グローバル・エイズ・アップデート

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2008年11月

第109号(第5巻第8号) 2008年(平成20年)11月28日

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グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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第109号(第5巻第8号) 2008年(平成20年)11月28日
Vol.5-No8 (No.109) Date: November 28, 2008

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ナイジェリア: 検査・治療アクセスの困難さ

ナイジェリア南西の大都市ラゴスにあるラゴス州立総合病院 The Lagos State General Hospital では、国境なき医師団オランダによるHIV/AIDS治療プロジェクトが展開されていた。しかし、このプロジェクトは10月初旬、現地スタッフに引き渡され、国境なき医師団は病院から撤退した。これに伴い、MSFが担ってきた無料エイズ検査や治療も有料になってしまった。そのため、支払い能力のない人々は、危機的状況に陥っている。

治療へのアクセスが困難なのはラゴスだけではない。遠隔地に住む人々にとって、エイズ治療は非常に困難を要する。例えば、ナイジェリアでは、多くの診療所で、無料エイズ検査やエイズ治療を提供しているが、遠隔地に住む人々にとって、交通費を払って診療所まで移動し、検査や治療を受けられる者は、非常に少ない。

ナイジェリアのエイズ検査の現状はどのようなものであろうか。「妊婦検診とエイズ検査」、「否定 denial」、「医療従事者の理解」の3つのポイントから、論を進める。

●妊婦検診とエイズ検査:早期のHIV感染発見を目指し、妊産婦検診では、エイズ検査が行われる。ナイジェリアでは、90%の妊婦がエイズ検査を実施することを目標にしている。検査の結果、陽性であった場合、医療機関でしっかりモニタリングを開始できるかどうかが予後を大きく左右するが、投薬開始は複雑であり、HIV陽性者の中には、費用の問題などで投薬を開始したくない人も多く、投薬の費用負担の軽減も課題となる。

●否定: エイズそれ自体を否定し、存在を受け入れないこと、また、自分がHIVに感染していることを認めたくないというケースもある。これは、個人、地域社会、国家レベルで、検査や治療を妨げる大きな要因である。そもそも自発的なエイズ検査の受検行動は、受検者自身が、「HIV感染の可能性という現実」を受け入れないと受検できない。医療技術が進化した現在、早期HIV感染は、陽性者の予後を大きく作用するばかりでなく、他者への感染拡大をしないために、治療の体制が整っているのであれば、エイズ検査を受検しない・推進しないことは得策ではない。しかし、ナイジェリアでは、HIV陽性者のおよそ80%が、自分の感染に気付いていないという。多剤併用療法 Highly Active Antiretroviral Therapy (HAART) による、プログラムが実施されているにも関わらず、エイズを「否定」するような風潮が、人々を検査から遠ざけている。

●医療従事者の理解: ナイジェリアの大手新聞の一つ「サタデイ・ヴァンガード Saturday Vanguard」によれば、エイズ検査の前には、すべての患者に対し、「インフォームド・コンセント」をとることになっているのに、実際はほとんど実施されていないことがわかった。HIV感染の早期治療の有効性や、検査前のカウンセリングの重要性について知らない医療従事者が多くいれば、人々のエイズ検査へのインセンティブは下がるだろう。また、プライバシーの保護に関する不安や、保険の加入やその他の法律上の問題への知識不足もあり、なかなか検査を受けようとしない。検査結果にかかわらず、行動変容へ促すことができる、能力の高い医療従事者は、どれくらいいるののだろうか。問題はまだ山積みである。

原題:Why Nigerians flee from HIV/AIDS tests
日付:25 October 2008
出典:VANGUARDS
URL:http://www.vanguardngr.com/content/view/20081/122/

ブルンディ:エイズに対して立ち上がる同性愛者

アフリカ中部の内陸国ブルンディの同性愛者人権運動家ジョージ・カヌマ Georges Kanuma は、初めて参加した2004年のHIVに関する会議で、アナルセックスにはラテックス製のコンドームを破るリスクのあるワセリンではなく、水性の潤滑剤を使うべきだということを知り、驚いた。「そんなことは聞いたこともなかったし、ブルンディ中のゲイの男性は皆そうだと思う。」 ブルンディの同性愛者の人権団体である「同性愛者権利擁護協会」Association pour le Respect et les Droits des Homosexuels (ARDHO) の会長でもあるカヌマは語った。「私は、HIVというのは、女性と付き合っている男性が感染するものだと思っていた。」

