グローバル・エイズ・アップデート

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2006年06月

ユース総括: 向こう2年間で政治宣言にどこまで近づけるかが課題

【2006年6月23日東京:グローバル・エイズ・アップデイト編集部】今回の国連エイズ特別総会では、GYCA(前掲:世界エイズユース連合)ら主催のユース・サミットが開催され、UNAIDS・UNFPA(国連人口基金)の事務局長との対話が実現した。また、総会期間中も積極的に各国ユース、あるいは国際的ユース組織の交渉・対話が行われた。結果として、今回の総会で出された文言の中で、ユースに関する記述はすべてとは言えないが、少なくとも、ボトムラインは確保された。

政治宣言のパラグラフ26は、特に若者に関するパラグラフになっている。その中では男性用・女性用コンドーム、実証に基づいたライフスキル教育、HIV教育、若者に使いやすい保健医療サービスなどが明記されている。また全体の「パートナーシップ」という側面からも政府や行政、企業などとの連携に関しての文言が入り、感染可能性の高い行動を伴いやすい「若者」らが意思決定の場に参画し、自分たちのニーズを政策決定者(政治家や知識人ら)に伝えることが、「正当」であり、いつまでも文字通り脆弱である
vulnerable 状態から早く抜け出していこう、と国連では認められた。

しかしながら、次に行うべきアクションは、25歳(あるいは29歳:会議や組織によって、若者の定義が異なる)といった賞味期限付きの若者たちが、次の2008年に向けて、国連エイズ特別総会レビュー会合において、どのような現実的な計画を立て(あるいは利害関係者らと共に立案し)、それをどのように達成するのか、さらにそれを自分たちでモニタリング・評価できるかが課題となってくる。国際的・国家的レベルで言えば、いわゆる核となるリーダーが何名かいるかもしれないが、それが草の根レベルまで今回の文言language に向けて発信し、共有のビジョンを持ちながら活動ができるか、各国の若者リーダーの手腕が問われる。

まずは、向こう5年間、2011年に向けての計画を立てること、そして2008年までに何が達成されていなければならないのかを現実的に考え、次の世代に引き継いでいかなければならない。自分たちの活動の継続性をするために、自分たちでも根拠に基づいた結果を出していかなければならない。若者の声を大きくするために、若者=自分たち自身も大きくならなければならない。

国連総会に積極的に取り組んだ日本の市民社会

【2006年6月23日東京:グローバル・エイズ・アップデイト編集部】日本の市民社会は、今回の国連総会に対して、非常に積極的に取り組んだ。
 日本の市民社会の、国連総会に向けた取り組みの始動は2006年2月であった。先行したのは国際協力に関わるNGOのネットワークであった。保健分野の国際協力NGO42団体が参加する「GII/IDI懇談会」(地球規模の保健、感染症、人口に関わる外務省・NGO定期懇談会NGO連絡会)は2月に、この総会に向けた提言委員会をつくり、3月、外務省・厚生労働省に対して、国連総会への市民社会への参加や、「コミットメント宣言」と調和化したエイズ対策の実施などを求める提言書を提出した。

 その後、3月末には国内のNGOネットワークも始動した。4月には日本の市民社会ネットワークが、政府の国別報告書に対する「シャドー・レポート」(市民社会の国別報告書)を作成、5月頭には日本語・英語版をそれぞれ完成させた。政府と市民社会の二つの「国別報告書」の内容を踏まえて日本のエイズ対策について官民で討議する「日本政府・市民社会HIV/AIDS政策対話フォーラム」が5月12日、慶応大学において開かれ、国連総会に向けた政府と市民社会の対話が開始された。

 日本は当初、「政治宣言」について、レビュー総会議長が提出した「政治宣言第1案」に対して、ハーム・リダクションに関する記述の削除、資源に関する記述の曖昧化など、後退した立場からのコメントをだしていた。しかし、その後、市民社会の働きかけや、ニューヨーク国連代表部を含む政府各部署との調整の中で、より積極的な立場から政治宣言にコミットするようになった。

