【2012年1月17日(ブルームバーグ)】欧州債務危機は、世界経済に深刻な打撃を与えただけでなく、今や多くの人命が危機にさらされようとしている。

「国境なき医師団」 Doctors Without Borders によれば、各国政府からの拠出金不足により、抗レトロウイルス薬 ARV が不足し、コンゴ民主共和国では、HIV陽性者2万8千人が今後治療を開始する予定であったが、治療開始ができなくなる可能性がある。これらの人々の中から、発症して死亡する人も出るのではないかと、コンゴ民主共和国で「国境なき医師団」のHIV/AIDS診療所を営むHIVアナリストのティエリー・デティアー氏 Thierry Dethier は述べる。

米国ワシントン州のシアトルにあるワシントン大学の研究機関、保健指標・評価研究所 the Institute for Health Metrics and Evaluation の報告書によると、米国を始め、先進各国の政府は、自国の財政赤字削減のため、世界の最貧国での保健サービス強化に取り組む世界保健機関WHOや疾病対策に取り組む基金への支援を削減したり、補助金の増額を抑制している。

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金) The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malariaは、世界の三大感染症対策への支援として、2002年の発足から総額220億米ドルの拠出を承認している。しかし、同基金は、各国政府からの拠出金削減により、2014年まで新規案件募集を中止すると発表した。

WHOのアンドリュー・カッセルス氏 Andrew Cassels は、「今後も経費は増える一方で、拠出金収入の増加は見込めない。組織のあり方を検討する時期にきている。」と述べた。

WHOでは、194の加盟国からの分担金による通常予算と各国政府や企業、財団からの任意による自発的寄付 voluntary contributions の2つの財源がある。通常予算については自由に使うことができるが、自発的寄付は主に疾病対策に使われる。

財源全体に占める自発的寄付の割合は増え続けており、2001年には58%であったものが、現在では75%にまで達している。

このような資金調達の不均衡により、拠出金が十分に支払われている案件もあれば、不十分な案件もあり、世界の保健問題対策における資金提供に格差を生んでいる。

WHOの2012年及び2013年度の予算については、非感染性疾患であるガン、糖尿病、心臓病は死因の65%を占めているにも関わらず予算全体の6%しか引き当てられない。一方、死因の26%を占める感染性疾患であるAIDSやマラリア対策に対しては予算の46%が引き当てられる。

英国国際開発省 Department for International Development は、資金援助先の4段階での格付けを行い、貧困国に暮らす子どもたちへ予防接種に資金を拠出しているGAVIアライアンス GAVI Alliance に対し、具体的な成果を挙げていることを理由に、4段階で最も高い「最高」の評価を付けた。一方、WHOに対しては下から2番目の「適切」と評価した。

GNVIアライアンスでは、目標資金調達額37億米ドルに対し、43億米ドルの拠出金が集まった。世界基金では、患者の治療を現在と同じように維持していくための資金130億米ドルが不足しており、組織間での資金調達にも不均衡が生じている。

コンゴ民主共和国におけるHIV/AIDS対策は、主に世界基金からの援助に頼っており、新規案件募集中止や資金援助の減退はそのまま多くの人命にとって脅威となる。国境なき医師団では、拠出金の先細りによる影響について懸念感を強めている。

原題:Financial Crisis May Kill in Congo as Global Health Aid Stalls
出典:Bloomberg Businessweek
日付:2012/1/18
URL:http://www.businessweek.com/news/2012-01-18/financial-crisis-may-kill-in-congo-as-global-health-aid-stalls.html