【2014年7月24日 メルボルン(オーストラリア)発】
オーストラリアのHIV/AIDS臨床医学の権威であるニューサウスウェールズ大学のデイヴィッド・クーパー教授Professor David Cooper は、同国メルボルンで開催されている第20回国際エイズ会議で、抗レトロウイルス治療(ART)について講演し、推奨されている第一及び第二選択薬の投与計画、ARTによる感染予防の効果、ARTを開始するタイミングなどについて講義した。

クーパー教授は、早期段階からARTの実施を推奨する理由は、ウイルス増殖に伴う免疫低下を防ぐことができ、シンプルな投薬計画であるにも関わらず高い効果が得られ、結核などの重い日和見感染を押さえる効果や、公衆衛生的にHIVの感染予防効果があることだ、と説明した。

しかしながら、現在のARTのガイドラインはデータによる裏付けが乏しい。そこで、科学的な根拠に基づいたガイドラインの作成を目指し、STARTと呼ばれる臨床試験が行われた。この試験は、HIVの診断後すぐにARTを開始する早期ART群と、CD4値が350Cells/?未満になってからARTを開始した群のを比較する。クーパー教授はこれにより早期ARTの効果が証明されれば、患者全員が早い段階でARTを受けるようガイドラインを書き換え、逆にCD4値が低下してからARTを開始した方が効果が高いと分かれば、ガイドラインは現状を維持する形になるとは言う。二つの群差が見られなかった場合は、ARTの導入によってウイルス量が下がり、HIV感染を抑制することから、感染予防促進が、早期ART導入の大きな理由となる。

各国のARTの現状を見てみると、ARTを開始する時期はまだまだ遅い。特にサハラ以南のアフリカ各国においては、CD4値が200 Cells/?以下に落ちてからARTを開始する場合が多い。

クーパー教授は、HIV診断テストを更に普及させ、地方でも実施し、患者を治療へと繋げ、医療施設までの交通手段の整備と金銭的なサポートを呼びかけた。また、ARTを在宅で実施可能にすること、病状の経過観察が出来なくなった患者を追跡する医療情報システムを開発することなども重要だと言う。

そして講演の最後に、クーパー教授は資金不足についての懸念を示した。「現状の資金では、世界保健機関 World Health Organization (WHO)や国連合同エイズ計画Joint United Nations Programme on HIV and AIDS(UNAIDS)が提案する目標にたどり着くことは難しい。ワクチンや完全に治す方法がまだ開発されていない今、ARTだけが唯一の治療対策であり、多くの患者にARTを提供できなければ、感染者を減らすことはできない」と訴えた。

●原題:AIDS 2014: Antiretroviral treatment update kicks off final plenary session
●出典:Center for Global Health Policy
●日付:2014/07/24
●URL:http://sciencespeaksblog.org/2014/07/24/aids-2014-antiretroviral-treatment-update-kicks-off-final-plenary-session/