、事務処理の煩雑さを考えても現実的な取扱いとは言えないでしょう。
ここでは適用対象外の時間として深夜時間とともに「会社が定める休日」を定めておくべきでしょう。
また、この適用対象外の時間に例外的に労働することも想定し「前項に掲げる時間または日に勤務する時は、従業員は予め届け出て許可を受けなければならない」等の定めを設けておくべきでしょう。

次回は、清算期間における実際の労働時間に過不足が生じた場合の取扱い、その規定の仕方についてお話しします。


労働時間のルール(4)フレックスタイム制 その1

今回は変形労働時間制のひとつとして「フレックスタイム制」を取り上げます。

現在では「フレックスタイム」という名称は一般的なものになっていますし、皆さんの中ではその考え方、運用方法についてもある程度共通の認識があるものと思います。
フレックスタイム制が馴染みのあるものとなった背景には、他の変形労働時間制に比べて働き易いイメージが強いこともあるでしょう。社会的にも仕事と生活の両立(ワークライフバランス)が求められる中、この制度は会社として導入が可能ならば、私としてもお奨めしたい制度です。

しかしフレックスタイム制の導入を考えている会社でも、その運用イメージが法律上の制限に抵触する場合もあります。またフレックスタイム制を導入している会社でも、不適切な運用がされている例も多く見受けられるのも事実です。

フレックスタイム制は労働基準法の中でも比較的新しい規定であることもあり、厚生労働省から出される行政解釈もまだそれほど多くないことが、その混乱の原因のひとつかもしれません。しかし、条文解釈からだけでも正しい運用の方向を導き出すことは可能ですので、まずフレックスタイム制の根拠となる法律を確認しておきましょう。

労働基準法第32条の3
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第2号の清算期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間(注※1週40時間)を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、1週間において同項の労働時間又は1日において同条第2項の労働時間(注※1日8時間)を超えて、労働させることができる。
1.この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2.清算期間(その期間を平均し1週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、1箇月以内の期間に限るものとする。)
3.清算期間における総労働時間
4.その他厚生労働省令で定める事項


労働基準法施行規則第12条の3
法第32条の3第4号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
1.標準となる1日の労働時間
2.労働者が労働しなければならない時間帯を定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻
3.労働者がその選択により労働することができる時間帯に制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻


以上を簡単に箇条書きにすると
・就業規則で対象者にフレックスタイム制を適用することを定める
・労使協定で以下のことを定める
①適用対象者の範囲
②1か月以内の清算期間
③精算期間の総労働時間
④標準となる1日の労働時間
⑤コアタイムを定める場合はその開始、終了の時刻
⑥フレキシブルタイムを定める場合はその開始、終了の時刻
・以上を協定すると1週40時間、1日8時間を超えた労働が可能
・ただし清算期間を平均して1週40時間以内であることが条件

労働基準法に定められている変形労働時間制に共通している内容として、労働時間については1日の労働時間(8時間)の制限は緩められます。しかし「平均して1週40時間以内」の制限は労働基準法の大原則です。

前回までお話しした1箇月単位の変形労働時間制であれば「1か月以内の一定の期間を平均して」、1年単位の変形労働時間制であれば「1年以内の一定の期間を平均して」、フレックスタイム制であれば「清算期間を平均して」1週40時間以内であり、それ以上の労働は時間外労働として割増賃金の対象となります。

フレックスタイム制では各日の労働時間は対象労働者の判断に委ねられることになりますが、清算期間中の合計時間の過不足により、賃金の控除や割増賃金の支払いの必要が発生することは通常の労働時間制や他の変形労働時間制と同様です。従ってやはり会社としての労働時間管理は確実に行う必要があります。

具体的な就業規則、労使協定の定め方、実際の運用のポイントなどを次回以降整理していきます。

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