 カヌマはいくつもの保健所やエイズ活動をしているNGOを訪ねたが、どこも水性潤滑油を置いているところはなかった。ごく少数の薬局で在庫はあったものの、恐ろしく高価だった。自分が何とかしなければ、という思いからARDHOを立ち上げ、どうすれば水性潤滑油の原材料を調達できるか考えた。多くのNGO団体は、ブルンディ国内に同性愛者が存在していたことを聞いても信じてくれなかったという。ブルンディは、近隣の旧英領諸国とは違い、刑法で同性愛を禁じてはいないものの、憲法では同性愛間の婚姻を禁止している。ブルンディの同性愛者は時おり差別を経験するが、カヌマによると、殆どの国民は同性愛者の存在にすら気づいていないようだという。ARDHOは2003年に発足して以来、いまだ法人格を得ていない。

 しかし、その後、同性愛者に対する一定の理解が広がり、ブルンディのHIVに取り組む団体の連合体である「ブルンディ・エイズと闘う団体連合」The Alliance Burundaise des Associations de lutte contre le SIDA は、ついにARDHOを援助することに同意、HIV予防活動に資金提供することになった。「2007年には、全国HIV陽性者支援協会Association Nationale de soutien aux Seropositifs et Sideens (ANSS) というNGOが我々を援助してくれることになり、フランスからコンドームと水性潤滑油を持ち込んでくれたので、国内で必要な人々に配った。」とカヌマは言う。地方に住む同性愛者がそれらを手にするためには、大っぴらに受け取ることははばかられるので、内容物を他の物であることを明記した荷物として、差出人もARDHOだと分からないようにする配慮も必要である。ANSS創設者のジャンヌ・ガピヤ Gapiya Jeanneは「私たちは治療をする前に、相手の民族性や宗教などを訊いたりしません。だから性的指向 Sexual Orientationを訊くこともしない。」という。「でも懸念しているのはゲイ社会が陰に隠れて見えないこと、そして社会全体がゲイの存在を受け入れていないこと。」

 現在、国家の長期プログラムとして挙げられたHIVの被害を受けやすい層リストに、同性愛者が含まれている。「同性愛者は社会から取り残された層である。NGOを通して彼らにもっとミーティングなどに参加してもらいたいのだが、彼らとはどこの誰かも分からないし、そういうことを彼らに伝えていく手段がない。」カヌマは言う。「これはゲイ男性だけの問題ではなく、社会全体の問題である。驚くかもしれないが、ブルンディの首都であるこのブジュンブラの町で、結婚している”ゲイでない”男性が、一方でゲイ男性と寝ているなんていう例をたくさん知っている。」

原題:BURUNDI: A belated start to HIV prevention for gay
日付:21 October 2008
出典:IRIN Plus News
URL:http://www.plusnews.org/Report.aspx?ReportId=81035

ウガンダ:自発的カウンセリングとHIV抗体検査こそが必要

ウガンダのムセヴェニ大統領は、ウガンダの政府軍である「ウガンダ人民防衛軍」 UPDFを対象に演説をするときはどんな時でも、HIV/エイズの恐ろしさを説くことを忘れない。その甲斐あって、軍司令部によって健康問題への意識が高まり、エイズ関連の議論などもなされるようになった。エイズに対する知識が広まってきた今となっては、エイズについて議論することがそれほど必要なのかと思う人たちもいるかもしれないがちょっと考えてみて欲しい。イエス・キリストが亡くなってから2000年以上経った今でも、伝道師や聖職者たちがその教えを受け継ぎ、私たちもキリストの存在を認めていることを。そして今、私たちは1981年にアメリカで始めてエイズと診断されたケースと、1982年にエイズの発祥地と言われるラカイ県のビクトリア湖沿岸で診断されたケースについて考える。

2007年11月時点での最新疫学情報によると、世界中で3320万人がHIVに感染していたという。また国連合同エイズ計画 UNAIDS は、2007年だけで250万人が新たにHIV感染し、210万人が死亡したと見積もっている。HIV感染率は地域によって異なり、ウガンダの位置するサハラ以南アフリカでは、2007年のエイズによる死亡者の76%を占めている。ウガンダでは、80年代の内戦期には政府の明確な対応がなされていなかったために、地域コミュニティの対応は迷信に振り回されることとなった。そして結果としてものすごい勢いで国内のあらゆる地域に感染が広がり、1992年末には、国内のHIV感染率は18.3%、地域によっては30%を超えるという事態となった。しかしその後1990年半ばから2002年までの間、ムセヴェニ大統領のもとで適正な感染予防対策が講じられたことにより、感染率は順調に6%まで下がっている。ウガンダ国内で最初の感染が確認された1982年以来、累計260万人のウガンダ国民が感染し、何年もの間、国民の死亡原因の第1位、5歳未満の乳幼児の死亡原因の第4位となっている。現在国民の平均寿命は48.9歳(男性48歳、女性50歳)だが、エイズ流行がなければ56.9歳であったと推測されている。

