通達では年次有給休暇の時間単位の付与の趣旨を次のように述べています。

(労働基準)法第39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨から、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定している。この年次有給休暇については、取得率が五割を下回る水準で堆移しており、その取得の促進が課題となっている一方、現行の日単位による取得のほかに、時閥単位による取得の希望もみられるところである。
このため、まとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇制度本来の趣旨を踏まえつつ、仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定により、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができることとしたものであること。
(平21.5.29 基発0529001号)


この通達にもあるように、年次有給休暇の原則が最低1日単位であることは変わりませんから、今回の改正でも会社が時間単位での年次有給休暇を制度として取り入れるには2つの条件を付けています。

ひとつは過半数代表労働組合または労働者の過半数代表者との労使協定の締結です。

労使協定は時間外・休日労働(36)協定が代表的ですが、現在では育児・介護休業の対象を制限する協定、60歳定年後の再雇用条件を定める協定など法律で内容を細かく規定せず労使間の協議で労働条件を定めようとする狙いで協定締結が条件として定められているものがあります。
今回の労使協定締結の定めもこの流れに沿ったものと言えるでしょう。

もう一つは時間単位の付与は合計5日以内に限ることです。

これはやはりなるべくなら連続し、または最低1日単位で有給休暇の権利を行使すべきという本来の趣旨からの制限でしょう。

会社の立場では、遅刻の常習など本来なら服務規律違反や人事評価で低評価の対象となる事案が、時間単位有給の行使によって陰に隠れてしまうという問題も考慮しておくことも必要かもしれません。

このような問題には遅刻と事後に振り替えることは認めない運用にするため、時間単位での時季指定権の行使は事前の届出を通常の有給休暇の場合より徹底して義務付けることも考えられます。