グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!

人権

(オランダ)現代の労働におけるHIVに関わるスティグマと差別 =世界HIV陽性者ネットワーク、報告書を発表

【2018年7月25日 アムステルダム(オランダ)発】世界のHIV陽性者団体のネットワークである「世界HIV陽性者ネットワーク」 GLOBAL NETWORK OF PEOPLE LIVING WITH HIV:GNP+ は、国際労働機関 International Labour Organization:ILO と共同で「労働の世界におけるHIVに関わるスティグマと差別:HIVスティグマインデックスとともに生きる人々からの発見」という報告書を、オランダの首都アムステルダムで開催された第22回国際エイズ会議において発表した。本報告書は世界13か国の10万人以上を対象とした調査結果を基にしている。

本報告書はHIVと職場環境の差別に関する最新のデータを提供しており、次のことが明らかになった。
・ HIV陽性者のうち、かなりの割合が定職につけていない。雇用されていない人の割合は、ウガンダの7%からホンジュラスの61%まで幅広い。
・ 調査対象13か国中、10か国で調査対象者の30%以上が失業状態であった。
・ 特にHIV陽性者の若者の失業率が高く、11%(韓国)から61%(ギリシャ)までの幅があるが、特に、東ティモールでは50%、フィジーでは56%、ギリシャでは61%、ホンジュラスでは60%を記録している。
・ 全調査対象国で、HIV陽性のトランスジェンダーの失業率は高いままだった。
・ 多くの人がHIV感染が理由で失業していることが判明した。雇用主や従業員からの差別が失業の原因とする者の割合は、フィジーの13%から東ティモールの100%までを記録し、また、中米諸国はベリーズ(86%)、ニカラグア(67%)、ギリシャ(80%)、コスタリカ(53%)と高率であった。

GNP+のプログラム・マネージャーであるサシャ・ヴォルジナ氏Sasha Volgina は、「この報告書によって、HIV陽性者の職場におけるスティグマ・差別の問題は根深いことが判明した。保健医療と労働のアクセスは密接に関連しており、HIVの流行を止めてHIV陽性者すべての福利を保障するためには、職場環境におけるHIVスティグマを優先的に終わらせる必要がある」と述べた。

さらにILOのHIV/AIDS対策責任者を務めるシャウナ・オルニー氏 Shauna Olney は、「長年にわたる活動にもかかわらず、スティグマ・差別が続いているのは悲しいことである。職場環境で彼らへのスティグマ・差別をなくす一層の努力が求められている。彼らは働く権利があり、誰もそれを否定することはできない。HIV/AIDSと労働の世界に関するILO勧告(No.200) では、すべての利害関係者に労働環境における人権の保護と職場におけるスティグマ・差別を根絶するための必要な手段の確保のためにガイドラインを制定している」と述べている。

原題:Report: HIV Stigma and Discrimination in the World of Work
出典:The Global Network of People Living with HIV (GNP+)
日付:2018/7/25
URL:https://www.gnpplus.net/hiv-stigma-and-discrimination-in-the-world-of-work/

このままでは「2030年にエイズ終息」は達成できない?米国NGOが声明

【2018年7月18日】HIV/AIDSに関する政策提言や直接行動を行う米国のNGOである「ヘルス・グローバル・アクセス・プロジェクト」(Health Global Access Project: HealthGAP)のアジア・ラッセル代表理事 Asia Russellは、「グローバル・エイズは、『2030年にエイズを終わらせる』という『持続可能な開発目標』(SDGs)の目標から取り残されている。この厳しい現実は、エイズ対策への資金提供国の消極的な態度を反映したものである。特にアメリカ合衆国の政府は、人の命を救うための資金拠出の拡大を拒否しており、治療や予防の取り組みにおける世界の不均衡な状態を悪化させている。現在、数多くの人々が支援を待っているが、彼・彼女らは置き去りにされている」と述べた。

HealthGAPは、その声明で次のように述べている。「現在開発されている強力なHIVの治療や予防手段によって、HIVは終息が見通せるようになった。しかし、世界全体において、これらの手段が完全に効果を上げる状況には全く至っていない。過去7年間、米国はエイズ対策に十分な資金拠出を行ってこなかった。欧州は援助国としての役割を後退させている。世界各国において、HIVに関する人権侵害や、弱い立場に置かれたコミュニティへの差別・偏見が拡大している。こうしたことにより、世界はエイズという重大な課題について、今後、取り返しのつかない事態に陥るリスクをはらんでいる」

HealthGAPの声明では、国連合同エイズ計画 UNAIDS が、オランダの首都アムステルダムで開催された第22回国際エイズ会議において行った報告に関連して、次のようなことが指摘されている。

