グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!

2019年03月

第353号(第19巻第6号)2019年(平成31年)3月23日

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■
グローバル・エイズ・アップデート
GLOBAL AIDS UPDATE
----------------------------------
第353号(第19巻第6号)2019年(平成31年)3月23日
No.353(Vol.19-No.6) Date: 23 March 2019
■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■
----------------------
★「第353号」目次

●対策・課題別記事、アフリカ以外の地域別記事
・(スイス)グローバルファンドの第6次資金援助は保健システムへの投資拡大が必要=技術審査委員会
・(スイス)インドとアジア太平洋の市民社会、グローバルファンド第6次増資に照準を定める

●アフリカの地域別記事
・(南アフリカ)性感染症の予防-南アフリカが勝利できない理由
・(ジンバブウェ)乳児早期HIV診断プログラム、臨床現場即時検査の導入の臨床効果と費用対効果:モデリング研究

------------------------------------ Vol.19 No.6---

◆発 行:(特活)アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル3F
・電話:03-3834-6902
・FAX:03-3834-6903
・電子メール:info@ajf.gr.jp
◆バックナンバー:下記ブログをご覧ください。
・http://blog.livedoor.jp/ajf/
◆Melma!を通しての購読申し込みは
・http://www.melma.com/backnumber_123266/
◆本メールマガジンから転送・引用を行う場合は、事前に発行者にご連絡をお願いします。

(スイス)グローバルファンドの第6次資金援助は保健システムへの投資拡大が必要=技術審査パネル

【2019年1月14日ジュネーブ(スイス)発】途上国の三大感染症対策に資金を拠出する国際機関である「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)で案件の審査等を行う独立した機関である技術審査委員会は、第5次増資期間(2017年〜19年)における保健システムに関する投資に関する報告書を発表した。報告書は、グローバルファンドが保健システム関連の戦略目標を達成しようとする場合、第6次増資期間(2020〜2022年)に保健システムへのさらなる投資が求められるだろうとしている。

以下は9項目のハイレベル問題の概要と技術審査委員会による勧告の要約である。なお、スペースの関係上、3(保健人材)と4(統合サービス提供)は別号で取り上げる。
1. 健康管理情報システム
 相補性の不明確な複数のシステムを使用している国があること、事業運営の改善にデータが有効活用されていないことが課題である。申請者は類似したシステムを並行導入せず、事務局はデータの有効活用のためにガイダンスを更新することが推奨される。
2. 調達・供給管理
 人的能力・財源の不足、事業指標の不適切な運用から、在庫切れや低品質が散見される。地区レベルより下位で供給問題を解決する動きが見られないため、グローバルファンドの各国への案件の形成や実施を行う代表機関である「国別調整メカニズム」(CCM)とパートナーの連携方法を定める必要がある。新技術を活用した保健システムの整備も課題である。
5. コミュニティ・システムとその対応
コミュニティにおける保健対応や能力強化への資金拠出を行う「コミュニティ・システム事業」はスケールに乏しく、雇用、資金、活動評価に課題がある。コミュニティ・ヘルス・ワーカーは責任が限定的で身分も不安定であるため、公的な認証と信頼性の高い報酬案を提示する必要がある。持続可能な資金供給を行う仕組みもないため、三大感染症対策についてグローバルファンドの資金から国内資金への移行の対象となっている国はサステナビリティ・プランを提示するべきである。また、評価基準は活動単位の指標に偏重していることから、事務局は適切な指標を示す必要がある。
6. 民間セクターの関与と官民連携
 官民連携の重要性は認識されているものの、活用や資金拠出の方法は不明確である。民間施設で提供されているケアの質は懸念事項であり、サービスや業績の質を監督するための仕組みづくりに関する情報は不足している。申請者には戦略的計画を、事務局には官民連携に関するガイダンスを作成することが推奨される。
7. ガバナンス、リーダーシップ、説明責任
 リーダーシップの確立、ガバナンスの強化に対する投資が限定的である。女性や市民の代表者などがガバナンスに参加するための介入提案が見られない。グローバルファンドと申請者は、管理監督を評価・追跡するための基準を設けるべきである。申請者は予算循環等を申請書に明記するべきである。
8. 保健セクター融資および財務管理
 国家保健財政戦略の立案に向けた活動が見られず、効果的な資金フローや財務管理が重視されていない。国内予算の支出割合は100%を大幅に下回っており、公的資金を使い切れていない。申請者は財政データを提示するべきである。グローバルファンドは、すべての融資対象国で持続可能な財政システムを促進するべきである。
9. 事業の実施管理
 移行が近い国の中に、外部組織の支援に依存し続けている国がある。公的セクターへの投資が不十分な国は管理能力に乏しく、移行後にサービスを維持できない可能性がある。事業は国のシステムを強化するかたちで実施するべきであり、事業の平行実施が必要な場合、グローバルファンドは申請者に説明を求めるべきである。

