グローバル・エイズ・アップデート

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2005年07月

第21号 2005年(平成17年)7月28日

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グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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 第21号 2005年(平成17年)7月28日
  Vol.1 -No.21 Date: July 28, 2005

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ウガンダ:PEPFARによるARV支援の現状と問題点

 ウガンダでは、米国の「大統領エイズ救済緊急計画」President's Emergency Plan for AIDS Relief: PEPFAR の援助を受け、15万人の国民が、抗レトロウイルス治療 ART を受けられるようになった。その一方、PEPFARには「緊急性」と「質」の二つ側面があり、緊急的な活動の質を高めていくかが課題となっている。
 ウガンダ最大のPEPFAR資金受益NGOである「エイズ支援機構」The AIDS Support Organization: TASOは、「治療プログラムへの参加」と「治療継続」の2点に分けてプログラムを展開しているが、現状では後者が優先されており、特に治療環境の整備を含めた質の改善が重点課題である。
 また、PEPFARの主要な受益者の一つである合同臨床研究センター The Joint Clinical Research Center: JCRC(国防省、保健省、マケレレ大学の三者によって設立された国立のエイズ治療・研究センターで、サハラ以南アフリカ最大のARV供給機関である)は、より多くの患者が治療に参加できるように治療場所の拡大に力を入れており、PEPFARの緊急援助的な性格から治療の質を改善させる動きには否定的である。
 しかし、ウガンダでのPEPFARの任務を担っている米国国際援助庁 USAID と疾病予防センター CDC は、お互いにアプローチは違うものの、ともに、PEPFARで実施するプロジェクトは活動の「緊急性」と「質の向上・維持」の両方とも重要であると認識している。そのため、ウガンダには「1000の花を咲かせよう(let 1000 flowers bloom)」と、治療の質をいっそう高めて、よりたくさんの命を救っていこうというメッセージが打ち出されている。
 しかし、PEPFARからの資金提供には、期限がある。今後どのようにARVプログラムを自立、維持させるかがPEPFAR資金受益組織の共通課題となる。ウガンダPEPFARチームはプログラム参加によるアドヒアランス(注)や感染率の増減などに関する評価のための事業を計画している。

■■(編集部注)アドヒアランス:HIV陽性者が、医師等のアドバイスを受け、理解し
ながら、自らの判断によって適切な投薬治療を継続すること。

原題:The two sides of PEPFAR in Uganda
日付:18 June 2005
出典:The Lancet - Vol. 365, Issue 9477, 18 June 2005, Pages 2077-2078

