グローバル・エイズ・アップデート

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2005年08月

ミャンマー(ビルマ): 世界基金へ支援再開の検討を要請

 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(以下、世界基金)は昨年、ミャンマー(ビルマ)に対し、向こう5年間にわたって9,800万ドルの資金提供を誓約していたが、本年8月中旬、同国の軍事政権が保健医療物資の供給や医療サービスの提供を阻害していることを理由として、資金提供の停止を発表した。
 ミャンマーから世界基金に資金拠出を申請している「国別調整メカニズム」(CCM: Country Coordinating Mechanism:ミャンマー保健相が議長を担当)は、今回の資金援助停止について遺憾の意を表明し、一時的な政治の不安定な状況だけで、一度なされた誓約が破棄されたことは正当化させるべきではないと、資金援助停止の理由に反論を行った。また、この資金提供停止処分は国連ミレニアム開発目標の内容とも矛盾するとして、国際社会へ支持表明を呼びかけた。一方で、国連機関、ならびに援助機関は、ミャンマーにおけるHIV/AIDS
活動を継続することに合意し、世界基金による資金提供停止に余って生じる資金不足にどのように対応するかについて協議した。イギリス国際開発省ミャンマー担当 クレア・モラン氏 Claire Moran は「ビルマにおいて、今回の資金拠出停止の決定がなされたことは非常に残念なことであるが、この決定は、同国への支援を完全に停止するという意味ではなく、現在新たなスキームによる支援を模索している段階である。」と述べた。

原題:Myanmar Urges Global Fund To Reconsider Withdrawal of $98M Grant; Donors Discuss How To Bridge Funding Gap
日付:Aug 23, 2005
出典:Kaiser Daily NEWS
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?hint=1&DR_ID=32163

どうなる?ウガンダのHIV/AIDS政策

【編集部による解説】★どこへ行く、ウガンダのエイズ対策

 アフリカのHIV/AIDS対策成功国として名をはせた東アフリカのウガンダ共和国が、今、揺れています。8月24日、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」は、ウガンダにおける世界基金の拠出によるプログラムにおいて重大な資金濫用が行われた疑惑があるとして、資金拠出の停止を表明。これと同時期に、ウガンダにおいて深刻なコンドーム不足が生じているとして、ウガンダのHIV陽性者のアクティヴィストと米国のHIV/AIDS活動家たちが連携して記者会見やデモを行いました。さらに、国連事務総長のアフリカHIV/AIDS特別代表である
スティーブン・ルイス氏は、ウガンダを例に挙げて米国の禁欲・保守主義的なHIV/AIDS支援アプローチを強く批判しました。ウガンダはいったい、どうなってしまったのでしょうか。
 5年にわたるゲリラ戦の末、1986年に旧勢力を一掃して政権を掌握したヨウェリ・ムセヴェニ大統領および与党「国民抵抗運動」 National Resistance Movement は、荒廃したウガンダを急速に再建し、ウガンダは再び「アフリカの真珠」として復活したかに見えました。HIV/AIDSについては、とくにビクトリア湖西岸地域で、ウガンダ=タンザニア戦争などに端を発して70年代末から80年代初頭に急速に生じた感染爆発により、80年代後半に人々が一斉にエイズを発症し、人々が次々と死んでいく、村が次々と廃村となっていくといった事態に見舞われました。これに対して、ムセヴェニは政権掌握後すぐにWHOと連携してHIV/AIDS対策に乗り出しました。87年にはHIV陽性者の医療従事者らで作る最初のHIVケア・サポートNGO「エイズ支援機構」(TASO)が設立され、ケ
ア・サポートに力が入れられました。さらに、著名な歌手、聖職者、軍人らがHIV感染をカミングアウトしたことにより、HIV陽性者への差別・スティグマが軽減され、人々が共同してエイズと闘う体制ができあがりました。
 コンドームの普及など現実的な予防対策についても、当初否定的だったムセヴェニ大統領が考えを変え、「ABCモデル」(禁欲・貞操・コンドーム)の導入によりコンドーム使用を国家戦略に位置づけたことによって軌道に乗り、90年代後半に至るまで、ウガンダはケア・サポートの充実、HIV陽性者の社会参画の活発化、コンドーム使用など現実的な予防政策の導入によってエイズ対策を成功させたのです。さらに2000年以降、ここに抗レトロウイルス薬(ARV)治療が導入され、ウガンダのエイズ対策はより高次の発展を遂げるかに見えました。
 ところが、この時期から、米国のPEPFARによる支援が大々的に展開され始めるとともに、ボーン・アゲイン・クリスチャンであるジャネット・ムセヴェニ大統領夫人の影響力が強まり、禁欲・貞操を極端に重視する予防政策が導入されました。青少年に「禁欲誓約書」を書かせるといった「予防」政策が各地で展開される一方で、コンドームの予防効果を否定する言説なども多く出回ってきています。ウガンダの国家エイズ戦略自体は、都市・地方でのコンドーム供給に優先順位を置いていますが、こうした戦略は予想以上のスピードで切り崩され、逆に、保守的なエイズ政策が幅を利かせてきているというのが現状のようです。
 ウガンダ国内の多くのHIV活動家たちは、こうした状況に危機感を募らせています。しかし、未だに強力な権威を誇る「国父」ムセヴェニ大統領の威光や米国からの資金によって、こうした危機感はなかなか具体的な力を持ち得ないでいます。アフリカの数少ない成功モデルであり、また、80年代末〜90年代にはほぼ自力でエイズを克服してきたウガンダは、今後どうなっていくのでしょうか。
 ここでは、最近のウガンダの状況について、いくつかのニュースを集めてみました。今後も当メールマガジンでは、ウガンダの動向に焦点を当てて行くつもりです。

