グローバル・エイズ・アップデート

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2018年12月

第351号(第19巻第4号)2018年(平成30年)12月12日

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グローバル・エイズ・アップデート
GLOBAL AIDS UPDATE
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第351号(第19巻第4号)2018年(平成30年)12月12日
No.350(Vol.19-No.4) Date:2018/12/12
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★「第351号」目次

●対策・課題別記事、アフリカ以外の地域別記事
・(スイス)グローバルファンド、経済危機のヴェネズエラのエイズ治療薬確保に500万ドルを拠出
・(スイス)各国はグローバルファンドの案件形成にむけ、より正確なデータが必要
・HIV陽性の高齢者はHIVケアの重要な部分

●アフリカの地域別記事
・(ザンビア)メディアとHIV対応
・(カンパラ)HIVファイトのためのキャンペーン開始
・(ビサウ)HIV-2関連エイズと死亡率の長期追跡調査:前向きオープンコホート研究

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◆発 行:(特活)アフリカ日本協議会
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グローバルファンド、経済危機のヴェネズエラのエイズ治療薬確保に500万ドルを拠出

【2018年10月2日ジュネーブ(スイス)発】途上国の三大感染症対策に資金を拠出する国際機関、「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)は、深刻な経済危機に直面し、これが国民の保健上の危機をもたらしている南米のヴェネズエラにおいて、HIV陽性者への治療を提供できるよう、500万ドルを例外的に拠出することを決定した。上位中所得国であるヴェネズエラは、従来の基準ではグローバルファンドの支援対象外であり、今回初めて援助を受ける。

拠出金500万ドルのうち490万ドルが抗レトロウイルス治療薬 Anti-retroviral drug : ARV購入のため、世界保健機関 WHOの米州(北・中・南米大陸)事務所である汎米保健機関 Pan American Health Organization : PAHOの「戦略基金」へ支払われる。これは、ARVを調達するために他の支援者から受け取った資金を補填するためである。

残りの10万ドルは、ARV供給過程のモニタリングに使用され、国連合同エイズ計画(UNAIDS)を経由してヴェネズエラの市民社会組織(CSOs)に支払われる。

ヴェネズエラへの人道的支援を求めてきた市民社会やその他の組織は、今回の例外的な資金拠出に対し、肯定的な反応を示している。

原題:Global Fund will 'donate' $5 million to Venezuela to provide treatment for HIV
出典:AIDSPAN
日付:2018/10/02
URL:http://www.aidspan.org/node/4737

各国はグローバルファンドの案件形成にむけ、より正確なデータが必要

【2018年10月2日ジュネーブ(スイス)発】途上国の世界三大感染症対策に資金を拠出する国際機関「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)は、エイズ、結核、およびマラリア対策の目標の達成に向けて必要な資金を明示し、グローバルファンドから支出される資金の分配を含め、各国の出資額とドナーからの支援額を明示する必要がある。エイズ、結核、およびマラリア対策に必要な資金額と、各国の出資額および援助機関からの推定支援額には差がみられ、多くの国が、本来必要な資金額を確保して対策を行っているわけではないというおkとがわかる。では、必要な資金額はいかに算出されるのだろうか。

例として、HIV対策に必要な資金の算出シミュレーションを確認してみる。まず、国は国家保健戦略に沿う目標を定める。専門家チームが現状の人口動態、HIV感染(例:各年齢層における感染率や流行)、予防と治療コストに関するデータを収集する。次に、専門家たちは数理モデルを用いて、年齢グループとジェンダ―ごとに将来人口、HIV感染率、およびHIV陽性者の数を推定する。さらに、これらの推定をもとに、今後の医療用品コストがいかに変動するか推測しながら必要資源の見積もり額を出す。ケニアの場合、開発パートナーは2013年のデータをもとに、2019年のHIV陽性者数を87万1000人から140万人へ増加すると推測した。

グローバルファンドに関する独立した報道機関である「エイズパン」AIDSPANの定期発行い 「グローバル・ファンド・オブザーバー」 Global Fund Observer は最近、流行が最も深刻なアフリカ23カ国※における2015-2017年のエイズ、結核、およびマラリア対策における各国の出資額、およびドナーからの支援額の差を示した。例えば、モザンビークにおける2015-2017年のHIV対策では、国(政府)の出資額が全体の3%と低い数値を示した。これは、同国のエイズ対策の多くが、国際機関や各援助国の資金で行われていることを示す。一方、ケニアでは48%であった。