アフリカ:米国FDA認可のジェネリック薬使用 WHOとアフリカ諸国政府の医薬品認可システムが壁に

 いくつかのアフリカ諸国政府は、米国食品医薬品局 US Food and Drug Administration (FDA)が認可したジェネリックのエイズ治療薬の導入を拒否している。米国、国連、アフリカ各国、製薬会社関係者らは、このような動きで、治療を必要とする人々の元へ安価な薬が供給されるのが遅れると懸念を示している。
 これは米国と国連の薬品規準局の連携の欠如を浮き彫りにしている。米国は、HIV感染地域へ一刻も早く治療薬を支援したいとしており、FDA承認ジェネリック薬の導入の遅れにいらだちを見せている。
 ナイジェリア、ウガンダ、エチオピア、タンザニアの4ヶ国は、南アフリカの製薬会社アスペン・ファーマケア社 Aspen Pharmacare が製造、FDAが認可した抗レトロウイルス薬が、各国の医薬品認可制度において承認されておらず、WHOによる安全性および質的な調査をも満たしていないと主張し、「WHOがそれに対し、安全性と品質を示す追加研究を行うことを要求する」と述べた。
 米国が、これらの国々におけるARV治療を支援するために、安価なジェネリック薬をいつ頃から買い上げるかは明らかになっていないが、早ければ半年以内に数ヶ国で購入する見込みと推測される。活動家たちは「米国政府はこれまで一貫して、ブランド薬の使用にこだわってきた。今回、安価なARVの供給開始が遅れ、患者数が見込みより増加すれば、治療薬にアクセスできない人々が大幅に増えるだろう」と難色を示す。
 WHOのHIV/AIDSプログラム責任者であるキム・ジムヨン博士は、「私たちはこれらの薬をなるべく早く承認する」と述べているが、米国の関係者は、WHOに不満を募らせている。昨年、WHOは自ら承認していたジェネリックの治療薬18種類を承認リストから削除した。それらの多くは再度承認されたが、こうした変更は、アフリカ諸国政府の治療薬への対処の方針を何度も見直させる結果にもなった。
 米国地球規模エイズプログラム副調整官 deputy coordinator of the US global AIDS program であるマーク・ディブル医師 Dr. Mark Dybul は「以前は米国の治療認可の基準が厳しすぎ、承認まで時間が掛かりすぎると非難されていた。それが今や、私たちは最も効率的な医薬品認可システムを整えたのに、他の機関のスピードが遅いために治療薬を使用できないとは、全く皮肉なことだ」と嘆く。一方、明日ペン・ファーマケア社の上級執行責任者であるストラヴロス・ニコラウ氏 Stravros Nicolaou は、南アフリカ共和国で開催されたアフリカ経済サミットにおいて、「FDAが我々の薬を承認した後、上記4ヶ国はWHOの承認と、企業・治療薬の登録が国ごとに必要だと言ってきた。手続きには更に9ヶ月から1年かかる。」と不満をもらした。しかし、ナイジェリアとウガンダ当局では「承認には1ヶ月から4ヶ月程度しかかからない」と述べており、互いに矛盾した内容を話している。
 ウガンダ国薬物基準局長 chairman of the National Drug Authority ジェームズ・マクンビ医師 Dr. James Makumbi は「我が国がWHO認可を求めるのは、我が国が伝統的にWHOを支持してきたためであり、我が国の医薬品承認システムにおいて、FDAの承認は参考にしてこなかった」と述べた上で、「これにはWHOとFDAの関係の問題があるのではないか。通常、WHOはFDAの判断を追認してきたし、いつでもそうできるはずなのだから」
 FDAは過去7ヶ月に4つのジェネリック薬を承認している。このうちの一つを製造しているインドのジェネリック薬企業、ランバクシー社 Ranbaxy の製品は、すでにアフリカ諸国の医薬品認可制度を通過している。WHOでは、現在、FDAが承認したジェネリック薬のうちいくつかについて検証を行っているところだと述べた。上記のディブル医師は、「医薬品の認可は、各国が独自に行うべきであることは確かだ。この問題を各国の保健大臣などに提起している。緊急を要する問題であり、我々はできる限り治療薬の導入を推進していく」と述べている。

原題:Boston Globe: AIDS drugs hit roadblock in Africa - Dispute over generics stalls treatment efforts
日付:June 20,2005
出典:Ip-health listserv
URL:http://lists.essential.org/pipermail/ip-health/2005-June/008035.html

