【2017年10月3日】中米・パナマのエイズに取り組んでいる市民団体 Civil Society Organizations (CSO)は、途上国の三大感染症対策に資金を供給する国際機関であるグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)が同国のプロジェクトへの資金拠出をやめたら財政面で生き残ることができず、国家エイズプログラムへの全面的な協力は難しくなることが資金移行準備状況調査報告書 Transition Readiness Assessment Report (TRA) で明らかになった。しかしながら、報告書ではCSOの強化を求めている。

結核については、パナマが中流行国でかつ上位の中所得国であることから現在受けている資金供与で最後となるが、エイズは現在もGF資金供与国に該当する。ところが、世界銀行はパナマが次期資金供与期間前に高所得国になると予測しているためエイズも資金供与の資格を満たさなくなることから、2017-2019の申請では結核とエイズを一緒にして自国財源への移行のための資金を申請するとしている。

グローバルファンドは、一人当たり国民所得と疾病負荷を基準に資金拠出対象国を決定しており、経済成長により対象国でなくなる国については、エイズ・結核・マラリア対策の資金がグローバルファンドから自国財源に移行する準備ができているかをチェックする資金移行準備状況調査を行ったうえで、移行準備のための資金を提供することとなっている。この資金は、現在グローバルファンドが提供している活動やサービスの現状を維持するためではなく、資金移行において必要な資金として活用することとなっている。パナマでは、GF事務局が資金移行準備状況調査報告書の作成のすべてに関与した。

報告書では、資金移行を進めるにあたっての問題点を指摘しているが、その1つにCSOの存続がある。パナマではエイズ分野で活動するCSOが、重点的なエイズ対策が必要なすべての「カギとなる人口集団」(MSM、セックスワーカー、薬物使用者など)に対する活動を展開しているが、保健省から資金提供を受けているCSOは1つしかなく、他はグローバルファンドの資金で活動している。パナマ政府はCSOをHIV予防サービス提供の拠点的存在と位置付けているが、グローバルファンドの資金の提供を受けているCSOの活動が資金移行により継続できない懸念がある。報告書でもサービス拠点形成は必要であると指摘しているが、その拠点を維持していくためにはとくにCSOの財政的持続性の確保が早急に求められている。しかし、CSOが独力でこれを達成するのは困難であることから、資金面においては米国大統領エイズ救済緊急計画 PEPFAR 等の他の資金提供団体との連携や、同様な活動の成功事例としてモンテネグロの例を参照すること、またGFの別のプログラムである「コミュニティ・権利・ジェンダーに関する特別イニシアティブ」の資金を活用することを提言している。

一方、結核に関しては、エイズとは違いCSOの関与は非常に限られていることから報告書においてもGF撤退も問題がなくサービスが提供されるとしているが、今後、一部のサービスが維持できなくなる可能性も考慮してエイズ関連団体との連携を勧めている。

パナマはエイズ・結核に対する国家予算がある程度保証されている。しかし、GF撤退後に国家予算内で現有プログラムの埋め合わせが可能であっても、2030年までのエイズ流行制圧に求められている遠隔地域の住民等に対するスティグマ・差別対策等、移行資金に含まれない分野における活動の拡大が必要となっている。今後は、報告書に記載された提言を参照に自国予算で活動が可能な計画を作成することが求められる。

中南米諸国では、パナマ以外にもGF撤退に向けた取り組みを実施している国があり、パナマ以外にもTRA報告書が完成した国や、作成中の国が複数存在している。