ウガンダ: 米国NGO がウガンダでのコンドーム不足を告発

 米国メリーランド州に本拠を置くNGO「健康とジェンダーの平等のためのセンター」 the Center for Health and Gender Equity(CHANGE)によると、ウガンダでは10ヶ月に渡って深刻なコンドームの供給不足に陥っており、これまで成功例とされてきたウガンダのエイズ予防政策は、危機に瀕する恐れが出ている。
 ウガンダのコンドーム不足は、ウガンダ政府と、主要ドナーであるブッシュ政権による、コンドーム供給に関する失策と、禁欲重視に偏った政策の結果であるとCHANGE代表のジョディ・ジャコブソン Jodi Jacobson は批判している。
 2004年10月、ウガンダ政府はそれまで無料で配布していたコンドーム「エンガブ」 を低品質だとして配布停止にしたため、大量のコンドームが倉庫に眠ったままとなる事態になった。さらに輸入コンドームの税率が引き上げられたことにより、コンドー ムの価格は最大500%上昇した。期を同じくして、ブッシュ政権の大統領エイズ救済 緊急計画(PEPFAR)から資金を得た団体によって、反コンドーム・キャンペーンがさ かんに行われたウガンダでは15歳から24歳の年齢層のうち66%が性的にアクティブ だが、米国からの圧力により、この年代層は包括的なエイズ対策のターゲットからはずされ、禁欲促進プログラムの対象とのみされている。これによりウガンダでは、感染から身を守る手段も情報も得ることが難しくなった。
 PEPFARによってエイズ対策の資金を得ているナイジェリア、ザンビア、ケニア、ナミビア、タンザニアなどでも、コンドームよりも禁欲を強調する原理主義的な宗教団体へ資金が渡る動きがある、とCHANGEは警告している。
 なお米国はPEPFARの枠で、ウガンダのエイズ予防と治療対策プログラムに対し2005年に1億3,700万ドルを提供しており、2006年には1億7,000万ドルを供与する予定である。

原題:CONDOM CRISIS DEEPENS IN UGANDA, SHORTAGES SPREAD TO OTHER COUNTRIES US POLICIES UNDERMINE HIV PREVENTION PROGRAMS
日付:Aug 26, 2005
出典:Center for Health and Gender Equity (CHANGE) websiite
URL:http://www.genderhealth.org/uganda.php

