フィアンセバトル
作者:きなこ 氏
掲載サイト:森の小屋裏
種別:異世界FT、完結、閲覧不可
キーワード:ラブ・呑気な姉と強気な妹・苦労人魔法使い・泣けた
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アリア国第一王女ジェシカ、18歳。一国の第一王位継承者ながら彼女はどこにでもいる恋に恋する女の子。王族であればもう婚約者がいて当然であるお年頃の彼女は、連日の見合いしろしろ攻勢についに切れ、お供の魔法使いを伴って城下町に降り、なんと恋のお相手探しを始めてしまう。果たしてジェシカ姫は念願の小説のような素敵な恋を見つけることが出来るのか。というコメディタッチの物語。
いやーハハハこれがですねえまた和むんですわジェシカ姫がおバカで(酷)
ストーリーを一言で簡潔に紹介するならば、わがままさんで惚れっぽくて面食いで能天気なお姫様が、いろんなかっこいいお兄さんに果敢にアタックし続けるという逆ハーレムモノなようで全然違う、むしろ逆な物語です(うわぁとんでもねえ紹介。ごめんなさい作者様本気でごめんなさい)。
いかんせん何しでかすかわかんない人なので、彼女の突飛な一挙一動にお目付け役の魔法使いシーガルさんと一緒にこっちまでハラハラしどおしです。可愛い!(繋がってませんよ文章)
この基本ストーリーと各章タイトルを見ればなんていうかジェシカ姫の懲りなさが非常に直感的に分かるようなものなんですけれども。本当にへこたれない人です。いや、各々の章では結構べそかいたり凹んだりしてるんですが結果的には下を向いたままではいないというか。
おバカだから。……かもしれません。が、その辺も魅力。むしろその辺が魅力。
ジェシカ姫はファンタジーの主人公としてはさりげに結構珍しいタイプで、物凄く平凡な人なんですよ。お姫様なんですけど際立つ特徴ってのはそのくらいで。顔も普通に可愛いくらいだし特に頭がいいわけでもないし魔法がある世界なのに魔法も使えない。
対して、彼女には出来のいい、前述した部分を全部持っている妹姫がいるのですけれども、逆にその妹と比較されてひねくれているわけでもありません。周りから程よく愛されて明るく真っ直ぐ能天気に育った娘さんです。
もっとも、そんな彼女にも悲しい過去があったりするわけなんですけれども、別にそれをネチネチ引きずっているわけでもないし。むしろ妹のレティシア姫の方が、そういう部分においては主人公らしいくらい。
私はどうも、ぱっと見とことん軽いコメディなんだけどそのコメディという皮をぺりぺり剥いでいくと中に深く重い中身が隠れているというパターンを心から愛しているようで、この「フィアンセバトル」の痛さ(いや、変な意味でなく)にはかなりやられました。
主要登場人物の一人一人が心の傷を負っていて、各々それを乗り越えたり、或いは乗り越えた振りをしていたりする姿が非常に切なくて痛々しい。
姉妹が受けた同じ傷と、作品現在の二人を見ていると、本当にジェシカ姫は強い人だなと思います。
さらっと読み流してしまうとおバカだからーみたいな感じだし、ジェシカ姫本人にもし聞けたとしても「私バカですからーおほほほほー」とか言いそうな勢いなんですけれども。
ジェシカ姫も悩んだり落ち込んだり拗ねたりするんですが、そこからの過程が、毅然として見えて実はかなり不安定なレティシア姫とよい対比になっています。あ、やっぱりお姉さんなんだ、ジェシカ姫。
自分の存在意義――自分は自分なのか? 自分は愛されているのか?――その辺りの悩みなどは、遠いどこかで自分もそんなこと考えたかな、なんて気がして思わずにやり、そして、ほろり。
ここまで感情移入できるファンタジーは私は滅多にないです。私結構涙もろい方ですが久々にマジ泣きしちゃいましたよ。会社で。(仕事しようよ)(いや昼休みだよ)(ちなみにあくびの振りしたよ)
現在本編は完結。後日談や過去話などの番外編は今後も公開されていく模様。
ちょっぴりノスタルジックな雰囲気の、懐かしさを味わいたいなら、是非。
2011/02/12 追記:サイト閉鎖の為、リンクを外させていただきました。
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