 政府代表団への市民社会の参加も大きく前進した。今回の政府代表団には、市民社会から合計5名の顧問が参加したが、その中には、HIV陽性者組織(「日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」から1名、ユースから1名、エイズNGOのネットワーク(「(特活)エイズ&ソサエティ研究会議」)から1名が含まれる。また、国連総会議長の発表したリストに掲載された2つのNGOからの参加もあり、日本の市民社会からの参加は合計7名となった。日本の市民社会は、現地でも日本政府との調整のもとで積極的に活動した。「政治宣言」の内容の後退を防ぐ上で、日本の市民社会は最大限の役割を果たしたと言える。

アフリカの市民団体が「政治宣言」およびアフリカ諸国政府の対応を批判

国連エイズ対策レビュー総会に出席したアフリカの市民団体が、会議で採択された新たな「政治宣言」を批判している。特に強く批判しているのは、総会に出席したアフリカ諸国の首脳たちが、2006年5月にナイジェリアの首都アブジャで開催されたアフリカ連合エイズ・サミットで採択された「エイズに関するアフリカの共通の立場(アブジャ宣言)」 The African Common Position on AIDS で掲げられた各種の数値目標やコミットメントに基づいた発言を行わなかったことである。

 南アフリカの活動家でHIV陽性者でもあるプルーデンス・マベレ氏 Prudence Mabele は、「今回の政治宣言はアフリカのエイズ対策にとって著しい後退である。HIV/AIDSを否定し、感染拡大阻止に向けた行動を拒否した時代に我々を逆戻りさせる文書である。アフリカの指導者は、2500万人のアフリカのHIV陽性者に対し全く無責任である」と憤っている。

 エジプト、南アフリカおよび、アフリカ・グループをとりまとめたガボン共和国が、総会でアブジャ宣言に言及せず、女性や少女、セックス・ワーカーや男性同性愛者など高いHIV感染可能性に直面しているグループについての記述も削除する立場をとったエジプト、南アフリカ、ガボンに対し、市民団体は特に批判を強めている。その一方で、アブジャ宣言への支持を表明したナイジェリアについては賞賛している。また、アフリカ連合を含め、多くのアフリカ使節団が、政治宣言を作成する重要な交渉に参加しなかったことも批判の対象になっている。「HIV/AIDSの影響が深刻なサハラ以南の国々が、自国民の利益を守るべき時に、姿を現さなかったことは恥ずべきことだ」とセネガルの活動家イノセント・レゾン氏 Innocent Laison は語る。

 アフリカの市民団体は、5月13日から17日までを行動週間 Action Week とし、アブジャ宣言に盛り込まれた地域および国家レベルの目標とコミットメントを支援することを宣言していた。「我々はこの裏切りを放っておくことはできない。アフリカの指導者たちがコミットメントに責任を持つよう、辛抱強く働きかけていく」と、ケニアのルドフィン・アニャンゴ・オケヨ氏 Ludfine Anyango-Okeyo は語っている。

原題:African activists denounce UN political declaration on AIDS
日付:Friday June 2, 2006
出典:メーリングリストからの出典となります。詳細は管理者 info@ajf.gr.jpまでお問い合わせください。
※ 関連記事: 
http://www.plusnews.org/AIDSReport.ASP?ReportID=6021&SelectRegion=Africa&SelectCountry=AFRICA

国連エイズ対策レビュー総会:女性にかかわる市民団体の声明

国連エイズ特別総会(UNGASS)で、「国際女性保健連合」(International Women’s Health Coalition)など女性に関わる市民団体が声明を発表した。内容は以下の通りである。