第23号 2005年(平成17年)8月18日

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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 第23号 2005年(平成17年)8月18日
  Vol. 1- No.23 Date: August 18, 2005

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

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タイ:南部の若者たちにHIV感染拡大の傾向

 タイの日刊紙バンコク・ポストによると、イスラーム教徒が多く住むタイの南部で、若い世代にHIV感染のリスクが広がっている。宗教や民俗習慣の影響もあって、タイ南部のイスラーム教徒の若者は性についてあまり語ろうとせず、コンドームの使用に反対する人も多いのが、その一つの理由である。
 地域でHIV/AIDSの予防教育を行っている25歳のイスラーム教徒の女性は、「イスラーム教徒の若者や大人がHIV/AIDSに関する議論が出来るようになるためには、政府がもっと積極的に取り組むことが重要だ」と主張する。この女性によると、この地域では、十代の若者たちは、コンドームや経口避妊薬をコンビニエンスストアで買うのを躊躇しがちだという。一方、スーチャイ・チャランタナクル公衆衛生相は、性行為の初経験の年齢が低年化していることも、若年層のHIV感染拡大に影響していると述べ、若年層の感染拡大に注意を促した。
 タイには、HIVに感染した若者が8万人おり、毎日600人の新規感染者がいるという。ロックフェラー財団のキャサリン・ボンド氏 Katherine Bond は、タイ政府はHIV/AIDS国家予算の大部分を教育や予防施策よりも抗レトロウイルス薬やその他の医薬品の購入資金に充てているが、今後、HIV/AIDSへの取り組みが成果を上げるためには、若者を対象とした予防啓発にも力を入れていくことが必要だと述べた。

原題:Lack of Condom Use, Ignorance Contributes to HIV Spread Among Young
Muslims in Southern Thailand
日付:July 15, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS reports
URL:
http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=15-Jul-05#31402

タイ:50万人 HIV陽性者に低価格ARV薬の提供を開始

 タイ公衆保健省は7月13日、国内の50万人以上のHIV陽性者に低価格で抗レトロウイルス(ARV)薬を提供する計画を発表した。この計画は、今年10月にも実施される予定だという。
 タイでは、これまでにも特に貧困層を対象に、5万人のHIV感染者・エイズ患者に無償でARV薬を配布してきた。今回の計画ではCD4の数値が200以下のHIV感染者・エイズ患者が最初に治療薬を受け取ることになる。公衆保健省は、今回発表した治療プログラムを実現させることによって、タイは、全てのHIV陽性者のARV薬へのアクセスを確保する、世界で最初の国となる、と表明している。
 タイはカンボジアなど近隣諸国にジェネリック薬を輸出し、製薬技術をアフリカ諸国にも提供している。

原題:Thailand To Offer Low-Cost Antiretroviral Drugs to All HIV-Positive Residents
日付:July 15, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS Report
URL:
http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=15-Jul-05#31399

