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金融小説的な。あるいはそうでないような。


波間の国のファウスト
メーカー:bitterdrop



波間の国のファウスト波間の国のファウスト
販売元:bitterdrop
(2012-06-29)
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シナリオ
タイトルを見て、一番最初に思ったのは、石田衣良著『波のうえの魔術師』を思い出した。
が、内容的にはどちらかというと真山仁著の『ハゲタカ』に近い内容である。
まあどちらも経済小説という点で、似たようなもんかもしれないが。

さて、本作はエロゲーでは非常に珍しい経済、それも株だの為替だのを扱ったモノ。
雰囲気としては『G線状の魔王』に近いが、それよりもさらにディープな部分も多い。
逆に、こういう内容のゲームが出てくるのも、ある意味でエロゲらしいのかもしれない。
これだけコアな内容の作品は、一般的な商業ゲームでは難しいだろう。

内容は、あらすじを語るのも複雑なのだが、とりあえず近未来モノ、と呼ぶべきかもしれない。
日本でありながら、日本ではない、経済特区を舞台にした話で、法律なんかをぶっ飛ばした作品である。
そういう訳で、非現実的な展開が多いものの、それがここの常識である、と考えれば幾分か納得は出来るだろう。
全体的に見ると、ややご都合的な部分も多い気がするが、その辺は後述する。

シナリオの作りは上で書いた『G線状の魔王』によく似ている。
一本道形式で、各章でそれぞれのキャラとの邂逅を深めていくパターン。
しかし決定的、あるいは致命的に違う部分がある。
それが、本作が完全に一本道で、シナリオの分岐がない、という点だろう。
ヒロインはたった一人で、他のサブヒロインに関しては、シナリオは存在しない。
一応、クリア後におまけシナリオとエロシーンが申し訳程度に追加される。
しかしこれはどう考えても、「本当は分岐作る予定でしたが時間なかったので省きました」という事ではないのだろうか。
要するに未完成という事になる。
そう考えれば、色々と細かい部分が辻褄が合う。
中盤から後半にかけて、急に駆け足めいた流れになるのも、仕方ないのかもしれない。

グラフィック
原画はオダワラハコネ、後複数。
複数原画の弊害か、全体的にバラつきがある。
特に塗り部分でムラが多いように感じた。
絵柄が安定していないので、こういう堅苦しい作品のくせに、妙に子供っぽい。
逆にそれがギャップとなっているのも否めない。
そういう意味では、わりかしとっつきやすい絵柄なのかも。
エロシーンはまあオマケ程度として見るべし。

音楽
OP曲『少女の空白プリズン』。momijiという人が歌ってるらしい。
わりかしエロゲらしい曲。
音声面に関しては、特に違和感はない。

総評
話:★★★★★
絵:★★★★☆
音:★★★★☆
83点

上で未完成と書いたが、わりかし甘めの評価である。
というのも、総合的に見れば結構面白かったからだ。
そういう訳で残念である。
もっと上を狙える作品だったろうに。

シナリオのテーマでもある失った絆を、金で取り戻す、というもの。
これはわりかし描けていたんじゃないだろうか。
序盤のつぐみの話は顕著だ。
そして取り戻したと思えば、さらなる力で再び奪われてしまう。
少しずつ、幼い頃の絆を取り戻していく。
こういう分かりやすいメッセージ性を入れてきたのは正解だと思う。

逆に、そのシナリオの目標でもある、金ですべてを手に入れる、という一点。
これは残念ながら達成出来なかった。
この部分は残念というか、未完成という部分なのかな。
最後の最後に、主人公とヒロインが逃亡する展開がある。
個人的にはグランドフィナーレとして、逃亡するのではなく、真っ向から勝負してもらいたかった。
その部分が構想ではあったのか、それとも最初からああいう終わり方だったのか、それは分からない。
しかし、最後の最後で少し、残念に感じてしまった。

あとは全体的にキャラの役割がチャチい。
物語のキーパーソンとも言える主人公の姉。
謎を抱えた人物であったが、明かされてみれば「なーんだ」というレベルの話。
逆にそんなしょうもない話をよくもまあ引っ張ったな、と感心してしまうレベル。
キャラの役割がご都合主義的に感じてしまう部分だ。
敵として登場するヒロインや、黒幕の正体など、そもそもそういう出番ありきで出てくるので、この辺も違和感が強い。
特に黒幕だ。
彼(彼女?)は結局何がしたかったのか。
クリアした今をもって不明である。

とまあ、色々と細かい不満点はあるが、総じて見れば良作である。
経済というニッチな部分をゲーム化したのは見事。
ある意味、エロゲではなく、もう少し煮詰めて経済小説としても出せたんじゃないかな、と思わないでもない。
まあそうなると、十把一絡げな作品に落ち着きそうでもあるが。
難点としては、複雑な内容が多いので、後半は何をやっているのか、全然分からない点だろう。
私自身は株式を少なからずかじってはいるのだが、それでも中盤以降は話の内容を右から左へと流していた。
用語集をつけるなり、もう少し話を理解させるような作りにしても良かったかもしれないね。