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南アフリカ共和国

(南アフリカ)性感染症の予防-南アフリカが勝利できない理由

【2019年2月13日南アフリカ共和国発】性感染症は重大な公衆衛生上の問題である。世界では毎日推定100万人以上が性感染症と診断されており、さらに検査技術や質の向上にも関わらず、途上国ではここ10年、感染率にほとんど変化がない。南アフリカ共和国では、年間7900万人のHIV、数千万件の淋病とクラミジア、および7万件の梅毒の新規感染などを抱え、とても大きな懸念となっている。この感染者の多さは、不十分な予防、クラミジアのように自覚症状のない感染症の未治療例などによる要因がある。高リスク患者へのスクリーニング検査の強化、サービスの利用推進、医療従事者への研修なども解決すべき課題だが、資金が不足している。

性感染症はその名が示すように、主に膣、肛門、口などによる性的接触により広がるが、母子感染(垂直感染)のように性的接触なしに感染する場合もある。性感染症は、性と生殖の健康に壊滅的な影響を与えると共に、数々の合併症を引き起こす。例えば未治療のクラミジアや淋病は、(慢性炎症を引き起こし)不妊などの長期合併症の原因となり、梅毒は未治療状態が続けば死ぬこともある。また、特にクラミジアにおいては、骨盤内炎症性疾患なども引き起こす。さらに、性感染症はHIV感染リスクを上げる。免疫応答によって感染部位(性器)に集まった活性化した免疫細胞にHIVは感染しやすく、さらに免疫細胞内で増殖する。

◆今までの性感染症予防
HIV以外の性感染症予防はHIV対策に比べて後回しになっていたが、HIV対策が、性的パートナー数の減少、コンドームの正しい継続的な利用、早期発見・治療、男性の医療的割礼(包皮切除術)などが集中的に実施されていたため、他の性感染症予防においても多少の効果はあった。一方、抗レトロウイルス薬 Anti-retroviral drug : ARV の普及と研究の進歩は、HIV陽性者たちに対して、「ウイルス量が検出限界以下になれば、パートナーに感染しない」という認識をもたらした。しかし、ARVは、HIV新規陽性者抑制のための対策であり、HIV陽性者自身が他の性感染症にもかかりやすいという状況は変わらない。ARVをHIV感染予防として服薬する暴露前予防内服 Pre-Exposure Prophylaxis :PrEP では、継続的に正しく服用することでHIV感染リスクを減少させることが明らかになっている。しかし、当然ながら、PrEPもARV同様に他の性感染症は防げない。PrEPでは、性感染症センターにおいて患者の性行為のリスク度合いを見極めて投与するかどうか決めることもある。その場合、該当する患者への性感染症予防に関する指導の内容や、性感染症予防を継続しながらHIV予防投与を推進していく方法などは、依然曖昧なままである。

◆性感染症予防の重要性を再確認
性感染症予防戦略は、HIV予防と治療の変遷、およびその進歩を考慮しなければならない。政策は、従来のHIV対策をどのように継続・強化していくか、あるいは人々に予防知識を効果的に伝える方法などの多くの問題を解決しなければならない。さらに政策決定者は短期〜長期的視野を持ちながら、様々な立場の関係者へ、性感染症予防に関連するサービスを伝える方法、また交際に関わるDVや性感染症リスクを抑える方法などを知っておく必要がある。南アフリカ共和国にとって、これらの課題を解決することは、効果的に性感染症に対応するために必要である。

●原題:Preventing Sexually Transmitted Infections: Why South Africa Isn’t Winning
●出典:Sunday Times (The Conversation)
●日付:February 13, 2019
●URL:https://www.timeslive.co.za/sunday-times/lifestyle/health-and-sex/2019-02-16-preventing-sexually-transmitted-infections-why-south-africa-isnt-winning/