カンボジア:テノフォビル治験問題で判明した研究者の「倫理軽視」

米国のブランド新興製薬企業であるギリアド社 Gilead が開発した抗レトロウイルス薬、テノフォビル tenofovir が米国食品医薬品局 the Department of Food and Drug Administration (FDA)に認可されたのは、2001年10月のことであった。
 それ以降、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校とオーストラリアのニューサウスウェールズ大学は、カンボジアのセックスワーカーを対象に、テノフォビル(NRTI 核酸系逆転写酵素阻害剤)治験を行った。これは、一部の研究者が、テノフォビルにはHIV感染を予防する効果もあるのではないかという仮説を立て、それを立証するためであった。
 当初は、カンボジア政府もこの治験を支持していたが、セックスワーカーの当事者グループおよび弁護士らの抗議運動が展開される中で、治験は倫理的観点において適切でなかったと認識し、支持を撤回した。同様の治験は、タイとカメルーンでも計画されており、この治験の参加者たちは治験実施者に対して、倫理基準に従って治験を行うよう圧力をかけている。
 これらの治験には、富める国の研究者たちが、比較的貧しい国の脆弱なグループの人々を被験者として選んで行っているという構図があり、国際的な医薬品の研究が有する倫理的・政治的な問題を提起することになった。
 たとえば、インフォームド・コンセントは「研究者と被験者の対話」であるといれる。米国法によれば、それは形式的なものであってはならず、治験の際の一プロセスである。被験者が自主的に参加できるように、必要十分な条件、情報を書面で示す必要があり、これは米国を拠点に活動する研究者にとって、治験の際の法的要件である。しかし、今回のカンボジアでのケースを調査したところ、当該の書面を見たことがあるという被験者は一人もいなかった。
 今回の論議は国際的な臨床研究者に「義務と責任」について再考を促している。研究者は、被験者に対する責任を最小化する口実として、所属する研究機関による国際的な研究に関する規定の承認を使用してはならない。国際的臨床研究者の「義務と責任」を遵守することは、法律上の義務である。
 たとえば、治験においては厳密に科学的分析と方法を適用する義務があるが、今回の治験では、研究者は被験者の立場に立って危険性を慎重に分析する必要性を感じていなかったようだと指摘されている。厳密な分析が行われたのは研究段階に限られており、治験ではそれが欠けていたからである。
 1997年、UNAIDSは、エイズワクチン治験の倫理的問題を明確にするため専門家を招集し、ガイドラインを検討した。さらに2000年には治験の治療の義務に特化したガイドラインを提出した。今回のテノフォビル治験に関する論議は、このガイドラインが単に倫理的な義務にとどまるのか、それとも法的義務を負わせるのかという問いを投げかけることになった。

(編集部注:カンボジアで実施され、政府により中止されたテノフォビル治験問題については、「グローバル・エイズ・アップデイト」第1号等で詳細に紹介しています。本論文は、この治験問題とはどのような問題だったかについて検証する内容となっています。本論文は、「HIV/AIDSと闘うアジア・太平洋人民連合」the Asia Pacific People's Alliance for Combating HIV/AIDS: APPACHA のジョー・トーマス氏により執筆されたものです)

原題:The Cambodian Tenofovir Trial Controversy: Lessons to be learnt
日付:May 2005
出典:Yahoo Groups
URL:http://health.groups.yahoo.com/group/AIDS_ASIA/message/301

抗レトロウイルス薬の国内製造に向けて交渉圧力を強めるブラジル政府

ブラジル保健大臣ウンベルト・コーサ Humberto Cosa は、5月末にスイス・ジュネーブで行われたWHOの年次総会において、「HIV陽性者が、ブランド薬製造企業によって決定された高価な価格によって、抗レトロウイルス(ARV)薬を確保することが困難になっているのならば、ブラジルはブランド薬の価格を保護している特許権を破って、独自にジェネリック薬を生産することができる」と発言をした。現行のブラジルの法律およびWTOの規則下では、同国は緊急事態の発生もしくは国家の利益の観点から、特許権者の許可なしにジェネリック薬を製造できる。
 1990年代に推定100万人以上の国民がHIVに感染した同国では、1997年に無料の多剤併用療法の実施を導入した結果、累計感染者数を60万人に抑えることに成功している。しかし、特許権により、新しく開発された治療薬の価格が高騰しており、ブラジル政府は、これらの治療薬を購入するために、2005年には前年に比べて50%も国家予算を増加させなければならなかった。さらに3億2,200万ドルの上乗せ実現はきわめて難しい。
 同国は今年3月から、比較的新しいタイプの抗レトロウイルス薬であるエファビレンツ Efavirenz、ロピナビル Lopinavir、リトナビル Ritnavirおよびテノフォビル tenofovir の製造元に対して、特許料を支払って国内生産を行うことを目指して交渉を進めている。これらの企業は、現在同国が輸入しているARV薬の3分の2を生産している。同国保健省は技術移転の許可を協議中だが、合意に達しないならば強制実施権の発動も検討している。

