1 FAKE DESTINY





_ヒョン  ほんとうのことを教えて  


ジョングクの不安げな問いかけに テヒョンはゆっくりと視線をあげた


「 …なんだ 来ちゃったの?」

「だってっ…ヒョンが俺を呼んだんじゃないか!あれは …あの声はテヒョンイヒョンの声だったっ」


「…」


_生きていてもつらいだけなのに

         それでも生きたい?_


「人の運命なんて いくらでも替えられるさ

でも それで幸せになれたとしても

人に勝手に替えられたしあわせなんて 嫌じゃない?」


「替えられ…た?」

「だから聞いたんだよ おまえはどっちがいいのか」

「…どういうこと?  」



 一面を色鮮やかな花におおわれた部屋のすみに座りこむテヒョンイヒョンは目を閉じ深く息をはいた
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「俺も全部は わからない  

ただ、俺たちは あの人にやり直しさせられていたんだ」


「…え?  なにを?」











「あの夏を」














あの日  

みんなで海にいったあと 隠れ家で 急にテヒョンイヒョンとジンヒョンが 殴り合いの喧嘩をはじめた

馬乗りになり殴り続けるジンヒョンをナムジュニヒョンが引き剥がし、飛び出していったテヒョンイヒョンを ジミニヒョンとホソクヒョンが追いかけていった

少し頭を冷やしましょうとナムジュニヒョンとジンヒョンが部屋から出ていったあと 俺もテヒョンイヒョンを探しに行こうとしたら ユンギヒョンに肩を強く掴まれた


「グキ おまえは行くな」

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床に張られた水耕の水をヒョンが手ですくう



水滴の落ちる音が奇妙なほど耳に響いた


「せっかくひと芝居打ってあの人を止めようとしたのに 部屋に閉じ込めたおまえがまさかドアぶち破ってまで出ていくとはね  あの時のユンギヒョンの慌てようといったら」


くっくっと笑いながらテヒョンイヒョンは顔を手で覆い隠した






「グガ…おまえは死んじゃいけないんだ

おまえも生きたいと言っただろう?」


「…ヒョン? 泣いてるの…?」


「薄汚れた俺たちのっ…おまえは…唯一の光だった … 」


「あの人の過ちをとめてくれ 」

「なんなの?全然意味わからないよっ!」



「グガ…っ  行け   」

「えっ…?」

「はやくっ…行け  ここから出ていけっ!」

「待ってよ!どういう事!?ちゃんと教えて!」



「…」


「あの人をとめてくれ」



涙でぐしゃぐしゃになったテヒョンの顔を見て

ジョングクは部屋を飛び出し 走りだした




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無我夢中で走りながらテヒョンから語られた真実を反芻する










すべては 


あの人があの花を手に入れたことからはじまったんだ



『伝えられなかった真心を 大切な人に贈る蒼い花』







それを授けられたのは神様の悪戯なのか 悪魔の罠だったのかはわからない


それでも 

それぞれ生きていくのには辛すぎる疵を持つ俺たちに しばしの救いをもたらしてくれたんだ



俺の父親の暴力

ホソギヒョンの自分を捨てた母親の記憶


ジミナの病気 と つき続けた嘘の重圧


ナムヒョンの薬依存


ユンギヒョンの火事で亡くした母親への罪悪感



俺たちみんな そんな疵に一生苦しむ運命だった




今世は



「今世?」

あの夏 俺は父親を刺し殺してしまい
ユンギヒョンは 自分で火をつけて 死んだ

「!」


ジンヒョンは俺たちを救えなかったことを悔やんで、そんな俺たちの運命を替えるためにこの花をうけとったんだ


「ヒョン達を生き返らせたの?」

「うーん… というより、死ぬ前に戻ってあの夏のやり直しをしたんだ」

「時間を遡ったということ?」



「うん。。  そんな感じなのかな?」


テヒョンは  1輪の花を手折り 花びらに口を寄せた

そんなキザな仕草も相変わらずサマになる








「けど…」



「やっぱ神様も悪魔も そんな甘くないってことだよね。幸も不幸も 生も死も 等価交換てやつ?

本来死ぬ運命だった人間が差替えられてしまったんだ」


「…えっと…誰に…?」



花びらを鼻先で弄びながら俯くヒョンを見つめる
しばらくの沈黙のあと 大きく息を吸い込み ヒョンは俺を見据え答えた


「ジョングク おまえだ」


ジョングクは目を見開いた


「俺…死んだの?」



ジンヒョンもまさか死が差替えられてるなんて知らなくて 俺たちはおまえが消えたことに気が付かずに何事もなかったように過ごしていた


でも俺は なにか大事なものが抜け落ちた感覚がぬけなくて …
あんなにつらい思いをしていたはずの父親を見ても何も感じない自分にすごく違和感をかんじていた



それが1度目のやり直し




あまりにの事にしばらく放心していたジョングクだったが ハッと顔をあげた

「待ってユンギヒョンは生きているんだよね?ならもうひとり差替えられた人がいるの?」

ああ…


「その先で出会うジンヒョンの恋人」



「…っは?」



「そしてジンヒョンはその人を取り戻したくてもう一度 やり直しをしたんだ」


「むちゃくちゃじゃないか…っ
結局誰かが死ぬのは変わらなんでしょうっ 」


「…そうだな…」


でも ジンヒョンは諦められなかったんだろう

あの人は身も心も あの花に囚われてしまっているんだ


2度もおまえを見失わなたいために 俺たちは今世 この運命を受け入ることにしたんだ 


だから  おまえは生きてくれ



行って



あの人をとめてくれ


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