私たち、HIV陽性者、そしてHIV/AIDSに影響を受けている組織を含む、女性団体はUNGASSレビュー会合を重要な機会として捉えている。私たちは2001年、女性の権利のために作られた「コミットメント宣言」の実現のために努力し続けた、リオ・グループ(訳注:中南米諸国のグループ)、カナダ、ヨーロッパ連合、ノルウエー、スイス、ナイジェリア代表たちの行動を支持し、また高く評価する。健康の権利、性別による抑圧や、暴力からの解放、性や生殖に関する健康のサービスや教育、女性や少女を性行為から守るなど、女性の権利の問題は、HIVが拡大している中で、十分に重要なものとして認識されておらず、政府は女性の権利を守るための行動に力を入れていない。

女性団体は政府に次の5項目を緊急に実行し、また監視することを要求する。

(1)女性や青春期の少女に対し、HIV感染からら身を守るために十分なリソースなどを提供する。
(2)女性や少女を差別、暴力、性的抑制から守る。
(3)HIV/AIDS教育、性教育 sexuality education が行き渡るようにする。
(4)女性の経済的な独立を強化する。
(5)女性や少女を虐待、強姦やその他の性暴力、早期の婚姻や強制的な婚姻から守るための法律や政策などを強化する。

 政府はHIV予防や治療が女性や少女を含む、全ての社会的にケアを必要とする立場に置かれている人々に対し、行き届くことを保障すべきである。最後に女性団体は政府が我々の意見に耳を傾け、対応してくれることを要求する。

原題:Statement: Women Demand Action and Accountability Now!
日付:Thursday June 1, 2006
出典:Break-the-Silence listserv
URL:http://www.healthdev.org/eforums/cms/showMessage.asp?msgid=11934

国連エイズ対策レビュー総会事前ユース・サミット〜ユースが発表した声明〜

5月29日・30日と国連エイズ特別総会レビュー会合に先駆けて、世界エイズ・ユース連合 Global Youth Coalition on HIV/AIDS (GYCA) らが行ったユース・サミットにおいて、最終日の30日、ユースから声明が発表された。以下、抄訳を紹介する。

 現在、世界の人口の20%を構成する15-24歳の若者のHIV感染事例が、世界の新規HIV感染事例の50%を占めている。若者にとって不利益な地域・国家・国際的レベルの政策、社会的・文化的な慣習が、若者をHIV感染に無力な立場へと追いやっている。教育のアクセスがない状態、仕事に就けない状態、HIV/AIDSに関する政策決定機関における建前だけの若者の参画、青少年の活動・選択決定・資源らが法的・社会的に守られない状態は、過度にHIV感染可能性を高めることになる。

 一般社会において、HIV/AIDSに関する認識が高まっていく一方で、私たちユースにとって重要な「性や生殖に関する健康 Sexual and Reproductive health」 に関する、包括的で、科学的根拠に基づいた教育へのアクセスの欠落を危惧している。2001年の国連エイズ特別総会で採択された 『コミットメント宣言』は、2005年までに若者の90%が、HIV感染の可能性を下げるためのライフスキルを得るためのアクセスを確保することを誓約している。しかし、現状でHIV感染予防に十分な知識を得ている若者は全体の3分の1以下である。

 私たち若者は、教育が政府と青少年が協働し作り上げていくものであることを切に望んでいる。教育関係者は、コンドーム、多様な性的指向 sexual orientation, ジェンダー、性や生殖に関する健康に関する情報を青少年に供給しなければならない。そして、必要であれば宗教指導者や地域社会の指導者と協働をし、実効性のある予防についての教育をしなければならない。禁欲や貞操を守ることが重要である一方で、男性用・女性用コンドームは、性的に活発な青少年にとって、もっとも効果的な予防手段である。

 青少年、女性、LGBTQI (レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイアおよびインターセックス), 静脈注射による薬物使用者、セックス・ワーカー、青少年のHIV陽性者たちは、過度に影響を受けているため、優先的に意思決定過程の中に参画されなければならない。また、都市や農村地域などにかかわらず、全ての青少年に公的・私的教育での情報を得るべき権利がある。最も効果的に若者にたどり着くために、教育、情報、サービスがメディア等によって供給されるべきである。(中略)