 UNAIDSが2020年までの達成を目指すとしている「90-90-90目標」(HIV陽性者の90%が自己の感染を知り、その90%が治療につながり、その90%においてHIV量が検出可能値以下に下がるという目標)は、少なくとも、同年までにHIV治療アクセスが年間2800万人にまで増加しない限り達成できないだろう。
 対策資金の不足により、HIVの危機に最も深刻な形でさらされている人々が、命を救うサービスへのアクセスを拒絶されている。例えば、アフリカ東部・南部のHIV新規感染の16%、エイズ関連死の18%を占めるモザンビークでは、HIV感染率が最も高い地域の半分以下でしか、若い女性や思春期の少女を対象とした重点的なHIV予防介入が行われていない。これは、米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)やグローバルファンドによる資金支援が不十分であることによるものである。
 2020年までに「90-90-90目標」を達成するためには、さらに540億ドルが必要だと試算されている。HealthGAPは2018年4月、米国が何年も十分な資金拠出を行えないままでいることを批判し、また、命を救うためのHIVの治療と予防、エイズを終わらせるための資源の投入において、大きな格差が存在することについて、新たな分析を報告している。
 アフリカ東部・南部の地域ではHIVの治療の規模が大きくなっているように見えるがエイズ関連死の減少に加速はかかっていない。また、サハラ以南アフリカにおいては、男性同士の性行為によって感染した人々の死亡者数は減少していない。
 アフリカ西部・中部の地域では、HIVの治療アクセスに関する大きな格差を埋めることが至急に必要とされているが、グローバルファンドからのこの地域への投資額は減少している。

原題:STATEMENT FROM HEALTH GAP ON THE RELEASE OF NEW DATA ON THE STATE OF THE GLOBAL AIDS EPIDEMIC
出典:HEALTH GAP 
日付:2018/7/18
URL:HTTPS://WWW.HEALTHGAP.ORG/STATEMENT_FROM_HEALTH_GAP_ON_THE_RELEASE_OF_NEW_DATA_ON_THE_STATE_OF_THE_GLOBAL_AIDS_EPIDEMIC

「一度も使われていない」グローバルファンドの人権に関する通報制度:改善に向けた努力

【2018年7月3日 ジュネーブ(スイス)発】途上国の三大感染症対策に資金を拠出する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)の内部監査機関である総合監察官事務所 Office of Inspector General (OIG) は、同ファンドが関わっているプログラムにおいて、誰でも人権侵害に対して通報できる報告制度を2015年より開始した。本制度、および報告手順は簡潔で、職種や国籍などに関係なく誰でも使える。報告基準や方法は開始当時と変わらず、ガイドライン、報告手順、およびオンライン入力フォームなどは公開されている。(http://www.ispeakoutnow.org/report-now-en/ )

しかし、開始から3年経過した現在も、同通報制度に対しては、一例の報告もなされていない。今回、制度開始1年後より、その理由について調査がなされていたことを明らかになった。もし、人権侵害が一切ないのであれば報告は一例もなくて当然であるが、この制度が出来た背景を考えると人権侵害は起こっていると考える方が妥当である。

◆啓発活動
本制度について、グローバルファンド事務局の地域・人権・ジェンダー部門 (the Community, Rights and Gender Department)が、各国でグローバルファンドの資金拠出の案件形成や資金受け入れの窓口となる国別調整メカニズム(Country Coordinating Mechanism:CCM)のメンバーや市民団体などに対して、不正や懸念などを解消するための「今、声をあげよう! I Speak Out Now!」というキャンペーンや、非常に簡単で広範囲に伝えられる方法で地方や国レベルのトレーニング、およびWeb上の講座などを実施した。一方、各フォーラムへどれくらいの参加があったのかなどのデータは報告されていない。

◆本制度の周知不足とグローバルファンドへの不信感
市民団体などに所属する42人へのインタビューでは、実に80%以上の団体が、本制度や報告手順、および、どのように機能するのかについて全く知らないと回答した。回答者の中には、グローバルファンドや国別調整メカニズム側のスタッフも含まれていた。

さらに別の要因として、グローバルファンドの機能、どのような事例が人権侵害に該当するのかなどについての認識不足もうかがえた。また、どのプログラムがグローバルファンドから支援なのか分からないとか、グローバルファンドの資金受け入れのために各国が設置している「国別調整メカニズム」などがグローバルファンドの機構の一部として認識されていたなど、機能や部門に対する混同や混乱などが明らかになった。

また、人権侵害に対する救済方法が不十分であるため報告自体に意味がない、外部からの脅迫など報告すべき事案はあったが、グローバルファンドに報告したところで、ファンドがそれに対して行動を起こす権限がないことなど、グローバルファンド自体の課題に対する意見も表明された。

◆改善に向けた推奨と反応
内部監査機関は、以下3点を推奨した。
・グローバルファンドは、引き続き組織内外への本制度について周知を続けること
・国別調整メカニズムなど、地域でグローバルファンドの資金に関わる機関は、引き続き制度の周知と使用推奨に努めること
・より認識を広めるため、現地の言語を使用したウェブ講座や制度などの作成に努めること