原題:Brazil could break patents for antiretroviral medication
日付:June 20,2005
出典:Proyecto Agenda LGTB Informative bulletin Issue # 75

ザンビア:債務免除でエイズ対策が前進

 ザンビア政府は、抗レトロウイルス薬(ARV)の無料供給の実施に向けた歩みを進めている。6月20日、ンアンドゥ・マガンデ財務大臣 Ng'andu Magande は、無料のエイズ治療薬供給事業に、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」から供与される資金のうち1億9,200万ドルを、また世界銀行から交付された4,500万ドルの資金を使うことを示唆した。
 一方、6月10日に開幕したG7財務相会議ではザンビアを含む重債務貧困国18カ国への追加債務軽減措置を決定したが、ザンビア政府は、ARV供給資金に、この措置により浮いた資金の一部も充てることを検討している。
 マガンデ財務大臣は、政府がすでにARV治療について患者に課せられていた毎月4万ザンビア・クワチャ(=9ドル)の患者負担額を廃止し、ARV治療を無料化したと述べた。現在、ザンビアでは13,000人がARV治療を受けているが、92万人がHIVに感染し、20万人が日和見感染症を発症していると推定されている。そして、その多くはARV治療検査費用や、郊外からエイズ抗体検査センターまでの交通費を負担できないHIV陽性者の人々である。マガンデ大臣はロイター通信のインタビューに答え、この無料化措置によって、本年末までに10万人のエイズ治療を実現したい、と述べた。
 ちなみにザンビアの債務免除については、この4月、IMF(国際通貨基金)が、「重債務貧困国イニシアティブ」(Highly Indebted Poor Country Initiative)の持続的な経済管理条件(conditions for sustained good economic management)を満たしたとして、40億ドル分の債務免除を承認した。また、マガンデ大臣は6月19日、G7財務相会議においてザンビアが多国間債務帳消しの対象となる18カ国に選ばれたことから、ザンビアが有していた多国間貸付機関からの債務25億ドルが帳消しになるものとの見解を示している。

原題:Zambia to put debt relief into AIDS fight
日付:20 June 2005
出典:Reuters website
URL:http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/L20359585.htm

モーリタニア:「希望のキャラバン」がエイズのタブーに挑む

 西アフリカのモーリタニアで、「希望のキャラバン」と銘打った移動シアターが、人々を楽しませながらHIV/AIDSの啓発活動を行っている。音響システムとスクリーン、そして25人のエンターテイナーを乗せた特注のトラックがその舞台である。
 このキャラバンは、モーリタニアのNGOである「NEDWA」が運営し、HIV/AIDSに関する対話の突破口を開くこと、タブー意識の克服を目的としている。国家エイズ対策事務所 the national secretariat of the fight against AIDS (SENLS)、ワールドビジョン、ユニセフ、地元組織などが財政的な支援を担う。2004年からNEDWAは、ツアーを開始した。昨年は36ヶ所をまわったが、今年は全国54ヵ所で公演し、リーフレットも20万部配布する予定。モーリタニアの感染率は公式には0.6%と発表されているが、複数の性的パートナーを持つ人が多く、HIV予防啓発なども進んでいないことから、実際の感染率はもっと高いのではないかと懸念されている。NEDWAの設立者の一人は、「啓発が最大の予防だ」と語る。
 今年4月の公演では、「スペシャルHIV」と題し、歌、短編映画の上映、演劇などが上演され、一晩で7,000人の観客を集めた。演者らは、感染経路、予防方法、タブーの克服、責任ある行動、性感染症などについて、時にはまじめに、時にはあおりながら観客に語りかける。モーリタニアでは、性に関する話題がタブー視される傾向にあり、コンドームについて公に語ることは難しい。公演では、コンドームを使った予防については「最後の手段」として推奨するにとどめているが、ピア・エデュケーターのネットワークを各地で作り、コンドームの配布ができるよう取り組んでいる。モーリタニアの希望のキャラバンの旅は今日も続いている。

