グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!

注射薬物使用者(IDU)

C型肝炎への世界との闘いと薬物使用問題

【2017年7月28日】注射による薬物使用者(People who inject drugs:PWID)のC型肝炎ウイルス(HCV)の感染とHIV感染の蔓延が世界的に大きな問題となっている。2015年におけるC型慢性肝炎感染者は7,110万人と推定されるが、そのうちPWIDは560万人とされる。2015年の新規HCV感染者は170万人で、そのうち23%が注射による薬物使用に起因する。HCVの感染は初期段階で治療を開始しないと肝硬変、肝臓がんと進展し、長期的にケアの費用がかかることになる。PWIDのHCV感染は、注射針や注射器の使い回しが主な原因であるが、HIV感染も伴うことも多い。

薬物使用者のHIV感染を予防するために、注射針・注射器交換プログラム(Needle and syringe programme:NSP)やメサドンやブプレノルフィンを用いたオピオイド代替維持療法(opioid substitution therapy:OST)は、効果が証明されているにもかかわらずその導入が進んでいない。HCV感染は、ウイルスを直接排除する内服薬による治療により95%以上が治癒できるようになった。2015年から2030年の間に、WHOは新たなHCV感染を80%まで削減し、死亡者を65%まで下げ、そして診断を5%以下から90%まで上げ、治療を受けることができる患者数を1%以下から80%に上げることを目標としている。

スイスにある「薬物使用者の肝炎に関する国際ネットワーク」International Network on Hepatitis in Substance Users の研究チームは、なぜ薬物使用者のHCV感染への介入が重要なのか、なぜ介入することで到達目標が可能となるのか、そして対策に向けての課題と行動を促すための方策について検討した。

重要な点は以下の7つである。
1.抗ウイルス薬を内服する治療(インターフェロンフリー治療)はPWIDのC型肝炎の治療を改善
2.注射針や注射器交換とオピオイド代替療法は再感染のリスクを最小限に抑えるために重要
3.オピオイド依存症患者に対するメサドンやブプレノルフィンを用いた代替維持療法は効果的で肝炎ウイルスとHIV感染を予防
4.抑圧的な薬物政策と薬物使用者への差別を回避することの必要性
5.薬物使用者のヘルスサービス利用の強化
6.検査、ケアと治療の連携をあらゆる専門分野で実施
7.明確な国家戦略とWHOの削減目標を実現するための財政強化。

注射による薬物使用者のHCV感染をなくすには、注射針・注射器交換などのハームリダクション・サービスの普及と、薬物使用者への差別をなくし、検査とその後の治療やケアのフォローを専門分野が連携して行うことが重要である。さらに薬物使用者に対する刑務所収監に代わる更正方法を含む薬物政策の改革と、ハームリダクション・サービスに関する資金の規模拡大と改善、ヘルスサービスへのアクセスの容易化、コミュニティのエンパワーメント、そして利用可能な診断と医薬品の提供などを提言する。

原題:Elimination of HCV As A Public Health Concern Among People Who Inject Drugs by 2030 – What Will It Take to Get There?
出典:Journal of The International AIDS Society
日付:2017/07/28
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.7448/IAS.20.1.22146

HIV陽性者向けと薬物使用者向けサービスの統合に関する体系的レビュー

【2017年5月30日】
 薬物使用者はHIV感染リスクが高く、薬物使用もHIV感染も特定の社会的に弱く軽視されている人びとに集中している。対処法は異なるが、薬物使用者向けとHIV陽性者向けサービスの統合は可能だ。本報告はHIV陽性者向けと薬物使用者向けケアの統合に努める諸調査の結果を体系的にレビューするものである。
 続きを読む

(ロシア)政策的黙殺の中、薬物使用者の間でエイズは拡がっていく


【2015年5月24日モスクワ(ロシア)発】医療用品の詰まった大きなバックパックを持った2人のHIV予防活動家たちが、モスクワ郊外の薬局の前で配布所を開くと、ほぼ同時に、痩せ細った若い男性が近づいてきた。「軟膏はあるかな?」と彼は尋ねながら、履いていたジャージのズボンの裾をめくり、たくさんの赤い皮疹を見せた。続きを読む

(中東・北アフリカ地域)薬物使用者におけるHIV感染数の増大

【2014年6月27 日】中東・北アフリカ the Middle East and North Africa(MENA)の国々における注射薬物使用者injection drug user (IDUs)のHIV感染について、国際チームによる電子データベースおよび各国の報告書を用いた総合的な調査により、その実態が明らかとなった。続きを読む

アフリカ西部の国々、薬物使用問題を公衆衛生問題としてともに取り組む

【2014年6月12日 国連合同エイズ計画(UNAIDS)】アフリカ西部薬物に関する協議会the West Africa Commission on Drugs(WACD)は、アフリカ西部の薬物の消費、生産の問題が公衆衛生を脅かし、開発に悪影響を及ぼしているという。続きを読む

ロシアのクリミア併合で薬物使用者へのHIV対策は後退?

【2014年3月21日】ウクライナやロシアでの薬物注入によるHIV感染が拡大している。しかしウクライナでは、違法薬物の代替薬であるメサドンやブプレノルフィンなどによる治療の導入が、患者の違法な薬物使用を避けることにつながり、HIVの新規感染率が徐々に下がってきている。一方、ロシアではメサドンやブプレノルフィンは禁止されている。続きを読む

(中国)南部でセックス・ワーカーの顧客のHIV感染率拡大―薬物使用とヘルペス・ウイルス

中国南部の雲南省河口郡で行われた調査で、注射器による薬物使用と、「タイプ2」の単純ヘルペス・ウイルス HSV-2 の感染が、女性セックス・ワーカーとその顧客である男性たちの間で、HIV感染と深い関係があることが分かった。続きを読む

(ケニア)薬物使用者への清潔な注射器配布プロジェクトを世界基金が支援

【2012年6月13日 ナイロビ(ケニア)発】東アフリカのケニアでは、イスラーム圏であるコースト州および大都市のナイロビ州で注射薬物使用によるHIV感染が拡大している。そこで、注射薬物使用者に清潔な注射器を配布するプロジェクトの実施のため、世界エイズ・結核・マラリア対策基金から1億3,600万ケニア・シリング(約161万米ドル)超の支援がなされた。これには、ケニアのHIV/エイズ・結核・マラリア問題を改善するため、世界基金の第10回案件募集 Round 10 によって拠出された支援金の一部があてられる。薬物使用者は、グループで注射器を使いまわすことによってHIVに感染するため、薬物使用者のHIV感染の予防のためには、注射器の供給と回収という手法が有効とされている。続きを読む

薬物使用に関する国際委員会、「麻薬戦争」的薬物対策を批判

【2012年6月29日】「薬物政策に関する国際委員会」the Global Commission on Drug Policyは、2012年6月発行の報告書の中で、薬物に関する世界的な「麻薬戦争」の結果、薬物使用者とその性的パートナーの間でHIV/エイズ感染が拡大したと結論づけた。続きを読む

★欧州の多くの国で薬物使用者のHIVケースが減少


欧州では5カ国を除く全ての国で、静脈注射による薬物使用者IDUsのHIV新規感染率が低下している。一方、IDUsのC型肝炎HCVの罹患率を報告している12カ国の内7カ国では、薬物使用者のC型肝炎感染率が40%を超えていることが分った。
続きを読む
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

  • ライブドアブログ