グローバル・エイズ・アップデート

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2005年10月

第28号(第2巻第5号) 2005年(平成17年)10月27日

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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 第28号(第2巻第5号) 2005年(平成17年)10月27日
  Vol. 2-No.5 Date: October 27, 2005

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

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UNICEF: 「子どもとエイズグローバルキャンペーン」開始

 この10月から、UNICEF・UNAIDSを始め、その他のパートナー機関が「子どもとエイズ・グローバルキャンペーン Global Campaign on Children and AIDS: UNITE FOR CHILDREN. UNITE AGAINST AIDS」と称する、5年間にわたる世界的なキャンペーンを開始する。
 このキャンペーンは、以下4つの分野が重点化されている;

1. 母子感染の感染抑制
2. 小児治療
3. 青少年のHIV感染拡大防止
4. HIV陽性の児童に対するケア・サポート

 このキャンペーンは、世界各国で同時展開され、向こう数週間で開始される予定である。最初のグローバル・キックオフキャンペーンは、今月25日にニューヨークの国連本部にて、国連事務総長コフィ・アナン氏、その他関連機関の高官を迎え、行われた。
 その他、オーストラリア、ニュージーランド、ケニア、セネガルなどの国々、パリ、ダブリン、ロンドン、ジュネーブ、ハーグなどの主要都市でも、キャンペーンが25日前後に行われた。この世界同時キャンペーンでは、各国の大統領や元首、青少年、国際的なセレブリティ、UNICEFやUNAIDS高官やその他大勢のキャンペーン・パートナーたちが、ラジオ番組、サッカーの試合、祝典、テニス大会において、キャンペーンの支持を示した。
 11月、12月に入っても、世界同時キャンペーンは終わらない。マニラでMTV「ステイ・アライブ」コンサート MTV Staying Alive concert 、スワジランドで記念バスツアー、インドでクリケットの記念試合、ブラジルでも「ブラジル+6イニシアティブ the Brazil + 6 initiative 」と呼ばれる活動が展開される予定である。

参考HP:ユニセフ ホームページ「UNITE FOR CHILDREN. UNITE AGAINST AIDS」
http://www.unicef.org/uniteforchildren/index.html

原題:Launch of the Global Campaign on Children and AIDS
出典:UNICEF

世銀:ルワンダHIV/AIDSプログラムに3,200万ドル提供

 世界銀行多国間エイズプロジェクト(MAP:Multi-Country HIV/AIDS Programme)は、ルワンダ北部のルヘンゲリ Ruhengeri 州におけるHIV/AIDSプログラムに3,200万ドルを提供する、と発表した。
 この地域は、同国の他地域と比べ、エイズ対策として行われているプログラムが少ない。MAPの代表は、9月中旬に行われた会議で、州の担当官らに対して、住民に対してHIV抗体検査を受診するように勧めるよう主張した。ルヘンゲリ州のMAP代表は、世界銀行のプロジェクトはHIV/AIDS活動団体の支援が可能であることから、さらに多くの団体を作るよう奨励した。
 ルワンダのHIV/AIDSの流行拡大は、1994年に生じたツチ人に対する民族大虐殺(ジェノサイド)以後、とくに顕著になっている。ジェノサイドにおいては、フツ人の民兵は
HIV/AIDSを武器 weapon として使用する意図的な計画の下でツチ人の女性を強姦するなどの事態も生じた。

原題:World Bank Provides $32M for HIV/AIDS Programs in Rwandan Province
日付:Sep 16, 2005
出典:Kaiser Daily News
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=16-Sep-05#32590

