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米国・カナダ

(米国)暴露前予防内服(PrEP)に関する医療従事者の意識:医療従事者は、HIV感染の可能性がより高い対象者に対してPrEPの処方をためらう傾向がある

【2018年6月22日】 暴露前予防内服Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP) はここ数年、有効なHIV感染予防方法の一つとして実用化されてきた。また、これについての医療従事者の理解も深まりつつあるが、一方で、医療従事者が対象者にこれを処方する率はとても低い。PrEP はコンドームと共に使用することでHIV予防方法としてとても効果的であると推奨されているが、医療従事者は、PrEPを処方することで対象者がHIV感染のリスクを顧みなくなり、HIV感染の可能性のある性行動を積極的に行うのではないかと懸念する傾向があり、その結果として、PrEPの処方に消極的となっている。そのため、多くの人々は依然としてHIV感染予防にコンドームのみを使用している。

こうした傾向が実際にどの程度存在するのかについて、米国のジョージ・ワシントン大学などの調査グループにより、医療従事者の意識調査が行われた。調査グループは、医療従事者がPrEP へのアクセスについてどのような懸念を持っているかを理解するため、対象者のコンドーム使用の有無、パートナーとの性行為の経験に関する情報をもとに、PrEP を処方する医学生の意識がどのように変化するのかを調査した。さらに、医療従事者が、どのような理由であれば、コンドームを使用できない対象者に対するPrEP 服用を許容できるかどうかを探った。

(調査の方法)
調査グループは、2015年、米国北東部の854人の医学生を対象にオンラインの調査を実施した。このうち、111人の参加者が6人の男性対象者に対してPrEP 処方を行うことに前向きであった。6人の男性対象者の情報はそれぞれ、コンドームの使用に関する対象者の考え方(常に使用、常に使用しない、PrEP 服用の場合は使用しない)について、また、パートナーとの性行為の経験(治療を開始していない1人のセックス・パートナーがいる、もしくは、HIVかどうか不明の複数のセックス・パートナーがいる)について医学生に伝えられている。また、コンドームの使用を行わないことについて、「快感を得るため」、「性行為を円滑にするため」、「親密さを増すため」、「妊娠するため」の4つの理由の場合はPrEPの処方を許容できると話した。

(研究の結果)
この研究成果から分かったのは、対象者がおこないうる性行動のリスクが高いほど、医療従事者が対象者に対してPrEPを処方するのをためらう傾向が強くなる、という矛盾である。対象者がコンドームを使用し、今後もコンドームの使用を続けようとしている場合、より多くの医学生がPrEPの処方をためらわない傾向がある。対象者のセックス・パートナーが一人だけの場合、医学生の93%がPrEP処方を許容する。一方、対象者が複数のパートナーを持っている場合、PrEP処方を許容する医学生は全体の86%に下がる。対象者がコンドームをこれまでも今後も使用しないという場合、もしくは以前はコンドームを使用していたが、今後は使用しないと考えている場合、こうした対象者にPrEPを処方しようという医学生はほとんどいなかった。

また、対象者が一貫してコンドームを使用しているか、使用していないかについて医学生に伝えたとき、セックス・パートナーが1名の対象者よりも、複数のセックス・パートナーがいる対象者に対してPrEPを処方すべきと考える医学生はほとんどいなかった。また、今後コンドームを使用しないと言う対象者に対して、セックス・パートナーが1名の対象者よりも、複数のパートナーを持つ対象者にPrEPを処方すべきと考える医学生は少なかった。これは重要な発見である。一方、医学生の69%が、「妊娠するためにコンドーム使用を中止する」という対象者にPrEPを処方すべきと考えており、ついで、親密さを増すため(23%)、快感を得るため(14%)、そして性行為を円滑にするため(13%)と続いた。

(結論)
この研究結果から、より多くの医学生が、リスクの高い性行動を行う可能性のある対象者に対してPrEPを処方しないという医療判断を行う傾向があることが確認された。これは、本来のPrEPの趣旨に照らして矛盾している。また、PrEPに対する誤解や、医療従事者個人の価値観が、対象者に対して最適なHIV予防サービスの提供を阻害しているということが、この調査で明らかになった。

原題:Prevention paradox: Medical students are less inclined to prescribe HIV pre‐exposure prophylaxis for patients in highest need
出典:Journal of The International AIDS Society
日付:2018/06/22
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jia2.25147

国連「90-90-90目標」達成に向けて−カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の課題

【2017年11月13日】抗レトロウイルス治療Antiretroviral therapy(ART)を拡大させることは、HIV/AIDSの世界的な感染拡大をコントロールするための世界的な課題の中心にある。AIDSの流行拡大の終息に向けて、この試みを加速させるために、国連合同エイズ計画the Joint United Nations Programme on HIV/AIDSは「90−90−90目標」および「95−95−95目標」を発表し、これらは最近国連によって承認されたところである。この「90−90−90目標」は、2020年までに世界のHIV陽性者の90%が検査を受けて自分が陽性だと知り、そのうち90%がARTの治療を受け、さらにそのうちの90%の体内ウイルス量が検出限界以下になっている状態である。「95−95−95目標」は、2030年までに上記の割合がそれぞれ95%に上昇している状態である。