自発的なカウンセリングやHIV検査を受けることがHIV/AIDS対策に重要なことなのだが、感染した人々は過去の自分の行動から自分の感染を認識し、あきらめの境地で検査を受けることを時間の無駄だと考えるむきもある。適正なカウンセリングを受けてARV治療を行えば、感染した人々は恥辱の念から救われ生きる希望を見出せるはずであるが、しかしながら一方で、一部の人々は、治療をすることですぐに死ぬことはないのだからと無謀な行動に出ることもある。

禁欲やコンドームの使用は確かに多くの命を救うのだろうが、自発的にカウンセリングおよび治療を受けることを人々に促すのが、現在の最も大きな課題である。

原題:Uganda: The Real HIV Challenge Lies in Taking a Test
日付:24 October 2008
出典:allafrica.com
URL:http://allafrica.com/stories/200810240213.html

中国:雲南省で女性と同性愛者のHIV感染が拡大

中国北京市精華大学の研究グループが、雲南省のHIV感染拡大について人口統計上の大きな変化があるという調査結果を発表した。

研究は、1989年から2006年の間に雲南省の人口320万人から採取した血液サンプルによって行われた。ちなみに、2006年の雲南省のHIV陽性者は4万8,951人であった。この研究から、感染率の高い人口集団に大きな変化があったことがわかる。1989年には雲南省におけるHIV感染のほとんどが静脈麻薬使用によるものだった。雲南省は、ゴールデン・トライアングル(タイ・ビルマ・ラオスなどのへロインの主要生産地)の北側に位置し、ここから静脈麻薬使用によるHIV感染が急速に拡大していたのだ。しかし、2006年には、女性や都市に住む同性愛者のHIV感染率が急増し。静脈麻薬使用者の感染率を上回った。また、少数民族の感染者数を、漢民族の感染者数が上回った。

近年、雲南省では、性行為による感染が増加していることにより女性への感染が拡大している。2006年の雲南省におけるHIV感染の38%は異性間性交渉によるものであった。1989年と2006年を比較すると、HIV陽性者に占める女性の比率は7.1%から35.0%に上昇し、男女の感染比率は13:1から2:1となった。また、漢民族の感染率も増加傾向にある。1989年から1995年は雲南省南部の地方に住むタイ族とチンポー族が最も感染率が高かったが、最近は漢民族が雲南省のHIV感染者の60%を占めている。

研究グループの代表の張琳 Zhang Linqi氏は、「HIV感染が人口集団の枠を超えて拡大しており、国民一人ひとりが更なる拡大を抑える責任がある」と述べている。中国のHIV感染者は人口に対して1%未満だが、国内のHIV/AIDS感染が一般市民に拡大する前に、現状を改善するための断固たる処置が必要であろう。研究グループは、HIIV感染拡大防止に焦点をあてた社会プログラムの発展と感染者への無料治療を提案している。

原題:Yunnan HIV infections jump among women, gay men
日付:8 October 2008
出典:GoKunming, China
URL:http://gokunming.com/en/blog/item/713/yunnan_hiv_infections_jump_among
_women_gay_men

米国:HIV陽性者渡航制限は撤廃されない?

米議会が7月にHIV陽性者に対する渡米禁止を解除することを決めてから、3ヶ月が経った。しかし国家保安局は先日、ビザ免除申請手続きの”合理化”のために、HIV陽性である短期滞在者に対して新たな規制を課すことを発表した。この動きは2年近く前に生まれており、ブッシュ大統領がプロセスの合理化とともに、禁止令を解除しようとする議会に追随しないよう、当局に求めたことが発端となっている。

新たな規制のもとでは、短期滞在者は厳格な12の要件を満たさなければならない。それらはHIV陽性の渡航者に不必要な重荷を課し、HIVと共に生きる人々としてのスティグマを植え続けることになる。しかもその要件のいくつかは、HIV感染経路や治療に関する医学的な知識と合致しないものである。

さらに、ビザ免除を申請するものは、たとえ米国市民と結婚しようとも永住権の取得をあきらめなければならない。ニューヨークのゲイ・レズビアンの人権団体である「移民の平等」Immigration Equalityなどは、これらの規制が結局、HIV陽性者の来航禁止を意味するものだとして危惧している。