一方、。国別にみたHIV対策への政府の投資額にも類似したギャップがみられ、モザンビークでは4%、コートジボワールでは49%であった。今後は、出資先のニーズに対応できるよう、各国の出資額、およびドナーからの支援額を含め、正確な情報をもとに資金を分配することが必要である。

※グローバルファンドからの資金2/3は、これらの国に割り当てられている

原題:Countries need better data for accurate forecasting of funding gaps in Global Fund grants
出典:Aidspan
日付:2018/10/2
URL:http://www.aidspan.org/gfo_article/countries-need-better-data-accurate-forecasting-funding-gaps-global-fund-grants

HIV陽性の高齢者はHIVケアの重要な部分

【2018年9月14日】抗ウイルス薬の発展は、HIV陽性者の状況を大きく改善してきた。にもかかわらず、世界に67万人いるとされる50歳以上のHIV陽性者に対する効果的な治療方法は、未だに見つかっていない。高齢のHIV陽性者 Pepople living with HIV : PLWH は、HIV陰性の同世代の人と比べると、様々な症状を起こすリスクが高い。例えば、認知症やうつ、孤独感をはじめ、医学的、社会的に多くの問題を抱える。HIVに感染した事実や性別に基づく固定観念などは社会的不名誉の要因となるが、これらに加え、年齢に基づく差別もPLWHを孤立させる原因となる。限られた予算の中ですべて世代のHIV患者への効果的なケアを提供する一方、PLWHへの効果的な対策を見つけることが、今必要となっている。

PLWHへの治療に関する主な問題は、治療の偏在である。首都など一部の地域に薬や治療の手段が集中する一方、他の地域では治療へのアクセスが不足している。その原因は、資源の不足や患者の貧困、治療を受けることへの社会的不名誉などである。

PLWHへの一次的治療は、身体的なケアと精神的ケアの双方をカバーし、長期的なニーズに応えうるものでなければならないが、その取り組みのひとつとして、自らが高齢者である専門家によるコンサルティングがある。専門家が単独ないしはチームで、その他の医療サービスや地域組織を結びつきアドバイスを行う。この取り組みの強みは、専門家が高齢者のことをきちんと理解できる点である。一方、外部からのアドバイスであるため、治療の実行に関する主導権が握れない点が弱点である。

さらに、代謝性合併症など、併存疾患を抱えるPLWHに対する代謝促進プログラムから生まれた取り組みがある。この取り組みの長所は、筋肉の低下など加齢に伴う疾患を考慮して治療できる点である。一方で、併存疾患の治療に焦点を絞ることで視野が狭まり、心理社会的側面を無視してしまう可能性がある点に注意が必要だ。

当初PLWHへの取り組みは、医学的アプローチの外側で主導されてきたが、今日では医学的プログラムも広まってきている。一部の取り組みでは、特定の地域における高齢世代の集団に焦点を当て、その地域の人口に特有の加齢に伴う問題への手がかりを得るとともに、治療のための正確なPLWHのスクリーニングの実施につながっている。

医学的根拠に基づいたPLWHへの取り組みは必要不可欠であり、各国の政府などは、PLWHへの一次治療の発展を促進する支援を行う義務がある。資源が豊富な地域と少ない地域とのつながりが増えれば、疾患への治療方法などの共有により、より多くのPLWHが健康管理に携われる環境を整えることが可能になるだろう。HIVがグローバルヘルスの一部としてとらえられるべきだと言われているように、HIVへのケアも、グローバルな視点で包括的に行われなければならないのだ。

原題:Older people with HIV are an essential part of the continuum of HIV care
出典:Journal of the International AIDS Society
日付:2018/01/06
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jia2.25188

(ザンビア)メディアとHIV対応

【2018年10月31日ルサカ(ザンビア)発】アフリカ南部の内陸国の一つであるザンビア共和国は、アフリカのなかでHIV感染の影響を最も受けている国のひとつである。同国では、2030年までにHIV/AIDSの終息を目指し国連エイズ合同計画(UNAIDS)が策定した「90-90-90戦略」のもと、ザンビア国家エイズ戦略枠組み National AIDS Strategic Framework of Zambiaが改訂され、ゲイやトランスジェンダー、男性とセックスをする男性 Men who have sex with men : MSM を含めるよう制度の対象が見直された。UNAIDSの「90-90-90戦略」とは、HIV陽性者の90%が自分の感染状況を知り、その90%がHIV治療にアクセスし、その90%においてHIVウイルス量が検出可能値以下に下がるという状況を意味する

