2007年06月22日
それはただ天より高く
プロローグ2
まばらだった雨が、一日後、二日後。
三日後には嵐のように、風は荒れ、稲妻がとどろいていた。
リリィの綺麗だった金色の髪も、今は雨とドロで少し汚れていて
少し機嫌も悪い。
どうも雨は好きじゃない。
古都へはたぶんもうすぐ到着するだろう。
リリィは足を速めた。
「誰だい?」
城門にたどりつくと、いかにもやる気のなさそうな門番があくびをしながら
尋ねてきた。
「リリィ・ファランです。門を開けてもらえますか?」
「・・・・ポータルは?」
水色の肩掛け鞄の真ん中のポケットから、リリィはきらきら光り輝く透明な結晶を取り出した。
ポータルとはウィザード協会が発行するいわゆるこの世界での身分証明書だ。他にもいろいろな種類があり、中には魔法の絨毯を召喚できるものもある。
カチッ、門番が結晶の下方にあるスイッチを押すと、結晶の中から
リリィの生い立ち、備兵暦などあらゆる情報が飛び出してきた。
「・・・確かに」
クィ、と門番が手を振ると、門の上にいた備兵がギリギリと門を開けた。
「やっぱり、中は湿気もなくていいですね」
リリィは一人言のつもりだったが、門番が「そうですね」と返してきたので、少し微笑。すぐに宿に向かった。
「いらっしゃいませ」
愛想よく、宿summerブルンの店主が頭を下げた。
「一泊分の部屋は空いてますか?」
「今日はあなた以外には二人組みのお客さんしかいないよ。まったく、第3次人魔大戦が終わったって言うのに、ちっとも客足は増えねえよ」
「そのうち、また平和が来るはずですよ」
店主は少し苦く笑って。
「そうだな、来るといいよな」
と、どこか悟ったような顔をして言った。
その後すぐにリリィは部屋に案内され、今までの疲れもあってか
すぐに眠ってしまった。
店主がリリィの部屋の前でいたずらに笑っていた。
end
続きをお楽しみに♪