グローバル・エイズ・アップデート

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2018年05月

第342号(第18巻第17号)2018年(平成30年)5月13日

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グローバル・エイズ・アップデート
GLOBAL AIDS UPDATE
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第342号(第18巻第17号)2018年(平成30年)5月13日
No. 342(Vol.18-No.17) Date:2018/5/13
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★「第342号」目次

●対策・課題別記事、アフリカ以外の地域別記事
・(東ヨーロッパ・中央アジア地域)グローバルファンドからの資金移行 東欧地域の進捗状況
・(スイス)グローバルファンド、# Me Tooを契機にセクシュアル・ハラスメントに関する規定の見直しへ
・(アフリカ、アジア含む23カ国)23カ国で調査 HIV対策の資金はどのように割り当てられるべきか

●アフリカの地域別記事
・(ナミビア)子どものAIDS当事者たちのための未来を創るティーン・クラブ
・(マラウイ)「人口サービス・インターナショナル」(PSI)、マラウイ最大都市ブランタイアでHIV自己検査プロジェクト拡大

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(東ヨーロッパ・中央アジア地域)グローバルファンドからの資金移行 東欧地域の進捗状況

【2018年4月3日】東ヨーロッパ・中央アジア地域 Eastern Europe and Central Asia (EECA)の多くの国々は、ラテンアメリカ・カリブ海地域と同様に、エイズ・結核・マラリア対策について、グローバルファンドの資金による実施から、自国の資金による実施への移行プロセスを進めている。グローバルファンドはこれらの国々に「移行準備資金」を提供しているが、これについても、脱却しなければならない時期に差し掛かっている。本記事では、東欧・中央アジア諸国におけるHIV、結核、マラリアの移行準備状況の概況について説明したい。

持続可能性・移行・共同資金拠出政策 Sustainability, Transition and Co-Financing Policy

2016年4月、グローバルファンドの理事会は、持続可能な三大感染症対策の実施に向けて、中所得国における三大感染症の対策費を外部資金から国内資金に移行させていくことを目的に「持続可能性・移行・協働資金拠出政策」Sustainability, Transition and Co-Financing Policy (以下、「STC政策」)を策定した。

これはグローバルファンドを長期的に持続させるとともに、各国にグローバルファンドからの自立のための移行を約束させるという政策である。STC政策は、疾病負荷や経済力に関わらず、すべての国は、国の対策、プログラム、グローバルファンドからの拠出金の使い方や実施について持続可能かどうかをよく考慮して計画を立てるべきであると述べている。また、疾病負荷が大きく、資金が不足している国についても、より多くの国内資金を保健分野に投資する必要性を強調している。グローバルファンドの「支援適格政策」Eligibility Policyでは、各国において、次期支払時期において「資金適格外」ineligibleになる案件について、「優先的な資金移行の必要性」priority transition needsがある場合には、「移行準備資金」を得られる、ということになっている。しかし、之には例外があり、以下の国の場合は移行準備資金を受け取ることができない。

・高所得国に分類される国
・G20のメンバーであり、上位中所得に移行しつつあり、重度の疾病負担ではない国
・経済協力開発機構Organization for Economic Cooperation and Development (OECD)の開発援助委員会Development Assistance Committee(DAC)のメンバーである国

STC政策においては、移行資金は、当該国の移行計画にふくまれている事業にのみ使い、移行資金の期間内に、現在グローバルファンドの資金で行われているすべての事業を自国資金で賄うことを達成しなければならないとされている。

本記事では、移行の概要説明のために、以下の分類を用いている。

・移行準備資金政策が採用された時点ですでに不適格であったため資金を受け取れなかった事例
・2017年から2019年の資金受け取り期間において、移行準備資金を受け取れた事例
・2025年までにグローバルファンドのサポートから離脱することが予定されている事例
・移行準備を始めた事例
・長期の移行に向けてまだ一定の時間がある事例

移行準備資金政策が採用された時点ですでに不適格であったため資金を受け取れなかった事例としては、2015年の段階で以下のケースがある。

―ブルガリアHIV対策
ブルガリアのグローバルファンドからの拠出によるHIV/AIDS対策費の最後のものは、以前、グローバルファンドの案件が「案件募集」ベースで行われていた時期のもので、2015年12月31日に終了する予定であったものである。対策の鍵となる人口層 key populations のためのHIV対策を支援するために資金拠出は延長され、2017年の9月に終了した。2016年、2017年についても、「NGOルール」(特定の政治的条件下において、NGOが対策の鍵となる人口層向けに対策を行う場合にのみグローバルファンドへの資金申請を認める枠組み)の下で資金を受け取れる可能性はあったが、結局、ブルガリアは、「NGOルール」の適用によって資金を提供しなければならないような厳しい政治的障壁がなかったため、結局、対象外となった。同様の事例としては、ボスニア・ヘルツェゴビナのエイズ・結核案件、マケドニアのエイズ・結核案件などがある。