HIV影響の評価 The Zambia Population-Based HIV Impact Assessment : ZAMPHIA は、2016年3月から8月の間のエイズ対策の進捗状況を明らかにした。同調査によると、15歳から59歳までの成人で年間におよそ4万6千件の新規感染があり、成人の感染率は12.3%で、男性が9.5%、女性が14.9%であることが明らかになった。しかし、同調査は、国家エイズ戦略枠組みの改定前に調査されたため、異性間のカップルのみに焦点が当てられ、対策の鍵となるゲイやトランスジェンダー、MSMに焦点が当てられていない。

ザンビアのHIV対策を取りまとめる国家エイズ委員会 National AIDS Council : NAC は、HIV問題を解決するために関係者が一致団結できるよう主導的役割をはたしている。2017年6月、NACは国家エイズ戦略枠組National AIDS Strategic Framework : NASF 会議を開催した。
同会議には、メディアも招待され公開された。メディアは、NACはMSMがHIV感染拡大の元凶であると認識していると報道している。一方で、MSMを含むすべてのHIV陽性者が治療やケアにアクセスできるようHIV対策に取り組むことについても議論したと報道された。

ザンビアの英字紙である「ルサカ・タイムズ」紙は「リビングストンはザンビアのゲイの中心地である」という見出しを掲げ、あるいは「儲けたお金で家を建てた者もいて儲かるようにもみえる」などと、この会議はメディアによって否定的に報道された。このような報道によって地域で活動する当事者や国際援助機関による支援状況に影響を与えた。また、影響を受けた当事者らは、偏見や逮捕を恐れて身を隠すようになった。この問題解決のために、NACと他の協調関係にある組織がメディア機関と一同に会し、正当な事実に基づく客観的報道をすることがHIV対策の改善になることを確認した。今後、メディアとの有効な協力関係は、2030年までにエイズを終息させるための重要な鍵の一つとなる。

原題:The Media and HIV Response in Zambia
出典:Key Correspondents
日付:2018/10/31
URL:http://www.keycorrespondents.org/the-media-and-hiv-response-in-zambia-%E2%80%A8/

(カンパラ)HIVファイトのためのキャンペーン開始

【2018年11月14日ウガンダ(カンパラ)発】東アフリカの内陸国の一つであるウガンダの首都カンパラは、20以上の保健従業員や製造業者はHIV/AIDSの治療とそれに対する全国的な鋭敏化を図るために「Shs10b」というキャンペーンを打ち出した。

「1ドルHIV/AIDSイニシアティブ」 One Dollar HIV/AIDS Initiative : ODIのヴィナンド・ナンタルヤ議長(元ウガンダエイズ委員会委員長) Vinand Nantulya は、ODI立ちあげを契機に、「HIVやエイズ治療の費用を増やすべき」と述べた。そのうえでナンタルヤ氏は、「HIV/AIDSは、国内のビジネスに影響するだけではなく、ビジネス環境全体を不安定にする。また、援助資金の減少に対し、HIV/AIDS対策に必要な資金を自分たちで調達する時期が来た」とも述べた。

ウガンダ民間セクター基金 Private Sector Foundation Uganda : PSFU のパトリック=ビターチャ議長 Patrick Bitature は、ウガンダ投資庁Uganda Investment Authority : UIA の元関係者マギー・キゴジ氏 Maggie Kigozi を発起人とする、2018年12月9日開催予定のHIV/AIDSウォークは、ODI企画の一つで、1万人を対象とし、「終わるまで Until It’s Over : UIO」をスローガンとした。

ウガンダでは、新規HIV感染者は週に962人である。すべての年代を含めて132万4,685人がHIV陽性者であり、そのうちの86%に相当する114万1,489人が抗レトロウイルス治療を受けている。また、診断に使用される機器の費用、および治療薬費などを含めHIV/AIDS患者の治療に、毎年276百万ドルを費やしていると推定されている。

ODIのジョージ・タマル コーディネーター George Tamaleは、もし、毎年100億ウガンダ・シリングを確保できれば、年間5万人のHIV感染や治療に用いられている資源を発展させることができると言った。彼は、なぜ苦しみが沈滞することと戦うかという理由に自己満足があるとも話した。