(南アフリカ共和国)HIV・結核国家戦略計画2017-2022を読む

【2018年8月25日 南アフリカ共和国】南アフリカ共和国は、5年毎にHIVと結核対策の国家戦略計画を発表している。HIV陽性者は結核に感染するリスクが高く、また主な死因のひとつでもある。このようにHIVと結核は深く関係しているが、さらに梅毒やヘルペスなどの性感染症 Sexually Transmitted Infections:STIs もHIV感染リスクを高めることから国家戦略計画で対策が盛り込まれている。

「HIV/TB/STIs国家戦略計画2017-2022 South Africa’s National Strategic Plan for HIV, TB and STIs 2017-2022: NSP」では、HIV、結核、性感染症の罹患や死亡を減らすためには、多部門によるパートナーシップの戦略的枠組みが必要であると述べている。また、地域が主体となる分散型アプローチを進めることで、地域特有のニーズや状況に合わせて国家戦略を調整することができるという。

南アフリカ共和国では、15歳から49歳の成人の19%がHIV陽性者である。新たな感染者は母子感染予防の効果もあり2012年の36万人から2016年には27万人に減少したが、女児や若い女性はHIV感染による影響を受けている。

結核患者は世界で6番目に多く、2015年には45万人以上が新たに発症し、HIV陽性者の63%が結核と診断された。2012年以降、発症数は緩やかに減少しているが、多剤耐性結核の発症が2007年と比べ2012年には2倍になり大きな問題となっている。HIVと結核の新たな感染者は減少しているものの、そのペースは緩やかになってきている。

NSPは、HIV、TB、STIsの終焉、またこれらが2030年までに公衆衛生上の脅威でなくなることをミッションに掲げている。指針としては、以下の6項目が挙げられる。

1. 信頼できるエビデンスを根拠とする
2. 人権の保護と啓発
3. 多部門によるアプローチ
4. 人間中心のアプローチ
5. 包括的、参加型の運動
6. 「誰一人取り残さない」

そして、ゴールとして、以下の8つを掲げている。そのうちのゴール1は以下のとおりである。

ゴール1:新たなHIV、結核、性感染症への感染を減少させるため予防対策を増強する
予防対策は奏功しているが、さらに強力に展開し、新たなHIV感染を2016年の27万人から2022年に10万人以下(60%以上の削減)にすることを目標とする。母子感染の減少と女児や若い女性の新たな感染を1週間あたり2000件から800件以下に減少することを目標とする。また、結核の発症を少なくとも30%(45万人から31万5千人)削減し、淋病や梅毒の新たな感染を減らすことも含まれる。
<目標1.1>
様々な予防介入により新たなHIV感染を2020年までに10万人以下に削減する
<行動指針>
‐ 1.1.1
学校、医療、職場、地域社会における情報、教育、コミュニケーションプログラムの再構築
‐ 1.1.2
状況や集団に応じた対象者への医療的な予防サービスの実施
‐ 1.1.3
年齢に応じた性とリプロダクティブヘルス・サービスの提供と、包括的な性教育の実施
‐ 1.1.4
リスクの高い集団への暴露前予防投薬の提供
‐ 1.1.5
周産期のHIVや梅毒の母子感染予防のためのサービス提供
<目標1.2>
結核を2015年の10万人あたり834人から2022年に584人以下に、少なくとも30%削減する
<行動指針>
‐ 1.2.1
予防治療投薬の実施を増強
‐ 1.2.2
結核感染コントロールの促進
<目標1.3>
梅毒トレポネーマ、淋病、クラミジア感染を大幅に削減し、実質的に先天性の梅毒をなくし、ヒト・パピローマウイルスの予防接種の継続・維持
<行動指針>
‐ 1.3.1
リスクの高い人々へ質の高い保健情報とタイムリーなヘルスサービスを提供することで性感染症予防の規模を拡大
‐ 1.3.2
小学4年生に対するヒト・パピローマウイルスの予防接種の規模拡大と継続・維持
‐ 1.3.3
性感染症のパートナーへの効果的な告知方法の検討と実施