私たち、若者はそれぞれの出身国で、地域でHIV/AIDSの流行拡大終焉に向け、目下、一層の努力をしている。私たちは、どのプログラムが最も自分たちにとって効果的かを知っている。自分たちの「性と生殖に関する健康」について、無関心が増大することは認められない。知ることは力であるです。知ること、つまり、知識とは私たちの身からHIV感染を防ぐ最も効果的な手段である。私たちの努力が実を結び、世界的、国家的、地域的な政策決定者に認識していただけるように強く願う。そして、政策決定者に対して、「 Keep the Promise. 」と呼びかけて行きたいと考える。

原題: UNGASS AIDS 2006 Review Youth Summit Message
日付: May 30, 2006
出典: Global Youth Coalition on HIV/AIDS website
URL: http://www.youthaidscoalition.org/docs/youth%20message.pdf

市民社会は会議の成果として採択された「政治宣言」を後退として強く批判

(以下は、6月2日に市民社会コーカスにより採択された文書の要約です)

 世界各国の市民団体が、国連エイズ対策レビュー総会における長い交渉の末に発表された、HIV/AIDSに関する国連政治宣言(UN Political Declaration on HIV/AIDS)の内容について非難している。

 市民社会の怒りは、これは参加各国が、資金援助、予防、ケア、治療に関する高い目標設定を拒否したことにむけられている。。また参加各国は、今日HIV/AIDSの影響を最も強く受けているのが、注射器による薬物使用者、セックス・ワーカー、男性と性行為を持つ男性のグループであるということを明記しなかった。

その一方で、HIV/AIDSの女性への影響の著しい拡大(feminization)について、宣言の中で強く認識されるという進展もあった。女性の性に関する権利の確立と、2015年までに性と生殖に関する健康の普遍的なアクセスという目標の実現に向け、責任ある行動の必要性が示された。しかし、シリアやエジプト、イエメン、イラク、パキスタン、ガボン等の国々は、女児をHIV感染から守るためのエンパワーメントへの努力を妨げた。

 総会に参加したアフリカ諸国の代表団が、5月頭に開催されたアフリカ連合のアブジャ・エイズ・サミットで承認されたはずの「エイズに関するアフリカの共通の立場(アブジャ宣言)」 2006 Abuja common position の誓約を無視し続けたことへの批判も高まっている。特に南アフリカとエジプトは、アブジャでの会議に参加し、2010年までの実現を目指す意欲的な目標を承認したにも関わらず、今回予防と治療に関する目標設定に反対する立場をとった。

また米国も、感染予防や、低価格の医薬品供給と貿易関連知的財産権協定(TRIPS )の柔軟化についての表現を弱めるための交渉を進めた。さらに他国政府と共に、最終宣言において、必要とされるエイズ対策資金についての言及を格段に弱めるよう働きかけた。その結果、最終政治宣言は資金援助の増額を約束するのではなく、より多額の資金が必要であると述べるにとどまってしまった。

 今回の会合では、各国政府はHIV/AIDSの現実と向き合うことができなかったといえる。市民社会は、政府の説明責任を追及していく所存である。政府がHIV/AIDS対策への積極的な取り組みを放棄することは、許されないのである。

原題:Statement: International civil society denounce UN meeting on AIDS as a failure
日付:Friday June 2, 2006
出典:Break-the-Silence listserv
URL:http://www.healthdev.org/eforums/cms/showMessage.asp?msgid=11994

国連総会議長が国連エイズ対策レビュー総会の意義を高く評価

 国連総会議長のジャン・エリアソン氏 Jan Eliasson は、6月2日、ニューヨークで3日間にわたって開催された国連エイズ対策レビュー総会のハイレベル会合において、「この3日間で、エイズの規模と影響は、かつてないほど世界の注目を集めるところとなった」と閉会の辞を述べ、この会議がHIV/AIDSの現状やその脅威の規模、対策を各国へ知らしめる良い機会であったと評価した。

