【2017年9月20日 ジョハネスバーグ(南アフリカ共和国)発】経口でのエイズ予防薬の暴露前予防投薬 PrEP(pre-exposure prophylaxis)は、HIVに感染する可能性の高い人々にとって有望かつ新たな予防策である。しかし、これについては、特にコンドームの不使用といった、逆効果を引き起こす行動を招き、PrEPの予防的効果にが損なわれてしまうのではないか、という懸念が生じている。
PrEPは南アフリカ共和国で2015年に承認され、2016年には南アフリカ共和国・セックスワーカーHIVプラン(2016−2019)に組み込まれている。以上のような背景から、南アフリカ共和国の最大都市ジョハネスバーグにおいて、女性のセックスワーカーFSW(Female Sex Workers)を対象に、PrEPを開始したFSWがコンドーム使用を減らしてしまうことによって、HIV感染のリスク低減に制限を与えてしまうことにつながるのか、ケーススタディを実施した。このケーススタディでは、(1)HIV感染の可能性、(2)PrEP導入前後におけるコンドーム使用状況、さらに(3)PrEPの効果、以上の関係性について数理モデルの一つである静的モデルを作成した。

PrEPを開始したFSWを対象に、コンドーム使用が減ってもHIV感染リスクはどれだけ変化しないか(感染リスクの上昇を抑えられるか)、それはPrEP開始する以前のコンドーム使用がどの程度確実に守れているかでどう変化するのかという、もともとのコンドーム使用状況の一貫性(%)とPrEP導入後のコンドーム使用状況(%)が及ぼすHIV感染リスクの変化について、相手が配偶者やパートナーの場合と一時的な客との場合の両方について検討した。このモデルには、コンドーム使用が減少することによってHIVに限らず性感染症STIs(Sexual transmitted infections)への暴露の上昇による影響が結果に反映されるかどうか評価できるよう、STIsの影響も組み込まれている。また、たいていパートナーとはコンドーム使用が少ないことから、相手を客だけに絞り、コンドーム使用状況がPrEP導入前後で変化しても、HIV感染リスクが50%あるいは90%抑えられるかどうか検討した(50%という数値は、PrEPの考えられうる効果レベルすべて55、75、95%、また導入前のコンドーム使用状況の一貫性30〜90%、以上2つの条件がいずれの場合でも起こりうるHIV感染リスク低減の最小値である)。このモデルはジョハネスバーグのヒルブロウ地区から得た。結果のロバストネス(今回のケーススタディの結果が安定的に他の対象者やケースに対しても適応できるかどうかといった安定性)評価として感度分析をおこなった。

調査の結果、もともとのコンドーム利用が低い(65%)FSWでも、コンドーム利用の減少でHIV感染の可能性は変化せずに維持されていた。PrEPの効果が75%で、もともと客との間でのコンドーム使用が70%程度あれば、コンドームを100%使わなくてもPrEPの効果は50%維持されることが示された。コンドーム使用が減少することでSTIsへの暴露が増加したとしても、PrEPを受けている場合はコンドーム使用減少には大きく影響しないことが示唆された。

PrEPは、コンドーム使用が減少してもHIV感染リスクを低減する効果がある可能性がある。コンドーム使用状況がよいFSWsにコンドーム使用を継続するよう意識づけをしていくことは重要である。一方、PrEPへのアドヒアランスは大きな課題である。

原題:When are Declines in Condom Use while Using PrEP a Concern? Modelling Insights from a Hillbrow, South Africa Case Study
出典:Journal of the International AIDS Society
日付:2017/9/20
URL: http://www.jiasociety.org/index.php/jias/article/view/21744
http://dx.doi.org/10.7448/IAS.20.1.21744