原題:Funding requests to the Global Fund in next allocation period will need to scale up investments in RSSH, TRP says
出典:Aidspan
日付:2019/1/14
URL:http://www.aidspan.org/node/4819

(スイス)インドとアジア太平洋の市民社会、グローバルファンド第6次増資に照準を定める

【2019年1月30日ジュネーブ(スイス)発】2019年2月7〜8日、インドの首都ニューデリーにおいて、途上国の三大感染症対策に資金を拠出する国際機関である「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)が、2020-22年の「第6次増資期間」に向けた増資のための事前準備会合を開催した。これまで、グローバルファンドの増資準備会合はグローバルファンドに資金を供給している先進国で開催されており、案件実施国(途上国)での増資準備会合の開催は初めてである。増資準備会合は、本年10月にフランスで開催される増資誓約会合に向けたキャンペーンの幕開けを彩るものである。この事前ミーティング開催の目的は、資金供給国・供給者、およびパートナーに対し、投資計画を共有し、ターゲットとなる増資が達成されたときグローバルファンドに期待される効果について討議する機会を提供することである。

インドやアジア太平洋で三大感染症に取り組む市民社会団体 Civil Society Organizations:CSOs のネットワークとしてグローバルファンドの増資等への支援に取り組む「グローバルファンド活動者ネットワーク アジア太平洋」(global Fund Advocates Network Asia Pacific: GFAN AP)および、GFAN APを母体としてインドの市民社会の連携を担っているインド・ワーキング・グループIndia Working Group:IWGは、今回の事前会合に向けて2019年1月16から17日にニューデリーで、コミュニティと市民社会の計画立案会合 Communities and Civil Society Planning Meeting を開催した。このミーティングの目的は、インド国内のCSOsや各コミュニティの代表者らが、地域的かつ世界規模に共同戦略化を可能とするためのサポート、および彼らの共同作業を生み出すことであった。つまり、2019年10月にフランス・リヨンで開催される第6次増資の誓約会合に向けて、「十分に資金を持つグローバルファンド」(fully funded Global Fund)を実現することを目的として掲げるよう主張するということである。インド・ワーキング・グループにとって、2月の事前準備会合は、強固かつ持続可能な保健システムを構築する機会、HIV・結核・マラリアの対策に注目を集める機会であり、さらに増額された国内の資金をこれら3つの感染症に充てるよう主張している。

2019年1月17日発行の市民社会団体によるニュースリリースでは、「国際社会は、インド政府が、グローバルファンドに十分な資金調達をもたらすためのさらなるリーダーシップが取れるのか注目している」とし、資金提供国、民間企業、民間財団、富裕層を含めた資金提供者側を集結させることによって、インド政府に対する第6次増資額を上げるよう促そうとしている。また、市民社会団体は、インド政府に対して、2016年に行われた第5次増資での成約額である2000万ドルを増額し、少なくとも4000万ドルの拠出を誓約することを要求している。さらに、「第6次増額への推進力、リーダーシップ、およびグローバルヘルスに向けたインドの関与、連帯を示すため、増資への誓約は早期になされるべき」と主張した。