中国: ホテルや娯楽施設に3億個のコンドームを無料配布

 中国政府は全国に3億500万個のコンドームを配布のため、HIV/AIDS予防プログラムの特別予算を使用、ガオバン(高邦)・ゴム製品製造会社 Gaobang Latex Products Manufactory より購入したと述べた。コンドームは、中国疾病予防センターの地方部署、製造本社のある桂林市周辺の42のホテル、公共の多目的施設などでも無料で入手可能となる。
 同国は、福建省や北京と同様に、既に湖北省、雲南省、江蘇省でコンドーム促進プログラムを展開している。保健省行政官は、プログラムが全ての地域で実施されるよう強く求めている。中国青少年HIV/AIDS予防・治療財団 China Youth HIV/AIDS Prevention and Care Fund のスタッフ タオ・ラン氏 Tao Ran は、「人々が、野菜を買うのと同じ位簡単に、また自然にコンドームを手にすれば、コンドームによるエイズ予防の機能は、人々の生命に有益に働き、人々の偏見を変えることができる。」と述べた。その一方で同氏は、コンドーム使用がまだ国民に受け入れられていないと課題を挙げた。
 公式統計によると、同国では84万人のHIV陽性者の30%が、無防備な(コンドームを使用しない)性交 intercourse によりHIV感染したと報告されている。

原題:China To Distribute 305M Condoms to Hotels, Entertainment Venues at No
Cost
日付:Sep 15, 2005
出典:Kaiser Daily News
URL:
http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=15-Sep-05#32568

アジア:「企業はHIV/AIDSの影響を最小限に抑える行動をすべき」〜世界経済フォーラムによる調査結果が報告される〜

 アジア地域のHIV陽性者の割合は、現在のところ全体の人口の1%以下である。現時点で、アジア諸国の民間セクターがHIV/AIDSに関して何らかの行動を起こすことが出来れば、HIV/AIDSが民間セクターに与えることが予測されている大きな影響をくい止めることができるだろう……世界経済フォーラム World Economic Forum (WEF) によるこうした調査結果が、9月9日、報告された。
 この調査は、ハーバード大学、アメリカエイズ研究財団 American Foundation for AIDS research 、UNAIDSの協力で、WEF国際保健イニシアチブ WEF's Global Health Initiatives によって行われたものである。
 この調査によれば、現在のアジア諸国でのビジネスにおけるHIV/AIDSの影響は小さく、流行拡大に対する収入への影響は、調査をした全体企業のうち、3分の2の企業で最小限に抑えられている。しかし、直接および間接的に使用経費への影響を感じている企業や、予防・治療イニシアチブを始めた企業がある。
 アジア15ヶ国、1,500社中37%の企業は、今後5年間にHIV/AIDSが企業運営に影響すると考え、30%がすでにその影響を受けており、さらに8%がHIV/AIDSはマラリアや結核よりも深刻であると回答している。
 ハーバード大学公衆衛生大学院人口・経済学教授のデビット・ブルーム氏 David Bloom は、「今、アジアのビジネス界は、エイズがビジネスにどんな影響を与え、スティグマや差別の課題に取り組む、病気に向き合うため、政府やNGOとどの様に効果的な関係を構築していかなければならないかを学ぶべきである。」と警鐘を鳴らしている。

原題: Businesses in Asia Should Take Action To Minimize Impact of HIV/AIDS, Survey Says
日付: September 12, 2005
出典: Kaisernetwork Daily HIV/AIDS report
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv.cfm#32494

南部アフリカ:HIV/AIDSの流行拡大で深刻な食糧危機

世界食糧計画 WFP は、南部アフリカ地域でHIV/AIDSの拡大と極端な貧困および弱体な農業システムにより、食料安全保障に関して、「慢性的かつ進行中の非常事態」が生じていると警告した。WFPは、この地域で、10月には900万人の人々が食糧不足に陥る可能性があるとし、これを克服するための資金として1億5千万ドルの出資を呼びかけている。
 この地域は干ばつに直面しているが、その影響を最も受けている国は、マラウィ、ジンバブウェ、レソト、スワジランド、モザンビーク、そしてザンビアの一部である。例年より早い乾季の影響で、農作物が枯れて収穫量が減少した。さらにHIV/AIDSの拡大で働けなくなる人、亡くなる人なども増加して、労働人口が減少している。WFPの関係者による
と、何百万という人々が、来年4月の収穫期まで、生き延びるための食物を得られなくなる可能性があるという。

原題:HIV/AIDS Epidemic Threatening Food Supply in Famine-Prone Southern Africa
日付:Sep 29, 2005
出典:Kaiser Daily News
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv.cfm#32823

