グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!

2004年11月

ケニア:「HIV感染を理由とする解雇は不当」判決

 2004年9月3日ケニアで、HIV感染を理由とする解雇は不当であるとする判決があった。当該訴訟ではJ. A. O.と称する原告が雇用者Homepark Cateres Limitedを、HIV感染を理由とする解雇は憲法上の人権侵害であり、職場復帰と賠償を請求していた。また、原告の同意なく検査をし、雇用者にその結果を伝えた医師と保健機 Metropolitan Health Servicesについても、守秘義務違反及び人権の侵害であると訴訟を提起していた。
 判断基準は、訴訟の提起がケニアの法律に照らして正当性を有するかという点であった。
被告側は原告に正当な訴訟提起理由がないと主張していたが、原告側は判例や法解釈を持ち出し、反論していた。
 審理の結果、原告のHIV検査の陽性結果を理由とする解雇は非道であると判断し、原告の請求を認容した。拡大するエイズの流行と人権尊重を鑑みて下された本判決はその理由に英国の判例も引用した画期的なものであった。
 ケニアでHIV/AIDS患者が医師、病院、雇用者や社会政策から厳しい目にさらされている中で、この判決は偏見から開放の一歩となるだろう。

原文表題:The Nation (Kenya) Sackings Due to HIV/Aids Inhuman, Rules Judge
出典: allafrica.com website
日付:27 September 2004
URL:http://allafrica.com/stories/200409270553.html

米国:PEPFARでエイズ遺児に、1億ドル拠出

米国ブッシュ政権は、150億ドルを拠出する、大統領エイズ救済緊急計画 PE
PFARの一部として、エイズ遺児や社会的に立場の弱い子どもたちを支援するた
めの新たな無償援助1億ドルの贈与を発表した。宗教系団体5つを含む11団体
が、5年間に渡り、援助を受けることになった。これは、大統領の緊急計画の
重点国15カ国のうち、少なくとも2ヶ国のHIV/AIDSの影響を受けた孤児や弱き
子どもたちのケアとサポートのために拠出されることになっている。
2003年には、18歳未満の子ども1500万人以上が、AIDSによって片親、または
両親を失っている。今後2010年までに、2500万人を越える子どもがAIDSによっ
て、少なくとも片方の親を失うことが予測されている。

今回の資金を提供される団体は以下の11団体:
* Africare - Washington, D.C.;
* Association of Volunteers in International Service - New York, New York;
* Christian Aid - Charlottesville, Virginia;
* Christian Children's Fund - Richmond, Virginia;
* Family Health International - Durham, North Carolina;
* HOPE Worldwide - Wayne, Pennsylvania;
* Plan International - Warwick, Rhode Island;
* Project Concern -- San Diego, California;
* Project Hope - Millwood, Virginia;
* Salvation Army World Services - Alexandria, Virginia; and
* World Concern - Seattle, Washington.

補助金の目的は以下のものが含まれている。
●子どもを保護、養育のため、家族を支援する。
●コミュニティを基盤とするHIV/AIDSへの対応を強化する。
●子どもや若者が、生活に必要なものを満たせるようにする。
●政府が、自国の子どもたちのための政策や最低限のサービスを充実させるこ
とを保証する。
●HIV/AIDSの影響を受けた子どもたちを支援する環境を築くため、人々の意識
向上を図る。

原文表題: PEPFAR Awards $100 Million to Help Orphans and Vulnerable Children
日付: October 25, 2004
出典: USAID Press Office
URL: http://www.usaid.gov/press/releases/2004/pr041025.html

世界エイズデー2004のポスター標語決定

今年の世界エイズデーのポスターには「Have you heard me today?」と書かれることが決まった。ジェンダー間の不平等がエイズ流行拡大の原因になりうることを広く認識してもらうことが目的だ。
今年の世界エイズデーは、HIV/AIDSにおける女性と少女へのスティグマや差別に焦点をあて、HIVに対する女性の脆弱性や男性が果たす役割についての問題に取り組むための契機とする。
現在、女性は教育、雇用面において男性と未だに同等の権利を享受しておらず、さらには性的暴力に晒されがちである。そのためにHIVに対しても感染しやすくなるという現状がある。ポスターは「男女の平等は、女性をエイズ問題から救う」と力強いメッセ−ジで締めくくられている。今年も通年どおり、メディアに向けて一足早く11月23日に今回のテーマにあわせた「女性とHIV/AIDS」も含めた情報が発信される予定だ。
なお、ポスターは現在、英・仏・西語が完成しており、地域によってはアラ
ビア語と中国語での発行も予定されている。
 詳しくはhttp://www.unaids.org/wac2004/index_en.htm あるいは wac@unaids.org まで。