2017年から2019年の支払い期間内に、移行準備資金を受け取れた事例について、以下の案件は、2014年から16年の支払い期間が、通常の案件として資金が受け取れる最後の期間となる。そのため、「移行資金」については、17-19年の支払い期間に受領できる。
―アルバニアHIV対策
2015年に通常の案件を受給する資格がなくなったため、2017年から2019年の支払い期間において、移行準備資金として110万ドルの支援を受けることになった。同様のケースとしては、アルバニアの結核案件、トルクメニスタンの結核案件などがある。

2025年までにグローバルファンドのサポートから離脱することになっている事例としては、以下のものがある。これは、対象国の一人当たり国民所得に基づく分類が変化したり(つまり、低所得国から中所得国に上昇したり)、疾病負荷のカテゴリーが変化したことによるものである。
―コソボHIVと結核対策
HIV、結核ともに、コソボが上位中所得国になると予想されるため、2020から2022年の支払い期間の間に応募対象外となる見込みである。そのため、移行準備資金については、2023年から2025年に受け取れる。

移行計画が始まった事例であるが、グローバルファンドは、資金拠出対象となっている上位中所得国および下位中所得国で、疾病負荷が低いかもしくは中程度である場合、現在の支払い期間(2017-19年)中に移行計画を作るように要求している。東欧・中央アジア地域としては、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、モンテネグロ、セルビア、ルーマニアの6つの国がここに分類される。一方、移行に向けて長期的な計画の対象になりつつある事例としては、キルギスタン、モルドバ、タジキスタンなどの下位中所得国が挙げられる。

一度資金拠出対象外になったが、対象内に戻った事例としては、カザフスタン、モンテネグロ、セルビアのHIVのケースがある。これらはHIVの疾病負荷が「高レベル」に分類しなおされたので、対象内となった。

原題:EECA is One of Two Regions Where Transition Planning is Most Advanced
出典:aidspan
日付:2018/04/03
URL: http://www.aidspan.org/node/4577

(スイス)グローバルファンド、# Me Tooを契機に、セクシュアル・ハラスメントに関する規定を見直しへ

【2018年4月 3日】ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの「ジェンダーと国際保健センター」のプロジェクトである「国際保健50/50プロジェクト」が刊行した国際保健におけるジェンダー平等に関する報告書「国際保健50/50報告書」において、グローバルファンドは、ジェンダーの問題を政策やプログラムに組み込んだことで好評価を得た。一方、この報告書で比較的高評価を得た国連合同エイズ計画 UNAIDS、赤十字やオックスファムなどは、シニアスタッフによる性的違法行為に関する調査の対象となった。

UNAIDSとグローバルファンドはともに、ジェンダーに対するポリシーがあるか否かという観点から、同報告書で9位以内の高い成績を得た機関である。しかし、UNAIDSはルイス・ローレス(Luis Loures)副事務局長が性的暴行の廉で告発されたにもかかわらず、その申し立てへの対応が不適切であったことから非難の的となっている。

UNAIDSのようなハイスコアの組織が、職場でのセクシュアル・ハラスメントへの対応が不適切とみなされるような状況において、グローバルファンドはどのようにセクシュアル・ハラスメントの問題に対応しているのだろうか。この記事では、グローバルファンドのセクシュアル・ハラスメント政策および処罰の手順について調べた。

現在のポリシー
グローバルファンドには、セクシュアル・ハラスメントを含むハラスメントやいじめの防止のために作成された従業員用ハンドブックと従業員行動規範がある。また、従業員行動規範、理事行動規範ではいかなる種類のハラスメントや差別も禁じているが、セクシュアル・ハラスメントについては詳細な記載がない。

処罰手順
ハラスメントの被害者は人事部、倫理部門、オンブズマン、福利厚生部門を通じて是正を求めることができる。いじめやハラスメントの申し立てを行った従業員は解決に向けて公式、および非公式の会合を持ち、ハラスメントの目撃者も同じチャネルを利用することができる。

処罰の決定
従業員ハンドブックはハラスメントを違法行為とし、そのような行為は、書面での警告、給与の停止、解雇または即時解雇といった様々な方法で罰せられる。解雇もしくは即時解雇の場合は、最終決定のために事務局長へ上がる。