アフリカ:製薬各社、アフリカで市場拡大をねらう

 数年前まで、世界の主要な多国籍製薬企業は、アフリカをはじめとする途上国を、抗レトロウイルス薬(ARV)の市場として認識されていなかった。しかし、ここ数年、世界の主要な各製薬会社は、特許権が付与された抗レトロウイルス薬(ARV)をアフリカで使用・販売の認可を得るために大規模な取り組みを行っている。世界的には、ARV市場は医薬品全体の3%に満たず、魅力的な市場とはいいがたい。しかし、WHOもARV治療拡大キャンペーンを行っており、今年中にも治療を受けられる人の数は飛躍的に増大することが予想されている。多国籍製薬企業の態度変更は、こうした動きを受けてのものである。
 グラクソ・スミス・クライン社 Glaxo SmithKline は利益を度外視した価格を設定し、ジェネリック薬との競合をねらっている。多くの製薬会社は、最先端のHIV/AIDS治療薬をアフリカで販売するため、不合理とも言えるような治療薬認可のための「お役所手続き」や販売網の確保の障壁を乗り越える必要がある。それでも巨大製薬会社がアフリカでの治療薬販売に躍起になるのは、製薬会社が自分たちの市場を維持・拡大するためだ、と専門家らは分析している。
 インドやブラジルなど途上国によって製造されているジェネリック薬(特許権保有者とは別の製造業者によって製造された、特許薬と同等の成分・効能を持つ医薬品)の利点は、確実な薬効があり、さらに安価で入手できるという点にある。さらに、公衆衛生に関するシステムが未発達な国々にとっては、多数の製薬会社と取引するよりも、一つのジェネリック製薬会社と取引するほうが効率的であるという点もある。
 アフリカにおいては、貧しさゆえにHIV/AIDSの治療が中断されてしまうことが少なくない。現状では、先進国の多国籍製薬産業も、安価な治療薬の提供など協力的になってきているが、さらに良好な協力体制を築く余地はある。例えば、製薬会社が途上国に対し、製薬技術移転に関する協力や、政府に薬価の交渉能力を向上させるような支援をすることが考えられる。

原題:Have pharmaceutical companies come to the party in Africa?
日付:21 September.2005
出典:Pambazuka
URL:http://www.health-e.org.za/news/article.php?uid=20031304

ジンバブウェ:スラム撤去がエイズ問題へ深刻な影響

ジンバブエのロバート・ムガベ Robert Mugabe 政権は、本年4月の下院選挙の終了後、7月から首都ハラレを含む大都市のスラム街の強制撤去政策を強行している。また、野党や反体制派への監視を強めるための憲法の改訂も実施された。
 国際的な人権NGOであるヒューマン・ライツ・ウォッチ Human Rights Watch (本部・ニューヨーク)は、ジンバブエ政府が7月以降行っているスラムの強制撤去が、同国のHIV/AIDSの治療プログラムを妨げていると批判している。
 同団体によると、治療プログラムの停止により、耐性ウイルスを持つ陽性者数が増えている。またNGOなどの救助活動が困難になり、食料不足が深刻化している。現状では、ジンバブエの成人人口の約4分の1がHIVに感染している。
 東部の都市、ムタレ Mutare のケアワーカーによると、彼が治療を担当する20人のHIV陽性者のうち5人は、スラム強制撤去により家から追い払われた後、公害の原野に野宿を余儀なくされ、死亡した。5歳の子どもを残して命を落とした母親もいるという。
 憲法の改訂はスラム街撤去の正当化だけにとどまらず、脅威であると判断した国民のパスポートを剥奪する権限や、土地の所有権に介入する権限を政府に与える内容を含むものとなった。また、1987年に廃止された上院が再設置され、11月に選挙が予定されている。これが実現すれば、大統領がより多くの議員を指名できることになる。野党や反対派は、大統領による憲法改正は、基本的人権の侵害であり、政治活動の自由に著しい制限を加えている、と批判している。
 同国憲法は、1980年に独立してから17回変更されている。IMFは、ジンバブエに対し、債務不履行を理由に支援の対象外とする決定を下していたが、9月10日、実行を6ヶ月延期すると発表した。これは、国民の大半が経済危機、高い失業率、高いインフレ率や食料およびエネルギー危機に直面している影響を考慮したためである。