原題:Read South Africa’s National HIV and TB Plan 2017-2022
出典:BHEKISISA
日付:2018/08/25
URL:https://bhekisisa.org/article/2018-08-25-read-south-africas-national-hiv-and-tb-plan-2017-2022

第22回国際エイズ会議(AIDS2018)に向けた南アフリカ共和国のリーダーシップ

【2018年7月24日 プレトリア(南アフリカ共和国)発】第22回国際エイズ会議(AIDS2018)(7月23日から27日)は、「壁を壊し、橋を造る」Breaking Barriers Building Bridgesをテーマに、オランダのアムステルダムで開催された。AIDS2018は、世界最大のHIV研究のプロフェッショナル集団である国際エイズ学会(International AIDS Society:IAS)が主催し18,000人が参加した。この会議は、HIVとその他の保健分野において問題となっている主要事項を考える機会であるとともに、HIVに関する最新の研究も参加者に提供される。

南アフリカ共和国のデービッド・マブーザ副大統領 David Mabuza は、同時期に同国で開催される第10回BRICS(主要新興国:ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)サミットにシリル・ラマポーザ大統領 Cyril Ramaphosa とともに参加するため、AIDS2018への参加が難しいことから、南アフリカ政府代表団のリーダーとしてアーロン・モツォアレディ保健相 Aaron Motsoaledi を任命した。また、マブーザ副大統領は、エイズ会議の関係者や参加する大臣らに加え、活動家や研究者など500人超で構成される南アフリカ代表団を同会議に派遣した。

代表団は、ブルース・コーラーニー在オランダ南アフリカ共和国大使 Bruce Koloane の歓迎を受けた。大使は、南アフリカが強い印象を残すよう代表団のメンバーを鼓舞した。代表団は、AIDS2018にてアフリカの鍵となる人口やHIV防止に関する話し合いに参加した。南アフリカの研究者たちは、エイズ終焉に向けた同国の活動を新たな発表を通じて発信した。

AIDS2018は、世界の保健に関する国際会議の中で最も規模の大きい会議であり、エイズが流行した1985年に初回が開催されて以来、科学や支援活動、人権の分野において独自のフォーラムを提供し続けてきた。その各会議は、HIVの蔓延に対して効果的に対処するための政策やプログラムを強化する機会となっている。

このAIDS2018では、とりわけ、今年は南アフリカ共和国で人種隔離政策を終わらせることに多大な貢献をしたアルベルティーナ・シスルとネルソン・マンデラの生誕100周年にあたる。24日に開かれる南アフリカの発表では、彼らのHIVと結核への大いなる貢献を伝えると共に称賛を示す。

原題:Deputy President David Mabuza Delegates Minister Aaron Motsoaledi to Lead Team SA to 22nd International Aids Conference
出典:South African Government
日付:2018/07/28
URL:https://www.gov.za/speeches/deputy-president-delegates-minister-health-lead-south-african-delegation-international-aids

(南アフリカ)髭剃り機の刃によるHIV感染のリスク

【2018年5月3日】南アフリカの研究者らは、血液などで汚染された髭剃り機の刃による肝炎、およびHIV感染のリスクを明らかにした。髭剃り機の刃部分の血液、および血液由来ウイルスの汚染によりB型肝炎がヒトからヒトへ感染する危険性を示した。ケープタウン大学のザンダイル・スペンゲーン博士 Zandile Spenganeは、小規模な研究ではHIVは検出されなかったが感染のリスクを示すべきだと述べた。

本研究では、航空地図により南アフリカ共和国の3群区から50店舗の理髪店を抽出した。研究対象の理髪店にて、理髪師による使用済み刃の洗浄方法を記録した。また、理髪店から使用済みの刃をサンプルとして回収、分析した。