権利に関する規定を策定することは、安全な文化を保証することにもつながる。グローバルファンドのセス・ファイソン(Seth Faison)広報責任者は、「規定はセクシュアル・ハラスメント防止に必要な要素であるが、最終的な解決は、行動を起こし、加害者に責任をとらせる文化のもとにある」と述べている。

既定のレビュー計画
本年2月にピーター・サンズ(Peter Sands)次期事務局長はグローバルファンドスタッフに対して、倫理部門と人事部長とともに現有の規約を見直し、状況に合わせてアップデートされ改善されているか検討することを発表した。この見直しにはスタッフとの討論会を含み、従業員ハンドブックと従業員行動規範の改定に繋がる。この見直しはグローバルファンドの行動規範にセクシュアル・ハラスメントに関する規定が組み入れられる契機となるだろう。

原題:#MeToo Prompts Global Fund Review of Harassment Policies
出典 aidspan
日付:2018年4月3日
URL: http://www.aidspan.org/gfo_article/metoo-prompts-global-fund-review-harassment-policies

(アフリカ、アジア含む23カ国)23カ国で調査 HIV対策の資金はどのように割り当てられるべきか

【2018年4月13日】国際保健に関する目標を達成するためには、活用できる資金が限られていることに鑑みれば、保健医療に投入する資金を確保し、優先順位をつけて投入することが必要である。この文脈において、各国は最大限の効果を得るためのHIV資金割当ての重要性を認識している。過去6年以上、アフリカ、アジア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの23カ国では、HIVリソース配分の妥当性を評価するために「オプティマ HIVツール」Optima HIV Toolを使用している。

方法
いくつかの研究が、「オプティマHIVツール」を用いて資金配分の効率に関する研究を進めていくうえでの各国の技術協力要請により開始された。研究チームは必要なデータを検証し、HIV流行予測を行うために「オプティマ HIVモデル」を調整し、調査のためのコストへの介入に同意し、国の戦略計画を実行する際に適切な資金配分を計算するためにモデルを使用した。これら23カ国での研究のレビューと分析から、様々な疫学的背景におけるHIV資金の最適な配分に関する共通のテーマを抽出した。

結果と考察
HIVへの資金投入の最適な配分は、活用できる資金額と、各国の流行、対応の在り方などの性質に依存している。モデリングの結果は、治療のカバー率を拡大することが、資金の投入において効果的であることを示している。HIV陽性率が高値の人口集団、地域におけるHIV対策の目標によって効果的な進歩が見込まれる。モデリングの結果は、HIV対策資金の効果的な配分によって、新規HIV感染の累積数を2020年までに平均18%、2030年までに25%減少させ、両者のタイムラインで死亡率を約25%減少させることができるを示している。しかし、これはほとんどの国における戦略計画の目標達成には十分ではなく、予算を185%まで増加させることが必要であることを示している。

まとめ
現在ある資金を適切に配分することを通じて、より大きな疫学的影響を与えることは可能であろう。しかし資金を増額することが目標達成のために必要である。配分効率モデルはHIV計画と資金プロセスの改良に有用であることが証明された。

原題:How Should HIV Resources be Allocated? Lessons Learnt From Applying Optima HIV in 23 Countries
出典 Journal of the International AIDS Society
日付:2018年4月13日
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jia2.25097

(ナミビア)子どものAIDS当事者たちのための未来を創るティーン・クラブ

【2018年4月20日ヴィントフック(ナミビア)発】南部アフリカの西海岸に位置するナミビア共和国の北部、カプリビ回廊地域の付け根に位置するアンダラ郡病院には、10代の若者たちが30人近く集まり、同年代の患者とHIV/AIDSに関する様々な経験や心情を共有している。

彼らは、両親のどちらかまたは両方をHIV感染によって亡くしており、未だHIV感染に対するスティグマが残る地域社会から孤立している。ナミビアには17000人以上の若いHIV陽性者がおり、ナミビア北東部のカヴァンゴ東部地域に位置するアンダラ郡にも、数百人のHIV陽性者の若者たちが生きている。国際保健に関するコンサルタントである「イントラヘルス・インターナショナル」Intrahealth International と、これと連携する地元関係者による調査により、同地域に住む10代のHIV陽性者はARTの継続率が低いことを明らかにした。この背景には自分自身の感染状況を他人に知られたくないという思いだけでなく、差別や偏見、自宅や学校から病院までの距離、保護者や大人たちからの支援不足が挙げられる。