原題: Women, Girls, HIV/AIDS - World AIDS Day 2004
URL: http://www.unaids.org/wac2004/index_en.htm

東南・東アジア治療教育アドボカシーワークショップの総括

2004年9月20日から24日の4日間、アジア太平洋HIV感染者・エイズ患者ネットワーク(APN+) Asia Pacific Network of PLWHA と、同地域の活動家らで組織された運営委員会はタイのパタヤで「東南・東アジア治療教育アドボカシーワークショップ」 the Southeast and East Asia Treatment Education and Advocacy Workshop開催した。8ヶ国から40人の参加し、その多くはHIV感染者・エイズ患者であった。ワークショップは、タイド財団 Tides Foundation らの提供で開かれ、成功裏に終わった。
 現在、東南・東アジアのHIV感染者・エイズ患者 PLWHA らのほとんどは必要な治療アクセスがない。PLWHA組織などの草の根組織は、 エイズ治療に関するリテラシー treatment literacy やエイズ治療教育、治療アドボカシーのトレーニングが必要としていたが、今回のワークショップではその推進が目的の一つであった。また、2003年に構想があがり、既に東南・東アジアではタイド財団など複数の財団によって設立された域内協同基金 regional collaborative fund に申請するため、ワークショップの参加者にプロジェクト形成を促す
ことも重点項目になっていた。実際にワークショップでは域内協同基金への申請書の書き方に関するセッションが行われた。
 この4日間に渡るワークショップでは、基礎的な治療教育や、どのようにエイズ治療に関するリテラシーを向上させるか、また治療アクセス戦略をテーマにしたディスカッションも行われた。以後も参加者らがお互いの経験や情報の
共有ができるように企画されており、今後のネットワーク形成と基金の有効利用活用などが期待されている。

 このワークショップのフル・レポートは以下のサイトを参照のことwww.youandaids.org "what's new"をクリック。
www.plwha.org "new publications" and "resources" をクリック。

原文表題:A summary of the Southeast and East Asia Treatment Education and 
Advocacy Workshop, Pattaya 20-24 Sept 2004
出典: Asia Pacific RLWHA RESOURCE CENTRE website
URL:http://www.plwha.org/Folder.2003-08-09.3110/Publication.2004-10-22.2639
http://www.plwha.org/Folder.2003-08-09.3110/Publication.2004-10-22.2639/Content

インド:エイズ問題に取り組む若者たち-ニューデリーで「若者会議」開催 3000人強が参加-

インド、ニューデリーで11月6、7日に学生とユース議会のHIV/AIDS特別セッションNational Student and Youth Parliament Special Session on HIV/AIDS にはインドの500地区から3000人以上が集まり、最終的にHIV/AIDS法を政府に制定するように提言することを目指している。インド国家エイズ抑制機構NACO National AIDS Control Organization、保健家族福祉省 Ministry of Health and Family Welfare、青少年・スポーツ省 Department of Youth and Sports、 人材開発省Ministry of Human Resource Development、 国連エイズ合同計画 UNAIDSが主催する。市民活動団体(CSOs)ではLawyers' Collective やPopulation Foundation of India and Mamtaが参加予定。
 開催目的について、保健家族福祉省は「現在インドのエイズ患者の35%は、15−24歳の若年層である。若者はHIV/AIDSの被害を受けやすい立場にある。予防のためにも興味・関心を持つべきだ。一度関心をもてば、力強く活動をしてくれるだろうと期待している。このような会議は、彼らのトレーニングに効果的だし、HIV/AIDSに向き合うために、今後も推奨していきたい。」と話している。国連エイズ合同計画ピーター・ピオット氏 Peter Piot は「エイズの問題において、特に高いリスクにさらされている若者のリーダーシップが必要だ。社会は若者が、正確でタイムリーな情報と、サービスにアクセスできるようにする責任がある。若い女性も(男性と同様に)教育や、就労の機会 economic opportunitiesにおいて平等であるべきだ。」と語った。ある教育分野のNGOで働いている若者は「来年からは私たちはHIV/AIDS分野でも活動を開始する予定です。ここで情報やトレーニングを積んで役立てたいです。」と述べた。


原文表題:Youth Leaders Join Forces to Fight AIDS in India
日付:November 5, 2004
出典:UNAIDS website
URL:http://www.unaids.org/NetTools/Misc/DocInfo.aspx?LANG=en&href=http://gva-doc-owl/WEBcontent/Documents/pub/Media/Press-Releases02/PR_NACO-PFA_05Nov204_en.pdf