 会議で採択された「政治宣言」についても、「数日前まで世界中の関係者が求めていた、多くの重要な主張を取り入れたもので、誇りに思うべき成果である。」と称賛した。またエリアソン氏は、「新しい誓約とコミットメントに積極的に取り組む国家指導者たちに感謝するとともに、他の指導者も後に続くように強く求める」と述べた。

 さらに、会議における市民社会の働きについては、「加盟国と市民社会の積極的かつ実質的な相互作用も、過去にないレベルで見られた。交渉の最終日程に入ると、妥協と話し合いの行き詰まりにより、大半の宣言が弱められたものにされてしまう。しかし今回の宣言は、市民社会の影響のおかげで、弱くなるどころか、逆に強化された」と、高く評価した。

 最後にエリアソン氏は、「この政治宣言の真価が問われるのは、私たちが各国へ戻り、決意を持って宣言を実行に移すときである。」と語り、各国へ宣言内容の実施を呼びかけた。

原題:Closing remarks by Assembly President Jan Eliasson
日付:Friday June 2, 2006
出典:http://www.un.org/ga/aidsmeeting2006/remarks.htm

国連エイズ対策レビュー総会:米国の反対で「政治宣言」の採択が難航

 5月31日から6月2日までニューヨークで開催された国連エイズ対策レビュー総会では、キリスト教右派の影響を強く受ける米国政府が、国連エイズ対策レビュー総会で採択される予定の、国連によるエイズ対策の方針である「政治宣言」の重要な部分の受け入れに強く抵抗した。米国はコンドームの配布と注射針の交換に反対し、また、セックス・ワーカー・麻薬常習者・同性愛者について、政治宣言の中で言及することについてもも反対した。エジプトを含めたイスラム諸国や、アフリカとラテン・アメリカ諸国の中の保守的な国々が、これに同調した。米国は世界に向けて巨額なエイズ対策費を支出しており、その額は世界最高であるが、予防活動のための資金の多くは、コンドームの配布や注射針交換事業ではなく、セックス節制キャンペーンに向けられている。

 これまで米国を支持してきた英国は、今回は欧州と歩調を合わせ、米国の対応に真正面から反対している。英国のヒラリー・ベン Hilary Benn 国際開発省長官は、「イデオロギーではなく、何が有効で何が人々の命を救うことができるのか、という点を根拠にした行動を起こすべきだ。コンドームを利用可能にすること、また薬物使用者、セックス・ワーカーや男性同性愛者など高い感染可能性に直面している人々のハーム・リダクション(健康被害軽減)が重要である」と述べる。

国連エイズ合同計画(UNAIDS)が5月30日に公表した報告によると、いくつかの地域や国では新たな感染が増加し続けており、推定3,860万人がエイズ患者またはHIV陽性者で、昨年は410万人が新たに感染、280万人がエイズで死亡し、薬剤治療を受けているのは、治療を必要とする陽性者数の半分に満たない。全世界のHIV陽性者のほぼ半数にあたる1,700万人が女性であり、また、陽性者の4分の3がアフリカの住民である。コフィ・アナン Kofi Annan 国連事務総長は、「エイズとの闘いの最も重要な局面の一つである、女性や少女への感染拡大阻止が極めて立ち遅れており、致命的な状況である」と述べている。

原題:US blocking international deal on fighting Aids
日付:Friday June 2, 2006
出典:The Guardian
URL:http://www.guardian.co.uk/aids/story/0,,1788649,00.html

国連エイズ対策レビュー総会:後退は防いだものの成果は生み出せず

【2006年6月2日ニューヨーク:グローバル・エイズ・アップデイト編集部】  2006年5月31日から6月2日までの3日間、ニューヨークの国連本部において国連エイズ対策レビュー総会が開催された。5年前の2001年に開催された「国連エイズ特別総会」で、エイズ対策の基幹文書として「HIV/AIDSに関するコミットメント宣言」が採択されたが、この文書に基づくエイズ対策が、この5年間でどのような成果を上げたかを検証し、現時点における適切なHIV/AIDS対策の方向性を示すのが、今回の総会の目的である。