原題:MAURITANIA: AIDS "caravan of hope" travels river valley to break taboos
日付:11 May 2005
出典:IRIN Plus News
URL:http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=4788&SelectRegion=West_Africa

G8グレンイーグルズ・サミット:保健分野の成果はいかに?

【東京発7月9日=グローバル・エイズ・アップデイト編集部】アフリカ問題と気候変動を主要テーマとした本年の英国・グレンイーグルズG8サミットが、7月6日から8日までの会期を終えて閉幕した。本サミットをめぐっては、市民社会が世界規模でG8による貧困削減の努力強化を要求した。保健分野は貧困と大きく関与しているが、G8サミットにおける保健問題での進展はあったのだろうか。
 保健分野での進展として挙げられるのは、およそ、以下の4点である。

(ア) アフリカにおける保健システムを、長期的な資金および技術の投入によって、国および地域レベルにおいて強化することを確約したこと。
(イ) 2010年までに、途上国における包括的なHIV治療の実現という目標に「できる限り近づく」ことを明記したこと。また、全てのエイズによる遺児および脆弱にさせられた児童が適切なサポートを得られるために働くことを明記したこと。
(ウ) このために、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の2006-7年における資金需要を満たすために働くことを明記したこと。
(エ) マラリア、ポリオ、結核について、現存するイニシアティブを支援し、適切な対策をとることを明記したこと。特にマラリア、ポリオについては、実現すべき具体的な資金拠出および具体策の実現のための目標を明記したこと。

 また、エイズ・ワクチンなどの新規医療技術開発に向けては、昨年のシーアイランド・サミットを引き継ぎ、これらの開発に向けたG8諸国の結束や官民パートナーシップの実現などについての記述がなされた。
 コミュニケにおけるこれらの記述はいずれも、アフリカにおける保健・感染症問題の克服に向けたG8諸国のリーダーシップを示すものとして評価できる。一方、問題として挙げられるのは、とくに(ア)の保健システム確立や(イ)のHIV治療実現等に向けて、G8としての具体策が十分には明示されていないことだ。(ア)については、アフリカにおける保健医療分野の主要な問題として、欧米や他の高所得国への人材流出が挙げられますが、これについて、アフリカのとくに公的医療機関に人材をどのように恒常的に確保していくのかについての具体策は明確に示されていない。また、(イ)については、6月にロンドンで開かれたG7財務相会合では、「2010年までの包括的なAIDS治療の実現」を明記していたが、今回のG8サミットでは、そこに「できる限り近づく」(as close as possible)という表現を挟み込んでしまったために、世界全体でのARV治療アクセスの確保という壮大な目標に対して、腰の引けた印象を拭えないものとなってしまっている。
 一方、マラリアやポリオについては、具体的な資金・対策の投入内容を明記したものとなっている点で、より進歩した内容であるということができる。
 いずれにせよ、これらG8サミットのコミュニケに盛り込まれた各点は、たとえば9月にロンドンで開催される「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の第3回資金補充会議などで、G8各国が具体的にどれだけの拠出を誓約するかなど、今後、G8諸国が具体的な貢献の規模や政策内容を問われる場面でどのような行動をとるかによって、その真価が問われることになる。

参考ウェブサイト:

・グレンイーグルズG8サミット 議長サマリー(英語)
http://www.g8.gov.uk/servlet/Frontpagename=OpenMarket/Xcelerate/ShowPage&c=Page&cid=1119518698846