南アフリカ:妊産婦のHIV/AIDS対策に進展

 南アフリカ共和国保健省によると、2003年に実施された全国HIV・梅毒感染率調査で、南アフリカで妊娠している女性のHIV感染率は27.9%であった。これは、同国の約3割の新生児は、近い将来、母親をエイズ関連疾患で失う可能性が高いことを意味する。クワズールー・ナタール大学医学部産婦人科教室 Department of Obstetrics and Gynaecology at the University of KwaZulu-Natal のツィディ・セビツォアネ医師 Dr Tshidi Sebitloane によれば、2歳までの乳幼児の死亡率は、乳幼児自身がHIVに感染していなくても、母親が慢性疾患だったり、すでに死亡している場合、感染している場合の死亡率と変わらないという。
 また、同大学HIV/AIDSの研究を行っているフーセン・コーバディア教授Dr.Hoosen Coovadia の調査によると、南アフリカの産婦人科を訪れる、HIVに感染した妊婦の10−15%は、CD4の数値が200以下であるという。これは、早急な抗レトロウイルス(ARV)薬の処方が必要とする状態である。
 しかし、これまで、同国内のほとんどの産婦人科には、CD4数値を計測する臨床試験設備が十分でなく、政府の姿勢も消極的だった。高額なARV治療薬も、民間の資金援助でまかなわれていたのが実状だった。
 HIV陽性妊産婦のための治療プログラムは、なかなか推進されなかったが、最近になって、政府や研究機関が妊産婦のHIV/AIDSケアに取り組む動きみせ始めた。たとえば、HIV陽性の妊婦の生存率を向上させるためのガイドラインが完成される予定だという。また、南アフリカでは、米コロンビア大学が推進している母子感染予防プログラムの枠組みである「MTCT-plus」がすでに実施されている。通常、母子感染予防プログラムは、出産前の妊婦が短期間、1種類のARVを摂取することで、出産時の母子感染を予防するというものであるが、MTCT-Plusは、妊婦自身とその夫および子どもに対して、継続的に、授乳、ARV薬治療や治療継続のためカウンセリング等のケアを提供するものである。保健医療従事者への教育や、システムの評価も実施する。既に、サハラ以南のアフリカやアジアの9カ国の13地域で、7千人が、PMTCT-plusのサービスを受け始めている。南アフリカではすでに3つの地域で実施されている。
 南アフリカのPMTCT-plusプロジェクト責任者アンナ・コウツォウディス Anna Coutsoudisは、トレーニングを受けた保健医療従事者が不足しているため、栄養に関して、誤ったカウンセリングが実施されていると指摘した。たとえば、乳幼児に母乳と人工栄養を混合させて与えると、乳幼児へのHIV感染リスクが高まることがすでに明らかになっている。母子感染を抑制するには、完全に母乳で育てて早期に離乳食を導入する、もしくは安全な水が得られるならば、人工栄養で育てる方法のいずれかがよいとされている。HIVに感染している妊産婦にこの情報が徹底して提供されなければならない。
 出産後の母親たちのための十分なケアが求められている。

原題:Health-South Africa:Keeping Mom Alive is the Best Medicine
日付:July 12, 2005
出典:IPS News
URL:http://www.ipsnews.net/print.asp?idnews=29474

ウガンダ:漁村に広がるHIV/AIDS

ウガンダで2004年に行われた調査から、同国国内の漁村でHIVの感染が拡大していることが判明した。
 ウガンダでは、漁業は主要産業の一つであるが、HIV感染者・エイズ患者が急増しているため、漁業による収入が減っただけでなく、伝承技術が失われ、漁村の生活全体が崩壊しつつあるという。
 ウガンダでは、約70万人が漁業に従事し、約120万人が、直接または間接的に、漁業で生計を立てている。また、年間1億米ドル超の利益があり、GDPの12%近くを占める。関係者によると、ウガンダの年間漁獲高は30万トンで、漁業は、年間1700万人のウガンダ人の食生活を支えている。
 漁村のHIV感染率は、近隣の農村よりも高く、例えば近隣の農村の推定HIV感染率が4%であるのに対し、西部のアルバート湖岸 Lake Albert の村では、HIV感染率が24%と言われている。漁村の多くは、安全な水を得られず、衛生的なトイレや基本的な保健サービスへのアクセスが困難な隔絶された地域に集中しているため、HIV感染の可能性が高まっていると見られる。また、湖に深く潜ることが多いため、健康を害しやすいとも考えられる。ウガンダの湖岸地域には、コレラや赤痢の流行が頻繁に起きている場所も多い一方、病院がない地域もある。
 今回の調査結果を受けて、ウガンダ政府は、漁業従事者のためのHIV/AIDS対策を開始する。HIV感染率の低減と同時に、漁村における教育や保健、電気、安全な水へのアクセスの向上を目指す。

原題:UGANDA: High HIV/AIDS levels among fishing communities
日付:19 July, 2005
出典:IRIN Plus News
URL:http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=5044&SelectRegion=East_AfricSelectCountry=UGANDA

