菓子盆に盛り込みをくや虫の声
2013年08月
一句
霧はまた遥けき旅に立ちにけり
一句
桃の実の下のあたりを支へつつ
一句
野葡萄に覆われてゐし奥の宮
一句
手のひらで球体となる秋の風
一句
秋景色いろはの順に排列す
一句
太陽の梯子を帰る燕かな
一句
稲妻や毛のあるものは皆眠る
一句
青空の柔らかき日や障子貼る
一句
沙弥山を越へて来たりし秋の風
一句
梨食へば梨の吐息の漏るるなり
一句
谷川は西瓜を冷やすためのもの
一句
菅の根の長き夜の片思ひかな
一句
秋高し千羽に足らぬ千羽鶴
一句
蜩が九九の掛け算してゐたり
一句
虫籠と虫籠を売る店の奥
一句
秋めいて和傘干したる町屋かな
一句
大文字二本の脚の寝乱れて
一句
撫子を花束にして賀の祝ひ
一句
佐久の山秋のほたるとなりにけり
一句
太陽に下心ある残暑かな
一句
うたた寝を遠き花火に起こさるる
一句
鶏頭と少女漫画とチヨーカーと
一句
おいしつくつくしおいしと浪曲師
一句
そこそこの場末の酒場秋は来ぬ
一句
夏果つと思ふや化粧の手を止めて
一句
荒々しく冷素麺の波打てる
一句
早々と足を崩せる冷奴
一句
提灯の向かう透けたり戻り梅雨
一句
録り鉄を見つめゐし鬼百合の花
一句
鍵付きの日記のやうな夏野原