【2013年7月15日ジュネーブ(スイス)発】マレーシアで開催される次回の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉において、国境なき医師団 MSF は交渉国に対して多くの人々に対する廉価な医薬品アクセスの制限に関連する条項案を拒否するよう求める。以下は、日本を含むTPP参加国すべての政府代表や保健大臣、TPP交渉責任者に対して送られた書簡の概略である。



MSFは、武力紛争や疾病流行などに苦しむ約 70 ヵ国の人々を対象に医療支援を実施しているが、その使命を遂行するには廉価な医薬品の調達が不可欠である。MSFは、今回のTPP条項案に対して強い懸念を持っており、有害な条項案が削除されなければ、TPP は医薬品アクセスにとって史上最悪の通商協定となりうる。

ジェネリック薬による競争は、薬価引き下げならびに治療アクセス改善のための最善の方法である。MSFは、抗レトロウイルス薬治療の提供を開始した 2000 年当時、治療費は患者1人あたり年間10,000ドルを超えていた。MSFは現在、主にアジアで製造されたジェネリック薬を使用することにより、21 ヵ国の285,000 人を治療している。ジェネリック薬の使用により、治療費は 99%近く低下し、患者1人あたり年間 140 ドル以下となった。各国の保健省や、MSFのような医療人道援助団体、資金援助国が様々な状況で日常的に質の高い廉価なジェネリック薬を活用している。

TPP交渉は、一般からの有意義な意見をとりあげることなく、密室で進められているが、漏洩した文書によると、米国により提案された強力な知的財産条項は、世界貿易機関 WTO で採択されている「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」TRIPS よりもはるかに厳格なものであり、公衆衛生のセーフガードと国際法で明文化されている融通性を後退させ、ジェネリック薬による競争に制限がかかり、薬価が高止まりする広範な独占権の保護を正当化している。

MSFは、これによって将来アジア太平洋地域のMSFの患者を含む多くの人々が安価な医薬品を入手することが脅かされることと考えている。また、「21 世紀型の通商協定」と言われる TPP が世界標準となり、医薬品アクセスに悪影響がでることにも懸念を抱いている。

TPP交渉参加国は、医薬品へのアクセスを損なう恐れのある条項案を拒否し、関連する国際保健の指針に沿った最終案を作成すべきである。その指針としては、TRIPS 協定と公衆衛生に関する2001年WTOドーハ宣言 the 2001 WTO Doha Declaration on TRIPS and Public Healthや公衆衛生・革新・知的財産に関する2008年WHO世界戦略と活動計画 the 2008 WHO Global Strategy and Plan of Action on Public Health, Innovation, and Intellectual Property が含まれる。

今日の医療研究開発システム(R&D)の現状は、顧みられない人々のための革新をもたらすことなく、結果として世界中の患者に高価すぎる医薬品を提供しており、厳格な知的財産権が、この破たんしたシステムを改革するのではなく、強化している。医薬品が研究・開発される方法や、知的財産権がどの様に国際公共財として医薬品に適用されるのか、そのパラダイム・シフトが大いに求められている。各国政府は、医薬品の開発と価格を切り離した国際規範を導入すべきである。MSFは、これが医療革新とアクセス普及を促すことによって医薬品アクセスの格差を縮めることが必要不可欠であると考えている。

原題:MSF Open Letter to TPP Countries: Don't trade away health
出典:MSF Access Campaign
日付:2013/07/15
URL:http://www.msfaccess.org/content/msf-open-letter-tpp-countries-dont-trade-away-health