「私たちは38年間HIVと闘うことに及び腰だった。その結果、対策が停滞してきた。私たちは、を市民として資金を増やし、自らこの感染症と闘うことに関係することで停滞を覆す必要がある。私たちは個人のお金を増やすことでしかこれを達成できない、そうすればドナーが手を引いてもできる」と。

1980年代の初期、年間HIV感染者は23万人だったが、1986年、ムセベニ Museveni 大統領就任後、年間HIV感染事例は8万人に減少した。しかし、2000年代以降、その数は上昇傾向となった。今後、更なる方法を検討しなければならない。

原題:Campaign to Raise Shs10b for HIV Fight Launched
日付:2018年11月14日
出典:Daily Monitor
URL:https://www.monitor.co.ug/News/National/Campaign-raise-Shs10b-HIV-fight-launched/688334-4851080-b7h1lj/index.html

(ギニアビサウ)HIV-2関連エイズと死亡率の長期追跡調査:前向きオープンコホート研究

【2018年11月1日ビサウ(ギニアビサウ)発】HIVは大別してHIV-1型とHIV-2型の2種類が存在し、大多数のHIV陽性者が感染しているHIV1型(HIV-1)に比べ、HIV2型(HIV-2)は感染性や病原性が弱いとされている。しかし、HIV-2感染者がエイズを発症するまでの期間やその死亡率に関して、信頼性のある推定値はない。HIV-1感染者とHIV-2感染者の潜伏期間と死亡率、CD4陽性T細胞の動態を比較することを目的とする研究プロジェクトがアフリカ西部の国ギニア・ビサウにて展開された。。

方法
本研究は、前向きオープンコホート研究を適用した。研究対象者は、1990年2月6日からギニア・ビサウ共和国の都市および地方の警察署に勤務する、正規雇用の全警察官である。2009年9月28日まで継続的に参加者を加え、2013年9月28日までHIV-1陽性者、すなわちHIV-1に感染している人とHIV-2陽性者、すなわちHIV-2に感染している人の追跡調査を実施した。血液検体は、参加者登録時と警察署への定期訪問時に採取した。HIV-1およびHIV-2の感染者から収集した縦断的データを潜伏期間、余命、T細胞動態に基づいて分析した。HIVに感染した時期は、検体が最後にHIV陰性だった時期と最初にHIV陽性になった時期の中間であると推定した。自然死亡率がHIV関連死亡率に及ぼす影響を評価するために、同じグループに属する参加者で、HIVに感染していない2,984人のデータを分析した。

結果は以下のとおりである。23年間の調査期間中、872人がHIV陽性とされた。内訳は、408人がHIV-1感染者(183人は参加登録前、225人は参加登録後に感染した)、464人がHIV-2感染者(377人は参加登録前、87人は参加登録後に感染した)であった。HIVに感染してからエイズを発症するまでの平均期間は、HIV-1が6.2年(95% CI: 5.4-7.1)、HIV-2が14.3年(10.7-18.0)であった(p<0.0001)。HIV感染後の平均余命は、HIV-1が8.2年(95% CI: 7.5-8.9)、HIV-2が15.6年(12.0-19.2)であった(p<0.0001)。参加登録前にHIV-1もしくはHIV-2に感染した人にも同じ結果が見られた。HIVに感染していない人と比較したところ、自然死亡率による交絡は限定的であった。CD4陽性T細胞の平均値は、感染初期にはHIV-2感染者の方がHIV-1感染者よりも高く(28.0% [SE: 1.3]対22.3%[1.7]; p=0.00094)、徐々に低下した(0.4% [0.2] 対 0.9% [0.2] /年; p=0.028)。HIV-2感染者が臨床的エイズを発症した際のCD4陽性T細胞の平均値(18.2%, IQR 7.2–25.4)はHIV-1感染者(8.2%, 3.0–13.8; p<0.0001)よりも高かった。

調査結果からわかるのは、HIV-1感染者とHIV-2感染者のどちらも、抗レトロウイルス治療を受けなければエイズを発症し死亡する確率が高いということである。

原題:Long-term follow-up of HIV-2-related AIDS and mortality in Guinea-Bissau: a prospective open cohort study
出典:The Lancet HIV
日付:2018/11/01
URL:https://www.thelancet.com/journals/lanhiv/article/PIIS2352-3018(18)30254-6/fulltext
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