パキスタン:セックスワーカー女性が仲間のエイズ対策に乗り出す

 パキスタンでは今、セックスワーカーである女性の6人が中心となり、HIV/AIDSの問題において、弱い立場にあるセックスワーカーのコミュニティにコンドーム使用を呼びかけている活動を始めている。
 メンバーの一人、ズルハ Zulekha さんは「薬局にコンドームを買いに行くのは恥ずかしい。いつも警察に嫌がらせをされる。でも、私たちがメッセージを発信すれば、性感染症から仲間の女性たちを守ることができるのよ。」と語る。
 このグループの活動を支援するのはグリーンスター・ソーシャル・マーケティング (以下、グリーンスター)Greenstar Social Marketing というNGOで、UNAIDS、国連人口基金 UNFPAの資金協力を得て、HIV/AIDSなど性感染症のセックスワーカー間の認識向上を目指している。
 パキスタンでは80年代にズィア・ウルハック Zia-ul-Haq軍事政権が売春など性産業を禁止して以来、女性セックスワーカーがカラチやラホールのような大都市に移っていった。同国4番目の大都市ハイデラバード Hyderabad でも表面上、売春は禁止されているが、グリーンスターの調査によれば、101の個人業者、70の売春宿が営業し、約100名のセックスワーカーが働いている。政府は性産業を違法としつつも、存在は認めている。事実、グリーンスターのプロジェクトに参画し、国家エイズコントロール計画 (NACP) National AIDS Control Programmes はセックスワーカーも対象にしたHIV/AIDSのガイドラインを設定している。
 1987年に最初のHIV/AIDSが報告されて以来、同国の感染者・患者の数は増え続け、1億4000万人の人口に対して7、8万人がHIV陽性であると推測され、一般人口にまで広がっているといわれている。こうした傾向の中でズルハさんたちの活動は、予想以上の成果を挙げている。知人一人一人にコンドームの使用や性感染症の診療受診の必要性を説くことは恥ずかしさや困難を伴う。それでも、168人のうち158人のセックスワーカーの女性達がグリーンスターの診療所に診察を受けにいったという。「自分のコミュニティに貢献できることがうれしい」と話す彼女たちの目は輝いている。

原文表題:PAKISTAN:Sex Workers Come Together to Fight HIV/AIDS
日付:August 7, 2004
出典:the Inter Press Service
URL:http://www.ipsnews.net/new_nota.asp?idnews=24983>http://www.ipsnews.net/new_nota.asp?idnews=24983

ガボン:安価な女性用コンドーム、今後の認知度上昇に期待

2003年9月ガボン家族福祉運動 MGBEF the Gabonese Movement for Family Welfareは女性用コンドームを市場価格よりはるかに安い100CFA(約20USセント)で売り始めた。販売価格を下げ、女性用コンドームの使用を促すための試みだ。
ガボンのHIV感染率は8.1%で、西アフリカ諸国の中でも高い。MGBEFでは英国を拠点とする国際家族計画連盟 IPPF International Planned Parenthood Federationからの助成を受け、現在月4000個を販売している。女性自身による性感染症や望まない妊娠のコントロールを可能にする女性コンドームだが、使用率は未だ低い。
 政府機関である国家エイズ対策計画 PLNS the government's National Programme to Fight AIDSによると人口120万人のガボンでは、男性用コンドーム販売量が400万個であるのに対し、女性用はわずか6万個であった。キオスクや薬局での小売価格は女性用が2〜4USドル、男性用はその半値以下で実際は、NGOから無料配布された多くの男性用コンドームが闇市場で流通しているので23USセント程である。この価格差は、女性用コンドームが市場に出たばかりで流通量が少ない、またメディアの宣伝活動が盛んではないためで、やがては男性用コンドームと同レベルの使用率が期待できるとある地元NGOスタッフは述べている。
 ガボンでは就業年齢層の4人に1人は職がないため、HIV感染のリスクが高い売春婦にならざるを得ない女性も多い。コンドーム使用に積極的でない男性達に対し、女性用コンドームは重要だが「男らしさが脅かされる」と感じる社会風潮もあり、女性用コンドームが完全な答えとなるのは難しい。

原文表題:GABON: Female condoms are subsidised, but not widely advertised
日付:21 Oct 2004
出典:IRIN PLUS NEWS
URL:http://www.irinnews.org/pnprint.asp?ReportID=405