インドのHIV国家戦略計画National Strategic Plan for HIVにおける2017から2022年度の予算は47億ドルである。かつ、同期間、この予算とは別の国内予算の増額として、結核対策プログラムの増額、マラリア国家対策プランに15億ドルの増額がなされている。

しかし、市民社会団体は「このような増額にも関わらず、インドの結核対策プログラムも、マラリア国家対策プランも、いまだ軌道に乗っていない。インドにおける保健医療分野への公的資金は、GDP比1.2%程度にとどまる。この比率は、インドと同じ規模の国家予算を持つ国々と比較して非常に低い額である。インド政府の、保健医療分野についての優先順位が低いことは、医療費の個人負担が大きく、医療にかかることによる経済的リスクからの保護が最低レベルにあることを意味する」と述べている。

インドでHIV対策を展開する市民社会団体の代表格である「インドHIV/AIDS同盟」 The India HIV/AIDS Alliance のソナル・メータ Sonal Mehta 最高経営責任者は、インド政府は、ただちに保健医療分野への支出をGDP比1.2%から2.5%に増額すべきであり(インド政府は、2025年までにGDP比2.5%を達成することを目標にしている)、HIV、結核およびマラリア対策に十分対応できるよう、インド各州のへ保健医療分野の支出について、予算全体の8%以上に増額することを要求している。

原題:CSOs in India and the Asia-Pacific region focus on the preparatory meeting for the Global Fund’s Sixth Replenishment
日付:2019/1/30
URL: http://www.aidspan.org/gfo_article/csos-india-and-asia-pacific-region-focus-preparatory-meeting-global-fund’s-sixth

(南アフリカ)性感染症の予防-南アフリカが勝利できない理由

【2019年2月13日南アフリカ共和国発】性感染症は重大な公衆衛生上の問題である。世界では毎日推定100万人以上が性感染症と診断されており、さらに検査技術や質の向上にも関わらず、途上国ではここ10年、感染率にほとんど変化がない。南アフリカ共和国では、年間7900万人のHIV、数千万件の淋病とクラミジア、および7万件の梅毒の新規感染などを抱え、とても大きな懸念となっている。この感染者の多さは、不十分な予防、クラミジアのように自覚症状のない感染症の未治療例などによる要因がある。高リスク患者へのスクリーニング検査の強化、サービスの利用推進、医療従事者への研修なども解決すべき課題だが、資金が不足している。

性感染症はその名が示すように、主に膣、肛門、口などによる性的接触により広がるが、母子感染(垂直感染)のように性的接触なしに感染する場合もある。性感染症は、性と生殖の健康に壊滅的な影響を与えると共に、数々の合併症を引き起こす。例えば未治療のクラミジアや淋病は、(慢性炎症を引き起こし)不妊などの長期合併症の原因となり、梅毒は未治療状態が続けば死ぬこともある。また、特にクラミジアにおいては、骨盤内炎症性疾患なども引き起こす。さらに、性感染症はHIV感染リスクを上げる。免疫応答によって感染部位(性器)に集まった活性化した免疫細胞にHIVは感染しやすく、さらに免疫細胞内で増殖する。

◆今までの性感染症予防
HIV以外の性感染症予防はHIV対策に比べて後回しになっていたが、HIV対策が、性的パートナー数の減少、コンドームの正しい継続的な利用、早期発見・治療、男性の医療的割礼(包皮切除術)などが集中的に実施されていたため、他の性感染症予防においても多少の効果はあった。一方、抗レトロウイルス薬 Anti-retroviral drug : ARV の普及と研究の進歩は、HIV陽性者たちに対して、「ウイルス量が検出限界以下になれば、パートナーに感染しない」という認識をもたらした。しかし、ARVは、HIV新規陽性者抑制のための対策であり、HIV陽性者自身が他の性感染症にもかかりやすいという状況は変わらない。ARVをHIV感染予防として服薬する暴露前予防内服 Pre-Exposure Prophylaxis :PrEP では、継続的に正しく服用することでHIV感染リスクを減少させることが明らかになっている。しかし、当然ながら、PrEPもARV同様に他の性感染症は防げない。PrEPでは、性感染症センターにおいて患者の性行為のリスク度合いを見極めて投与するかどうか決めることもある。その場合、該当する患者への性感染症予防に関する指導の内容や、性感染症予防を継続しながらHIV予防投与を推進していく方法などは、依然曖昧なままである。

