第九回アジア太平洋地域国際エイズ会議 The 9th International Congress on AIDS in Asia Pacificに先立ち、ユースによる事前会議 Youth forum が8月7日・8日と2日間にわたりインドネシア・バリのインナー・グランド・ホテル・バリ Inna Grand Hotel Baliにて行われた。地元の若者を中心とした実行委員、バリ・ユース・フォース Bali Youth Force(以下BYF)が主催し、アジア・太平洋地域から50カ国130人の若者が集まり、活発な意見交換が行われた。
この事前会議の目的は、本会議で発表する「若者の提言」の作成であり、BYFのメンバーを中心とする各国の若者は、開催の二ヶ月以上前からオンライン上で意見交換し、作成に奮闘してきた。

 会議内容は一日目に、エイズに関する基礎知識から「包括的な性に関する教育」「スティグマと差別」「文化と信仰」「若者の社会参加」といった異なる議題に関する討論の他、参加者同士の交流を目的とした野外ゲームが行われた。2日目は、各国の若者による自国での経験発表に始まり、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の事務局からマイケル・オコナー氏Micheal Oconnor、同理事会のコミュニティ代表団連携担当者のレイチェル・オン氏Rachel Ongによる活動紹介、実行委員による政策提言についてのワークショップ、最後には「若者の提言」作成への最終協議が行われた。
 「若者の提言」の骨子は以下の通り。

1.若者の意志決定プロセスへの参画
2.若者主導による活動および若者のための活動への継続的な資金面強化
3.エイズ対策における「人権」に関する活動の主流化
4.若者の性と生殖に関する権利の保障
5.若者への差別と偏見の払しょく

 事前会議で協議されたこの「若者の提言」は、13日の本会議の閉会式で地元インドネシアの赤十字で活動するBYF実行委員長のレイチェル・アリニー Rachel Arinii氏(21歳)によって国際機関や各国政府に向けて読み上げられ、対応改善への要求が示された。

「(会議を通して)若者の声が届けられたことには達成感を感じる。今後も政治的な公約や若者への正しい評価を得られるように、次のステップを模索していきたい。」
とレイチェル・アリニー氏は意気込む。

以下特に国内の若者に求められること、必要なこととして感じたことを述べる。

(1)政策提言:日本国内の若者の活動との差

「若者の提言」作成に向けた取り組みのように、政策への提言という「政治的な動き」を事前会議を行うことで毎回具体的に作り出せていることは、若者の活動として評価に値することではないだろうか。それも、一国だけではなく実行委員を構成するメンバーの出身国はインドネシア、ネパール、インド、中国、ソロモン諸島、スリランカ、フィリピンなど多岐にわたる。文面において科学的な根拠が乏しい面が多少あるにせよ、経済、宗教、文化など様々な状況の差を乗り越えて一つの「若者の提言」を形にし、それを国際機関や政府に提言できていることは大きな成果だと感じる。

日本の若者の活動と比較した際、特にこの成果は際立つ。日本の若者の活動は、同世代の若者にエイズへの関心を持ってもらうためのイベントや街頭キャンペーンなどがほとんどで、政策提言という「若者の声を届ける」までには至っていないのが現状だ。とはいえ、行政・民間企業・有名人などと連携しあいながら、若者にとって魅力的な「エデュテイメント(Education+Entertainment )」を通し、比較的大きな規模で同世代にエイズへの意識喚起を促す日本の若者の活動は、もっと他国の若者に伝えていくべきことである。いずれにせよ、この会議に見られる若者の政策提言への取り組みから日本で活動する若者が得られるヒントは大きいと感じる。

(2)「ユース以外の分野」への関心は?

「ユース以外の分野」に関しても、問題意識を広げていくことが若者にも必要だと改めて感じた。その意味で事前会議に参加していた若者が、本会議での「ユース以外を取り扱ったセッション(移民労働者やセックスワーカー、薬物使用など)」へあまり参加していなかったことは少し残念だった。「ユース以外の問題」に対しても興味・関心を持ち、学ぶ姿勢を持つことで、当事者である「ユース」という立場を客観的に捉えられることもまた事実だ。

例えば、日本国内でも芸能人による薬物使用が報道されていたが、本会議でも主要なテーマの一つとして、「薬物使用とエイズ」が上げられていた。アジア・太平洋地域の若者にとっても、注射器使用も含む薬物使用は深刻な問題であり、若者自身が関心を持つと同時に薬物に関連する活動にも関わっていく必要がある。これは国内の若者の活動においても同様である。

アジア・太平洋地域と言っても、置かれている宗教・経済・文化状況は様々であり、特に南アジア、東アジア、太平洋の国々の三者の若者の間では問題意識もそれぞれ少しずつ異なるということを肌で感じた。国際会議は「同じ志を持った仲間」として、異なる国の若者と出会い、よき部分は吸収し、切磋琢磨するきっかけを得られる場である。そのきっかけをもっと多くの国内の若者が獲得する環境が今後望まれる。