本研究の結果、顧客の78%が清潔な刃によるサービスを求めていることがわかった。また、回収されたサンプル分析の結果、HBB(血液タンパク感染)陽性が42%、B型肝炎陽性が8%、HIV陽性はみられなかった。

ザンダイル・スペンゲーン博士 Zandile Spenganeは、「顧客がHIV 感染者なのか、B型肝炎に罹患しているかどうかはわからない。大量のサンプルを用いた研究では、より良い質の高い結果が得られる可能性がある」と述べた。

原題:Africa:That Clean Shave Haircut Could Get You Infected With HIV-Research
出典:allAfrica
日付:2018/5/3
URL: http://allafrica.com/stories/201805030115.html

2100万人がエイズ治療にアクセス:UNAIDS最新報告書

【2017年11月20日 ケープタウン(南アフリカ共和国)/ジュネーブ(スイス)発】12月1日の世界エイズデーに先駆けて、国連合同エイズ計画 UNAIDSは11月20日、最新報告書を公表した。2000年にたった68万5千人だった治療を受けている陽性者は、2017年には約2090万人となった。HIV治療の劇的な拡大は、強いリーダーシップと経済的貢献に支えられた、陽性者の決意と勇気、また権利の主張なしにはなし得なかった。続きを読む

南アフリカ共和国:「エイズの終息」をめざす前に立ちはだかる4つの障壁

【2017年11月27日 南アフリカ共和国】
南アフリカ共和国は世界で最もHIV陽性者の多い国だ。新しくHIV陽性となる人が世界の3分の1を占める。2016年にはHIV陽性者が710万人と推定され、同年1000万近くの人がHIV検査を受けていた。
続きを読む

暴露前予防(PrEP)が招くコンドーム使用減少はHIV感染リスクを上げるのか?南アフリカ共和国、ヒルブロウでの調査

【2017年9月20日 ジョハネスバーグ(南アフリカ共和国)発】経口でのエイズ予防薬の暴露前予防投薬 PrEP(pre-exposure prophylaxis)は、HIVに感染する可能性の高い人々にとって有望かつ新たな予防策である。しかし、これについては、特にコンドームの不使用といった、逆効果を引き起こす行動を招き、PrEPの予防的効果にが損なわれてしまうのではないか、という懸念が生じている。続きを読む

(南アフリカ共和国)副大統領、東ケープにHIV・エイズセンターを開設

【2017年9月18日 南アフリカ共和国発】
シリル・ラマポーザ南アフリカ共和国副大統領Cyril Ramaphosa は、HIVに感染した子どもを世話する人々に敬意を表した。副大統領は、「このコミュニティの中で、HIVに感染した子どもが疎外されることなく居場所があると確信できるようにしている優れた人々だ」と話した。彼は、東ケープ州のンデヴァナにあるヴヨ・ムブリ・エンピリスウェニHIV・エイズ孤児センターで述べた。続きを読む

(南アフリカ共和国)生まれつきHIVに感染した子どもでも症状を緩和できる

【2017年7月25日 パリ(フランス)発】
HIVと共に生まれた南アフリカ共和国の9歳の子どもが、8.5年もの間、薬なしでウイルスを制御できていると、研究者が国際エイズ学会において報告した。これはアフリカでは初めての事例である。この子どもは月齢1ヶ月のときに陽性と診断され抗HIV治療を開始し、今ではウイルスを征圧した状態にある。続きを読む

(南アフリカ共和国)もうHIV検査を受けるのは怖くない

【2017年6月20日、ケープタウン発】
 南アフリカ共和国の東部に位置し、国内第2位の人口を有する都市ダーバン出身のサムケリシウェ・チリザさんMs.Samkelisiwe Chilizaは、暴露前予防 PrEPについての話を聞いたとき、迷わず南アフリカ共和国エイズプログラム・調査センターthe Centre for Aids Programme and Research in South Africa (Caprisa) を通じてこの調査に参加した。

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