グローバル・エイズ・アップデート

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2006年10月

第55号(第3巻第4号) 2006年(平成18年)10月26日

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グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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第55号(第3巻第4号) 2006年(平成18年)10月26日
Vol.3-No.4 (No.55) Date: October 26, 2006

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南アフリカ: 政府が服役者にARVの提供開始

南アフリカ政府は、刑務所に服役中のHIV陽性者に治療薬の提供を開始した。現在東部クワズール KwaZulu-Natal の3つの刑務所で抗レトロウイルス薬(ARV)が手に入る。南アフリカ共和国HIV陽性者団体 治療行動キャンペーン Treatment Action Campaigns (TAC) とエイズ法律プロジェクトAids Low Project (APL) がダーバンウエストビル刑務所Durban Westville Prison のHIV陽性者がエイズに関連した病気で死亡したことをきっかけにHIV陽性の服役者への対策を取ることを求めた裁判で勝ったことが背景にある。TACのザッキー・アハマット氏 Zackie Achmat は、「裁判で勝利したことは、大変光栄だが、十分な措置とは言えない。たった200人程度しか治療が受けられない状況は由々しき事態だ。未だ治療が受けられる刑務所の数は少なく、このような対策を始まるのが遅すぎた。」と述べる。

南アフリカでHIV陽性者が死亡した事件に関しては、こちらの記事をご参照下さい。
http://blog.livedoor.jp/ajf/archives/50730756.html

原題:Three KZN jails get ARVs
日付:September 26, 2006
出典:編集部にお問い合わせ下さい。

コンゴ民主共和国:ピグミーにHIV 感染拡大- 性的暴力行為と保健医療対策不備に起因

コンゴ民主共和国(DRC)の森の民ピグミーといわれる民族バトゥワBatwaは社会的に隔離された存在であり、同国東部の各州に広がった紛争では武装集団の格好の標的となった。この10年間に及ぶ紛争では、地元住民がレイプや略奪の犠牲となった。HIV感染率はDRC全体と比べると低いが、貧困や差別が強く残っており、また、保健医療の設備が不足しているため、今後の状況の悪化が懸念されている。

カフジビエガ国立公園Kahuzi-Biega National Parkは、1994年ルワンダ大虐殺を引き起こした主要勢力の一つである、フツ武装勢力Interahamweの基地となっている。その国立公園内に位置するバトゥワの村チョムボChomboの住民は、何年間にもわたってフツ武装勢力の略奪行為に脅かされている。ある村民の女性は、畑を耕していた時に民兵に連れ去られ、繰り返しレイプされた後、2週間後にやっと逃げることができたという。しかしその4年後から健康を害し、地元のNGO、地方在住女性解放連盟Union Pour l'Emancipation de la Femme Autochtones (UEFA) によるHIV抗体検査を受けたところ、陽性であった。

バトゥワのHIV陽性者は、DRCの保健医療施設を利用しようとしても、保険制度の問題や被差別待遇があるために利用しにくい。抗レトロウィルス薬(ARV)の入手も難しい。国立公園の道路建設のために、居住地から追い出された人もいる。彼らは栄養不足の傾向にあり、衛生状態が良くないため日和見感染症が発生しやすい状況にある。

チョムボ村の長老マーレガン・ルケーラMarhegane Lukheraは次のように話した。「12歳以上の子どもたちに対して、性交渉しないよう、若い女性には売春行為をしないよう教えている。男性は妻との貞節を守るよう忠告し、女性は夫以外の男性とはつきあわないよう忠告している。全員がAIDSについて関心を持つことが重要である。子どもたちを教育し、大人は検査を受ける必要がある。」

原題: DRC: Sexual violence, lack of healthcare spreads HIV/AIDS among pygmies Press Release
日付: September 13, 2006
出典: IRIN plus news
URL: http://www.plusnews.org/aidsreport.asp?reportid=6371

タイ:HIV/AIDS 見直しを迫られる予防戦略−既婚女性がバルネラブル・グループに

タイの公衆衛生省Public Health Ministryは、既婚女性の間でHIV感染が増加していると報告した。感染した夫との性交渉時に防御策が講じられていないことが原因とみられる。

昨年のHIVの新規感染者は17, 000人と推定され、その内訳は30%以上が既婚女性であり、男性との性交渉のある男性(20%)、薬物の静脈内注射常用者(10%)、その他ティーンエージャーやセックス・ワーカーやその客と続く。既婚女性の感染率増加の主な原因は、貞節やコンドームの使用の不徹底であると推測される。