 この総会は、5月31日と6月1日の2日間が「包括的レビュー」(comprehensive review)、6月2日が、前2日を踏まえた「ハイレベル会合」として設定され、最終成果物として「政治宣言」が採択されることになっていた。

 世界の市民社会は、国連エイズ対策レビュー総会の1年あまり前から「Stop AIDS, Keep the Promise!」(エイズを止めろ、約束を守れ!)をスローガンに、各国の政府や国際機関等に対して、積極的な働きかけを行ってきた。今回の総会では、こうしたアドボカシーによって、現在の時点にあった、より進歩的な政策が形成されることが必要であった。

 包括的レビューは、開会式に引きつづき、国連総会議長による市民社会非公式ヒアリングで幕を開けた。開会式では、南アフリカ共和国のHIV陽性者組織「治療行動キャンペーン」(TAC)のケンサニ・マワサ(Ms. Nkensani Mavasa)氏がHIV陽性者として初めて国連で演説を行い、治療・ケア・予防への普遍的アクセスの重要性を訴えた。その後開催された市民社会非公式ヒアリングでは、コフィ・アナン事務総長が、高いHIV感染可能性に直面しているグループとしてのMSM(男性とセックスをする男性)、薬物使用者、セックス・ワーカーなどにかかわる積極的な対策が重要であると強調した。一方、各国の政策評価のために開催された5つの「ラウンド・テーブル」、テーマ別に討議を深める目的で開催された5つの「パネル・ディスカッション」はいずれも低調に終わった。

 大きな焦点となったのは、「政治宣言」の内容であった。市民社会も各国政府も「政治宣言」の内容をめぐる討議に明け暮れたと言える。今回の「政治宣言」については、もともと、期限を定めた意欲的な目標が導入されるかどうか、エイズ対策への資金・資源の動員について意欲的な記述が盛り込まれるかどうか、医薬品へのアクセスの拡大に関わる貿易関連知的財産権協定の柔軟な運用についてどの程度積極的な記述が盛り込まれるか、ジェンダー平等やMSM・薬物使用者・セックスワーカーなど脆弱性を持つグループへの対策が明記されるかどうかなど、多くの焦点があった。これらについて、米国共和党政権はいずれも否定的な立場をとり、また、ジェンダー平等や脆弱性を持つグループに関する記述については、イスラーム諸国会議(OIC)に参加する国々が消極姿勢を示していた。これらの問題については、ジェンダー平等や脆弱性を持つグループに関してEUや中南米諸国が、知的財産権について中南米やインドが、資源動員についてアフリカ諸国が積極的な立場を示し、最後まで各国の間での調整が続いた。一方、市民社会は国連という「政府間機関」において国家と対等な主体としての地位を与えられておらず、積極的な働きかけをしたものの、その力の発揮は不十分に終わった。

 結果として、「政治宣言」については、コンドームやハーム・リダクション(健康被害軽減)が明記され、女性の権利などについても一定の前進がみられた上、予防・ケア・治療への普遍的アクセスを目指すことが明記されるなど前進もあったが、一方で、期限を設定しての数値目標などが示されず、施策の確実な実施は担保されなかった。また、結局、社会的脆弱性を持つグループの明記なども行われず、基本的には現状維持にとどまり、野心的な内容というにはほど遠いものとなった。市民社会は、この点について、参加国及び国連を厳しく批判している。

 なお、日本政府は、この国連エイズ対策レビュー総会にかなりの力を入れて取り組んだ。団長の森喜朗・前総理は6月2日の演説で、「わが国政府の世界基金へのコミットメントは揺るがない」と力強く述べた。

 今回のレビューを踏まえての、さらなるレビュープロセスは2008年と2011年に行われる。
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