年次有給休暇未消化分の買い取りの考え方と取扱いは退職時に限らず、2年間行使されずに失効してしまった年次有給休暇の権利についても同様です。

ただし未消化分の買い取りについて労働基準法上の制限はないとはいっても、Aさんの買い取り要求は認めるがBさんは認めないとか、買い取りの金額が人によって違うとなれば、その合理性、相当性を争う余地を残してしまいます。
前回お話ししたように就業規則などで「買い取り」を明文化することはできませんが、失効してしまう年次有給休暇を買い取る場合の要件、取扱い方法などについては公平性を損なわないような配慮が必要です。

在職中に失効してしまう年次有給休暇の日数については積み立て制度を設けている会社もあります。

これは手術を伴うような長期の入院や療養、また介護休暇を請求しにくい家族の介護のための休暇など目的を限定して失効した年次有給休暇の権利を復活させるものです。このような制度を設ける場合、その利用が可能な目的や積み立てできる日数の限度などを規定することになります。

また退職までに行使できなかった年次有給休暇の取り扱いについては、残日数をカウントしてその日数分退職日を先延ばしにする会社もあります。

会社の狙いとしては最終出社日までに十分な業務の引き継ぎができなくても、退職日までは会社との雇用契約があることで不明点の問い合わせなどを業務命令として応じさせることができるということでしょう。

労働者の希望する退職日を変更することは、合意があればもちろん可能です。ただ退職日が先延ばしされることで余分な社会保険料負担が増え、また雇用保険、社会保険の喪失手続も煩雑になることも考えられます。何よりその間、当該労働者の再就職を抑制することになりますから私としてはあまりお勧めできる方法ではありません。