タイのAIDS/結核/性病対策局Aids, Tuberculosis and Sexually Transmitted Diseases Bureau の局長ソムバット・タンプラセルトサックSombat Tanprasertsukは、今回の調査結果でこれまでHIV感染の可能性が低いと思われていたグループにおいても新規感染者が増加したことが判明したため、保健当局は今後のHIV/AIDS予防対策の見直しを迫られていると述べた。

タイはこれまでセックス・ワーカーなどHIV感染の可能性が高いと思われるグループを特に対象にしたコンドーム使用の啓発や、安価なエイズ治療薬を普及させたことによってHIV/AIDS対策に成功してきた。今後は、保健当局はコンドーム使用キャンペーンに加えて、既婚カップルに定期的に血液検査を受けるよう勧める、性教育強化やコンドーム使用推進キャンペーンなど、全国民を対象にしたキャンペーンを拡大していくという。

原題:HIV/AIDS / PREVENTION STRATEGY UNDER REVIEW: Married women a high-risk group
日付:September 6, 2006
出典:Bangkok Post ウェブサイト
URL:http://www.bangkokpost.com/090906_News/09Sep2006_news14.php

米国、HIV抗体検査のルーチン化推進策を打ち出し

米国疾病予防管理センターThe U.S. Centers for Disease Control and Prevention(CDC)は9月21日、13〜64歳の米国民全員に対するHIV抗体検査ルーチン化推進策を発表した。HIV感染の早期診断による感染の拡大防止と、全米で25万人いると推定されているとされている未診断のHIV感染者に適切なケアを受けさせるのが目的だ。

このHIV抗体検査ルーチン化推進策では、すでにルーチン化を進めているハイリスク集団や妊婦等の一部の対象に加え、国民すべてが緊急時やさらに定期健診時にも標準の健康検査の一部としてHIV抗体検査を受けるよう推奨している。この推進策に対し、保健政策の専門家や医師、患者を擁護する立場からの反応は概ね好感触で、米国医師会the American Medical Associationもこの推進策を支持している。法的に拘束力はないが、これは医師の業務や健康保険の管掌範囲に影響を与えるものである。

しかし、一部の医師の間には、検査やカウンセリング、またそれらの改定にかかる多大な費用と時間への懸念があり、米国家庭医学会the American Academy of Family Physiciansの会長によれば、検査対象を広げることの有効性を疑問視する考え方もあり、実施を悲観している。また、検査実施の同意を得るために、各医療機関での標準的同意文書を用い、患者は検査を拒否できるとされているが、米国自由人権協会American Civil Liberties Union(ACLU)は、HIV問題を標準的同意文書で扱い、検査前カウンセリングを軽視する検査ルーチン推進案に異議を唱え、ルーチン化が強制的になることを懸念している。他にも、費用面での先行きも不透明である。HIV検査対象者数が増えれば、ただでさえ資金繰りの苦しい公的健康保険にはさらなる負担が課され、または、逆に検査の必要性が増すことによって、財政支援が強化される可能性もある、との声もある。

医師会やHIV陽性者支援団体を含む100以上の団体からアドバイスを受け、約3年かけて作成された本推進策であるが、実行の見通しは困難であるようだ。


原題:CDC: Regular, routine HIV test for all between 13-64
日付:September 21, 2006
出典:yahoo news
URL:http://news.yahoo.com/s/ap/20060921/ap_on_he_me/hiv_testing

米国の反対でWHO会議混乱 HIV/AIDS治療と薬物問題

ニュージーランドのオークランドで開かれたWHOアジア太平洋会議で9月22日、アジア太平洋地域におけるHIV/AIDS治療への普遍的アクセスを求める決議案が、米国の強い変更要求のために否決された。

21日には、「2010年までにアジア太平洋地域でのHIV/AIDS治療を普遍的アクセス可能なものにする」という内容の決議案をアジア太平洋諸国代表らは要求していたが、米国は22日の決議採択直前に、アジア太平洋諸国の決議案内にある「薬物常習者への注射針交換プログラムを促進する」という文言に削除を求めために、会議は混乱に陥り、最終的にアジア太平洋諸国らの作成した決議案は否決された。

