【2016年3月15日 バンコク(タイ)発】
アジア地域では、医療従事者がHIV陽性者に対して医療サービスを拒否し病院から排除する行為や、医療サービスの差別化といった良くない現象が起きている。このことが、保健に取り組む、コミュニティに基礎を置く団体Community-Based health Organisation(CBO)に対してマネジメントのトレーニングを行っている団体「アジア・カタリスト」Asia Catalystの調査から明らかになった。
ミャンマーおよびカンボジアでは、HIV陽性の患者が、一般の病室や待合室と異なった隔離部屋に入れられてしまう現象が生じている。医師が医療スタッフに病院のベッドを提供させないよう指示した病院もある。「医療現場でも恐怖感や誤解があることがわかるでしょう」アジア・カタリストのバンコクを拠点としている、キャパシティビルディングおよびコミュニティイニシアチブのディレクターである、ガレス・デュラン氏 Gareth Durrantは言う。
アジア太平洋地域には480万人のHIV陽性者がいるが、大多数が12か国、すなわち中国、カンボジア、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、タイ、そしてベトナムに居住している。
アジア・カタリストは、カンボジア、中国、ミャンマー、ベトナムにある8つのCBOのスタッフを対象に、2015年5月から2ヶ月間トレーニングを実施した。スタッフは202人のHIV陽性者にインタビューをし、このうち149人が女性、15人がトランスジェンダー、そして38人が男性であった。対象者のうち51人が、HIVであることがわかると治療を拒否されると証言する。陣痛に苦しんでいるにもかかわらず診てもらえず、待合室において自力で出産したケースや、強制的に病院を追い出される、生まれてくる子どもへの感染を防ぐ方法を教えられない、妊娠中あるいは知らないうちに不妊手術をされる、などのケースが報告されている。
「差別が起こっていることに驚く人がいるとは思いません」デュラン氏は、トムソン・ロイター財団the Thomson Reuters Foundationに語っている。「おもしろいことに、草の根組織に対して、自分たちのコミュニティに戻り何が起こっているのか伝え、報告できるようなツールを与えると、皆コミュニティの問題に気づき、行政に話すのです」
ミャンマーのCBOは、アジア・カタリストの報告書をもとに保健局や警察と話し合った結果、これら保健局や警察は、危機的状況にある人々に対して、より適切な配慮に基づいた対応をしていくべきだという認識に至った、とデュラン氏はいう。「長い間、コミュニティにおいて、悪い評判のあった病院などはたくさんあるが、こうした問題が人権侵害の問題だとは認識されていなかった」
アジア・カタリストは、「CBOスタッフがトレーニングを受け、誰もが健康に関する基本的な権利を持っているということを理解すれば、単に医師が悪い、といった話ではなく、人権侵害の問題なのだ、とわかるのだ」と述べている。
●原題:People with HIV in Asia Ejected from Hospitals, Women Sterilised, Study Shows
●出典:Malay Mail Online
●日付:2016/3/15
●URL:http://www.themalaymailonline.com/features/article/people-with-hiv-in-asia-ejected-from-hospitals-women-sterilised-study