7月には議会の両政党も、政権に対してHIVを旅行者や移民の障害としないように要請するメッセージを発した。ブッシュ政権は、禁止令を撤廃する代わりに規制を敷くことでHIV陽性者を差別して扱っており、来航禁止は事実上その力を保ったままである。

(編集部注:米国のHIV陽性者渡航制限撤廃については、いろいろと変動はありつつも、現在のところ、来年の上半期には完全に撤廃される見通しとなっています)

原題:Regulatory Change to HIV Travel Ban Continues to Stigmatize HIV-positive People, Fails to End Ban
日付:2008年9月30日
出典:Immigration Equality

米国:製薬企業が共和・民主両党に対等に政治献金

連邦選挙管理委員会(FEC)の最新報告によれば、アメリカ大統領選挙期間中の製薬業界(新薬研究開発系)の政治献金は共和党へ1021万5883ドル、民主党へ979万6980ドルとなっており、ほぼ対等に献金されていることがわかった。最高献金額はファイザー製薬で、政治献金総額120万ドルのうち51%を民主党、49%を共和党へ寄付している。ジョンソン&ジョンソンは96万3563ドルの献金のうち、59%を民主党へ、40%を共和党に献金し、英国製薬会社のグラクソ・スミスクライン(GSK)は92万4241ドルの献金を42%へ、民主党へ58%を献金した。

製薬業界は1990年以来、政治献金をしているが、これまでは両党へ対等に献金されることはなかった。たとえば2006年の選挙戦では共和党へ1300万ドル以上献金した一方で、民主党へは600万ドルしか献金しなかった。製薬業界で、最高額を献金する企業は、程度の差はあるが過去20年以上共和党へ多く寄付している。

ニューヨーク・タイムズ紙のアナリストは、今回の大統領選挙で製薬企業がこのような両党対等に献金することについて、共和党の大統領候補であったジョン・マケイン氏John McCainが製薬業界に反対されるような政策を支持してきたことに原因があると指摘する。たとえば、彼はメディケア(高齢者向け医療保険制度)の処方薬価交渉権を連邦政府に付与することや、カナダからの輸入処方薬を市場に解放すること、ジェネリック薬品認可を早期に行うことなどを支持しているのである。また、2008年1月の大統領候補テレビ討論会の中で、製薬業界を擁護していたマサチューセッツ州知事ミット・ロムニー氏 Mitt Romneyに対し、マケイン氏は「製薬業界は既に悪人だ」と誹謗する発言をした。製薬業界はその発言を許し難く思い、民主党への献金を増額したのだろうか。

原題:Pharma contributing "equally" to US Republican, Democrat presidential
campaigns.
日付:15/10/2008
出典:Phaema times
URL:http://www.pharmatimes.com/WorldNews/article.aspx?id=14540

HIV発見者たちがノーベル医学賞受賞

2008年のノーベル医学賞は、エイズを引き起こすHIVを発見したフランスの研究者、リュック・モンタニエ氏 Luc Montagnier とフランソワーズ・バレシヌシ氏Francoise Barre-Sinoussi、子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)を発見したドイツのハラルド・ツア・ハウゼン氏Harald zur Hausen の3人が受賞した。

モンタニエ氏らの研究は、エイズの理解、抗レトロウィルス治療に不可欠だったと評価された。ハウゼン氏の研究は、女性の癌の中で2番目に発症率の高い子宮頸癌の原因となるHPVの研究が、近年の定説を覆したことが評価された。

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベル Alfred Nobel が創設した基金で、その年の大きな発見や功績を残した人物に賞金と共に送られる。昨年は、遺伝子操作で特定の遺伝子を欠落させたマウスによって、様々な医学研究への道を開いたアメリカ人学者3人が受賞した。

今回の3人には1000万クローナ(約140万ドル)が授与されたが、ハウゼン氏に半分を、残りがHIV発見者の二人に分配された。

原題:Three Europeans Win 2008 Nobel for Medicine
日付:2008年10月6日
出典:NY Times
URL:http://www.themoneytimes.com/articles/20081007/three_europeans_win_2008_nobel_for_medicine-id-1037934.html

第108号(第5巻第7号) 2008年(平成20年)11月15日

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第108号(第5巻第7号) 2008年(平成20年)11月15日
Vol.5-No7 (No.108) Date: November 15, 2008

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世界の薬物使用者5人に1人がHIV感染?

世界中で法律で禁止されている薬物を使用している人口は約1,600万人とされるが、その5人に1人がHIVに感染していると推測されるという記事が、英科学誌ランセット電子版に発表された。

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