HIV/AIDS患者擁護団体によると、アジア太平洋諸国の提案した文言にある薬物常習者への注射針交換プログラムは、注射器使い回しによるHIV感染抑止に有効なのだが、米国側は「注射針の交換を認めれば、薬物使用を増大させてしまう」として反対している、と述べた。さらに、米国の提出した決議修正案は、HIVに感染しやすいバルネラブル・グループの定義の詳細(性産業従事者・注射針による薬物常習者・男性と性交渉を持つ男性など)の説明をも求めており、WHO西太平洋地域課長代理のリチャード・ネスビット氏 Richard Nesbit は、決議案の言い回しにこと細かく変更要求が出たのは米国政府の指示があったためと見ている。また、議長を務めたニュージーランド保健相のピート・ホジソン氏 Pete Hodgson は、「米国の修正案は決議案を骨抜きにするもので、文言の内容を弱めた妥協案を採択するくらいならば、決議案を出さない方がましだった」と語っている。

WHOの推計では、西太平洋地域において、新規HIV感染者の3分の1以上は注射針による習者であるという。薬物使用拡大とHIV問題のハームリダクションという観点からの相互関係は複雑に絡み合っているようである。

原題:AIDS treatment resolution withdrawn at WHO meeting because of U.S.
opposition
日付:September 21, 2006
出典:International Herald Tribune
URL:http://www.iht.com/articles/ap/2006/09/22/asia/AS_MED_WHO_Asia_AIDS.php

2006年世界エイズ・デーのテーマは「アカウンタビリティ」に。

12月1日は世界エイズ・デーである。今年のテーマは、「アカウンタビリティ(説明責任)」に決定をした。世界エイズ・デーは、毎年世界エイズキャンペーン World AIDS Campaign WAC によって主導され、全世界においてHIV/AIDSに関する意識喚起・行動変容に一役買っている。

今年の世界エイズ・デーでは、特に以下の目的を達成するため「アカウンタビリティ」を掲げる;
・各国リーダーらによる、エイズに関する誓約の説明責任の拡大
・共通の目的・アイデンティティのため市民社会による幅広いムーブメントを支持
全世界におけるエイズ問題において、より多くの市民が意識喚起・行動変容促進
各々の国や地域に即し、「アカウンタビリティ」という全体テーマの範囲内で、それぞれ決定される。これらのキャンペーン・テーマは、世界エイズ・デーの「スローガン」である「ストップ・エイズ 約束を守れ Stop AIDS. Keep the Promise.」 をより効果的に見せていく。例えば、国のキャンペーン・テーマが治療・ケア・予防に関する普遍的アクセス Universal Access についてのものであれば、「普遍的アクセスのゴールを決めろ: ストップ・エイズ 約束を守れ Set the goals for Universal Access: Stop AIDS. Keep the Promise」 といった具合に、各々の国や地域でスローガンの前半部分を決め、キャンペーンを張る。

世界エイズ・デーでは、赤色のTシャツやリボンを使用する、政府にエイズ対策の重要性を伝える為にマーチ、広告、手紙などを活用するなど、WACでは、ポスターやCD-ROMを英語、スペイン語、ロシア語、フランス語で提供している。また全世界の世界エイズ・デーの活動は、 www.worldaidscampaign.org で参照することができる。

原題:Accountability: Theme for World AIDS Day 2006
日付:September 21, 2006
出典:Aids-HIV Information
URL:http://www.aidshiv.info/theme-for-world-aids-day-2006/theme-for-world-aids-day-2006.html

第54号(第3巻第3号)

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グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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第54号(第3巻第3号)2006年(平成18年)10月14日
Vol.3-No.3 (No.54) Date: October 14, 2006

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論説=欠けているものは何か?「政治的な意思」

トロントで開かれた国際エイズ会議は無事終了した。大規模な会議ではあったが、HIV感染の拡大に関連して、何らかの前進がみられたわけではない。ホスト国であるカナダの首相は会議を欠席した。政治的な意思の欠如がHIVの拡大を止めようとする努力を阻んでいるのではないか。

世界各国のエイズ活動家らは、「官僚主義的な体質によって、エイズプログラムが効果的に実施できないシステムが作られてしまっている」と批判、「政治的なリーダーシップ」の欠如を警告している。UNAIDS事務局長ピーター・ピオットは「エイズを危機と語る時代は過ぎた。恒常的で建設的な取り組みをしていかなければならない。スティグマの対象とならない他の病気のような扱いをしなければならない」と述べているが、その一方で、「エイズは政治や公共政策の面では、例外的な課題として特別に扱われなければならない。抗レトロウイルス薬による治療の拡大について、特別な資金が確保されなければならない」と述べている。