クリントン前大統領:アフリカ諸国訪問 「小児エイズ治療に希望を」

 米国のビル・クリントン前大統領は7月17日、モザンビークの首都マプートの小児病院を訪問し、開発途上国で生きる6万人を越えるHIV陽性の子どもたちが、来年までに治療を受けられるようになることを希望すると語った。同氏は、翌18日にレソトの首都マセルのHIV/AIDS小児診療所の新規開院に出席し、650人以上の子どもたちに抗レトロウィルス(ARV)薬を提供した。
 クリントン氏が運営するクリントン財団は、1万人の子どもたちへの小児用抗レトロウィルス薬提供のために200万ドルを、またアフリカ諸国をはじめとする10カ国の診療所で、地方の医者が小児HIV/AIDS治療の研修を行うために300万ドルを提供する用意があると今年4月に発表している。
 クリントン氏は、「来年にはさらに5万人が受診できるように計画している。来年末には、60カ国で財団を通じて薬を購入し、生産量を増やすように製薬会社に交渉していく」と語った。さらに、「全ての子どもには夢をもって健康な生活を送り、教育を受ける権利がある。子どもたちが死んでいくのを見たくはない」と話している。
 また、レソト政府が実施したHIV/AIDS対策については、短期間でめざましい成果を挙げたと賞賛しつつ、依然長い道の途中であるともコメントしている。
同氏は、レソト、モザンビークの他に南アフリカ、タンザニア、ケニア、ルワンダを一週間にわたって訪問した。

原題:Clinton Says Foundation Plans To Expand Programs To Treat 60,000
HIV-Positive Children Next Year
日付:July 18, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS Report
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=18-Jul-05#31426

ASEAN諸国:持続可能なARV薬提供のために インドネシアでASEAN地域セミナー開催

 7月28日、インドネシアの首都ジャカルタのダルマイス国立癌病院 Dharmais National Cancer Hospital で、「ASEAN諸国の持続的抗レトロウィルス(ARV)薬提供Towards Sustainable ARV Service in ASEAN」をテーマにした会議が開催された。会議には50人以上が参加し、ASEAN諸国が協力して持続的なHIV/AIDSや日和見感染治療薬の提供を維持することが必要であると合意した。
 インドネシア保健省疾病管理センター(CDC)のロスミニ・デイ医師 Dr. Rosmini Dayによれば、WHOの「3×5戦略」ではインドネシアで1万人以上がARV薬を必要としていると見積もられているが、その一方で、インドネシア政府はARVのニーズをを2005年には5500人、その翌年は6500人と見積っている。インドネシアではHIV感染者・エイズ患者を把握するシステムがずさんなため、政府が本来のニーズを算出できないのだという。
 同じくインドネシアに国境なき医師団の一員として派遣されているベルギー人医師オーラフ・ヴァルヴェルデ・モール氏 Dr. Olaf Valverde Mordt は、「ASEAN諸国が集まれば大きな力になる」と話す。インドネシア、タイ、ヴェトナムはジェネリックの抗レトロウイルス薬を製造している。これらのジェネリック薬製造国が治療薬を輸出すれば、ASEAN地域全体のニーズを満たすことができる、と希望を表明した。
 タイ政府製薬公社 Government Pharmaceutical Organization (GPO) の国際販売責任者 International Sales Manager であるゴスリワタナ氏 Mr. Itsaraet Gosriwatana は、タイが人道的支援を目的としてカンボジア、ビルマ(ミャンマー)など周辺国に、NGO等を通じてARVを輸出していることを明らかにした。同時にゴスリワタナ氏は、タイと米国間で締結される自由貿易協定(FTA)に憂慮を表明した。氏は、この自由貿易協定により、本来世界保健機関(WTO)の貿易関連知的財産権協定(TRIPS協定)で認められている公衆保健のための措置が制限されるのではないかとの懸念を表明した。
 ある参加者は、ASEAN各国の政府は国家治療計画を策定し、限られた資源を有効活用して、ARVを必要としている人が必ずARVを得られるようにして行くべきだ、と話していた。

原題:Towards Sustainable ARV Service in ASEAN: "Countries Are Not
Powerless"
Jakarta
日付:June 28, 2005
出典:Yahoo!HEALTH
URL: http://health.groups.yahoo.com/group/AIDS_ASIA/
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AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
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