これらの提案後、地域・ジェンダー・人権部門は、それぞれの地域部門へ再度制度の周知を呼びかけ、ウェブ講座も今秋より予定された。「報告制度は小規模なものではあるが、グローバルファンドの人権に対する活動にとって非常に重要である。皆さんの理解を向上し、制度を周知することに努める」と締めくくられている。

原題: Secretariat Releases Report on Slow Uptake of Global Fund’s Human Rights Complaints Mechanism
出典:Aidspan
日付:2018/7/3
URL: http://aidspan.org/gfo_article/secretariat-releases-report-slow-uptake-global-fund’s-human-rights-complaints-mechanism

(エチオピア)ジェンダーバイオレンス、エイズ、障害を持つ人に対する偏見との闘い

【2017年12月12日】
つい先日、シビル・サービス大学のカンファレンス・ホールで、連邦公共サービス、シビル・サービス大学、エチオピア・カイゼン機構は、ホワイトリボンデー、障害を持つ人デーと世界エイズデーを同時に祝った。
続きを読む

HIVに対する偏見や差別が保健医療サービスの利用を妨げる

【2017年10月3日 ジュネーブ(スイス)発】大きな偏見や差別を体験したことのあるHIV陽性者は、そのような経験のない陽性者と比較して、治療を受けるまでの時間が約2倍遅くなるということが、国連の報告で明らかになった。続きを読む

(ケニア)ケニア人弁護士が権利への戦いで先頭に立つ

【2017年5月23日 (ナイロビ)発】
7年前、アラン・マレーシュ氏 Maleche は、一流法律事務所の弁護士から、人権活動家に転身した。現在マレーシュ氏は、ケニア倫理・法律・問題ネットワーク(KELIN)の事務局長を務めている。KELINは1994年にケニアの法律家グループによって設立され、HIV/エイズとともに暮らす人びと、結核、性と生殖に関する健康、女性の土地の権利と相続権、主要な影響を受けた人びとの権利擁護を目的とした慈善団体である。KELINは、大統領や政府を相手に訴訟を起こし、HIV/エイズを含めた人権擁護のために奮闘している。彼は、ハーバード大学のフェローであり、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の役員会メンバーでもある。
続きを読む

国連が定める「エイズ差別ゼロの日」:差別・スティグマをなくすために

【2017年3月1日】3月1日は国連が定める「エイズ差別ゼロの日」Zero Discrimination Dayである。HIV/AIDS対策を主導する国連機関は、医療現場における差別ゼロのために「声を上げよう」と訴える。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長 Michel Sidibeは、「医療現場は安全に援助を行える環境でなければならない。差別が受療の妨げになることは容認できない。医療現場における差別をなくす努力は重要であり実現しなければならない」と述べた。

続きを読む

(ジンバブウェ)受刑者がチクルビ刑務所での7年を振り返る

【2017年2月28日】アフリカ南部の内陸国ジンバブウェの刑務所は、定員超過と深刻な資金不足に苦しんでいる。刑務所の食費には、本来、年間1300万ドルが必要であるが、2016年の国予算からは310万ドルしか与えられなかった。医療供給と関連サービスに充てられたのは、たったの301,000ドルで、必要資金である520万ドルの6パーセントにしか満たない。深刻な資金不足によって食料不足や暴動、人間としての生活の侵害などの問題を引き起こしている。続きを読む

(アドボカシー)ビデオ・アドボカシーを伝わりやすく、効果的にする方法 -----------------------------------------


【2015年11月12日 リトアニア発】 ビデオ・アドボカシーは、アドボカシーを目的とする映像ジャーナリズムの要素を用いた新たな芸術ジャンルだ。最近では、ハームリダクション(被害軽減)への予算配分をその政策決定者に呼びかける地域的な取り組みにも、このジャンルが用いられるようになった。しかし、ビデオは観客の心を動かす素晴らしい手段にいつもなっているのだろうか。ビデオ・アドボカシーは常に政策決定をしやすくしているのだろうか。続きを読む

(UNAIDS)カメルーンのHIV・人権活動家ジョエル・ナナ氏死去=UNAIDSが追悼声明


-----------------------------------------
【2015年10月1日 ジュネーブ(スイス)発】 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、ジョエル・ナナ氏Joel Nanaの急逝に対し深い哀悼の意を表する。ナナ氏は、「アフリカ男性のための性の健康と権利」African Men for Sexual Health and Rights (AMSHeR)の初代事務局長であり、UNAIDSの最高決定機関であるプログラム調整理事会にNGO代表として参加していたメンバーでもあった。享年33歳。続きを読む
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

  • ライブドアブログ