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1996年から2015年までのカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のエイズ政策の変遷をみる

【2017年9月19日】
カナダ西部のブリティッシュ・コロンビア(BC)州は、1996年に高活性抗レトロウイルス治療(Highly Active Antiretroviral Therapy:HAART)が入手できるようになってからHIVの予防および治療が劇的に進展した。しかしこのHAARTの導入からHIVの蔓延にどう対応し、予防や治療がなされてきたか、その変遷がまとめられた文献がない。このため、ある研究者グループが、社会生態学的枠組みにそって、生物医学的かつ保健的なサービス、またコミュニティや社会構造への介入についての、その歴史的変遷をレビューした。
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(カナダ)「薬物使用HIV陽性者へのサービスの統合化モデルの重要性

【2017年3月3日】社会構造的な不平等が、構造的に弱い立場に置かれている薬物を使用するHIV陽性者(PLHIV)のHIV治療へのアクセスやその継続を阻害している。薬物使用HIV陽性者における、HIVに関連した対策の成果におけるこういった差別は、HIV治療において「予防としての治療」(Treatment as prevention: TasP)の最適化の阻害要因となっている。カナダ西部の都市バンクーバーにおいて、HIV陽性の薬物使用者それぞれのニーズに合わせて考案され、統合されたHIVケア・サービス・モデルがどう関与しどのようなインパクトを与えるかを評価するためにコミュニティ全体で「予防としての治療」が導入され、調査が実施された。

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トランプ政権は米国のエイズ援助をどう変えようとするのか?

【2016年12月1日】米国のドナルド・トランプ新政権は、まだ国際協力についてどのように取り組むかの判断を示していないが、HIV/エイズ問題に取り組む市民社会組織は、HIV/エイズに関する米国の財政拠出の削減について警鐘を鳴らしている。米国政府は国際的なHIV対策の最大の支援国であり、13年前、ジョージ・W・ブッシュ政権において発足した、「米国大統領エイズ救済緊急計画」 U.S. President’s Emergency Plan for AIDS Relief(PEPFAR)はHIV/エイズ対策のためにこれまで約600億米ドルを拠出している。続きを読む

(アメリカ)国際保健のリーダーたち、エイズ、結核、マラリア対策の資金トレンドについて討議


【2016年10月19日 ワシントンDC(アメリカ合衆国)発】
10月6日、米国でグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)をサポートする民間セクター等の連携ネットワークである「フレンズ・オブ・グローバル・ファイト」 Friends of the Global Fightは、マラリアに関する啓発などに取り組むNGOである「マラリア・ノーモア」 Malaria No More、およびマラリア対策のための蚊帳を普及するためのNGO「ナッシング・バット・ネット」Nothing But Netsを交えて、ワシントンDCで保健分野の情報普及に取り組む民間財団「カイザー家族財団」 Henry J. Kaiser Family Foundationにおいて、国際保健の将来的な資金調達活動についてパネルディスカッションを行った。続きを読む

(米国) 世界の薬物対策の問題点を糺す


【2016年4月19日 米国発 】
米国では、長年、警察や刑務所で医療用の薬物やヘロインの乱用使用が増加している。政府は、薬物乱用使用者への治療や精神衛生管理の拡大に取り組んでいるが、抜本的な変化にはなっていない。
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(米国)ハイチのコレラ流行は低コストの取り組みで防げていた=エール大学の研究で判明


【2016年1月26日 ニューヘイブン(アメリカ合衆国)発】
国連平和維持部隊としてハイチに展開していたネパール軍が2010年秋にコレラ菌を誤ってハイチへ持ち込み、近年最も深刻な感染症の流行を引き起こしてから数年が経過してもなお、ハイチにおいて、コレラは国連平和維持活動にとって高いリスクとして推移している。続きを読む

(米国)バーニー・サンダース上院議員、無償教育実現のための 「ロビンフッド税」導入の法案を上程


【2015年5月19日ワシントン(米国)発】米国の看護師、学生、宗教・公民権運動のグループ、環境活動家、労働・住居支援者たちは、米国のヴァーモント州選出の無所属(民主党と院内会派を組んでいる)の上院議員、バーニー・サンダース氏Bernie Sandersによる計画を歓迎した。この計画は、「ロビンフッド税」と呼ばれるもので、米国での金融取引に対して小額を課税し、誰でも大学教育を受けられるようにすることと、地域社会の重要なニーズに用いることを目的とした2つの新規議員法案を上程するというものである。続きを読む

(カナダ)不十分な研究成果:欧米在住黒人女性のスティグマ軽減の課題


【2015年4月8日ジュネーブ(スイス)発】HIV陽性のアフリカ系女性は、人種差別や性差別、同性愛者に対する差別やHIVに関する差別のように多様なスティグマによって、その健康や幸福に悪影響が及ぼされていると言われる。しかし、このような状況に置かれている女性に対するスティグマ軽減のプログラムや介入効果を証明する研究結果は限られている。こうした問題について、これまでの研究におけるスティグマの軽減プログラムや介入効果を評価する総合的な研究評価が行われ、その成果が論文にまとめられた。続きを読む
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
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