そこでこの状況を改善すべく、アンダラ郡では10代のHIV陽性者への対応に精通した地元関係者を養成・配置するとともに「10代クラブ」Teen Clubを創設し、各分野の専門家がチームとなって彼らのニーズに応える体制を整えた。クラブ創設当初は参加者が少なかったが、彼らの病気に対する不安や恐怖を軽減させる社会心理的サポートを実施することにより徐々に増えていき、ART継続率の改善につながった。

多くの子どもにとって、まず自分自身がHIVに感染していることを理解することから始まるが、これは精神的にも身体的にも容易なことではない。クラブに所属する子ども達は病院の関係職員からHIV感染の事実を告知され、自身のHIV感染の状況を理解することでクラブへの入会およびソーシャルサポートを受けることができる。

包括的なHIVケアおよび治療には抗レトロウイルス薬による治療だけでなく、特に子どもや10代のHIV陽性者にはソーシャルサポートが不可欠である。HIV陽性者が日々直面する困難に打ち勝つためには、肯定的な役割モデルに基づく強力なソーシャル・ネットワークが役立つ。クラブの職員は、所属する子どもたちが他の10代の子どもたちと同じように生きていけるよう、親、子ども、地元関係者と良好な関係を構築していきたいとしている。

原題:Namibia: Teen Clubs Shaping a New Future for Children with HIV
出典:AllAfrica
日付:2018/4/20
URL:http://allafrica.com/stories/201804200264.html

(マラウイ)「人口サービス・インターナショナル」(PSI)、マラウイ最大都市ブランタイアでHIV自己検査プロジェクト拡大

【2018年4月18日】米国の国際NGO「人口サービス・インターナショナル」Population Services International(PSI)のマラウイ支部は、同団体が南部アフリカで展開しているHIV自己検査プロジェクトを同国のブランタイア地域で拡大する計画を進めている。 このプロジェクトは「HIV自己検査アフリカ・イニシアティブ=調査」HIV Self-Testing Africa Initiative-Research (STAR) プロジェクトと命名されている。

STARプロジェクトは、HIV検査へのアクセスの機会が少ない人々に、プライバシーを守りながらHIV自己検査を促進するものである。また、特に感染可能性の高い人々には、複数回の検査を促進している。

同プロジェクトのコーディネイター、イアン・クルズ氏 Ian Khruz は、マラウイ・ニュース報道局 Malawi News Agency (MANA) に対し、HIV自己検査キットは、ブランタイアのスラム街では、インフォーマル・セクターによって供給されるだろうと述べた。クルズ氏によれば、ブランタイアの都市部のHIV成人陽性率は18.5%であり、エイズ対策の成功のためには、様々な手法を織り交ぜて行う必要があるという。「このプロジェクトのターゲットは、都市スラムとインフォーマルな仕事についている15-24歳の若者と成人の男性、その他の脆弱性を抱えている人々です。また、クリニックで何度も検査を受けている女性のパートナーの男性もターゲットにすることで、HIV感染を減らすことも目指しています」とクルズ氏は述べる。

クルズ氏によると、自己検査キットの配布については、対象となるグループに属している人々を活用するのがPSIのやり方である。「私たちは人数の面で特定の目標は持っていない。とにかく、できる範囲で最大限の人数にアウトリーチすることが目標だ」とクルズ氏は述べる。

ブランタイア地域の保健・環境局長であるペンジャニ・チュンダ氏 Penjani Chunda は、自己検査キットの配布によって、多くの人々が自らのHIV感染を知り、適切な医療にかかる方法を探すだろう、と述べる。チュンダ氏は、多くのマラウイ人がHIV検査センターに行きたがらないのは、感染の有無について知ることを怖がっていることと、恥だと思っていることに理由がある、と述べる。

チュンダ氏は、自己検査キットはすべての人に自分自身で検査をする機会を提供する適切なアプローチであるとし、「できる限り多くの人に検査機会を提供し、同時にHIV感染率を低減するベストなアプローチだ」と説明している。2018年2月までに、PSIは2264の検査キットを配布している。

インフォーマル・セクターの人々とは別に、同プロジェクトは専門的な業務に携わる人たちやトラック運転手をターゲットにする予定である。同プロジェクトは、2015年11月30日に、第18回アフリカ地域エイズ・性感染症国際会議において発足したものであり、うまく実施されれば、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2020年までの目標である「90-90-90目標」の達成に貢献するものであるとされている。対象国はマラウイ、ジンバブウェ、ザンビアの3ヶ国である。

原題:Malawi:PSI to Scale Up HIV Self-Testing Africa Project in Blantyre
出典:AllAfrica
日付:2018/4/18
URL:http://allafrica.com/stories/201804180317.html
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