資金不足は深刻な問題である。世界エイズ・結核・マラリア対策基金の資金不足や途上国におけるエイズへの拠出がGDPの10%近くになるという事態により、各国の経済の安定化や独立の維持が不可能になりつつある。また、保健医療従事者の給料が高騰していることも、経済を不安定にしているだけでなく、優秀なスタッフの途上国から先進国への頭脳流出をはじめとした人材不足も問題となっており、その埋め合わせはできていない。

また、途上国での抗HIV治療について考えると、抗HIV薬の予防薬としての使用などは、技術的には難しいことではないが、コスト面の改善や緊急性がなければ導入するのは困難だ。また、男性割礼についても予防効果があると指摘されているが、統計学的には証明されておらず、本会議でも割礼と感染予防には相関関係はないと報告された。また、女性のHIV予防の目的から、マイクロビサイド(膣用殺菌剤)などの開発にも力が注がれているが、実用化にはまだ時間がかかる上、感染率の高いサブサハラ地域アフリカでは、強姦によるHIV感染も多発しているという現実がある。こうしたケースでは、マイクロビサイドがあれば感染を予防できるかというと、そうではない。

コンドームや治療時における殺菌針の使用、安全な輸血、女性が望まない性行為を拒否する権利は予防の大原則である。しかし、途上国において清潔な注射針を利用できる環境は依然少なく、コンドームの入手も難しい。輸血も完全に安全になったとは言いがたい。トロント会議で、主催国カナダの首脳の代わりに、HIVに関する国際目標を達成しようと呼びかけたのは、ビル・ゲイツ・マイクロソフト社会長の妻、メリンダ・ゲイツ Melinda Gates であった。

原題:What's missing is political will
日付:2006/8/25
出典:Toronto star
URL:http://www.thestar.com/NASApp/cs/ContentServer?pagename=thestar/Layout/Article_PrintFriendly&c=Article&cid=1156412888499

男子割礼はHIV予防の特効薬ではない?

男子割礼とは、男子の陰茎包皮を環状に切りとる風習で、ユダヤ教徒やイスラム教徒などの間で宗教儀礼として現在もなお行われる風習である。昨今、男子割礼がHIVの感染予防に効果的であるとの認識が広まっているが、男子割礼の包皮切除とHIV防止との関連性を長年独自に研究してきた医師は、ある程度成長し、性的に活発である男子に割礼を施すことは無意味であると語った。

ザンビアの性と健康の専門家であるジェーン・チェゲ医師 Dr. Jane Chege は、「割礼とは主に赤ん坊の頃に施術するから将来的にHIV感染を免れる。」と述べ、続けて「割礼自体がまるでHIV感染防止の特効薬であるかのような間違った知識が広がることによって、HIV感染率が上昇することにつながってしまう」と警鐘を鳴らした。また、「感染防止のために割礼を施す人々は、それがある種のワクチンか療法であるかのような誤った印象を与えてはいけない。」と彼女は述べた。「割礼することは、感染防止の手段として完全なものでは全くなく、他の手段と組み合わせて初めて有効となる可能性があるにすぎないということを、世間に知らせなければいけない」と強く主張している。

実際、感染率の高い地域において割礼をした男性では、HIV感染率の高さを認識していないということは事実であるようだ。米国の国際的NGOワールド・ビジョンにおいてアフリカのエイズとHIVの評価と研究をモニタリングしているチェゲ医師によると、割礼は、それが施された年齢が重要だと言う。性的に活発になる前に割礼するのと、すでに性的に活発である時に割礼するのとでは、感染率に相関性がみられるというのだ。前者のグループでは後者に比べて感染率がより低い。つまり、「すでに性的に活発である男性に割礼を施すのは無意味である」と彼女は説明している。

また彼女は、「これらの研究はアフリカで行われたが、HIV感染予防という観点から割礼を行うということが、なぜ先進国ではみられないのかという理由はわからない」とも話している。

いずれにせよ、このように間違った認識が広まるのは恐ろしいことであり、それが宗教儀礼と関係していることも注目する必要がありそうだ。

原題:(=ルサカ・ポスト記事)
日付: August 18, 2006
出典:Allafrica.com
URL:http://allafrica.com/stories/printable/200608180768.html
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