南ア:ノーベル賞作家ナディン・ゴーディマー氏 短編集出版

南アフリカ共和国のノーベル文学受賞作家ナディン・ゴーディマー氏 Nadine Gordimer がHIV感染者・エイズ患者の問題に取り組むため、大物作家とともに、アンソロジー(短編集) "Telling Tales" を出版した。このアンソロジーは21の物語から成っており、ガブリエル・ガルシア=マルケス Gabriel Garcia Marquezやサルマン・ラシュディ Salman Rushidie またアフリカの作家ジャブロ・ンデベレ Njabulo Ndebele やチヌア・アチェベ Chinua Achebe を始め5人のノーベル賞作家も執筆している。
 物語そのものは、HIV/AIDSに関する話ではないが、様々なジャンル(コメディ、ファンタジー、愛や戦争ものなど)の作品が収められている。
 収益は、すべて治療行動キャンペーン TAC Treatment Action Campaign に寄付される。英国と米国で出版されていた英語版は、このほど南アフリカでも発行された。近日中にブラジル・ドイツ・イタリア・中国・ギリシャ・ロシアなどでの翻訳の出版も予定されている。今までのところ、11の国が翻訳を待っている状態で、多くの出版社がこの活動に賛同を示している。また、国連事務総長のコフィー・アナン氏 Kofi Annan は、世界エイズデーの前日にあたる11月30日の国連レセプションで"Telling Tales" について言及する予定である。

原文表題:Telling tales for Aids
出典: the Mail & Guardian
URL: http://www.chico.mweb.co.za/art/2004/2004oct/041022-aids.html

UNAIDSピーター・ピオット事務局長、日本のHIV/AIDS NGOの代表者たちと会談

【10月4日 東京、グローバル・エイズ・アップデート編集部】10月4日(月)外務省にて、国連事務次長であるピーター・ピオット氏 Peter Piotを迎え、日本のHIV/AIDS関連のNGOのスタッフや大学教授などと懇談した。日本のNGOは、ゲイ・MSM、セックスワーカー、在日外国人を支援する団体、また2つのユース団体から総勢20名が出席し、それぞれの立場からピオット氏に提言書を提出した。
 ピオット氏は、「エイズ問題は解決策のある問題だ」とし、HIV/AIDS問題は深刻な現状にあるが、過去の状況から、政治的・経済的・社会的なコミットメントが大きくなりつつあるなど、前向きな方向性も見えてきていると語った。一方、日本のNGO側は、日本のNGOの現在の資金的、人的不足が深刻であるために、活動の継続・拡大が難しいという現状を報告した。「日本政府および社会のエイズに対する意識の低さによって、国内でのHIV/AIDSに関する活動の展開が滞っている。エイズ対策において重要な役割を果たしている日本の国内対策NGOが活用できる年間の資金はわずかで、しかも減り続けている。国内対策にあてる資源の乏しさを放置すれば、将来的には国際的なHIV/AIDS問題への日本の支援や資金拠出にも悪い影響が出てくるだろう」という報告は、日本のNGOの置かれた状況の切実さを物語っている。
 懇談会では、時間的な制約のため、十分な議論はできなかったが、ピオット氏は、このような機会を通じて、日本の市民社会組織と積極的に意見交換をしていくことを約束した。

エイズ・ヘルスケア協会−国際エイズ会議の見直し要求

2004年7月17日に閉幕したバンコクの第15回国際エイズ会議International AIDS Conferenceについて米国で HIV/AIDSとケア・治療について取り組んでいるエイズ・ヘルスケア協会 AIDS Healthcare foundationは、以下のように批判し、抜本的かつ大胆な見直しを要求している。

1.エイズ会議は、資金が製薬産業によって提供、コントロールされているため、実質的には製薬会社の展示会になってしまっている。資金は、たとえば世界銀行,グローバル基金 the Global Fund、世界保健機関 WHO、欧州連合 EUおよび国連の協同事業として拠出されるべきである。

2.実際の討論が会議プログラムに反映されていないので世界的なエイズコミュニティーに影響ある問題について、大きく開かれた討論の場をもつ。

3.公式会議プログラムから除外されている政策提言イベントをプログラムにのせる。

4.会議参加料が法外に高く、資金の乏しい国からの参加は容易でない。参加費の減額、資金調達の支援が必要である。

5.世界でリーダーシップを担っているNGOが聴衆としてしか位置づけられず、しめ出されている。NGOの企画進行に関する役割拡張が求められる。

6.2年後の次回会議は、先進国であるカナダのトロントで開催されるが、世界の認識を高めるためにも、途上国で開催するべきだ。

7.会議の結論として、具体的な解決法、活動計画を引き出す

エイズヘルスケア協会は、このように、世界最大のエイズ会議が製薬産業によって運営されている限り、生と死の問題が公衆衛生ではなく、営利目的に利用されてしまうのだと、エイズヘルスケア協会は主張する。エイズヘルスケア協会の連絡先は以下の通り。
テリーM.フォード 広報―支援責任者 エイズヘルスケア協会 
terrif@aidshealth.org

原文表題:Call for Change to the International AIDS Conference
日付:2004年9月14日
出典:AF-AIDS
URL: http://archives.healthdev.net/af-aids/msg01468.html
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

  • ライブドアブログ