◆性感染症予防の重要性を再確認
性感染症予防戦略は、HIV予防と治療の変遷、およびその進歩を考慮しなければならない。政策は、従来のHIV対策をどのように継続・強化していくか、あるいは人々に予防知識を効果的に伝える方法などの多くの問題を解決しなければならない。さらに政策決定者は短期〜長期的視野を持ちながら、様々な立場の関係者へ、性感染症予防に関連するサービスを伝える方法、また交際に関わるDVや性感染症リスクを抑える方法などを知っておく必要がある。南アフリカ共和国にとって、これらの課題を解決することは、効果的に性感染症に対応するために必要である。

●原題:Preventing Sexually Transmitted Infections: Why South Africa Isn’t Winning
●出典:Sunday Times (The Conversation)
●日付:February 13, 2019
●URL:https://www.timeslive.co.za/sunday-times/lifestyle/health-and-sex/2019-02-16-preventing-sexually-transmitted-infections-why-south-africa-isnt-winning/

(ジンバブウェ)乳児早期HIV診断プログラム、即時検査の導入の臨床効果と費用対効果:モデリング研究

【2019年2月5日ハラレ(ジンバブウェ)発】乳児の早期HIV診断のための新しい即時検査 Point-of-care:POC は、従来の核酸測定法に比べて高い検査費用がかかるが、検査アクセスの増加、結果確認までの時間短縮、抗レトロウイルス治療 Anti-Retroviral Therapy:ART を今よりも早期に開始することができる。本研究は、南部アフリカの内陸国ジンバブウェにおいて乳児早期診断プログラムにPOCを導入するにあたり、臨床上の有益性と費用対効果を検証することを目的とする。

我々は、AIDS合併症予防の費用対効果 The Cost Effectiveness of Preventing AIDS Complications:CEPAC について、従来の測定法に替えて、POCで乳児の早期HIV診断を実施することの臨床上の有益性、費用対効果を調べるモデルを用いた。アウトカムは生存率、平均余命、一人当たりの治療費に対する平均寿命が含まれ、それらはHIV暴露の乳児とHIV感染の乳児とで分けて報告される。我々は全てのHIV暴露乳児についてヘルスケアシステムの観点から、ディスカウントコスト(年間3%)と平均余命を用いて、費用対効果の増分比率を計算した。増分費用対効果費は、年間に救われる命あたり1010ドル(ジンバブエの一人当たりGDP(国内総生産))以下であると判断した。

従来の測定法を乳児早期診断に使用した場合、予測される平均余命はHIV感染乳児で22.7年、HIV暴露乳児で62.5年、コストはHIV暴露乳児一人あたり610ドルであった。POC検査を早期乳児診断に使用した場合、予測される平均余命はHIV感染乳児で25.5年、HIV暴露乳児で62.6年、コストはHIV暴露乳児一人当たり690ドルであった。12週齢時のHIV感染乳児の生存率は、従来の測定法では76.1%でありPOC検査では83.5%であった。POC検査対従来の測定法の費用対効果の増分比率は、命を救うために年間680ドルであった。従来の測定法の特性が一定のままであった場合、POC検査の特異性および感度がそれぞれ92%および65%を超えている限り、この比率は費用対効果の閾値を下回ったままであった。

従来の測定法と比較して、ジンバブウェにおける乳児早期HIV診断のためのPOC検査は、生存率を改善させ、平均余命を伸ばし、またHIV暴露乳児にとって費用対効果の高いものとなるであろう。

原題:Clinical Effect and Cost-Effectiveness of Incorporation of Point-of-care Assays into Early Infant HIV Diagnosis Programmes in Zimbabwe: A Modelling Study
出典 :THE LANCET HIV
日付:2019年2月5日
URL: https://www.thelancet.com/journals/lanhiv/article/PIIS2352-3018(18)30328-X/fulltext
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

  • ライブドアブログ