・グレンイーグルズG8サミット アフリカ・気候変動に関するコミュニケ(英語)
http://www.fco.gov.uk/Files/kfile/PostG8_Gleneagles_Communique.pdf

・グレンイーグルズサミットに関する市民社会3団体共同声明(日本語)
http://hottokenai.jp/blog/archives/001_campaign_news/000469.html

第20号 2005年(平成17年)7月13日

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 第20号 2005年(平成17年)7月13日
  Vol.1 -No.20 Date: July 13, 2005

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神戸ICAAP閉会式を引き締めたNGO連合の声明

【2005年7月5日神戸発:グローバル・エイズ・アップデイト編集部】神戸ICAAPは7月5日に閉幕した。7月5日には、全体会の後、閉会式の前に、アジア太平洋地域HIV/AIDSネットワーク連合(セブン・シスターズ)による、ICAAPの総括スピーチが行われた。
 セブン・シスターズの7つのネットワークによる総括スピーチの終了後、インドの若いHIV陽性者のアクティヴィスト、コウサリア・プリアサミー Kousalya Periasamy 氏が登壇し、一つの声明を読み上げた。声明はセブン・シスターズのうち、アジア太平洋HIV陽性者ネットワーク(APN+)、アジア太平洋エイズ・サービス組織評議会(APCASO)、アジア太平洋セックスワーカー・ネットワーク(APNSW)、アジア・ハームリダクション・ネットワーク(AHRN)、アジア太平洋レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーネットワーク(AP-Rainbow)、エイズと人口移動に関する行動調査調整機構(CARAM-Asia)、および、2000年の国連エイズ特別総会で採択された「HIV/AIDSに関するコミットメント宣言」の遵守を要求する世界の市民社会ネットワークである「世界エイズキャンペーン」 World AIDS Campaign によって起草されたものである。
 この声明は、まずアジアにおける深刻なHIVの影響について述べる。アジア太平洋では、ヴァルネラブル・コミュニティに対する十分な予防対策が行われていないために、1時間ごとに148人がHIVに感染し続けている。エイズ治療にアクセスできた人は、ここ1年で5万5千人から15万5千人に増加したが、それでも、必要な人の15%をカバーしているに過ぎない。これらは、明らかにアジア太平洋地域の各国政府のHIV/AIDSに対する政治的コミットメントが不足しているからである。
 この声明では、こうした事態を受けて、予防とケア、治療の体制を早急に整えることを各国政府、および国際機関に要求している。2006年に予定されている上記「HIV/AIDSに関するコミットメント宣言」の中間レビューに向けて、各国が責任を持って「宣言」に記入された目標を達成することを要求している。さらに、中間レビューに向けて各国が課されている、各国のエイズ対策の進展に関する報告書について、HIV陽性者や市民社会がその作成に主体的に参画できるような公式のメカニズムを設立するよう、各国政府に求めている。
 この声明の作成は、ある意味ハプニング的に生じたことだった。停滞気味だったICAAPに何らかの新風を吹き込みたいという、今回新たに参加した途上国の活動家たちが、既存のセブン・シスターズの枠組みを活用しアドバイスを得ることによって、洗練された声明ができあがったのである。
 UNAIDSは、2005年の世界エイズデー・キャンペーンのスローガンを「エイズ・約束を守れ」 AIDS: Keep the Promise に設定し、「コミットメント宣言」評価の年である2006年の存在をアピールしている。しかし、「コミットメント宣言」の内容は必ずしも、各国の市民社会には浸透していない。この声明は、アジア・太平洋地域の市民社会に、「コミットメント宣言」中間レビューの重要性を思い起こさせ、ICAAPの成果を来年へとつなげる役割を果たすものとなった。

関連記事
「アジア太平洋地域の国家政府に対する市民社会からの声明」全文
http://www.worldaidscampaign.info/
セブン・シスターズ(アジア太平洋地域HIV/AIDSネットワーク連合)
http://www.7sisters.org/

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AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
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