原題:Zimbabwe clearances' Aids impact
日付:12 September 2005
出典:BBC News ウェブサイト
URL: http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/africa/4236956.stm

スーダン:南北和平合意後のHIV/AIDS対策の行方

現在、スーダンには約60万人のHIV陽性者がおり、成人感染率は2.6%とされ、ケニアやチャドなどの周辺国に比べると比較的低い数値にとどまっている。
 今年1月、北部地域に基盤をおくスーダン共和国バシール政権と、南部の解放運動勢力であるスーダン人民解放運動・スーダン人民解放軍 Sudan People's Liberation Movement/Army, SPLM/Aの間で包括的和平合意 Comprehensive Peace Agreement が結ばれた。
 この合意に関して、一部には、HIV感染率の高い近隣国に逃れていた難民が帰還することによって国内のHIV感染率が上昇するのではないかとの危惧が出ている。しかし、国連難民高等弁務官事務所 UNHCR は、帰還民とHIV/AIDSを安易に結びつける考え方に警告を発している。
 実際、紛争地では、性的虐待や保健サービスからの断絶などでHIV感染リスクが高くなることは確かだが、実際の難民の感染率は避難先地域の感染率や滞在期間によって左右され、また難民キャンプ内でHIV/AIDSに関する予防啓発教育を受けることでかえって感染リスクが低まるとも考えられる。難民キャンプで看護師や保健スタッフとしてのトレーニングを受けた難民もおり、こうした人々が帰還し、復興に参加することはスーダンにとってチャンスだとも言える。
 スーダン政府はエイズ予防プログラムに力を入れ始めている。広大な国土、資金不足、保健医療システムの不備など様々な困難を抱えつつも、帰還民や感染者を巻きこんだ包括的な対策の進展が今後いっそう求められている。

原題:SUDAN: Trying to stem the spread of HIV/AIDS
日付:6 September 2005
出典:IRIN PLUS NEWS
URL:
http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=5203&SelectRegion=East_Africa&SelectCountry=SUDAN

南アフリカ:深刻な資金・人材不足でHIV治療拡大が困難に

南アフリカ共和国保健省は、2009年までに100万人以上のHIV陽性者へ、抗レトロウイルス治療(ARV)の提供を目標とした全国的なHIV/AIDS治療計画の拡大を進めている。現在政府は5,200万ドルの予算を取っているが、2009年には10億ドルの莫大な財政負担を強いられることが予想され、目標達成には、新たな財源が必要である。
 予算不足については、HIVの拡大が特に深刻なクワズールー・ナタール州 Kwazulu-Natal Province ダーバンのナタール大学で副学長・保健学部長を務めるリーナ・ウイス教授 Leana Uys や研究機関であるヘルス・システム・トラスト Health System Trust(HST) らが警告しているが、HSTによる報告では、財源だけでなくHIV治療にあたる人材の不足も指摘されている。そのため、既存の施設における治療は飽和状態であるため、サービスの拡大が困難となっており、結果として、全陽性者の12〜13%しかARVを受けていないと推計されている。
 人材不足は、特に公衆衛生部門で顕著に見られ、低賃金、事業の認知不足、将来の不安定さといった要因が多くの医療関係者の民間セクター流出を加速させている。過去9年間、人口増加に見合う公的機関に携わる医療関係者の増加が見られていない。しかし、サービスの質は有効なリソースマネジメントにより左右される。スタッフの増加は医療サービス改善に必ずしもつながらないという意見もある。保健省は、上記のような問題を認識し、長期にわたる状況改善のための施策を策定しているところだ。

原題: SOUTH AFRICA: Capacity shortfalls undermine roll-out
日付: 12 September, 2005
出典: IRIN Plus News
URL: http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=4546&SelectRegion=Southern_Africa

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AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
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